エド・マクベイン Ed Mcbain 1926/10/15-2005/7/6 U.S.A.
Novel

無政府主義者のように訪れる冬の寒さに思わずコートのえりをたてて、アイソラの繁華街から少しはずれたバーを出る。仕事の疲れを癒すためのジン・ベースのカクテルを味わい、幸せの一本の煙草をくゆらせて、ひとときの憩い。狭い路地を抜けようとすると、向こうからひとがやってくる。うつむき加減の顔をちらりと見やると、スティーブ・キャレラだろうか。振り返ると、足早に去っていく。
路地を抜けると、太っているわりには神経質そうな男が近寄ってきた。
「あんさん、いいもんあるんだけどなあ」 思わず立ち止まる。男の手の中に小さい硝子瓶。灰のようなものがつまっている。
「あんさん、上ものだよ。できたての新しいインスタント猫の素…

本名は、エヴァン・ハンター(Evan Hunter)、ペン・ネームはカート・キャノン(Curt Cannon)、ハント・コリンズ(Hunt Collins)、リチャード・マーステン(Richard Marsten)等々。
87分署シリーズは、わたしも大好きな作品です。多作なわりに、レベルは高くあきさせません。黒沢明監督作品の原案に使われたり、その影響力は相当なものがあります。
一度は手にとってみてほしいシリーズです。架空の街、アイソラ自体がまたひとつの主人公であることに気付くでしょう。
ニューヨーク生まれ。誕生名:(Salvatore A. Lombino)。エヴァン・ハンターに正式に改名。


『警官嫌い』 Cop Hater (1956) 『通り魔』 The Mugger (1956) 『麻薬密売人』 The Pusher (1956) 『ハートの刺青』 The Con Man (1957) 『被害者の顔』 Killer's Choice (1957) 『殺しの報酬』 Killer's Payoff (1958) 『レディ・キラー』 Lady Killer (1958) 『殺意の楔』 Killer's Wedge (1958) 『死が二人を』 'til Death (1959) 『キングの身代金』 King's Ransom (1959) 『大いなる手がかり』 Give the Boys a Great Big Hand (1960) 『電話魔』 The Heckler (1960) 『死にざまを見ろ』 See Them Die (1960) 『クレアが死んでいる』 Lady, Lady, I Did It (1961) 『空白の時』 The Empty Hours (1962) 『たとえば、愛』 Like Love (1962) 『10プラス1』 Ten Plus One (1963) 『斧』 Ax (1964) 『灰色のためらい』 He Who Hesitates (1965) 『人形とキャレラ』 Doll (1965) 『八千万の眼』 Eighty Million Eyes (1966) 『警官(さつ)』 Fuzz (1967) 『ショットガン』 Shotgun (1967) 『はめ絵』 Jigsaw (1970) 『夜と昼』 Hail, Hail, the Gangs All Here (1971) 『サディーが死んだとき』 Sadie, When She Died (1972) 『死んだ耳の男』 Let's Hear It for the Deaf Man (1972) 『われらがボス』 Hail to the Chief (1973) 『糧(かて)』 Bread (1974) 『血の絆』 Blood Relatives (1975) 『命果てるまで』 So Long As You Both Shall Live (1976)
  • 『命ある限り』Tr:河合裕(Yutaka Kawai) Pb:トクマ・ノベルズ
  • 1977/11
『死者の夢』 Long Time No See (1977)
  • 『殺意の盲点』Tr:松岡和 Pb:トクマ・ノベルズ(Tokuma Novels)
  • 1978/3
『カリプソ』 Calypso (1979) 『幽霊』 Ghosts (1980) 『熱波』 Heat (1981) 『凍った街』 Ice (1983) 『稲妻』 Lightning (1984) 『八頭の黒馬』 Eight Black Horses (1985) 『毒薬』 Poison (1987) 『魔術』 Tricks (1987) 『ララバイ』 Lullaby (1989) 『晩課』 Vespers (1990) 『寡婦(かふ)』 Widows (1991) 『キス』 Kiss (1992) 『悪戯(いたずら)』 Mischief (1993) 『ロマンス』 Romance (1995) 『ノクターン』 Nocturne (1997) 『ビッグ・バッド・シティ』 The Big Bad City (1999) 『ラスト・ダンス』 The Last Dance (2000) 『マネー、マネー、マネー』 Money, Money, Money (2001) 『でぶのオリーの原稿』 Fat Ollie's Book (2003) 『歌姫』 The Frumious Bandersnatch (2004) 『耳を傾けよ!』 Hark! (2004) 『最後の旋律』 Fiddlers (2005)
『金髪女』 Goldilocks (1977) 『黄金を紡ぐ女』 Rumplestiltskin (1981) 『美女と野獣』 Beauty and the Beast (1982) 『三匹のねずみ』 Three Blind Mice (1990) 『ジャックが建てた家』 The House That Jack Built (1988) 『ジャックと豆の木』 Jack and the Beanstalk (1984) 『白雪と赤バラ』 Snow White and Rose Red (1985) 『シンデレラ』 Cinderella (1986) 『長靴をはいた猫』 Puss in Boots (1987) 『メアリー、メアリー』 Mary, Mary (1992) 『小さな娘がいた』 There Was a Little Girl (1994) 『寄り目のテディベア』 Gladly the Cross-Eyed Bear (1996) 『最後の希望』 The Last Best Hope (1998)
『カリブの監視』 The Sentries (1965) 『街はおれのもの』 Doors (1975) 『煙の立つところ』 Where There Is Smoke (1975) 『魔の拳銃』 Guns (1976)
  • Tr:河合裕(Yutaka Kawai) Pb:トクマ・ノベルズ(Tokuma Novels)
  • 1977/12
『チャイナタウン特捜隊』 Another Part of the City (1986) 『ダウンタウン』 Downtown (1989) 『盗聴された情事』 Criminal Conversation (1994) 『秘匿特権』 Privileged Conversation (1995) 『ドライビング・レッスン』 Driving Lessons (2000)
『暴力教室』 The Blackboard Jungle (1954)
  • Subtitle:決定版(元版との差は、改訳及び序文をつけた。)
  • Tr:井上一夫(Kazuo Inoue) Pb:ハヤカワ文庫(Hayakawa bunko)NV1014
  • Cover Photo:Robert Huntzinger/CORBIS/Amana Images Design:ハヤカワ・デザイン(Hayakawa Design) Co:エヴァン・ハンター/S・T(S. T.) 2002/7/31
  • ISBN4-15-041014-3

