フォルクスホッホシューレ日記7月・サマーコース第1週


サマーコース第1週 


「午前8時45分授業開始・月曜から木曜まで毎日午前中3時間」というスケジュールにおののき(「なんだあ、それくらいで!」とお叱りの声が飛んでくるのは十分承知...)どうしようかと悩んでいたサマーコース、結局受講することにした。やっぱり学校に行かないと伸びがかなり鈍る。いや、やる気さえありゃあそんなこともないんだろうけど、近い未来に「仕事に就く」などの具体的な目標があるわけでもなし、凡人の私が学習を続けるためには刺激が必要なんだなあ。

パパさんに「取るコース決まったらすぐおしえてね、申し込んでくるから。」と前々から言われていたにもかかわらず、決心したのは先週の木曜日。もう窓口に行く時間がなく、インターネットで申し込むことにする。

講座要綱によると、サマーコースは基礎段階1、2、3の3クラス。この前話す機会があった「2」のH先生(最初に習ったいい先生!)によると、復習が主ってことだった。

どれどれ担当の先生は誰かな...ぎょ!「3」はまたあの「3」のP先生だ。これじゃあ行くだけ時間の無駄になるかも。他はどうかな、あ、「2」はフォルクス初めての日に授業受けて「一つ上のクラスに行ったら?」とアドバイスしてくれたZ先生。けっこういい感じだったよな、生徒の側に立って考えてくれてたし。文法的なことは全部「2」でやるんだし、そのおさらいなら丁度いいかも。語彙や冠詞の変化はほんとは「1」からやり直したほうがいいくらいの情けない状態だしね。よーし、これにしようっと。

「2」を受講することに決め、HP上のフォームにあれこれ必要事項を打ち込んでいく。銀行口座の番号も入力して、受講料はそこから引き落とし。(1日3時間×週4日×3週間=36時間で、248マルク。円換算して約1万3千円とすると、1時間あたり360円ちょいである。やっぱり安いぞフォルクス!これでいい先生にあたれば言うことなし!)
さあできた、うまく登録されたかなあ。ま、月曜日行ってみればわかるよね。いざとなったら当日行って申し込みもできるんだし、大丈夫大丈夫。


7月17日(月)

朝8時15分に家を出る。いつもならだらだらとごはん食べつつネットしてる時間で、少々眠い。でも週末とはうってかわって青空が広がり、すんごく気持ちがいいぞう。気温は15度くらいかな、7月だというのにこの涼やかな風!サマーコース受講を渋っていた大きな理由は「暑いとイヤ」だったんだけど、これなら大丈夫!25分間早足で歩いたらうっすらと汗をかいた。

教室に入る。おお、けっこういるいる、14、5人くらいか。もうすぐ席がなくなりそうだ。端っこに場所をみつけてヤレヤレと一息つく。

そのうち廊下や入口がざわざわとし始めた。どうやら人数が予想以上に多いので、大きい教室のほうへ移動するらしい。みんなで荷物かかえてよっこらしょ、2倍近い広さの隣の教室へ移る。

Z先生が来て授業が始まった。まずこの「2」のコースのレベルの説明。

「このクラスは、「1」のテキストを終えた段階、つまり現在完了形やwo、wasなどを使う疑問文、などができる人たちが対象です。」

ええぇー!!「2」のコースってテキスト「2」の復習じゃなくって、「1」の復習なの!?そ、そんなあ。
「2」の復習するためには「3」のクラスに行かなきゃだめなのかあ。でもあの先生嫌なんだよなあ。どうしよう...。

自己紹介しつつ、先生が各自のドイツ語学習暦についてたずねる。応答の様子や学習時間などから、何人かの受講生には「あなたは『3』に移ったほうがいいんじゃない?」とアドバイス。「2」は少々人数が多いので、ちょっと減らしたいらしい。

私の番が来た。Z先生、私のこと覚えてるかな...「むむ、ターゲット発見!」という感じの悪戯っぽい視線。覚えてるみたい。当時はアジア人私一人だったしな。「2のテキストと3のテキスト半分終えたけど、まだまだ文法も会話も未熟だからこのコースを取った。」と理由を並べ立てるが、「あなたは3ね。」とあっさり言われる。

授業の中身は、分離動詞の使い方の確認や、冠詞の格変化など。einladenの人称変化とか「知らなかったぁ」こともたくさん出てきたけど、全般的にもの足りないのは確か。休憩時間後、やっぱり「3」のクラスに移ることにする。しかたない、退屈なP先生だけど我慢して勉強しよっと。

