趣味の殿堂「遊舟」2000

ページまるごと踊る大捜査線
2004年8月30日更新

劇場版第二弾公開記念!
まるごと1ページを「踊る大捜査線」で埋め尽くす
シリーズ「ページまるごと」の第3弾!
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劇場版DVDジャケット テレビシリーズアヴァンタイトル

イントロダクション.
劇場版第2弾「ベイブリッジを封鎖せよ」がこの夏公開された「踊る大捜査線」。今やフジテレビだけでなく、東宝、日本映画界のドル箱に成長した本作。筆者もテレビシリーズからハマったクチなのだが、あらためてその理由の検証を行なってみた。

脚本の君塚良一氏(右)と踊る仕掛人亀山プロデューサー(左)
脚本の君塚良一氏(右)と
踊る仕掛人亀山プロデューサー(左)

(DVD「深夜も踊る大捜査線」より)
背景.
 「踊る大捜査線」が始まったのが今から6年前の1997年。脚本は劇場版、スペシャル(番外編を除く)が君塚良一氏の手によるもの。既に君塚氏は「ずっとあなたが好きだった」「誰にもいえない」等、ドラマ脚本で大きな実績を持っていた。そんな彼が着目したのが警察を扱った作品。しかも事件発生、一話完結のスタイルをとらず、警察組織を描く事に注視した作品を生んだ。それが「踊る大捜査線」である。警察組織の構図と我々一般社会になんら変わりがない事、企画時のタイトルが「サラリーマン刑事」だった事からもその視点の新しさは明らか(「サラリーマン刑事」は第一話のサブタイトルになった)。「踊る大捜査線」以降、「ケイゾク」「相棒」、そして同じ君塚脚本の「TEAM」等、切り口の違う警察ものは増えているが、その原点といえる。
室井と青島 「事件は会議室で起きているんじゃない!現場で起きているんだ!」
背景.
 まずこのドラマはあらゆる要素が含まれている事。もちろんその骨子は警察組織で奮闘する主人公青島を描く事だが、それ以外にも従来の路線にない行き届いたディティールの深さがある。いまだ日本の刑事ドラマは人情路線だが、実際の犯罪は急激に変わってきている。当時、そんな現代犯罪を採り入れたのは「踊る大捜査線」位だった。またそのバックグラウンド、前述の組織描写、事件背景、小物に至るまで考えられている。これらは脚本だけで出てくるものでないし、現場スタッフのこだわりだといえる。

 またこのドラマはシリアスとコメディの絶妙なバランスが身上。「欽ちゃん」番組の放送作家でもあった君塚氏の真骨頂でもある。もちろんシリーズを通して終始笑いを求めるのではなく、要所は締める。特にテレビシリーズ最終二話はシリアスに徹した。その緩急織り混ぜた内容が我々の琴線に触れたのはいうまでもない。
 このドラマの演出は引用のオンパレードである。正確に云うと、ドラマの骨子に対し、いろいろと肉付けされた部分で、他作品の引用がなされているのである。

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 機動警察パトレイバーTHE MOVIE
新世紀エヴァンゲリオン 機動警察パトレイバーTHE MOVIE
 演出面で一番目立つのは「新世紀エヴァンゲリオン」からの影響だ。ビジュアル、フォントの扱い方はまさにそのもの(とはいえ「エヴァ」自身もフォントとその手法は市川崑作品からの引用であるが。今ではバラエティ番組「天声慎吾」をはじめ、多くでその手法が使われている)。ただ一番露骨なのは「エヴァ」のあるBGMがそのまま使われている事。テレビシリーズ、劇中頻繁に使われる曲なのにサントラにも収録されず、クレジットすらされない。ビデオ化の際もそのまま使われたが、これは「エヴァ」の庵野監督が「踊る」のファンだったから実現した事らしい。たださすがにこの曲は劇場版で使われなかった。しかし今では「踊る」に欠かせない曲となったのは事実である。

 もちろん脚本面でも見逃せない部分がある。アニメながら警察組織に触れた押井守の「機動警察パトレイバー」は演出共々、本作に多大な影響を与えたのは周知の事実。両者に共通する群像劇の面白さ、一方警察における縦社会の描写は、コメディ色の強い「踊る」に対して「パトレイバー」(劇場版第二作)のほうがシリアスかもしれない。
the silence of the lambs HIGH AND LOW(天国と地獄)
羊たちの沈黙 天国と地獄
 それ以外にもセリフの端々に映画のタイトルが出てきたり、「踊る」劇場版では「羊たちの沈黙」や「天国と地獄」(黒澤プロ了承済)のアイデアそのものが引用された。映画ファンにとってはニヤッとする場面だ。これぞ「キネマ旬報」にコラムを書いていた君塚氏の面目躍如といったところだろう。こうして挙げてきた細かなディティールこそ、「踊る」は観れば観るほど味が出る「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のようなスルメ型のドラマに感じる部分なのである。

