* * *
(うそだろ!?)
見間違いかと思ってなんども目をこすったけど、そうじゃなかった。そしてそれだけ長い間、薫と光はキスをしていた。
(なんでだよ!?)
薫はオレのこと好きだっていってたのにっ!!あー、それに、薫と光は兄弟だろ!?なんでキス・・・、なんかするんだよ!?
頭の中が真っ白になって、それに比例するみたいに身体の奥が熱くなった。
「ひっでー」
距離が離れてたから、まさかオレの声が聞こえたわけではないだろうけど、光がオレに気づいたらしく、顔をこちらに向けた。薫も同じほうを見ようとしたけど、光がその頭をぎゅっと抱き寄せて押さえつけてしまった。
距離を超えて光の鋭い眼光がオレを射る。
オレはぎゅっと唇をかんできびすを返した。
植物園を抜けて体育館へ戻る間、オレは悔しくって悔しくって仕方なかった。
(オレ、薫のこと好きだったのにっ)
薫の「好き」っていう言葉を信じてたのに。
裏切られた気分だった。
なんで?って薫に聞きたかったけど、理性よりも薫への怒りのほうが大きくって、冷静になれなかった。
そんな気分を引きずったまま、午後の試合は始まった。
試合前に戻ってきた光は、素知らぬ顔でオレの前を素通りしていった。薫は午前中と同じくギャラリーからベンチを見下ろしていて。大和なんかはまた手を振っていたけど、オレは今は薫の顔を見たくなかった。薫の顔を見てしまったら、何を言うかわからなかったから。だからせめてもの反抗で、試合前の礼に向かうとき、さりげなく光の背中をどついたりして。
光は何も言わなかったけど、たぶん、俺がなんで怒ってるのかわかってたんだろう。口の端だけきゅっとあげて悪人面で笑ってた。
(くっそ〜っ!!)
試合中も身体はボールを追っていたけど、頭の中は薫のことでいっぱいだった。
―――――だから、きっと注意力が散漫だったんだろう。
「霧島っっ!!?」
「麟ッ!!」
不破先輩と大和の声。
それが耳に入ったとき、オレはガタイのいい相手チームのひとりの下敷きになってつぶれていた。
ゴール下のボール争い。
いつもなら突撃してくる相手をちゃんとよけられるのだけど。オレは正面からその相手とぶつかって、二人一緒に飛んで、さらに悪いことにその人に上にのっかられたまま体育館の床に落ちてしまったのだ。
ピピーッ。
審判の笛の音がして、周りに人が集まってくる気配がした。だけど頭がガンガンして目が開かない。
「大丈夫かっ!?」
部長の声がすぐそばで聞こえた。「大丈夫です」と答えようとして口を開けたら、血の味がした。あー、唇切れたんだな〜、と思うと、周りの音が急に遠くなり出した。
「霧島っ!」
「麟先輩!?」
「麟っ」
いろんな声が頭の中でぐるぐる回る。
それもどんどん遠くなって・・・・・・・・・・・・どうやらオレは気を失ったらしかった。
-TO NEXT-
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