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 そして先生はドイツへと旅立っていった。

 一生懸命早起きしたので、先生を見送ることはできたのだけど、先生が迎えに来た笹目さんの車に乗っていってしまうと、どーんと胸に重りがのっかったように憂鬱になった。

(これからずっと先生がいないんだ・・・)

 そう思うと、何をするのも億劫な気分になった。

 折り返すようにお父さんとお母さんがアメリカから帰ってきたけれど、僕の気持ちは全然晴れなかった。

「もうすぐだなー、まゆの誕生日!」

 学校からの帰り道、すっかりクリスマスらしくなった街のショーウインドウを見ながら東堂が言う。僕の誕生日はクリスマスだから、街がクリスマスの準備を始めると「もうすぐひとつ年をとるんだなぁ」っていう気分になるのだ。

「何かほしいものある?リクエスト!」

「うーん・・・・・・今のとこ思いつかないなぁ・・・」

 うそ。

 本当は先生がほしい。

 先生に帰ってきてほしい。

 先生がドイツに行ってからもう一ヶ月以上たつ。

 その間、これといった連絡はないままだ。

 前みたいにハガキも来ないし、電話もない。

(元気なのかな・・・先生・・・・・・)

 笹目さんからは2回だけファックスがきた。

 どれも簡単な近況報告だったけど、唯一の情報源なので、送られてきたファックスは大切にとってある。

 一枚目は、先生たちが出かけて数日後にきた。内容は、滞在先の住所と電話番号と当面の予定。二枚目はその2週間後くらいにきた、近況報告。いよいよコンサートが始まりましたというものだった。どれも笹目さんの字だけで、先生が書いた文字も、先生からのメッセージもなかった。

 家でも、両親が誕生日プレゼントは何にしようか?という話をしてきた。

(僕は先生に会えたらそれでいい)

 いっそ、ドイツ行きのチケットといってしまいたかった。僕を先生に会いに行かせて、と。

(いつ帰ってきてくれるんだろう・・・・・・?)

 何をしていても、どんなときでも、先生のことが頭から離れない。ぼんやりとしているときに思うのは、先生の声、仕草、ピアノの音。先生の想い出につながるものを目にしたときは、胸の奥が痛くなって身動きをするのがつらくなったりもする。

(ヘンなの)

 大好きな人のことを考えているのに、つらくなるだなんて。

こういう気持ちは、なんていうのだろう?

 このころの僕はまだ幼くって、自分の気持ちが分からず、もてあましていた。

 

to be continued …

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 モドル