はじめて今回、読んだ。実は映画も見ていない。真っ白に近く、ただ漠然とした印象がある中で読めた。なるほど、87分署シリーズに見られる構成の妙は既に処女長編にして存在していたわけである。13章、もともと発表された短編であったこの章に集約されていくその技術的なあざとさ(誉め言葉なんです)は、本当に見事なものである。感心してしまった。
うまいなあとため息が出るくらいだ。なんとなく予想していてもね。読むに値する一冊。技術を兼ね備えたプロ精神の固まりが、一世を風靡する作家になれるのも当然なのかもしれないという事を処女長編にしてから、まさに証明した作品。すげえなあ。

『逢う時はいつも他人』 Strangers When We Meet (1958)
  • Two Volumes
  • Pen Name:エヴァン・ハンター(Evan Hunter)
  • Tr:安達昭雄(Akio Adachi) Pb:角川文庫(Kadokawa bunko)
  • 1984/1
  • Movie:「逢う時はいつも他人」Strangers When We Meet (1960, U.S.A.)
『若い野獣たち』 A Matter of Conviction (1959) 『去年の夏』 Last Summer (1986) 『ペーパー・ドラゴン』 The Paper Dragon (1966) 『ハナの差』 A Horses Head (1967) 『悪党どもとナニー』 Every Little Crook And Nanny (1972) 『冬が来れば』 Come Winter (1973) 『黄金の街』 Streets of Gold (1974)
『酔いどれ探偵街を行く』 I Like 'em Tough (1958) 『よみがえる拳銃』 I'm Cannon -for Hire (1958)
『ビッグ・マン』 Big Man (1959) 『湖畔に消えた婚約者』 Vanishing Ldies (1957)
『果てしなき明日』 Tomorrow and Tomorrow (1956)
『みどりの刺青』 Scimitar (1992)
『エイプリル・ロビン殺人事件』 The April Robin Murders (1958)
『キャンディーランド』 Candyland (2001)
Collection
『ジャングル・キッド』 The Jungle Kids (1956) 『歩道に血を流して』 Happy New Year, Herbie (1963) 『犬嫌い』 Barking at Butterflies and Other Stories (2000) 『逃げる』 Running from Legs and Other Stories (2000)
Short Fiction
「死の飛行」 Death Flight 「愛に似て…」 Like Love 「目撃者」 Eye Witness 「ナイトシェイド」 The Nightshade 「磔(はりつけ)」 The Jesus Case 「87分署に諸人こぞりて」 And All Through The House 「正直」 Honesty 「事故報告」 Accident Report 「チョーク」 Chalk 「ヤバい車」 Hot Cars 「レッグズから逃れて」 Running from Legs 「怪物ども」 Monsters 「いつか、どこかで」 Where or When 「スキンフリック」 Skin Flick 「笑いごとじゃない」 Not a Laughing Matter (AHMM 1958/8) 「花弁」 Petals 「氾濫地帯」 Activity in the Flood Plain 「ママがサンタを殺してた」 I Saw Mommy Killing Santa Claus 「蝶に吠える」 Barking at Butterflies 「即興」 Improvisation 「愛か金か」 Love or Mney 「ささやかな話し合い」 A Little Sitdown 「ナイロビを去って」 Leaving Nairobi 「裏切りの弾丸」
「思い出の夏に…」 It Was Lovely That Summer 「何がアニーに起ったか」 What Happened to Annie Barnes 「炎の接吻」 Kiss Me, Dudley 「合乗り」 The Serers 「致命的な魅力」 Fatal Attraction 「緋色のキング」 The Scarlet King 「金星の種子」 What Price Venus? (Fantastic Universe 1953/9) 「なにかがやってくる」 Inferiority Complex (Fantastic Universe 1955/5) 「捕虜第一号」 First Captive (Imagination SF 1953/12) 「弾丸(たま)と女はもうたくさん」 The Death of Me (Manhunt1953/9) 「秘密写真の女」 Still Life (Manhunt1953/8) 「白い悪夢たち」 The 'H' Killer (Manhunt1957/2) 「女が爆発する!」 