菜々のピアノレッスン Topへ

ピアノの先生っていい仕事?


ピアノの先生というのは大昔はそれはそれは素敵なお仕事だったらしいのです。素敵なお仕事と言ってもあまりに抽象的です。ピアノの先生めがける方々のために(めがけない方は音楽教室主催者というもんがどの程度素敵じゃないか参考にしていただけたら幸いです。)具体的に検証いたします。
まず第1の検証。
ピアノの先生は儲かるか?はっきり言ってこれは×。
あらそんなことないわ。儲かるわよ。10年で家買えるって話きいたわ。なんていうのは50年前の話です。もしくはワンレッスン10万円、でもめったなことでは師事できずやっと教えてもらえたと思ったら非常に非常にわけのわからぬ音楽論並べてくれて「わたしの言うことがわからないのならばわたしにつくのをやめなさい。」なんぞという超高踏的なレッスンされてる超大家の大先生。もしくは驚異的にいわゆる塾経営の上手な人。
ピアノ教室の収入の算出の仕方は簡単です。ひとりあたりの月謝かける生徒数が収入になります。それじゃ月謝1万円で生徒が30人いたら30万円じゃない。儲かるってほどじゃないけどいい実入りじゃない。という考えはあまい!これは手取りじゃないのです。総売上です。ここから国保、年金、減価償却費、必要経費を払って、運転資金を貯めこんどくのです。保険年金はとにかく音楽教室なんて経費かからないじゃない。ピアノだってたいていはもとからあるんだし。というのもシロートの浅知恵。(まあ仕入れ代金なんてシビアなもんないんだからその点はラクだろうけど)鉛筆やシール消しゴム程度のバカにできる経費から、リトミック用のタンバリン、トライアングル、鈴。書籍、楽譜、CD。更にそれを収める書棚から、生徒どもがいたずらして壊したメトロノームの買い替え。最新の情報を得るための通信費に講習会費、調律費、自分が勉強するレッスン代(これだって立派な経費です。)というバカにならない経費にいたるまで全てまかなうこと考えれば半分から3分の2にまで目減りしてしまうのですよ。
それじゃ月謝値上げすればいいじゃん。て、それはいい考えです。いい考えなんですがね。現実問題として儲からないから来月から月謝5万円にします。って言ったらへたすりゃ生徒全員辞めちゃうと思うのです。大昔はピアノ教授というのは見入りのいい仕事だったのはその時代はピアノの月謝というか謝礼がとても高かったらしいのです。(あくまでわたしは存在してなかったので聞いた話しです。)これはある日のうちの教室での風景。小2の生徒がレッスンにやってこない。朝元気に登校する姿は見たので病気ではあるまい。それとも急病か怪我でもしたか、あるいは親の身になにかが起きたか?と思い。п@なんと本人が出た。「どしたの?そっかうちの人出かけてて忘れちゃったのか。今から?いいよ。今からお稽古しよう。帰り暗くなるけどすぐ近くだから大丈夫だよね。」あのね。このノリでレッスンしててそんなに高いお月謝いただけないんです。
月謝値上げが難しいのならば数をこなす。生徒獲得150人目標!はどうかいうとピアノは個人レッスンなので仮にひとりあたり20分までに時間節約してメいっぱい頑張ったらレッスンしてるだけでも週間50時間、1日3時間週5日を事務的な仕事、雑用、勉強にあてたとして週65時間労働。そしてまた最近はあうあわない以前にこんなに大人数の生徒を集めることじたいが至難のワザになってしまったのです。大人数の生徒を募集してなんとかするということの対策としてはグループレッスンをするというのがありますが、どのみちそう簡単には生徒は集まりません。
第2の検証。
ピアノの先生は安定した職業か?
これはもおっーとおっきな×。
上記の収入についてはなんとかそれでも頑張りようもあると思うのですが、決まった日にお給料貰えて夏冬に少しでも賞与が出て、有給休暇は年何日。社会保険完備で希望者は社員寮に入寮できて福利厚生は保養所がどことここで、社員食堂完備で、制服貸与、自社製品を社員割引で買えて、勤続何年目からはいくら退職金が出る。なんていう職業ではぜーんぜんありません。
会社員、公務員の安定性を期待する方にはお薦めできません。
ふつうの街のピアノ教師というのは全員個人事業主です。たいていは自由業で自営業といえるほどの実績のある人の方が圧倒的少数です。それじゃヤマハの先生になればお給料もらえるでしょ?という考えも甘く、大手の教室講師は社員じゃありません。アルバイトですらありません。ここでも個人事業主です。
ただどうなんでしょう。店舗も事務所も持たないいわゆる自由業のなかでは比較的安定しているということは言えるかもしれません。1度入会した生徒は誠意持って教えれば普通は4,5年は通ってきます。続ける生徒だと10年以上通ってくることもありますから、安定感はないにしても明日をも知れぬ不安定感というほど不安定でもないんじゃないかと思います。
第3の検証。
ピアノの先生は拘束の少ない職業か?
これは花○五重◎、ただしレッスン時間は厳守ですからその時間帯だけは拘束されますけれど、それ以外は基本的に自由です。月謝だって自分で決めればいいのです。経費がかかってやり切れぬと思えば生徒とその保護者説得して維持費を別口でいただくという経営方法とるのだって会議開く必要もありません。好きにすればいいのです。就業規則だって自分で決めりゃいいのです。自分ちでやってりゃ通勤する必要もありません。祝儀、付け届け、贈り物その他ドードーと貰ってOKです。ただし現金のプレゼントについては確定申告の義務があるかどうかはわたしはよく分かりません。たいていは生徒は午後からやってきますから昼まで寝てたって差し支えありません。ははは、いいでしょう。
これはわたしが大手の楽器店の教室講師だったころの話ですけれど、ある日の朝10時過ぎ、前日遅くまで酒飲んで帰って来て顔だけ洗ってねてしまったわたしは起き出してまず入浴をしていたのです。そこへпB携帯電話などというものはまだカゲもなかった時代です。ついでにそのころはまだコードレスの電話機というのもナシ。とはいえわたしいったん浴室から出て電話をとりました。OLの友人からだったのですが「ごめん。今お風呂入ってたの。からだ拭くからちょっと待ってて。」友人「あんた今日休みなの。」わたし「休みじゃないよ。今日は3時から所沢教室。」友人「いー身分だわね!」わたし「はぁー?」
この人とてわたしはたいてい午前中はうちにいること知ってるからこそうちに電話してきたのですけれど、彼女は定時の午前9時に出勤して朝礼、朝女子社員に課せられる雑務一般こなし、経理の仕事一段落して、外回りに出る社員たちが出払った隙に、人気のない会議室かなにかにもぐり込んで私用電話をしてきたのです。これだけ苦労しているその時間帯に自由職業のわたしはまだ寝ててまっとうなお勤め人が本格的稼動をとっくに始めたその頃休みでもないのに朝風呂につかってたのです。彼女がなんだか釈然としない気持ちになるのもわかります。
職業的な苦労はお互い様なんだけれど、これが安定感と引き換えに得られる自由です。

(2004年6月2日)
菜々のピアノレッスン Topへ