海の見える俳句
ed by suzuki shigeo


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海を詠んだ俳句を集めました。古今東西の文学作品の中で
海をテーマや背景にしたものはたくさんありますが、こと日本文学
に限って振り返ってみると、たとえば米文学ではハーマン・メルビルの
『白鯨』とかアーネスト・ヘミングウェイの『老人と海』、英文学では
ダニエル・ディフォーの『ロビンソン・クルーソー漂流記』、セシル・スコット・
フォレスターの海洋長編小説『ホーンブロワー・シリーズ』などのような
海を舞台にした作品は、管見ですが少ないように思います。
四囲を海に囲まれた島国、日本に住む日本人は『古事記』や
『万葉集』の時代から海と深い関わりがあることが窺えますが、こと文学
作品に限って言及すると、たとえば西洋古典文学の一大叙事詩、
ホメロス作『オデュッセイア』に見られるような海が大きな役割を担っている
作品は、残念ながら皆無に等しいようです。しかしながら、幸いにも
わたしたちには俳句があります。わが俳句には、蕪村の有名な句
「春の海終日のたりのたりかな」から、高屋窓秋の句
「ちるさくら海あをければ海へちる」まで、海をテーマにした抒情的な
作品がたくさんあります。ここでは現代俳句を中心に集めて、海岸に
打ち寄せる波をイメージして編集してみました。俳句は一見すると、
波打ち際の白砂に書かれた文字のように淡くて儚い存在ですが、
その表現形式は世界文学の中ではひときわ「凛!」と輝いています。
浜辺に打ち寄せられた美しい貝殻を拾い集めるように、この
コーナーでは海をテーマにした作品を収集していきたいと思って
います。「現代俳句アンソロジー」はこちらから・・・   by鈴木