Killer's Wedge (Manhunt1959/2) 「本番!殺しましょう」 The Death-Ray Gun (Manhunt1955/1) 「いやらしい蟲」 Bedbug (Manhunt1954/9) 「艦長なんか消しちまえ」 Hot (Manhunt1955/2) 「ある朝、突然に」 The Wife of Riley (Manhunt1953/12) 「親分(ボス)の右腕」 The Right Hand of Garth (Manhunt1953/11) 「メリイ・メリイ・クリスマス」 The Merry, Merry, Christmas (Manhunt1957/12) 「告白」 Confession 「ポルノ本番」 Skin Flick 「旅の好きな男」 One Down (Manhunt1953/6) 「ボロいもうけ」 Easy Money 「夢の貴婦人」 Dream Damsel
「退屈解消法」 Just for Kicks (AHMM 1958/6) 「チャイニーズ・パズル」 「臆病な闘牛師」 A Bull to Kill (Manhunt1954/11) 「くる朝も・くる朝も…」 Every Morning (Manhunt1954/9) 「殺すな!」 Classification: Dead (Manhunt1953/11) 「他人(ひと)の女」 Carrera's Woman (Manhunt1953/2) 「木曜日」 The Big Day (Manhunt1955/9) 「夜を追われて」 Runaway (Manhunt1954/2) 「嬲りもの」 Agent the Middle 「レイディー・キラー」 Lady Killer (Manhunt1954/10) 「救いの手」 The Helping Hand
「灼(や)ける接吻(くちづけ)を」 Kiss Me, Dudley (Manhunt1955/1) 「痴漢」 The Molested (Manhunt1953/9) 「海辺にて」 Attack (Manhunt1953/2) 「心理試験」 Association Test (Manhunt1954/7)
「替え馬」 The Ringer (EQMM 1980/12)
  • Pen Name:ジョン・アボット(John Abbott)
  • Tr:小梨直(Nao Konashi) EQ1994/9 No.101
「暗号はABC」 ABC Code

作品数のあまりの膨大さに悲鳴をあげた。長編、短編いったいいくつあるんだという数である。しかもペンネームを使い分けている。半世紀に渡るその作家歴で的確に掴むのは、ほとんど不可能じゃないかと思う。しかし、わたしはっきり言って十分の一以下ですね。読んだ作品数は。

Anthology/Essay/ETC.
『アメリカミステリ傑作選2001』 The Best American Mystery Stories 1999 (1999)
『87分署インタビュー: エド・マクベインに聞く』
  • 直井明(Akira Naoi) Pb:六興出版
  • 1992/2
  • ISBN4-8453-7186-3

「ラリーのチンパンジーたち」 「知ったかぶり」 Faking It 「エド・マクベイン、87分署について語る」 「純文学と大衆文学の狭間で」 「87分署のヒーローたち」 「トーク・ショー 「あのころは、どっちもガキだった」」 「職人作家、半生を語る」 87th Precinct and Beyond 「ハンター & マクベインに訊く」 「普通小説でいこう」 Going Straight 「尋問:エド・マクベイン」 Grilling Ed McBain 「エド・マクベインに聞く -人気作家の創作の秘密」 「<87分署>の創作」 Creating the 87th 「シャーロック・ホームズを逮捕しろ」
  • Essay
  • Tr:小林司(Tsukasa Kobayashi)/東山あかね(Akane Higashiyama) EQ1980/1 No.13
「NYダイレクト尋問(インタビュー)」
  • Interview
  • 日本版Playboy1980/10
Juvenile
『空とぶタイム・マシン』 Find the Feathered Serdent 『大人ってなに考えてるのかな』 Me And Mr. Stenner (1976) 『恐竜一億年』 Danger: Dinosaurs 『月世界探検』 Rocket to Luna 『恐龍の世界』 Danger: Dinosaurs
「あの月百万ドル」 Million Dollar Maybe (Amazing 1954/1)
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