 「踊る」は二人の演出家によって作られた。二人の演出家とは本広克行と澤田鎌作の事である。一般的には「踊る」=本広演出と思われがちだが、けっしてそんな事は無い。二人の演出回を見比べると、双方の違いが見えてくる。両者に群像劇、人間ドラマは共通。だが長回しを多用しコメディ色の強い本広に対し、クールなエピソード、シリアスな演出の澤田。ただ澤田のエピソードにコメディが皆無ではないが、描写は少ない。おそらくプロデューサー、そして脚本サイドの配慮だろう。徹底してお笑い路線に終わらないのが「踊る大捜査線」の身上だと思う。
登場人物.
このドラマに登場する主要登場人物を紹介。
肩書は劇場版第一作終了時点
青島俊作巡査部長(織田裕二) 青島俊作巡査部長(織田裕二)
コンピュータ企業のサラリーマンを経験、トップの成績を誇っていたが、自分に対する可能性を警官という職に求めた。交番勤務を経て、念願の刑事となったが、その思い描いていた理想とのギャップはサラリーマン時代と大差なかった。しかし警察組織を変えようとする室井と意気投合、さらに自らの熱血漢とサラリーマン時代に養った行動力で事件解決に導く。
苗字の「青島」はドラマ中のセリフで何度も繰り返されるが、当時の都知事が青島幸男氏。名前の「俊作」はおそらく松田優作主演のドラマ「探偵物語」の工藤俊作からとったものと思われる。なお工藤もドラマ中、名刺を見せるシーンが多くあったが、青島もこれに漏れず。サラリーマン刑事の面目躍如。
室井慎次警視正(柳葉敏郎) 室井慎次警視正(柳葉敏郎)
警察キャリア組として着々と経験を踏み、次々と昇進。そんな中、監察官として湾岸署を担当し、青島と出会う。警察組織に異論を唱えていたが、自らが偉くなっていく事でその体現を目指そうと邁進する。したがってやや冷徹に青島を突き放す時があるが、一方で刑事勤務を離れた青島を、現場復帰させようと裏から手を回す情に熱い面がある。劇場版第一作では刑事局参事官まで上り詰めた。
同じキャリアでも東大の学閥中心である警視庁。そんな中、室井は東北大学出身というハンデを少なからず気にしている。ただそんな壁こそが室井の行動の原動力なのかもしれない。なお限界に追い込まれた室井は必ず秋田弁を発する。
恩田すみれ巡査部長(深津絵里) 恩田すみれ巡査部長(深津絵里)
湾岸署刑事課窃盗係に所属。上司からの信頼も厚く、中堅として若手署員を支える。事を冷静に対処する反面、青島の行動力に巻き込まれる面もあり。しかし過去にストーカー犯罪に巻き込まれた経験があり、それが大きなトラウマとなって彼女を痛め続けてしまう。そのため女性を傷つける犯罪に対しては人一倍敏感で、それが彼女の正義感に火をつける。
仕事を離れれば普通の女性。それだけにタウン誌を手にしてレストラン探し。だが勤務の厳しい警察官では、夜食にインスタントラーメンも少なくない。取り合いになるそんな中での青島との掛け合いも、傍から見て単なる同僚の枠を超えてはいるが...
柏木雪乃巡査(水野美紀) 柏木雪乃巡査(水野美紀)
第1話、父を殺人事件で失い、失語症となってしまう被害者の娘として登場。執拗な室井の追及、だが青島の温かい対応にやがて自分を取り戻していく。しかし再び第6話で事件に巻き込まれ、今度は共犯者として逮捕されてしまう。のちに疑いが晴れた彼女は、接した青島に影響を受け警察官を目指し、無事合格。湾岸署勤務の警官となった。アメリカ留学経験があり、英語が堪能。
当初悲劇のヒロイン的な扱いだった彼女だったが、警官となって以後はむしろ強気な印象が強い。真下から好意は受けているが知らぬ存ぜぬ、むしろきつく突き放す面がみられる。事件に対する行動力は青島の影響が大きい。
和久平八郎湾岸署指導員(いかりや長介) 和久平八郎湾岸署指導員(いかりや長介)
定年間近の老刑事。経験からの捜査スタイル、独特の哲学を持つ。そんな中、無鉄砲で熱血漢の青島に次々と重みのある助言を与えていく。最も有名なのは「正しい事をしたかったら、偉くなれ」。これ以外にも「逮捕の時は気をつけろ」等数多い。かつて「警官殺し」の餌食になった後輩刑事を助けられず、その犯人逮捕に燃えている。
定年を迎えた最終話のエンディングでは警察学校の指導官として、またテレビシリーズ以後は湾岸署指導員として登場。特に劇場版第一作での警視副総監のエピソードは青島と室井の関係を彷彿とさせる。
魚住二郎警部補(佐戸井けん太:左) 真下正義警部(ユースケ・サンタマリア:右) 魚住二郎警部補(佐戸井けん太:左) 真下正義警部(ユースケ・サンタマリア:右)
魚住は強行犯係係長で青島の上司。ただ係長としての立場はサラリーマン組織の縮図に過ぎない。一男一女、妻はフィンランド人で、自らもフィンランド語を流暢に使う。ユーモアの影に溢れる所轄魂が心強いが、時に妻の浮気に公私混同する面がある。
部下である真下は方面本部長の息子。テレビシリーズ当初は警部補だったが、昇進試験の末、警部に昇格。第7話で立場が逆転、絶句する魚住が何とも可笑しい。そんな真下も雪乃に思いを寄せるが青島の前に届かず。そして第10話、真下は思わぬ事態に巻き込まれる。
神田署長(北村総一朗:中央) 秋山副署長(斉藤暁:左) 袴田課長(小野武彦:右) 神田署長(北村総一朗:中央) 秋山副署長(斉藤暁:左) 袴田課長(小野武彦:右)
警察組織、サラリーマン社会に例えれば中間管理職の三人。根回しと地元との癒着が身上だが、時に部下を守るため、本庁にたて突く心強い一面もある。ただ署長のあまりに突飛な発言の数々、これをフォローする副署長、さらにヨイショする課長ら三人の掛け合いは脚本や演出の域を超え、一つの見どころとなっている。そんな彼らをスタッフ、ファンの間でスリーアミーゴスと呼んでいる。
新城賢太郎警視正(筧利夫) 新城賢太郎警視正(筧利夫)
室井の後を受けた湾岸署の管理官。東大卒、キャリアを表に出し、徹底して湾岸署のメンバーを締めつめる。また登場早々、東北大出身の室井を「田舎の猿」と称し、ある種の偏見を持っている。スペシャル版と劇場版のみの登場ではあるが、強烈な個性を残した。

踊る「トリビア」
この作品に関する様々なトリビア(ムダな知識)を発掘。少しだけ解剖してみたい。
拳銃:
このドラマは刑事モノでありながら、発砲シーンは意外に少ない...というかほとんど無い。唯一、青島が発砲したのは最終話「青島刑事よ永遠に」で犯人に向けて拳銃を発射したシーンでしかも一発のみ。にもかかわらずDVDやビデオジャケットで青島はこれでもかという位、拳銃を構えている。なおTVシリーズのジャケットはワルサーPPK、劇場版はベレッタM92F。少なくとも日本の警察官が扱う銃ではない。ワルサーは007が、ベレッタは「ダイハード」や「リーサルウェポン」で主人公の刑事が使用している。ちなみに劇中、青島はモデルガンマニアだと発言しており、実はこれらジャケットの姿は彼の妄想ではないだろうか。なおこのシリーズ一連で最も銃を撃っていたのは番外編の篠原夏美かもしれない。
踊る大捜査線 THE MOVIE DVDジャケット
リンク:
「踊る」にはシリーズを通し、数多くのリンクが登場する。元々、ハリウッド大作、しかもシリーズものではその傾向が強かった。「ゴッドファーザー」「スターウォーズ」「ターミネーター」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」等々、登場人物が多くなればなるほど、裏設定に至るまで多岐に渡る。ただ「踊る」の場合、ストーリーそのものよりも小物やチョイ役キャラ等、どうでもいいような使われ方である。写真右はついに登場!カエル急便の集配所(湾岸署婦警物語・番外編「初夏の交通安全スペシャル」より)。
カエル急便集配所
スリーアミーゴス:
神田所長、秋山副署長、袴田課長ら三人をスリーアミーゴスと呼ぶ。当初、三人の絡みは脚本上、考慮されていなかった。だが「オトボケ」をテーマに絡みのシーンが増えてきたのはシリーズ中盤から。そしてその絡みの面白さについた名前がスリーアミーゴス。同じ三人組によるコメディ映画「サボテンブラザース」の劇中での主人公たちをそう呼んでいた事からその名が借用された。元々、海外テレビの3バカ兄弟に限らず、三人組のコメディは少なくない。お笑いも一人やコンビより、三人のほうが笑いに幅が出る。スリーアミーゴスしかり、レッツゴー3匹しかり。
スリーアミーゴス
殺さない:
この作品、先の銃の項でも触れたが、発砲シーンが少ない上、それゆえ死体の登場も少ない。第一話での雪乃の父親、劇場版等で死体(写真右)はあがっているが、テレビシリーズでは実際に目の前に出て来る事はほとんど無い。「太陽にほえろ」「西部警察」等、血まみれ、水死体が多かった刑事ドラマとは一線を画す。実際、日本の犯罪を考えれば、過去のドラマがそれらから逸脱していたわけであり、「踊る」のアプローチが事実に見合ったものであるといえる。ただ死を意識させないのは演出をインスパイアされた「機動警察パトレイバー」でも同じであり、その点も踏襲されているのである。
劇場版の水死体

