急加速のパラドックス

ある慣性系において、長い宇宙船が静止していました。この宇宙船が巨大な推力で短い間加速して、光速近くにまで達しました。 十分短時間にある速度に達したため、宇宙船は急激にローレンツ収縮し、宇宙船の先頭あるいは後尾の速度は光速を超えてしまいました。これは、矛盾ではないでしょうか。
要するに、宇宙船のある部分の速さが光の速さを超えているからおかしいというものです。このパラドックスの背景には、何が何でも物体は、速度に合わせた自然なローレンツ収縮しなければならないという考えが横たわっています。たしかに数式あり版「ローレンツ収縮」のトピックスで述べたとおり、ローレンツ収縮という現象は、同時刻の相対性に起因し、みかけの現象との表現も可能です。時空の切り口の問題だから、なにがなんでも速度に合わせてローレンツ収縮しているはずという気持ちもわかります。順番にみていきましょう。

まず、宇宙船の先頭がある一定の大きな加速度(時刻は固有時で計測)で運動したものとします。 宇宙船のその他の部分の加速度は、ここでは特に限定しません。 宇宙船の先頭がいる慣性系の同時刻は急速に変化し、 時空図上の斜めの線となります。


この加速が十分大きなものであったために、 加速終了直後のロケットの先頭(B')が居る慣性系の同時刻線は大きく傾き、 線分OBと点Aで交わってしまいました。もし、時刻0におけるロケットの後尾をOにとると、 点Aは、加速終了直後のロケットの先頭が居る慣性系から見てまだ出発していないことになります。 点Aからロケットのある部分が出発するときは、無限大の加速度を出すわけにいかないので、 世界線は、曲がりながら、まず真上にでます。 これは、実は、AB'というロケットの一部を引き延ばしてしまうのです。 ぐにゃっと伸びるか、ちぎれるかは材質の問題です。 結局、自然なローレンツ収縮はせず、ロケットのどの部分も光速より遅いのです。

では、ロケットの後尾が、点Aと点Bの間にあったなら、 自然なローレンツ収縮するのではないかと考えられるかもしれません。 しかし、物体には、慣性があり、同じ運動状態を続けようとします。 もし、ロケットエンジンがロケットの先頭にしか付いていないのであれば、 この慣性に抗して、ロケットの各部が引っ張られることにより、ロケットは、 ちぎれるか、あるいは、引き伸ばされながら引っ張られるようにして、縮んでいくでしょう。 ロケットの各部には、速度に応じた縮もうとする力が働き、それが慣性とせめぎあって、 場合によっては、ちぎれてしまうのです。この場合は、自然なローレンツ収縮をしようがしまいが、 ロケットのある部分が光速を超えることはありません。

ではでは、もう一歩つっこんで、 ロケットの後尾が、点Aと点Bの間にあり、 ロケットの全ての部分にロケットエンジンがついていると仮定しましょう。 慣性系から見て、それらが全部同じ推力を出したとしましょう。 この場合は、ロケットは自然なローレンツ収縮をするのでしょうか。 この場合も、ロケットの各部には、速度に応じた縮もうとする力が働き、 加速が急だったり、材質が弱い場合には、ロケットはちぎれてしまうでしょう。 これは、どう解釈すればいいのでしょうか。仮に、ロケットは連続体だとします。 ロケットの各部は、慣性系から見て、密度を高めようとしているのです。 お隣同士のパーツが密度を高めようと、縮めば、当然、引き伸ばしの力がかかりますね。 この場合も、自然なローレンツ収縮を仮にしたとしても、 ロケットの最後尾が光速以上になることはありません。

では、この場合、各ロケットエンジンの推力を調節することにより、 自然なローレンツ収縮を人工的に作り出すことができると考えられるかもしれません。 これは、そのとおりなのです。長さに制約があることは、前述のとおりですが。 この場合も、ロケットのある部分が光速以上になることはありません。

ここで、ロケットに取り付けるエンジンの推力は、後ろの方ほど強くしなければならないことが見えてきます。 では、ロケットに乗っている人から見て、ロケットの推力が違っていて、果たして自然長を保つことが できるのでしょうか。実は、ここに重力が絡んでくるのです。観測者が変わった場合はホントに注意が必要です。

まず、観測者がロケットのどこに乗っているのかが問題になります。 加速により、「高い」「低い」が発生しているからです。 最後尾に載っている人と先頭に乗っている人では感じる加速度が違います。 それはその通りです。 しかし、最後尾に乗っている人にとって、発生している重力は、どこでも最後尾の重力です。 では、なぜロケットの先頭は、より小さな加速度で同じ高さに居られるのでしょうか。 (以下工事中)


参考文献


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