趣味の殿堂「遊舟」2000

個人的マルチメディアの遊戯術
特別篇

筆者のメディア論、電子機器等の購入インプレッションを紹介。
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ファーストアルバム比較「宇多田ヒカルVS倉木麻衣」


宇多田ヒカル/First Love 倉木麻衣/delicious way
宇多田ヒカル/First Love
1999年3月10日リリース
倉木麻衣/delicious way
2000年6月28日リリース
Automatic - Album Edit -
Movin' On Without You
In My Room
First Love
Amai Wana - Paint It, Black
Time Will Tell
Never Let Go
B&C - Album Version -
Another Chance
Interlude
Give Me A Reason
Automatic - Johnny Vicious Remix -
全12曲
Delicious Way
Love, Day After Tomorrow
Secret of my heart
Stepping infinity out
Baby Tonight -you & me-
Can't get enough -gimme your love-
NEVER GONNA GIVE YOU UP
Stay by my side
Everything's All Right
happy days
kimitono toki
全11曲

 昨年、突然彗星如く日本ポップス界に現われた宇多田ヒカル。そして遅れること数か月、ロングセラー・シングルを連発、今やチャートの常連となった倉木麻衣。宇多田は昨年、ファーストアルバム「First Love」を、そして今年に入り満を持して倉木が「delicious way」をリリース。先行した宇多田のアルバムは国内売上げ新記録を樹立。だがこれを倉木のアルバムが宇多田の売上げを追い抜く勢いで迫る。そして雑誌、テレビマスコミ共にこの状況を煽るように報道している。これに輪をかけたのがダウンタウン浜ちゃんの発言。しかし本当に倉木は宇多田のパクリなのか。今回はその点を含めて彼女らの音楽性をファーストアルバムから検証してみたい。

バックグラウンド
 きしくも彼女達二人は全米デビューを果たしている。確かにメジャー、インディーズの違いがあるものの、それをデビュー時のセールスポイントとしてきた。英詞の発音はネイティブである彼女らの真骨頂であり、日本育ちのアーティストにはないものである。彼女達の楽曲で必然的に英詞が多くなるのは当然。むしろ外国育ちで培った音楽センスがカギとなる。
宇多田ヒカルは東芝EMIからデビュー。これこそ宇多田ヒカル自身(あるいは宇多田パパ)の選択眼の確かさだろう。EMIといえば世界的なメジャーなレコード会社である。彼女の音楽性と将来性を考えれば、この選択は正しい。バブル以後、小室哲哉らの和製ポップスに傾倒した他の国内メジャーでは宇多田の才能を活かせなかっただろう。またデビューの準備は、同系のMISHAらがブレイクする以前の選択だったと思う。そしてその販売戦略がEMIらしい。流行に最も敏感なクラブシーンにデモを提供、楽曲の確かさや話題性で盛り上げ、シングル「Automatic」をリリース、見事に昨年のチャート年間一位に輝いた。以後アルバム「First Love」のリリース、チャリティコンサートへの参加、さらにテレビへも登場し、彼女の認知度は急激に上がることになる(母、藤圭子の存在も大きい。いろんな意味で)。
 対して倉木麻衣はビーイング系アーティストである。ビーイングといえばB'z、ZARD、大黒摩季というミリオンアーティストの宝庫。綿密なマーケティングと販売戦略で知られる、バブル以後の日本音楽界を牽引してきた会社である。ちなみに一昨年リリースされたB'zのベスト盤の売上げ記録を破ったのが、宇多田のアルバム「First Love」。そして今回その売上げを猛追しているのが倉木の「delicious way」とは何か因縁めいたものを感じさせる。倉木はビーイング系アーティストゆえ、マスコミへの露出度が極めて低い。いまだに生の声が聞こえてこない。宇多田もテレビ初出演までは未知の部分が大きかったものの、それまでの期間は半年程度だった。デビューはシングル「Love, Day After Tomorrow」。ビーイング的戦略でジリジリと火がつき、ロングセラーとなった。キャッチーな楽曲とミステリアスな雰囲気、そしてマスコミが宇多田との相似性を言い始めたからだ。ただ似て非なる印象を私は持ったのだが。