休憩時間教室を出ると、廊下で「3」のクラスを取ってる知り合いの日本人女性とばったり。「3のクラス、P先生じゃないよ!」「え、そうなの!?」

なんと要綱に書かれていたあのP先生ではないそうな!(彼女とフォルクスの授業で一緒になるのは初めてだけど、これまでのフォルクスあれこれについては以前に情報交換済み。) しかし、その後に続いた「でもね、授業すっごくつまんない。間違ったら全部直されるよ。」という言葉にちょっと不安を覚える。

「3」の教室に移り、後半の授業が始まった。先生は50代〜60代くらいの女性、痩せ型で、見た目「大草原の小さな家」の「ワイルダー先生」が年をとったような感じ。受講生は10人くらい。

で、授業は...ほんとにつまんなかった。

テキストのコピーに沿って先生が説明したり質問したりしていくのだが、すべてにおいて「受講生からどんな反応を引き出したいのか」「この活動のねらいは何なのか」あたりが全然見えてこない。教える熱意がないというわけじゃないんだよな、やる気はありあり。でもね、先生自身の中で

「この変なドイツ語を正しくなおすことこそがドイツ語教師たる私の使命」

という具合に自己完結してて、そこに受講生の入る余地はないのよ。誰かが発言すると、耳をすませて冠詞や前置詞、その他もろもろの間違いを見つけ出すことに集中し、いちいち全部訂正する。今、この目の前の学習者に欠けている能力は何か、それを育てるためにはどんな働きかけが必要か、なーんて視点は彼女の中にこれっぽっちもないの。ただ教師から生徒に向かって一方通行に知識を伝えるだけ。

休憩後の授業時間は1時間30分、「あーあつまんない、あと何分で終わりかなあ」と時計を見たら、まだ1時間も残ってた。うむむ、これでは先が思いやられるぞ...。


7月18日(火)

ああ今日もまた退屈な授業かあと、足取り重く教室に向かう。そしたらおやまあ、本日の先生は昨日とは違う人だった。40代後半、くらいかな、笑顔が素敵な女性。ギムナジウムでドイツ語を教えた後、夫の仕事の都合でしばらくフランスに暮らし、今はここの大学でドイツ語を教えているそうだ。どうやら二人が交代で授業を受け持つらしい。

Ich unterrichte DaF, weil ich mich fuer Menschen aus dem Ausland interessiert.
(私は外国から来た人々に関心があるので、「外国語としてのドイツ語」を教えています。)

という文が、まず黒板に書かれる。「〜なので」と理由・根拠を意味する接続詞、weil、da、dennを使う練習。weilとdaは副文を導くので定動詞が最後にくるけど、dennは主文と主文を結びつけるから後の文はそのまんま。(辞書見たらもっと細かい意味上の違いはあるけどね。)

うん、知ってる知ってる。ペーパーテストでやるならばっちりよ。しーかーしー、口からつるつると出てくるという状態には程遠いから、口頭練習は役立った。「えーと、最後に持ってくるのはどの動詞かな〜」なんて頭ひねくって考えながらしゃべってるうちはまだまだだもんね。

次は同じ意味の文をdeswegen、deshalb、darumを使って言う練習。これらは英語でいうtherefore、「私は外国から来た人々に興味があります。deswegenドイツ語を教えています。」のように、日本語でいうと「それゆえ・だから」という意味になる。どれも私にとってはまだまだなじみのない単語で、ドイツ語の文を口にしながらも頭の中でひたすら「だ〜か〜ら〜、は、deswegen」ともろ直訳でこなした。そういえばパパさんはよく「ダルム」(darum)を使ってるなあ。

これらの「順接」はまだいい。「逆接」がきつい〜。けっこう使い慣れてきているobwohlはなんとかなるけど、trotzdemがややこしいー!「それにもかかわらず」という意味で使う副詞としてのtrozdemと、obwohlと同じ接続詞(定形後置)としてのtrotzdemが頭の中でごちゃごちゃ。何より使い慣れてないから、言葉の音そのものが体になじんでなくて気持ちわるい。トロツデーム、私に使える日は果たしてやって来るのか...。