恒例、各話ひと言解説.
放送されたテレビシリーズ全11話及びスペシャル版、番外編、そして劇場版を紹介。
なおテレビシリーズのサブタイトルは君塚氏でなく、亀山プロデューサーの手にによるもの。
NO Titleview ひと言解説 DVDジャケット
1 第1話「サラリーマン刑事と最初の難事件」 第1話「サラリーマン刑事と最初の難事件」(演出:本広克行)
刑事に転職した元サラリーマンの警察官の青島。念願の刑事として湾岸署に配属されるも、理想と現場のあまりの違いに唖然。究極の縦社会、警察組織は彼のいたサラリーマン時代と何ら変わりもなかった。さらに事件の被害者の娘、雪乃に対し、冷徹な質問を続ける室井。青島は室井に対し、怒りをぶつけるのだった。
解説:
踊る第1話はスペシャル時間枠。事件発生から犯人逮捕まで描かれる。被害者の娘、雪乃はこの後の物語にも登場。当初、君塚氏は青島との恋愛関係も描こうとしていたようだが、物語的には頓挫(「劇場版DVD」コメンタリーより)。だが雪乃は青島に触発され、警官を目指すようになっていく方向に展開。
さて意気盛んに登場した青島だったが、サラリーマン時代と変わらぬ警察組織に愕然。所轄の立場が浮き彫りにされる。また配役的に見事なのは、いかりや長介演じる和久という存在。劇中、まるで「セブン」のモーガン・フリーマンと揶揄されるが、やはり若手主役の刑事ドラマに老刑事は欠かせない。理想は若手刑事、現実は老刑事、そのバランスが崩れるとつまらない。その上、踊るでは様々な人間関係が成り立っており、面白さが増すのである。さらに「後ろを歩かないで」と訴えるすみれ、本店で孤立する室井、最後の事件を追う和久...そうした人間関係説明篇の第1話。
DVDジャケット
2 第2話「愛と復讐の宅急便」 第2話「愛と復讐の宅急便」(演出:本広克行)
逮捕した女性に四苦八苦する青島。その一方、和久の下に突然大きな荷物が送られてくる。中身を開けると立派な椅子が入っていた。喜ぶ和久だったが、間もなくその椅子に爆弾が仕掛けられている事を知る。和久を助けようとする湾岸署の面々だったが、全て裏目に...一方、その爆弾犯人に室井は接見を果たすのだが。
解説:
冒頭のフラッシュバックに踊るといえばこの曲「Rhythm And Police」とコラボしたアバンタイトルはこの回から登場。
この作品のコメディテイストは第一話でも垣間見られるが、コメディとサスペンスを両立したのは、この第二話であろう。様々なトラップ、翻弄される和久と青島。一方で進む犯人との駆け引き。前半の内容から一変、テンポ良く描かれていく。こうして刑事が被害者となるドラマは少なくないが、連続もののドラマでは意外と少ない。それにここまでコメディ色の強い作品は皆無だろう。踊る真骨頂の一本。
椅子に座る事を強いられた和久のシチュエーションは映画「リーサルウェポン2」のプロットに似ている。極限の中でお互いの本音が引き出される会話が身上。その点、「踊る」とダブる部分も多い。ただ「リーサル2」の場合、トイレでの出来事であったが...
踊るといえばカエル急便。巨大な荷物に「カエル」のマークは滑稽だが不気味。こうしたスタッフの遊びの数々が本作の定番アイテムとなっていく。
DVDジャケット
3 第3話「消された調書と彼女の事件」 第3話「消された調書と彼女の事件」 (演出:澤田鎌作)
建設省官房次官の息子が窃盗事件を起こし、そのもみ消しに室井が駆り出される。室井を説得しようと執拗に迫るすみれ。実はそんなすみれの過去にはある秘密があった。
解説:
もみ消し工作に怒り、奮闘するすみれ...まるで「羊たちの沈黙」のクラリスのよう。二人に共通するのは、過去を打ち消すために事件に立ち向かおうとする姿。逮捕も釈放されるストーカー犯とのトラウマ、ジレンマを告白するすみれ。本話だけでは彼女の羊の叫びは消す事はできなかった。
ドラマとはいえ、「政治的やり方」どんな世界にもある...陰の部分が描かれた内容。だが警察や政府の不祥事を見るにつけ、そのバックには大小問わずもっと多くの事件が潜んでいるのかもしれない。青島の正義感、室井の思いが初めて相通じる物語でもある。
4 第4話 「少女の涙と刑事のプライド」 第4話 「少女の涙と刑事のプライド」(演出:澤田鎌作)
青島が捜査一課へ応援に向かう事になった。室井は連続強盗傷害事件の容疑者逮捕に湾岸署轄の刑事が必要と判断したからである。だが結局、本店との捜査で孤立、容疑者を逃してしまう青島。だがバーに容疑者がいる情報を得た室井は、再びそんな青島を引っ張り出す。
解説.
この作品のテーマの一つ、警察組織、ぶつかる本店との確執。本話以後も描かれる所轄の意地。そして事件の重みに苦悩する青島の姿が描かれている。第三話のすみれの立場と逆転した形だが、失敗の続いた青島を助けるのも仲間。地味だが、組織の末端である彼らの活躍こそが重要で、その意地こそがテレビシリーズ最終二話に帰結する。地味なのもカッコイイじゃないか。スモークと共に現れる湾岸署の面々...とはいえドラマだけどね。
DVDジャケット
5 第5話 「彼女の悲鳴が聞こえない」 第5話 「彼女の悲鳴が聞こえない」 (演出:本広克行)
深夜のトンネル、すみれが襲われた。その相手こそ、三年前すみれを襲ったストーカー野口。所轄の力で犯人逮捕したい青島と真下は、ネットを使って犯人との接触を試みる。
解説.
ストーカー、インターネットと現在でも代表される犯罪。当時はまだそのハシリともいうべき頃に描かれており、その先見性が光る。老舗「アニメージュ」を模した雑誌「マニアージュ」の表紙に描かれるはすみれそっくりのピンクサファイア。そんなピンクサファイアおたくの犯人こそが伊集院光。バラエティの時のキャラと相反し不気味。今度こそすみれの「羊の叫びは消えたか?」
それにしてもストーカー説明の件は面白い。神田署長のボケが冴えまくり、周りとの会話と間(ま)が絶妙。これぞスリーアミーゴス誕生の瞬間!
6 第6話 「張り込み 彼女の愛と真実」 第6話 「張り込み 彼女の愛と真実」(演出:澤田鎌作)
麻薬売人の部屋の張り込みを続ける和久と青島。だがそんな青島を驚かせたのは、売人の部屋を訪れた柏木雪乃であった。困惑する青島たち。だが間もなく雪乃の下に航空便が送られてきた。その中身に逮捕を余儀無くされる雪乃。そこで青島は起死回生の手に出る。
解説.
刑事ものの定番、張り込みがこの話で登場。張り込みには美女がつきもの。だが美女と売人、そして雪乃に接点が生まれる。だがシロであると確信していた青島の機転が、雪乃を窮地から救う。なお踊るといえばインスタントラーメン。ここでは張り込みの際、キムチラーメンが登場。そのやり取りが面白い。張り込み中の和久が「たまごっち」を育ててるのも時代を感じさせる。そして「逮捕の瞬間が一番危険なんだ」と後々幾度か出てくる和久の名言が初出。それに加えて和久のトラウマが告白される。
DVDジャケット
7 第7話「タイムリミットは48時間」 第7話「タイムリミットは48時間」(演出:本広克行)
雪乃に対し48時間の拘留時間を得た青島たち。だが青島に主犯の岩瀬を逮捕する手立ては無かった。そんな時、和久は情報屋のモグラを紹介され、岩瀬の女を追う事を助言される。しかし追う彼らにも本庁の手が回っていた。刻々と近づくタイムリミット...悲観する青島に対し、雪乃は別の女の名を口にした。
解説.
青島が捜査のために会社に潜入する流れが見事。次々と名前を変え、共犯者に近づく青島。トドメは給湯室の女性社員から情報を入手。これぞ会社関係、情報の流れのセオリー。これが青島のいうやり方、元サラリーマン、営業ナンバーワンの面目躍如。そして雪乃引渡しを迫る本庁に真下の警部昇進が手助け。これを知った時の魚住の絶句具合がたまらない。なお魚住自らフィンランド語が得意だと公言したのはこの話からである。そして和久のもう一つの名ゼリフ「正しい事をしたければ偉くなれ」も初登場する。
8 第8話「さらば愛しき刑事」 第8話「さらば愛しき刑事」(演出:澤田鎌作)
殺人事件の報にあわただしい湾岸署。しかし本庁から科捜研のプロファイリングチームが送り込まれた。一見、オタク集団。だがそんな彼らが最先端の技術を用い、鋭く犯人に迫る。そして打ち出された綿密なデータは和久の報告をも一蹴してしまう。青島はプロファイリングチームのご使命を受け、捜査を手伝う事になるのだが...その一方で和久は自分の足で事件に迫ろうとする。
解説.
組織を描く一方、犯罪の多様化、進化を見せていくのも「踊る」の真骨頂。犯罪は人間が起こす。だがデータは逆上した人間まで抑える事はできなかった。そんな時、和久のセリフが青島を通して生かされる。なおプロファイリングチームが使うPCはIBM ThinkPad。たぶん535か560あたりの機種ではなかろうか。なお真下がスリーアミーゴスに教えるPCはかつて筆者も使っていた535だろう。現実と理想のギャップ、冒頭のコメディシークエンスは笑える。そこに魚住の子供たちも登場。フィンランド語が得意な理由が判る。
DVDジャケット
9 第9話「湾岸署大パニック 刑事青島危機一髪」 第9話「湾岸署大パニック 刑事青島危機一髪」(演出:本広克行)
愛人がばれ、妻を殺した男が逮捕された。青島は湾岸署管内に住む愛人の保護をするよう命ぜられる。その女の要求に四苦八苦する青島。だが世間の非難に耐えられなくなり、無事に湾岸署へ連行。しかし状況は変わらず。さらにワガママ放題な要求は続く。そんな中、マスコミでごった返す署内に怪しい男が現れる。
解説.
愛人を演じたのはプロゴルファー祈子こと安永亜衣。いい感じにイヤな女を演じている。そんな彼女を助けようとした青島を狂気のナイフが襲うのだが...第一話から青島たちを助け続ける靖国神社のお守りがここでも活躍。九死に一生を得た青島は室井に懇願、そして飛び出す袴田課長の一喝がカッコいい。なお事件の一方で雪乃は警察官採用試験を受ける事になる。ここから雪乃への真下の片想いが始まった。
10 第10話 「凶弾・雨に消えた刑事の涙」 第10話 「凶弾・雨に消えた刑事の涙」(演出:澤田鎌作)
犯人を追う青島たち。結婚式場へ侵入し、犯人逮捕を迫る彼らだったが、何とすみれのお見合い現場に遭遇。悪を許さないすみれの蹴りが炸裂、逮捕に成功したものの、見合いは破談となった。やがて青島に、モグラからの和久の追う警官殺しのタレこみ。だがモグラと接見する青島も思わぬ条件に和久を思い躊躇する。だが和久の退職は近づいていた。そんな中、雪乃を送る真下を狂気の銃弾が襲う。警官殺し...湾岸署管内、緊急配備に拳銃携帯命令が発せされる。
解説.
「踊る」の中でもダントツの傑作エピソード。後半、重傷を負った真下の一報。血まみれの真下に、赤く染まった手で雪乃が示す顔の傷。和久の絶句が痛々しい。第九話まで軽快なテンポで繰り広げられた「Rhythm And Police」は一変、緊張感の続く重い展開となる。雨の中、証拠となる弾丸を探す湾岸署の警官たち。バックに流れる「Love Somebody (Jesus Version)」と共にスローモーション、無言のまま続く人間ドラマ。シリアスならお任せの澤田演出が光る。
DVDジャケット
11 第11話「青島刑事よ永遠に」 第11話「青島刑事よ永遠に」(演出:本広克行)
重体の真下の手術が続く中、事件を発端に湾岸署に捜査本部が作られた。次々に集められる警官殺し情報。明らかになる犯人・安西。真下のホームページに送られてくる応援のメールを見る青島。そんな中、安西に関し有力な情報がメールで送られてきた。追った青島とすみれは風俗店で安西と出くわす。発砲を受けた青島はとっさに自ら拳銃を手に持った。
解説.
テレビシリーズの最終話。冒頭「エヴァ」を意識したテロップと映像の交錯する演出。まるで今の有事法制とダブるように発砲行為を問われる青島。だがそんな彼をかばうスリーアミーゴスがカッコいい。そして室井は青島と共に組織の殻を飛び出し、逮捕に向かう。犯人確保するまでのプロセスは本広演出らしくスタイルが決まっている。だが(警察)組織は逸脱した二人を許さない。簡単には変わらない組織、青島は室井に「あんたは上にいろ」と訴えかける。まるで引退した和久の気持を代弁するかのように...エンディング、お守りの主である吉田のおばあちゃんが登場。清々しく終わっていく。
年末
SP
「歳末特別警戒スペシャル」 「歳末特別警戒スペシャル」(演出:本広克行)
97年末、湾岸署を離れた青島は、杉並北署で所属、要人の警備を担当していた。室井はそんな青島を発見し驚く。室井は青島の現場復帰を画策していたのだ。無事に湾岸署に戻った青島だったが、彼を疫病神扱い。結局落ち着いた交通課、取り締まりの最中、小学校で傷害事件が起こった。事件を調査する青島だったが、再び署内でたらい回しにされてしまう。そんな折、傷害事件の犯人として捕まえた男を取り調べる青島。だがその男こそ、ある殺人事件の犯人であった。
解説.
コメディテイストが強い本広演出、青島復活作品。もちろん長回しも多用。巡る人物描写、犯人発砲から「誰が一番偉い?」への流れは笑える。山場はSAT(警視庁版SWAT)の登場シーン。まるで「ダイハード」か(やっぱ音楽の尺なんかは)「エヴァンゲリオン」。つまり歓喜の歌、第九がバックという事。暮れだしね。ついに魚住の謎多きフィンランド妻が登場。魚住自身も流暢なフィンランド語を披露する。目玉は多くのゲスト。メインの犯人はSMAP稲垣悟郎。不良娘は広末涼子、そして被害者の少女に仲間由紀恵。初々しくたぶん「めざまし」早耳ムスメだったころか?そして極めつけは新城管理官の筧利夫。のちにキャラは完全バラエティーな人だと判ったが、この作品時点ではクールさが身上。徹底して室井を突き放す姿、さすが東大卒(という役柄)。そして放送当時、番組最後に重大情報が知らされる。それこそ「踊る大捜査線」映画化であった。
歳末特別警戒スペシャル
番外
湾岸署婦警物語・番外編「初夏の交通安全スペシャル」 湾岸署婦警物語・番外編「初夏の交通安全スペシャル」(演出:本広克行)
警察学校を卒業したばかりの篠原夏美は湾岸署交通課に勤務する事となった。だが彼女を指導するのはお局・桑野巡査部長。産休の婦警の代わりに派遣された、湾岸署の面々が一目置く怖い存在。桑野の厳しい指導との衝突、厳しさに耐えながら夏美は一人前の婦警に育っていく。そしてミニパトで外回りに出ていた夏美は路上で凶悪犯と遭遇してしまう。
解説.
"篠原"と聞いてついつい「パトレイバー」を連想してしまったが、よく考えれば"夏美"という名も「逮捕しちゃうぞ」の主人公キャラ。これ以外も端々に本シリーズが影響を受けた作品へのオマージュ的要素が感じられると思う(君塚氏は原案のみ)。夏美を演じるのは当時アイドル内田有紀。本作はあくまでコメディな本広演出。ただラストはしっかり締める。「ミニスカポリス」というセリフが時代を感じさせる。夏美の父親は「歳末特別警戒SP」にも登場した谷啓の演じた篠原捜査資料室長。なお本作もシリーズとのリンクが多数ある上、「秋の犯罪撲滅SP」につながるエピソード。役の大小問わず、レギュラーが多数登場し楽しい。雪乃は同じ交通課の先輩として多く登場。すみれも刑事になりたい夏美に助言を与える。ちなみに青島はロスに研修中との設定。だがラストにはしっかり登場する。
湾岸署婦警物語・番外編「初夏の交通安全スペシャル」

