1999年12月25日付け、朝日新聞朝刊筑豊版「記者の眼」

松田京平記者の眼が暖かい

記者の眼

「九州発」の映画第一弾 全国展開へ再挑戦

 校舎の屋上で、落ちこぼれの主人公の高校生を前に、透き通るような九州の空を見上げながら、少女が言う。
 「この空を、鳥のように自由に飛んでみたい」
 映画「スーパー・ハイスクール・ギャング」が二十二日、飯塚市のコスモスコモンで上映され、全国展開の再スタートを切った。
 「九州発」映画の第一弾として、同市出身の映画プロデューサー、松本廣さん〔五一〕が製作総指揮。「人」も「金」も九州で集め、地方発の映画づくりとして話題を集めた作品だ。
 空を飛ぶ夢を追うため、仲間同士がアルバイトやロックンロールコンサートを企画して金を集め、自前の飛行機を作る。その名は「赤とんぼ」。元特攻兵の老人が機材の組み立てや操縦を指導。未明に暴走族がバイクで照らす滑走路を、搭乗した主人公と少女が離陸する・・・。
 会場の末席に腰を下ろして鑑賞した私は、テンポのよいストーリー展開にすっかり引き寄せられた。

純粋な気持ちを思い出して


 「空を自由に飛ぶ」
 子供の頃、よく空を舞う夢を見た。旅客機に初めて乗った時のわくわくした気持ち。忘れかけていたそんな気持ちを、この映画は思い出させてくれた。
 一方で、映画に出てくる高校生達の純粋さが、現役の生徒達にどの程度残っているのかと考えた。
 高校生を含む少年三人が、飯塚市内の小学校に夜中に侵入し、飼っていた数羽のニワトリをデッキブラシで殴ったうえに焼き殺したり、大けがを負わせるという事件があった。少年は「ニワトリが苦しがるのを見るのが面白かった」と供述したという。
 この小学校によると、大けがをしたニワトリは少しずつ回復に向っていたが、二ヶ月後に力尽き、飼育委員の児童が校庭の目立たない場所に死がいを埋めて、めい福を祈ったという。
 失われた純粋さ。生命の価値に対する認識。お年寄りへの敬い。夢を追う情熱・・・。
 映画は、現代の高校生や生徒を取り巻く環境に対して、さりげなく問いかけをしているように思えた。
 
一九九四年に製作され、翌年に一度公開されたが、封切り直前に、阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件などかつてない惨事が相次いだ。「地方発」の話題性は吹き飛び、全国展開はお預けとなっていた。
 五年間の封印機関を経て、全国へ向けて再挑戦する第一歩となった今回の上映。寒波にもかかわらず、親子連れや年配の人など約七百人が駆けつけた。
 テーマ性と話題性十分の中、「九州発」の第一弾は離陸した。映画の内容そのままに、全国への飛躍を期待している。
                  (松田 京平)