ファーストアルバム比較

図.筆者が客観的に比較したグラフチャート

 先陣を切った宇多田ヒカルの「First Love」、やっと登場した倉木麻衣の「delicious way」。しかしマスコミが言うほど、この二枚のアルバムには相似性が見られない。
 まずリリースパターン。宇多田は明らかに欧米型のリリースである。先行シングルは僅かに「Automatic」と「Movin' on without you」の二枚だけ。このアルバムの後、タイトル曲の「First Love」をシングルリリースされた。海外アーティストなら以後、アルバムからのシングルリリースが続くのだが、如何せんここは日本。シングルとアルバムの売上げを食いあうのを避け、以後はアルバム未収録のシングル登場となる。
 それに対し倉木の「delicious way」はヒットシングル四曲を収録、ベスト盤的要素が強い。ここ数年の国内売上げの上位がベスト盤で占められるように、市場ではお買い得感の強いアルバムが好まれる。そしてそこにビーイングの販売戦略が見える。"満を持して"の戦略がシングル四曲収録を可能にしたのだ。これこそまさに日本的。従来、ビーイングの培ったノウハウが彼女に生かされた結果なのである。
 こうして生まれた二人のアルバムは楽曲的にも違いをみせる。英詞優先と思われる両者だが、それが強いのはむしろ倉木の方。宇多田の場合はサビやコーラスに限られている。日本語を大事にしているのが宇多田の特徴なのだ。対して倉木の場合は「NEVER GONNA GIVE YOU UP」のようにほとんどが英詞というものもある。確かに英詞に傾倒しているためかカラオケには不向きだが、英語がこなせれば唄いやすいのが倉木の曲なのである。
 しかし宇多田の曲はそうはいかない。脱カラオケの筆頭に挙げられる彼女の楽曲は難易度が高い。その要因がグルーヴ感である。彼女がニューヨーク時代に育った環境は絶妙なリズム感、節回しを生み、彼女が自分のために自作した曲ゆえ、他人の為でなく自分が唄いこなせるように作ったものだ。シロウトが唄えているように思えても、その違いは大きい。
 倉木は詞は自作だが、曲は違う。曲の受け入れられ易さ、キャッチーさはビーイング譲りだと思う。そして過去の80's、90'sの洋楽ポップススタイルを踏襲したのが、倉木の曲の特徴だ。リズムの刻み方、センス、アレンジ、何処かしらマドンナら女性アーティストに似たポップ性を感じるのである。節回しも軽い。詞の世界が希薄なのもそのせいだろう。確かにグルーヴ感もあるが、宇多田の方が明らかに上。歌詞よりも曲優先、アルバム「delicious way」はそうした一貫した製作意図を基に作られている。
 一方、宇多田の「First Love」は耳受けの良さでは倉木に一歩譲る。徹底して彼女のポップ性を追求した結果、先鋭性、既存のリズム感にとらわれず、倉木のように曲の全てが従来の最大公約数的な作りではないからだ。だからアルバム「First Love」の各楽曲のデキに波があるように思う。中でもシングル三曲は秀でているが、それ以外は好みが分かれるところ。ただ彼女の詞の世界はどれも興味深く、等身大の良さが光る。

まとめ
 年齢、デビュー等で同じ背景を持つゆえ対比される宇多田ヒカルと倉木麻衣だが、同じ音楽という土俵で戦っている以外、比較は難しいように思う。かつてユーミン(松任谷由実)と中島みゆきが比較されたことがあったが、その世界観を重ねるのはナンセンスな出来事だった。ビートルズとストーンズの時のように支持派が分かれても、最終的には歴史が判断する。マスコミの比較論も、レコード会社にとってはセールスにつながるいい材料と思っているのではないか。それにアルバムセールス=(イコール)優れた作品だという理論は成り立たない。それはベスト盤に偏った最近の国内アルバム売上げ成績が示している。同じ洋楽をルーツにインスパイアされた二人。明確な言い方はできないが、現時点で洋楽を吸収したバランスのいい宇多田、洋楽に傾倒した曲優先の倉木という表現が似合うように思う。

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