SP
「秋の犯罪撲滅スペシャル」 「秋の犯罪撲滅スペシャル」(演出:澤田鎌作)
放火殺人未遂事件発生。意気上がる青島たちだったが、本部開設間もなく容疑者が逮捕された。新城の命令で裏づけ捜査を言い渡された青島だったが、新たな被疑者が見つかり、青島たちはその身請けに向かった。だが訪れたレストラン、偶然押し入ってきた強盗に遭遇。さらにミスで被疑者を逃してしまう。新城に問い詰められるすみれ、そして青島。一方、室井は着々と昇進を進め、監察官として青島たち警察官を取り締まる立場にいた。そして室井から質疑を受ける青島だったが、実は...
解説.
冒頭、ボンド映画を彷彿とさせるカッコいいアバンタイトル。まずあっけにとられたは何と最初の逮捕者が工藤官九郎。だが真犯人は大塚寧々、そして彼女を手助けしようとするすみれ。二重三重に仕組まれた内偵捜査。エンターテイメント性は程ほどに、コメディ要素が軽めに散りばめながら、すみれを中心にシリアスに進んでいく澤田演出。ほぼ同時期に撮影された劇場版とのリンクもいくつかみられる。特に青島と室井の関係に関する伏線。本作では修復の糸口が見つからぬままであったのが...なお笑いのポイントは神田所長の公費流用隠しと袴田課長の手作りジョッキ。なおまるで劇場版を意識したハイビジョン収録のDVDである(もちろんスクイーズ)。
「秋の犯罪撲滅スペシャル」
番外
「深夜も踊る大捜査線・湾岸署史上最悪の三人」 「深夜も踊る大捜査線・湾岸署史上最悪の三人」(演出:本広克行)
フジテレビの深夜枠、映画公開を前に企画されたスリーアミーゴス主演のコメディ。全5話。
第1話「部下のミスは、部下のミス」
署訓を考える神田署長と秋山副署長。だがそこに査問委員会に掛かった青島たちの事について袴田課長が問うのだが...
第2話「経費削減は、事件削減より」
またも署訓を考える神田署長と秋山副署長。だがそこに袴田課長が割って入り、経費節減を提言してみたものの...
第3話「猟奇殺人は、袴田の娘!?」
またまたも署訓を考える神田署長と秋山副署長。だがそこに袴田課長が割って入り、青島たちの追っている事件が猟奇殺人である事を告げるが...
第4話「上級国家公務員とその他の人々」
またまたまたも署訓を考える神田署長と秋山副署長。だがそこに袴田課長が割って入り、本店が大挙して湾岸署に訪れた事を告げるが...
最終話「頑張れ!中間管理職」
またまたまたまたも署訓を考える神田署長と秋山副署長。だがそこに袴田課長が割って入り、青島の単独捜査が問題になっている事を告げるが...
解説.
袴田課長のひと言、娘ナミコが持っている「ノストラダムスの大予言」がオチのキーワード。そして各巻末の「踊る大捜査線が出来るまで」が面白い。亀山プロデューサーと君塚氏が湾岸署を訪れ、スリーアミーゴスと対面。サスペンス・アクションドラマを目指した君塚氏が、彼らと交わす会話からやがて組織もの路線に変わっていくという、ある意味リアルなパロディ。「踊る」がシリーズで目指した内容を否定する君塚氏が面白い。そして会話も何処までがアドリブか、はたまた脚本(君塚氏による)か判らないくらい、この三人の会話はホントに上手い。もちろん短編ながら各エピソード、本編とのリンクの強さはいうまでもない。
「深夜も踊る大捜査線・湾岸署史上最悪の三人」
劇場