春の海


夏の海


秋の海


冬の海


歌仙の海








春の海




潮騒の路地の奥まで初日の出    馬場龍吉

路地路地の春潮満ちてゐたりけり 加藤三七子

不知火の海の菜の花明りかな   加藤三七子

ちるさくら海あをければ海へちる    高屋窓秋

白き巨船きたれり春も遠からず     大野林火

雪嶺より稜駆けりきて春の岬      大野林火

卒業や海に合はむと海に来て    遠藤若狭男

春昼の真砂を濡らす潮かな       日野草城

春の浜大いなる輪が画いてある    高浜虚子

煙突の一本高し春の海         高浜虚子

海女とても陸こそよけれ桃の花     高浜虚子

海を見てをれば一列春の雁       高野素十

近海に鯛睦み居る涅槃像        永田耕衣

ふいに魚跳ぶ海底はどんな春     河井末子

ぎつしりと海がつまりし花辛夷     岡田史乃

海髪抱くその貝殻も数知れず     中村汀女

ゆく春や海恋ふものは海で死ね   鈴木真砂女

晩学や絶えず沖より春の波    鍵和田禾由子

春の旅はげしき海に出会ひけり  阿部みどり女

春日傘大きな船の着くを待つ      細川加賀

ひく波の跡美しや桜貝         松本たかし

蒲公英のかたさや海の日も一輪   中村草田男

海見える席譲り合ふ春の旅       乙武佳子

春岬コーヒー店に一人の客      山根きぬえ

うららかや波を吸ひ込む砂の音     中井啓子

海が見えしか凧下りて来ず       鷹羽狩行

海わたる春雷塔を記憶せよ      大木あまり

大霞したる海より濤こだま        橋本鶏二

陸奥の海くらく濤たち春祭      柴田白葉女

戦艦は海底にあり黄砂降る      大庭紫逢

海の音山の音みな春しぐれ      中川宋淵

手をつけて海のつめたき桜かな    岸本尚毅

流さるる雛海にも荒野あり      藤井富美子

きつぱりと海山わかつ桜東風    宇多喜代子

海光に人の溶けゆくさくら月      上野章子

山に花海には鯛のふゞくかな     松瀬青々

海照ると芽吹きたらずや雑木山   篠田悌二郎

春の月海離れむとして撓む       藤木倶子

春月の暗きところを海といふ      行方克巳

春風の行方を記す海図室        八木荘一

囀や海の平らを死者歩く         三橋鷹女

海おぼろ忘れしころに浪くだけ     若木一朗

海の傷もたぬものなし桜貝         檜紀代

分骨のあとあをあをと春の海      友岡子郷

初蝶を追ひ海光をまぶしみぬ      沼田総子

海へ雲高く出てゆく藤の花        松林朝蒼

押し合うて海を桜のこゑわたる     川崎展宏

春雪のしばらく降るや海の上      前田普羅

拾われて海遠くなる桜貝         松田美子

紅梅や入海深くここまでも        高橋睦郎

ふるさとの海は鳴る海蓬餅       藤田湘子

立春の海よりの風海見えず        桂信子

鯛あまたゐる海の上盛装して       桂信子

春潮の幾重にも夜に入らむとす     桂信子

海機嫌防波堤と僕はそよ風       藤後左右

地球儀の海を見てをり卒業子      朝倉和江

雁風呂に海のつづきの波がたつ      渋谷道

そこらに島をばらまいて春の波       山頭火

ひらかなの柔かさもて春の波       富安風生

はまなすや波のうへより濤襲ひ     岸風三樓

病めばきこゆ春の襖の波の音    鷲谷七菜子

春光を砕きては波かゞやかに     稲畑汀子

春愁の波のままなる遠白帆      小檜山繁子

紅梅やをちこちに波たかぶれる      飴山實

春潮のひびきて白き月の暈        東早苗

少年にくらみそめたる春の沖     寺井谷子

蝶々や海へと抜ける穴ありき      五島高資

春の海まつすぐ行けば見える筈      大牧広

菜の花の丘大海が担ぎ上ぐ      竹内一犀

朧夜のフェリーボートのがらんどう   竹内一犀

春の地図コンパスを置く太平洋    坂石佳音

鶴帰るころと思ひし海の色      久保山敦子

雁供養北にあらうみあるばかり   久保山敦子

初旅の海しらしらとひらけたり       露草

ゆるやかに海に向く坂すみれ草    吉藤春美

ポーの詩の一節誦す春渚       吉藤春美

春眠や船近づきて遠ざかり       米元ひとみ

月おぼろ渚の恋のそこここに      米元ひとみ

春の波脚のモデルの足濡らす     米元ひとみ

帆船に世界の国旗風光る        米元ひとみ

船体のブルーのライン燕来る      米元ひとみ

紙ふぶき船春潮へすべり出づ     米元ひとみ

ハンドルを左に切れば春の海     横山きっこ

なみなみとみなとみたすや春のなみ  横山きっこ

かつて海でありし銀座よ柳絮とぶ   横山きっこ

春潮やハモニカ吸へば鉄の味     横山きっこ

窓に顔映りて春の海暮るる        金子敦

突堤に犬と少年風光る           金子敦

風車海のひかりにまはりだす       金子敦

おぼろ夜の海はるかより母のこゑ      茂雄

船室の外朧夜の潮の風            茂雄

海に出て春風白き船となる          茂雄

またひとつ白き帆となる春の波        茂雄






夏の海




つばくらめナイフに海の蒼さあり    奥坂まや

東京湾海鳴滅びソーダ水        奥坂まや

船よりも白き航跡夏はじまる      鷹羽狩行