次の活動。短い読み物「Herr Boese und Herr Streit」(オコリンボ氏とイサカイ氏)をまず先生が朗読、その後そのプリントが配られる。

*** *** *** *** ***

昔あるところに大きなりんごの木がありました。その木は二つの庭のちょうど境目のところに立っていて、庭の持ち主はそれぞれオコリンボ氏とイサカイ氏といいました。りんごがちょうどよく熟した10月のある晩のこと。オコリンボ氏は真夜中にこっそり地下室からはしごを引っぱり出し、そうっとそうっとりんごの木に登ってりんごをぜんぶもいでしまいました。次の日イサカイ氏がりんごを収穫しようと思ったときには、もう一つも木に残っていなかったのです。「ようし。」イサカイ氏はつぶやきました。「今に見ていろ。」
次の年、イサカイ氏は9月にりんごを全部もいでしまいました。まだ全然熟していないのに。「ようし。」オコリンボ氏は言いました。「今に見ていろ。」
その次の年、オコリンボ氏は8月にりんごを全部もいでしまいました。まだまだ青くてかたいのに。「ようし。」イサカイ氏は言いました。「今に見ていろ。」
そのまた次の年、イサカイ氏は7月にりんごを全部もいでしまいました。まだ青くてかたくて、とーっても小さかったのに。「ようし。」オコリンボ氏は言いました。「今に見ていろ。」
次の年、オコリンボ氏は6月にりんごを全部もいでしまいました。りんごはまだほんとに小さくて、レーズンくらいの大きさしかなかったのに。「ようし。」イサカイ氏は言いました。「今に見ていろ。」
そして次の年、イサカイ氏は5月にりんごの花を全部叩き落してしまいました。だから、りんごの木はもう一つも実をつけませんでした。「ようし。」オコリンボ氏は言いました。「今に見ていろ。」
次の年、オコリンボ氏は4月にりんごの木を斧で切り倒してしまいました。「さあこれで。」オコリンボ氏は言いました。「イサカイ氏は罰を受けたというわけだ。」

その後二人は、お店でよく顔を合わせるようになりました。りんごを買いに行くお店で。

*** *** *** *** ***

この短いお話をもとに、obwohlやtrozなどを使って文を作る。

Sie pfluecken die Aepfel zu frueh, obwohl sie nicht reif sind.
(彼らはあんまりにも早くりんごをもぎます。まだ熟していないのに。)

Die Aepfel sind nicht reif, trozdem pfluecken
Sie sie.
(りんごは熟していません。それにもかかわらず彼らはそれらをもぎます。)

Troz ihrer Unreif sein, pfluecken Sie die Aepfel frueh.
(その未熟状態にもかかわらず、かれらはりんごを早くにもぎます。)

ははは、無理やり直訳しようとするとすごくおかしい!
trozは(wegenもそうだけど)動詞や形容詞を名詞化しなきゃいけないのが難しいなあ。

おしまいに、クラスの半数に「空手をする女子学生」の新聞記事、残りの半数にはその記事のもとになった取材の一問一答が配られ、違うプリントを持ってるもの同士がペアになって会話をしながら「相違点」を見つけ出す。その後obwohl やtrozdemを使い事実と記事のどこに食い違いがあるかを発表する。

「記事では彼女は大変に危険であると書かれているが、そんなことはない。」
「カラテフラオの面ばかりが強調されているが、空手は彼女の趣味の一つに過ぎない。」
「彼女には兄弟姉妹はいないのに、記事では彼女の姉が子ども時代について証言している。」

うーむ、これは教材用だろうけど、実際ありそうな話だよなあ。「あの会話が、ど、ど、どーしてこーゆー記事になるの〜!?」ってケース。



7月19日(水)


今日は授業がつまんないB先生。

始めに昨日の「オコリンボ氏とイサカイ氏」の復習。二人の先生同士、打ち合わせをしているようである。だいたいのストーリーを受講生に発表させていくのだが、例によっていちいち間違いを訂正し言い直しさせられるので、全然楽しくない。

一通りあらすじをなぞったあとで、「ではこのお話の主題は何でしょう?」という質問。

そりゃあ、「隣人同士、憎みあってはいけない。憎しみは何も生まず、ときには大切なものを失うこともある。」あたりでしょう、と私は思った。(黙ってたけど)

ところが先生の口からは意外な言葉が。「このお話が言ってる教訓は、『人は対話しなければならない』ということ。対立するのはいいが、黙っているのはよくない。」

ひぇーーーー、そ、そうだったのか。「いさかいはよくない」んじゃあなくて、「いさかいがあったとき黙ってるのはよくない」のかあ。いやー、いかにもドイツの教訓話だ。文化の違いをしみじみ感じる。なんだか自分が日本人であることをあらためて思い知らされた気分。

その後受講生の一人にOHPを操作させ、コンセントを差し込む、スイッチを入れる、台に物を置く、などの行為をみんなで描写する。どうやら月曜日の前半(私が「2」を受けてたとき)にこれと同じことをしてたようだ。

あとはテキストのコピーを使って授業。トピックは「インターネットカフェ」。

相変わらずつまんない...文句ばかり言ってても非生産的なので、どこに問題があるのか考えてみた。

まず、声に魅力がないこと。いや、持って生まれた声ではなくて、「話し方」そのものといったほうがいいか。聞いていて、すべて頭の中を素通りしていく感じなのだ。強調したいところは、強く大きくはっきりと発音している。しかし、その強調の意図はこちらまで届かない。「私はこんなに強調してるんだから相手に伝わるはずだ」という姿勢ばかりで、「実際伝わっているのか」という評価が全然ないのね。当然、「どんな風に強調すれば相手に意図が伝わるか」なんてことに考えが及ぶわけもない。