「踊る大捜査線 THE MOVIE」
「踊る大捜査線 THE MOVIE」
川からあがった男の死体。だがその死体には切り口と縫った後が残っており、解剖すると腹部からぬいぐるみが発見されるのだった。一方、時同じくして副警視総監が誘拐された。本店が乗り込んで来た上、二つの事件に揺れる湾岸署。そして意外な接点。だが間もなく署内で第三の事件が起こった。
解説.
一点でだけ触れておこう。あの名セリフ「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ!」は何とジョージ・クルーニー主演の映画「ピースメーカー」からパクられたものと君塚氏は告白(解説音声にて)。何から何まで...と思わずに物語の流れ、作りが本作のキモです。あとは次コーナー「ソフト関連紹介」をご覧ください。
「踊る大捜査線 THE MOVIE」
劇場
踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ! 「踊る大捜査線 THE MOVIE2・ベイブリッジを封鎖せよ!」
周りは、空き地ばかりだったお台場もあれから5年。様々なビルが建ち並び、 観光客であふれていた。道案内、迷子、交通整理など地味な業務が日常を占めていた湾岸署に、特別捜査本部が設置される殺人事件が発生。折りしも、湾岸所内には、複数の凶悪事件が連続して発生し、青島、すみれ、雪乃、和久らは、捜査に取りかかっていた。殺人事件特捜本部長には、初の女性キャリア沖田が任命され、室井がそのサポートをすることになった。しかし、青島らの必死の捜査をあざ笑うがごとく、第2の殺人事件が起きた。
踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!