うたかたの海辺の恋や八月尽     吉屋信子

わが心に白波たてて海見る夏      原コウ子

港出てヨット淋しくなりにゆく     後藤比奈夫

父祖は海賊島の鬼百合蜜に充ち    坪内稔典

夜の冷蔵庫開けるな海があふれ出す 高野ムツオ

炎天の遠き帆やわがこころの帆    山口誓子

夏の海水兵ひとり紛失す        渡辺白泉

乳母車夏の怒濤によこむきに    橋本多佳子

夏の帆の夕日畳んで帰りけり       大串章

土用波わが立つ崖は進むなり     目迫秩父

夏すでに海恍惚として不安       飯田龍太

しんしんと肺碧きまで海の旅      篠原鳳作

管楽器寝かす五月の海の上      河合凱夫

波のりの白き疲れによこたはる     篠原鳳作

サングラス海へ突き出す鼻柱     三浦加代子

向日葵の蘂を見るとき海消えし     芝不器男

海の音にひまわり黒き瞳をひらく    木下夕爾

のこりゐる海の暮色と草いきれ    木下夕爾

ひるがほのほとりによべの渚あり   石田波郷

灯台の白立ちあがる夏岬        佐藤信子

水脈しるく曳きて晩夏のひかりとす   藤田湘子

海から誕生光る水着に肉つまり     西東三鬼

青大将太平洋に垂れ下がる        大串章

ひらききる百合はまつしろ海炎えゐむ 鷲谷七奈子

夏めくや海より生まれしいろの蝶    朝倉和江

パラソルにいますれすれの海原よ   齋藤慎爾

白日傘海に回せば海のいろ       勝田享子

遠き海夏手套に指されたる       木下夕爾

海凉し絣模様にうさぎ波         河野頼人

目開けば海目つむれば閑古鳥     飯田龍太

ガーベラの炎のごとし海を見たし    加藤楸邨

炎ゆる海わんわんと児が泣き喚き   山口誓子

ネガチブにまたポジチブに夏の海   鳴戸奈菜

夏帽に余る空あり海の旅        鈴木昌平

月見草涙見せじと海を見る         星野椿

夏海の匂ひ真白き朝のパン      平井さち子

海が見え詩を書く憂い夕立来る      穴井太

日傘さし海美しとひとことを       茨木和生

ひろがりひろがる青の信号だらけの海 阿部完市

海よりも陸荒々し昼寝覚        宮坂静生

桃啜る海へもぐりし昏さ曳き      宮坂静生

海へ出発菓子も水着も袋に透き    宮坂静生

卒業証書いだき寂寞海のごとし    宮坂静生

海へ少女朝を射ち抜く弾丸となつて  宮坂静生

かるい悔恨海より青い帽子と寝て   宮坂静生

正午の海と本の厚さのパン明るし   宮坂静生

浜木綿や坐りてぬるき海の砂      長谷川櫂

昏睡の海にただよふ白菖蒲         石寒太

海を見しかの羅を一度きり       正木ゆう子

晩年やまだ海のまま夏の海       永田耕衣

輝きてそそぐ水あり晩夏の海      安東次男

日傘させば海の底より淋しさ来る    津田清子

雲の峯男ばかりの海の上に       津田清子

夏海を見下して木をゆすぶれる     細見綾子

夏みかん手に海を見る場所探す    細見綾子

海越え来し端書一葉遠雷す       細見綾子

海を見る麦藁帽よ振り向かず      行方克巳

感情や少年海より上がりけり      攝津幸彦

海の青滲む葉書に数行余り     林田紀音夫

海のまぶしさ白骨の人立ちあがり  林田紀音夫

海ほどのさびしさよどむ樹下の椅子 林田紀音夫

遠くより風来て夏の海となる       飯田龍太

海へ去る水はるかなり金魚玉      三橋敏雄

長濤を以て音なし夏の海         三橋敏雄

皆海に向ひて座る夏帽子         稲畑汀子

七月の海がさみしきはずはなし    長谷川双魚

夏の手紙青いにじみは海の色       大高 翔

本の山くづれて遠き海に鮫         小澤 實

向日葵の空かがやけり波の群     水原秋桜子

深い夜の波が舷燈を消しにくる     富澤赤黄男

波騰げてひたすら青む加賀の国     飯田龍太

郷愁や夏波ななめにななめに寄す   川口重美

灯の下の波がひらりと夜の秋      飯田龍太

かがやきのきわみしら波うち返し   野村朱鱗洞

わが影の中のもの引く盆の波    中戸川朝人

土用波ひややかに蚊帳垂れにけり  金尾梅の門

抽出しにさざ波あふれ夏休暇     小檜山繁子

中年や身を夏濤のなすまゝに        藤井亘

夏潮にふぐりを摶たす孤島かな    秋元不死男

昼寝覚この世の涯は波白く        長谷川櫂

暁や北斗を浸す春の潮          松瀬青々

初夏の波を好めり高波を          藤後左右

海の紺白く剥ぎつつ土用波         瀧春一

さびしさは船一つ居る土用波        原石鼎

纜も旅の心も梅雨しとど         高野素十

花火待つ港の闇に誰も向き        野澤節子

日傘さすとき突堤をおもひ出す       岡本眸

ひきだしに海を映さぬサングラス     神野紗希

花蜜柑どの子もどこか潮に濡れ     友岡子郷

半身を魚に囲まれている土曜      五島高資

ドーナツの穴からゆりかもめが見える  五島高資

北海の波立つてゐる夏布団          のの

ポケットの底に立夏の海がある     竹内一犀

海暮れて子が抱き上げし鯊の魚籠     露草

子にかけるプロレスの技海の家       露草

白南風や島を巡りて並木道         のりこ

梅雨きざす波止に帆船灯ともせり   米元ひとみ

