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無政府主義者のように訪れる冬の寒さに思わずコートのえりをたてて、アイソラの繁華街から少しはずれたバーを出る。仕事の疲れを癒すためのジン・ベースのカクテルを味わい、幸せの一本の煙草をくゆらせて、ひとときの憩い。狭い路地を抜けようとすると、向こうからひとがやってくる。うつむき加減の顔をちらりと見やると、スティーブ・キャレラだろうか。振り返ると、足早に去っていく。
路地を抜けると、太っているわりには神経質そうな男が近寄ってきた。
「あんさん、いいもんあるんだけどなあ」
思わず立ち止まる。男の手の中に小さい硝子瓶。灰のようなものがつまっている。
「あんさん、上ものだよ。できたての新しいインスタント猫の素…
本名は、エヴァン・ハンター(Evan Hunter)、ペン・ネームはカート・キャノン(Curt Cannon)、ハント・コリンズ(Hunt Collins)、リチャード・マーステン(Richard Marsten)等々。
87分署シリーズは、わたしも大好きな作品です。多作なわりに、レベルは高くあきさせません。黒沢明監督作品の原案に使われたり、その影響力は相当なものがあります。
一度は手にとってみてほしいシリーズです。架空の街、アイソラ自体がまたひとつの主人公であることに気付くでしょう。
ニューヨーク生まれ。誕生名:(Salvatore A. Lombino)。エヴァン・ハンターに正式に改名。
『警官嫌い』 Cop Hater (1956)
『通り魔』 The Mugger (1956)
『麻薬密売人』 The Pusher (1956)
『ハートの刺青』 The Con Man (1957)
『被害者の顔』 Killer's Choice (1957)
『殺しの報酬』 Killer's Payoff (1958)
『レディ・キラー』 Lady Killer (1958)
『殺意の楔』 Killer's Wedge (1958)
『死が二人を』 'til Death (1959)
『キングの身代金』 King's Ransom (1959)
『大いなる手がかり』 Give the Boys a Great Big Hand (1960)
『電話魔』 The Heckler (1960)
『死にざまを見ろ』 See Them Die (1960)
『クレアが死んでいる』 Lady, Lady, I Did It (1961)
『空白の時』 The Empty Hours (1962)
『たとえば、愛』 Like Love (1962)
『10プラス1』 Ten Plus One (1963)
『斧』 Ax (1964)
『灰色のためらい』 He Who Hesitates (1965)
『人形とキャレラ』 Doll (1965)
『八千万の眼』 Eighty Million Eyes (1966)
『警官(さつ)』 Fuzz (1967)
『ショットガン』 Shotgun (1967)
『はめ絵』 Jigsaw (1970)
『夜と昼』 Hail, Hail, the Gangs All Here (1971)
『サディーが死んだとき』 Sadie, When She Died (1972)
『死んだ耳の男』 Let's Hear It for the Deaf Man (1972)
『われらがボス』 Hail to the Chief (1973)
『糧(かて)』 Bread (1974)
『血の絆』 Blood Relatives (1975)
『命果てるまで』 So Long As You Both Shall Live (1976)
- 『命ある限り』Tr:河合裕(Yutaka Kawai) Pb:トクマ・ノベルズ
- 1977/11
『死者の夢』 Long Time No See (1977)
- 『殺意の盲点』Tr:松岡和 Pb:トクマ・ノベルズ(Tokuma Novels)
- 1978/3
『カリプソ』 Calypso (1979)
『幽霊』 Ghosts (1980)
『熱波』 Heat (1981)
『凍った街』 Ice (1983)
『稲妻』 Lightning (1984)
『八頭の黒馬』 Eight Black Horses (1985)
『毒薬』 Poison (1987)
『魔術』 Tricks (1987)
『ララバイ』 Lullaby (1989)
『晩課』 Vespers (1990)
『寡婦(かふ)』 Widows (1991)
『キス』 Kiss (1992)
『悪戯(いたずら)』 Mischief (1993)
『ロマンス』 Romance (1995)
『ノクターン』 Nocturne (1997)
『ビッグ・バッド・シティ』 The Big Bad City (1999)
『ラスト・ダンス』 The Last Dance (2000)
『マネー、マネー、マネー』 Money, Money, Money (2001)
『でぶのオリーの原稿』 Fat Ollie's Book (2003)
『歌姫』 The Frumious Bandersnatch (2004)
『耳を傾けよ!』 Hark! (2004)
『最後の旋律』 Fiddlers (2005)
『金髪女』 Goldilocks (1977)
『黄金を紡ぐ女』 Rumplestiltskin (1981)
『美女と野獣』 Beauty and the Beast (1982)
『三匹のねずみ』 Three Blind Mice (1990)
『ジャックが建てた家』 The House That Jack Built (1988)