書籍関連紹介
筆者の手元にある解説本を紹介。これがあればとりあえず「踊る」に関してはOKでしょう(たぶんね)。
踊る大捜査線-湾岸警察署事件簿 キネ旬ムック 踊る大捜査線THE MOVIE-シナリオ・ガイドブック  キネ旬ムック 踊る大捜査線THE MAGAZINE
踊る大捜査線-湾岸警察署事件簿
キネ旬ムック

キネマ旬報社\2,381-(税別)
踊る大捜査線THE MOVIE-
シナリオ・ガイドブック
キネ旬ムック

キネマ旬報社\2,000-(税別)
踊る大捜査線THE MAGAZINE-
TVぴあ責任編集


ぴあ\1,200-(税別)
おそらく「踊る」テレビシリーズ解説本の中では最強だと思う。人物相関、事件年表はもとより、凄いのはスペシャルを含めた全話の脚本を網羅した事。さらに全話、脚本の君塚氏による解説、こぼれ話が書かれている。客観的に書かれた解説本よりも、脚本家自らが触れた内容のほうが圧倒的に深い。さらにシーン毎の小ネタも満載。ファン必須アイテム。 同じキネ旬ムックだが、こちらは劇場版第一作のシナリオを網羅。さらに「秋SP」の完璧版、「深夜も踊る大捜査線」の脚本までフォロー。テレビシリーズまで遡り、チョイ顔出しキャラまで解説したその徹底ぶりは見事。亀山プロデューサーのインタビューがあり、後段は「観客動員の細かなデータをもっと分析したい」でまとめられている。それって「踊る2」への伏線かも。 こちらは唯一、オーソドックスなテレビシリーズ及び劇場第一作の解説本。もともとTVぴあは劇場版製作時に「踊る」と連携をとっていたため(左記のキネマ旬報も同じ)、見た目のわりに内容は意外に濃い。特に他の本で触れられていないサウンドトラック収録曲に関する全曲解説は読みどころでもある。

『afterthemovie-映画を観た後で-』より
2003年7月12日
第157回「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」
主観的にも客観的にも踊り切れなかった大捜査線
ボクの採点表
ストーリー シリーズリンク度 踊る度 総合
3つ星 5点 3つ星
星は5点満点。3が平均だが、総合4点以上がオススメ作。選んだ項目は適当です。

監督.
本広克行

脚本.
君塚良一

出演.
織田裕二/柳葉敏郎/深津絵里/水野美紀/真矢みき/いかりや長介他

踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!

感想.
 進化した街、湾岸エリア。そんなお台場で事件、青島たちが駆けつけると会社役員が殺害されていた。しかもロープに縛られた死体は何かを訴えるように...間もなく捜査本部が湾岸署に設置。室井に代わり、女性管理官沖田が捜査の陣頭を執る事になった。冷静沈着な沖田の手腕に圧倒される青島、湾岸署の面々。そして第二の殺人が起こり、彼らに犯人からの犯行宣言が届く。前作から5年、青島刑事、そして湾岸署が帰ってきた「踊る大捜査線」劇場版第二作。

 恒例のアヴァンタイトル、小ネタのオンパレード。しかしながら掴みとすべき冒頭のシーンはやや凡長。第一作のようなちょっとしたオトボケのほうがよかったと思う。このテンポで行ってしまうのか?そんな不安もとりあえずアヴァンタイトルが払拭。やはりテーマ曲「Rhythm And Police」は伝家の宝刀、観ているファンの血はたぎる。だがそこからのストーリーの繋がりがイマイチだった。小ネタのオンパレードは諸刃の剣。「踊る」ファンが気になるシーンがたくさん挿入されているが、根幹のストーリーを散漫なものにしている。交錯する他の三つの事件も全てが必要だとは思わない。第一作でも同じ韻を踏んでいたものの、まだバランスがとれていた。雑感、いろんなものを詰め込みすぎ、演出も脚本ももう少し整理して欲しかった。

 そして最もいただけなかったのが、話のキモになる新捜査システム(直近、現実の猟奇事件で大きな働きをしていたが...)。青島もすみれも、そして室井も捜査に動かない。もちろん狂言回しの沖田も動かない。刑事自らが動かない刑事ドラマなど見ていられない。捜査してナンボ、話に波も出てこない。捜査の進化を言わんばかりだろうが、ドラマとして面白みに欠ける。「捜査は会議室で起きているんじゃない」の名セリフも本作の展開に生かされていない(逆手にとったシーンもあるが)。前作を観た時、映画というより活劇の印象を得たが、本作は活劇になりきっていない。少なくともテレビシリーズ、そして前作は踊っていた。

 後半、やっとそこに気がついたように話が、そして青島たちが動き出すが、あとの祭り。さらにあざとい位にお涙な演出が繰り返される。本広演出はコミカルに強いが、感情的な面は弱い。個人的な面白さ、主観的にファンとして観ても平均点くらい。客観的に観ても、シリーズとしてリンクを意識した演出(画面に登場する多くの人々)も過剰過ぎてうるさく感じてしまう。ただこれでも普段映画を観ない一般のファンは喜ぶのかな。最後に迎える大団円。確かに夏休み向きの派手な作品には仕上がっている。とはいえ、主観的にも客観的にも踊り切れなかった今回の大捜査線であった。


ソフト関連紹介
現在入手できる映像、音楽メディアから、筆者所有のものを紹介。
2000年8月・この1枚
(ソフトインプレッションより)
踊る大捜査線
THE MOVIE