それから、受講生の話す「内容」に興味を持つ様子が全然見られないこと。彼女の関心は「正しいドイツ語かどうか」のみにあり、世界各国から集まった人々の異なる経験、異なる考え方、異なる視点、そういうものに対する新鮮な驚きや興味がない。ドイツ語の授業なんだから、間違いを指摘したり訂正したりするのは当然である。でも、いくら「教える側」と「学ぶ側」の関係とはいえ、あくまでも人と人との対話。「何を話すか」ではなく「どう話すか」にばかり関心が行く人と、話していて楽しいわけがない。

自分の考えに相手が興味ないとわかれば、話す意欲はがくがくがくっと減退する。間違いを指摘されることよりも、そのことのほうがずっと「話したくなくなる」「やる気がなくなる」状態に陥る大きな原因なんだ。


7月20日(木)

今日は授業が楽しいF先生。

最初に黒板に書かれたのはこの文。

Heute habe ich gute Laune, obwohl mein Wecker zu spaet geklingt hat.
(今日はいい気分です。目覚まし時計鳴るのが遅すぎたにもかかわらず。)

機嫌がいい、悪い、に使うdie Launeという言葉、全然知らなかった。
gute/schlechte Launeとobwohl、weilなどを組み合わせて、みんなが自分の機嫌について理由をつけながら話す。「頭ではわかっているんだけど〜」、の「副文の定動詞後置」、ひたすら練習する。

最初に配られたプリントは、「Asterix und Obelix」というフランスの有名な漫画、8コマ。ガリア(今のフランスあたり)人のアスタリクスとオベリクスがなんたらかんたら、という話らしい。(先生が説明してくれたけどよくわかってない〜。)セリフのない絵を見ながらみんなで話を作っていき、先生がそれを黒板に書いていく。始める前に、die Waffe(武器)、das Flos(いかだ)、marschieren(行軍する)、erobern(侵攻)、besiegen(打ち負かす)、など、使いそうな語彙を教えてくれる。

ローマ人がガリアに侵攻しようと、盾と武器を手にライン沿いを行軍していました。それを見ていたアスタリクスとオベリクスは一つの計画を思いつきました。ローマ人はいかだを使い、川を渡りました。ローマ人が上陸したとき、ガリア人はどこにもいませんでした。アスタリクスとオベリクスは隠れていたからです。ローマ人がガリア人を探していると、突然木の上からアスタリクスとオベリクスが襲って来ました。ローマ人はほんとにもうびっくりして退散し、盾に乗って川を渡り対岸へ逃げて行きました。アスタリクスとオベリクスは高笑いし、勝利を祝いました。

文法事項、過去完了の説明。
nachdemやbevorなど時間の経過を表す接続詞とともに過去のことを語る場合、先に起こったほうは過去完了を使うとのこと。

Nachdem die Roemer zurueckgeschwommen waren, haben A. und O.gefeiert.
(ローマ人が泳いで逃げ帰ったあと、アスタリクスとオベリクスは祝いました。)

うん、過去完了は現在完了のsein動詞やhabenを過去形にすればいいだけだから、簡単ね。als(〜したとき)でつなぐときは、過去+過去でも過去+過去完了でもいいそうだ。

パオゼ(休憩)後、テキストのコピーで「外国人労働者」の章を読む。これは去年の12月にやったところ。自分のテキストを開くと、当時意味がわからなかった単語に線がひいてある。kamen、sobald、gespartenなどなど。今なら「これはkommenの過去形で主語が複数かSieのとき」とかわかるよ〜、うれしい。まだ覚えてない単語もけっこうあるけどね。

「男たちが仕事に成功し住む家を見つけると、すぐに妻たちがやって来ました。」

などなど、過去と過去完了で表されている文を確認。

最後に「二人組が窓口の男性に銃をつきつけている」「札束の詰まった箱とナイフで胸を刺されて死んでいる男性」「カーチェイスしている2台の車」など、文字はなく8つのシーンがランダムに描かれているプリントが配られる。

die Muehle(水車小屋)、die Leiche(死体)、der Abgrund(深い谷間)、der Steckbrief(指名手配書)、rauben(奪う)、bedrohen(脅す)など必要と思われるいくつかの語彙の説明のあと、2、3人のグループで話し合い、絵に順番をつけ一つの話をつくる。

今日の授業はここまで。次週は月曜日がウルムの祝日(宣誓の月曜日、という日)でフォルクスはお休み、火曜日は平日だけど先生方二人とも休みをとるそうで、そのぶん3週目の金曜日に授業があることになった。ということは来週は水、木の2日間だけか。ちょっと間があくから、自習して勉強したこと忘れないようにしなきゃなあ。

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