『ジャックと豆の木』 Jack and the Beanstalk (1984)
『白雪と赤バラ』 Snow White and Rose Red (1985)
『シンデレラ』 Cinderella (1986)
『長靴をはいた猫』 Puss in Boots (1987)
『メアリー、メアリー』 Mary, Mary (1992)
『小さな娘がいた』 There Was a Little Girl (1994)
『寄り目のテディベア』 Gladly the Cross-Eyed Bear (1996)
『最後の希望』 The Last Best Hope (1998)
『カリブの監視』 The Sentries (1965)
『街はおれのもの』 Doors (1975)
『煙の立つところ』 Where There Is Smoke (1975)
『魔の拳銃』 Guns (1976)
- Tr:河合裕(Yutaka Kawai) Pb:トクマ・ノベルズ(Tokuma Novels)
- 1977/12
『チャイナタウン特捜隊』 Another Part of the City (1986)
『ダウンタウン』 Downtown (1989)
『盗聴された情事』 Criminal Conversation (1994)
『秘匿特権』 Privileged Conversation (1995)
『ドライビング・レッスン』 Driving Lessons (2000)
『暴力教室』 The Blackboard Jungle (1954)
- Subtitle:決定版(元版との差は、改訳及び序文をつけた。)
- Tr:井上一夫(Kazuo Inoue) Pb:ハヤカワ文庫(Hayakawa bunko)NV1014
- Cover Photo:Robert Huntzinger/CORBIS/Amana Images Design:ハヤカワ・デザイン(Hayakawa Design) Co:エヴァン・ハンター/S・T(S. T.) 2002/7/31
- ISBN4-15-041014-3
はじめて今回、読んだ。実は映画も見ていない。真っ白に近く、ただ漠然とした印象がある中で読めた。なるほど、87分署シリーズに見られる構成の妙は既に処女長編にして存在していたわけである。13章、もともと発表された短編であったこの章に集約されていくその技術的なあざとさ(誉め言葉なんです)は、本当に見事なものである。感心してしまった。
うまいなあとため息が出るくらいだ。なんとなく予想していてもね。読むに値する一冊。技術を兼ね備えたプロ精神の固まりが、一世を風靡する作家になれるのも当然なのかもしれないという事を処女長編にしてから、まさに証明した作品。すげえなあ。
『逢う時はいつも他人』 Strangers When We Meet (1958)
- Two Volumes
- Pen Name:エヴァン・ハンター(Evan Hunter)
- Tr:安達昭雄(Akio Adachi) Pb:角川文庫(Kadokawa bunko)
- 1984/1
- Movie:「逢う時はいつも他人」Strangers When We Meet (1960, U.S.A.)
『若い野獣たち』 A Matter of Conviction (1959)
『去年の夏』 Last Summer (1986)
『ペーパー・ドラゴン』 The Paper Dragon (1966)
『ハナの差』 A Horses Head (1967)
『悪党どもとナニー』 Every Little Crook And Nanny (1972)
『冬が来れば』 Come Winter (1973)
『黄金の街』 Streets of Gold (1974)
『酔いどれ探偵街を行く』 I Like 'em Tough (1958)
- Tr:都筑道夫(Michio Tsuzuki) Pb:ハヤカワ・ミステリ文庫(Hayakawa Mystery bunko)HM14-3(キ-1-3)
- 2005/11
- ISBN4-15-070853-3
- 「幽霊は死なず」 Die Hard (Manhunt1953/1)
- 「死人には夢がない」 Dead Men Don't Dream (Manhunt1953/3)
- 「フレディはそこにいた」 Now Die in It (Manhunt1953/5)
- 「善人と死人と」 Good and Dead (Manhunt1953/7)
- 「死んでるおれは誰だろう?」 The Death of Me
- 「おれもサンタクロースだぜ」 Deadlier than the Mail (Manhunt1954/2)
- 「抱かれにきた女」 Return (Manhunt1954/7)
- 「街に拳固(げんこ)の雨がふる」 The Beatings (Manhunt 1954/10)
- 「背中の女」都筑道夫(Michio Tsuzuki)
『よみがえる拳銃』 I'm Cannon -for Hire (1958)
『ビッグ・マン』 Big Man (1959)
『湖畔に消えた婚約者』 Vanishing Ldies (1957)
『果てしなき明日』 Tomorrow and Tomorrow (1956)
『みどりの刺青』 Scimitar (1992)
『エイプリル・ロビン殺人事件』 The April Robin Murders (1958)
『キャンディーランド』 Candyland (2001)
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