 (PCBC-50039-1)オススメ
踊る大捜査線 THE MOVIE
DVDVideo
片面2層
人気TVシリーズの集大成
テンポよく飽きさせない見事な活劇
レターボックス−スクイーズ収録
DolbyDigital
日本語5.1ch
日本語2ch
 刑事ドラマの歴史を変えた「踊る大捜査線」。TVシリーズ、夏の特番の後を受けての集大成が、この映画版「THE MOVIE」である。こだわりに溢れた設定とディティール、そしてTVシリーズで確立されたキャラクター群。彼らが劇場の大スクリーンを相手にどう立ち回るかがこの映画の見どころ。そして"お約束"のオンパレードは「踊る」ファンにとっては感涙モノだろう。もちろん初見の方にも安心して「踊る」の世界を楽しめるデキである。
 今回は三つの事件が軸。それぞれがリンクし、それらがエンディングに向かって結びついていく。TVシリーズ中に出来上がっていた小ネタ(別音声にプロデューサーの亀山千広、脚本の君塚良一、本広克行監督三人による解説あり。一度は全編解説を聴きながら観て欲しい。裏話は結構笑えます。あの名セリフの裏話は必聴!)を交え、観客を飽きさせないスピード感がこの映画の身上だ。TVシリーズでもそのコミカルさ、エンターテイメント性をみせてきた本広監督がメガホンをとっている。確かにテンポの良い演出はテレビ的かもしれないが、それが「踊る」の真骨頂。これに映画班のエキスパートが加わり、見事にサポートしている。どちらかといえば映画版というより活劇と呼ぶべきかもしれない。素材がビデオからフィルムに替わっても、まさしくこれは「踊る」でなのである。相変わらずオープニングタイトルはカッコいい。
 さてそのDVD版だが充実したサプルメント、資料映像は多岐に渡る。メイキングもさることながら、裏コマンドで現れる映像は必見。本広監督のこだわりが随所に光った日本映画DVDの最高峰といえるだろう。英語字幕も興味深い。そしてこだわりは音声仕様にも現れている。劇場公開時のドルビーサラウンド(ドルビーデジタル2ch収録)に加え、本広監督念願の5.1ch化された音声も収録。ほぼ最初から作り直したSEは効果大。音質、切れ味、そして生み出される音場はマトリクス再生であっても堪能できる。繊細さよりも劇画的な効果を狙っているようだ(小泉今日子演じる犯人の笑い声が周囲を回るシーンは聴き所)。ただ惜しむらくは重低音信号をフロント2chにふっていない様で、5.1ch音声を選択してもマトリクス再生ではゴリ押しした重低音は得られない(それでも通常の再生には十分)。どうやら製作サイドで5.1chと2chの両方を収録した場合、この傾向が強いようだ。
 映像もDVD国内盤の水準レベル。超高画質ではないが、ディティールよりも色のタッチを重視した作りで、如何にもハリウッドとは違う日本映画らしい映像である。画質ABクラス、音質はセリフがブーミーなため、それを差し引いてABクラス、サラウンドはAクラス。2ch音声の場合、音の切れ味は後退する。唯一の欠点はプレイ時に必ず映画「ホワイトアウト」の予告編から始まること。それでも推奨盤ではある。
 ちなみに初回生産分(一万枚限定から拡大)のみDVD版「深夜も踊る大捜査線」とのセット品である。 
「踊る大捜査線 THE MOVIE2
レインボーブリッジを封鎖せよ!」

(ポニーキャニオンPCBC50555)
踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!
DVDVideo
片面2層
「踊る」ファンだけが満喫できる
お台場ワンダーランド
レターボックス−スクイーズ収録
DolbyDigital
日本語5.1ch
 管内でロープで巧みに縛られ、会社役員が殺される事件が発生。湾岸署に捜査本部が設置された。捜査に意気込む青島だったが、クールな女性管理官沖田に御されてしまう。間もなく同じく会社役員を狙った二件目の事件が。目撃者の女性をおとりにする沖田。そんな目撃者を保護監視を命ぜられる青島たち。だがおとり捜査の真っ只中、彼らの目の前に別の事件の被疑者が現れる。大ヒットとなる前作を受けて製作された劇場版第二弾。
 前作に比べスケールは大きく超える。何てたって「レインボーブリッジを封鎖せよ!」なのだから。クライマックス、モブシーンを含め、前作やテレビシリーズの比ではない。そしてそこには相変わらず、日本の組織の複雑さを織り交ぜて描いていく。そして新キャラ女性管理官沖田をキャリアの新たな形として登場させている。さらに新たな形は犯罪にも及び、青島たちはリーダー無き組織犯罪に挑んでいく事になる。
 だが作品としてはどうだろう。まず連続殺人事件とコメディを両立させるのには無理がある。生死を扱う内容である一方、正直冷めてしまった。リストラ犯たちは粗末に扱われ、ナシのダジャレ。社会問題のリストラ被害者の気持を逆撫でするような内容。また連動させている吸血鬼事件は少なくとも必要ないのではないか。献血のオチは判るが、それを引き出すためにすみれが銃弾に倒れる必要性はあるのだろうか。本作で青島の「なんで現場に血が流れるんだ」とセリフがあるが、むしろ「何でまた血を流させるんだ」「命を粗末に扱うな」と言いたい。そんなお涙頂戴な脚本と演出。第三作があるとすれば、次は誰が...という事になるが、それではまるで「24時間テレビで誰がマラソンを走るんだ」と同じ価値観ではないか。それに作品が始まって90分間、青島たちはほとんど動かず。「"踊る"大捜査線」といいつつ、全く踊っていない。「踊る」ファンだけはお台場ワンダーランドを満喫するだろうが、映画、活劇としてはとても残念な出来だった。
 さてそんなDVD、画質は総合で前作並。ただ長時間な分、ややツライ面が見られる。色は少し淡白過ぎるし、引いた画ではディティールの甘さも目立つ。ただ音、特にサラウンドは最初から5.1chを意識して製作されたため、音がよく回るし移動感が心地いい。もちろん雨のシーンでの包囲感も捨て難い。ここ数年、邦画も音作りに気を配ったものが多いが、本作もその点では昨年の邦画興行収入No.1は伊達でないという事。画質B、音質A、サラウンドA。また映像特典(公称17分だが...)、相変わらずコメンタリーはテンコ盛りで「踊る」ファンは狂喜するだろう。一分あたり約30.4円。(04/06/19)

テレビシリーズ(DVD)
DVDジャケット
テレビシリーズは全6巻、さらにスペシャル版2巻、番外編1巻が発売されている。それぞれ特別映像、さらに日本語字幕表示可能な点までDVDらしい仕様。さらにこれら全て解説付再生を選択すると、おなじみにリンク、小ネタの詳細の解説画面が登場するという念の入れよう。ビデオ仕様では損をする!「踊る」ファンはDVDで集めるべきだろう。なお筆者は初回ボックスで手に入れた(このボックスはスペシャル版、番外編を含めて収納可能な仕様)。ちなみにテレビシリーズ、年末スペシャル、番外編は4:3のスタンダード画面収録で、「秋の犯罪撲滅キャンペーン」のみスクイーズ収録(ビスタサイズ)となっている。
ポニーキャニオンPCBC-60001他

音楽CD:
Love Somebody/織田裕二withマキシー・プリースト
マーキュリー:PHDL-1081
踊る大捜査線サウンドトラックは劇場版第一作までに三枚作られている。テレビシリーズ前半をフィーチャーしたOST1、同じくテレビシリーズの後半を収めたOST2、そしてスペシャル版、劇場版のBGMが入ったOST3。「踊る」の代名詞、「RHYTHM AND POLICE」、荘厳なオケ「C.X.」そしてエンディングテーマでもあり、様々なヴァージョンが楽しめる「ラヴ・サムバディ」まで聴きどころが多い(個人的に最も好きなのはOST2収録の「ジーサス・ヴァージョン」)。もちろんクッションとなる「オトボケ」や、ドラマチックな「ムーン・ライト」、性格まで表している「MUROI」や「SYINJO」も好きだ。これらは全て松本晃彦の手によるもの。「踊る」がここまでブレイクしたのもBGMによる効果が非常に高い事を付け加えておく(もちろん踊る影の功労曲「Spending Time in Preparation」(新世紀「エヴァンゲリオン」より))は収録されていない)。なおエンディングテーマ主題歌の「ラヴ・サムバディ」はサントラ収録がせず、CDシングルのみのリリース。それ以降パーフェクトボックス等が発売されているが、筆者は購入していないのであしからず。
RHYTHM AND POLICE OST1 RHYTHM AND POLICE OST2 RHYTHM AND POLICE OST3/THE MOVIE
RHYTHM AND POLICE OST1
(マーキュリー:PHCL-5059)
RHYTHM AND POLICE OST2
(マーキュリー:PHCL-5066)
RHYTHM AND POLICE OST3/THE MOVIE
(マーキュリー:PHCL-5106)
1.ジ・イントロ
2.リズム・アンド・ポリス
3.C.X.
4.ディン・ドン
5.ライフ
6.ラヴ・サムバディ(ジャングル・ヴァージョン)
7.G-グルーヴ
8.ムーン・ライト
9.サーチ・アウト
10.ストーカー
11.レッド
12.オトボケ
13.ギヴ・ミー・ア・ベイビー
14.ラヴ・サムバディ
15.ジ・アウトロ
1.ラヴ・サムバディ(オーゲル・ヴァージョン)
2.リズム・アンド・ポリス・オン・TV
3.C.X.(オーケストラ・ヴァージョン)
4.ラヴ・サムバディ(同)
5.取調室
6.危機一髪
7.MUROI
8.事件
9.C.X.(ピアノ・ヴァージョン)
10.ラヴ・サムバディ(ジーザス・ヴァージョン)
11.C.X.(ウッドウィンド・ヴァージョン)
12.ピンク・サファイア
13.DUE
14.予兆
15.ワーク
16.ラヴ・サムバディ(ピアノ・ヴァージョン2)

1.R.A.P Jams
2.The Sabbath
3.Ding Dong(ラテン・ミックス)
4.G-Groove(ロッキン・ビーツ・ミックス)
5.Abduction
6.SHINJYO
7.March of C.X.
8.Rhythm And Police(ドラムン・ベース・ヴァージョン)
9.Insect Man
10.Odiex(The Theme of Teddy)
11.The Mission of CONGA
12.Requiem
13.Rhythm And Police 1998(ニュー・ミックス)

筆者が作ったベストオブ「RHYTHM AND POLICE」はコレだ!
1.ラヴ・サムバディ(オーゲル・ヴァージョン):OST2
2.C.X.(オーケストラ・ヴァージョン):
OST2
3.R.A.P Jams:
OST3
4.ディン・ドン:
OST1
5.事件:
OST2
6.G-グルーヴ:
OST1
7.Spending Time in Preparation
(from [Neon Genesis EVAGELION 2])
8.オトボケ:
OST1
9.危機一髪:
OST2
10.ムーン・ライト:
OST1
11.C.X.(ピアノ・ヴァージョン):
OST2
12.C.X.(オーケストラ・ヴァージョン):
OST2
13.予兆:
OST2
14.Abduction:
OST3
15.SHINJYO:
OST3
16.ラヴ・サムバディ(ジーザス・ヴァージョン):
OST2
17.March of C.X.:
OST3
18.Requiem:
OST3
19.ラヴ・サムバディ(ピアノ・ヴァージョン2):
OST2
20.ラヴ・サムバディ/Yuji Oda with Maxi Priest:シングル
(以上曲順、全20曲)
なお左記のリスト、筆者が作った74分MD用の「踊る」ベストセレクションがコレ!テレビシリーズをストーリー順に網羅、後半にかけて盛り上がるように選曲しています(曲目の後のOST番号は収録サントラを示す)。やはり目玉はラヴ・サムバディ(ジーザス・ヴァージョン)の辺り。あの傑作であった第10話を想起させます。まさに「踊る」に浸れる74分間。今回の第二弾劇場公開を機に「踊る大捜査線」オリジナル・サウンドトラック THE BEST〜復習篇〜が発売されていますが、さすがに「エヴァンゲリオン」の曲は入れられませんでしたね。パーフェクトを狙うなら、「Spending Time in Preparation」は必須ですよ。

まとめ.
 「踊る」は1クールという短い中、非常に作り込まれた刑事ドラマであった。異彩を放った脚本、現実路線、コメディ。サポートするスタッフのこだわり。リズミカルな音楽。そしてそれらを総合的に心得た演出。すべての要素が最大限に発揮されたからこそ、劇場版第一作の発端となるムーブメントを生んだのだ。やっぱりテレビシリーズの再放送があったりするとつい目が止まってしまう。そんな魅力に溢れた作品が「踊る大捜査線」なのだ。
 ただ筆者的には「踊る2」を評価できなかった事実がある。本来なら「踊る2」を観た直後に同じページに感想を載せたかった。だがそれを許せなかった理由がいくつかある。シリーズとして同じ韻を踏む作りはまだいい。だが最も許せなかったのは、人が傷つく事を安易に扱った点だ。前回は青島、確かに展開的な必然性はあった。だが今回、すみれを傷つける必要があったろうか。むしろそれらお涙頂戴を意識した展開と演出に絶句した。そして本作には誰一人感情移入できるキャラクターがいなかったのも大きい。湾岸署、キャリア組、犯人、その他...正直言うと脚本、スタッフに至るまでである。「ウケる映画を分析したい」と亀プロデューサーはインタビューに答えていたが、あまりに本作での露骨な姿勢に辟易した。例え日本映画歴代一位(実写部門)となろうが、ウケる映画が良い映画でないのは映画ファンなら周知の事実。もう劇場公開は一部となったため、「踊る2」の感想をこのページに載せた別コーナー(『映画を観た後に』では既出)。ただテレビシリーズ、その集大成たる劇場版第一作は今観ても面白い。その点だけは言っておきたい。
-NEWS-
「踊る大捜査線」劇場版スピンオフ企画「交渉人(ネゴシエーター)真下正義」始動。
-MENU-
背景 登場人物 ストーリー 踊るトリビア 恒例!各話ひと言解説 書籍関連紹介 ソフト関連紹介 踊る2感想 まとめ

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