水着着て恋のかたきと擦れ違ふ    米元ひとみ

ティータイム一畳だけの海の家    米元ひとみ

星涼し汀に残る砂の城         米元ひとみ

雨あとの島の近さよ夏つばめ     米元ひとみ

潮風に光飛ばして髪洗ふ        米元ひとみ

潮騒や座布団で足る子の昼寝     米元ひとみ

波引くと素足の下の砂騒ぐ       米元ひとみ

夏萩の丘へ連れきて海見せる     米元ひとみ

星涼し島の最高峰にゐて        米元ひとみ

海の子の部屋より見ゆる夏の海   米元ひとみ

寄す波の崩す砂山夕つばめ     米元ひとみ

蠍座と平行に寝る浜キャンプ     米元ひとみ

ビー玉の中のはるかな夏の海    米元ひとみ

群青の岬の空や夏ともし        米元ひとみ

ざこねして青蚊帳にきく波の音     米元ひとみ

夏帽子最南端の風にぬぐ       米元ひとみ

下船まですごす甲板ソーダ水     米元ひとみ

枕辺に五月の波の来たりけり     横山きっこ

サンダルをぶら提げてゆく防波堤    横山きっこ

土用波土用波へと崩れけり       横山きっこ

六月の海泣きにきて泣けなくて     横山きっこ

釣具屋の先に釣具屋夏近し       横山きっこ

失恋の歌の流るる海開き          金子敦

夏蜜柑ごろりと海へ傾きぬ         金子敦

石鹸に残る砂粒海の家           金子敦

海暮れて氷菓の棒の軽きこと       金子敦

いつせいに吊革傾ぎ夏の海        金子敦

夕焼の海閉ぢこめて画布畳む       金子敦

シャンソンの低く流るる海の家       金子敦

サーファーとなる数学の教師かな     金子敦

その夜の夢にあらはれ君泳ぐ       金子敦

行商の大いなる荷や土用波        金子敦

夕焼のかけらを踏める渚かな       金子敦

テーブルに残る貝殻海の家        金子敦

サンドイッチしづかに倒れ雲の峰     金子敦

ふるさとは遠き浜辺の花火かな       猫髭

短夜の海の母音の長きこと         猫髭

實朝の海へしただる青葉かな        猫髭

ひろげたる地図の岬があをあをす      茂雄

藍藍と海を五月の風が刷る          茂雄

揺れてゐるグラスの中の海の夏       茂雄

海明くる島のみどりの氾濫に         茂雄

夏川のひかりが海へ疾走す          茂雄

陽のあたるヨット陽翳るヨットあり       茂雄

灯台の白を晩夏の墓標とす          茂雄

打ち寄せる波のごとくに夏は来ぬ      茂雄

わが胸の海に涼しき波が立つ        茂雄

わが青き海に真白き帆がひとつ       茂雄

われは海ももかはヨット浮かべけり     茂雄

海の青さびしけふより一人の夏       茂雄

海の日の海を見てゐる漁師かな       茂雄

わが海にまつすぐ届く夏の波         茂雄

白日傘海辺にひとつ咲いてゐる       茂雄

逝く夏の浜に傾く帆がひとつ         茂雄

青簾外せば遠き海が見ゆ           茂雄

なみはやの波はや夏となりにけり      茂雄

大昼寝海へ海へと転がりぬ         茂雄

夏の波つぎつぎ白き帆となりぬ       茂雄




秋の海




鷹渡る白灯台を起点とし       栗田やすし

秋日差す海図古りたる操舵室    栗田やすし

けさ秋の一帆生みぬ中の海        原石鼎

コスモスや海少し見ゆる邸道     萩原朔太郎

真夜に島離れゆく船青芒        友岡子郷

秋の航一大紺円盤の中        中村草田男

秋の船風吹く港出てゆけり       飯田龍太

ガラス戸の隅隅にまで秋の海    阿波野青畝

空になき翳りを海に見て秋思      菊池洋子

満月がひとりにひとつ海の上     正木ゆう子

秋の暮大魚の骨を海が引く       西東三鬼

海鳴りのはるけき芒折りにけり     木下夕爾

海とどまりわれら流れてゆきしかな   金子兜太

空になき翳りを海に見て愁思      菊池洋子

渡るべき海の昏さよ秋燕       高山れおな

秋の海木の間に見えてはるかなり    安住敦

ガラス戸の隅隅にまで秋の海    阿波野青畝

まひるまの海の平へきりぎりす     寺田達雄

海の色に朝顔咲かせ路地ぐらし    菖蒲あや

けんらんたる七夕竹に海が透く   山口波津女

溜息のごとく秋の日海に入る      岩垣子鹿

葉月潮海は千筋の紺に澄み     中村草田男

いつのまに海はやつれて青蜜柑    川崎展宏

避雷針流れてやまぬ秋の海       川崎展宏

独りの母に海が濃すぎる曼珠沙華  鍵和田禾由子

野も盡きて海うろこ雲茜まとふ       津田清子

檸檬青し海光秋の風に澄み        西島麥南

きらめきて月の海へとながるゝ罐     横山白虹

かなかなや夕日のあとの海の紺       中拓夫

海をみて佇てば海より秋の風    久保田万太郎

かなかなや絹の海ゆく裁鋏          渋谷道

蟋蟀の無明に海のいなびかり       山口誓子

月光を燃えさかのぼる海の蝶       石原八束

秋海の一流木に心とめ          高野素十

波あがり音のおくるる秋のくれ    野見山朱鳥

秋の潮波ぎつしりと昏れ際佳し     安達真弓

爽やかや風のことばを波が継ぎ     鷹羽狩行

月からの流木その他ありにけり     五島高資

初潮や文箱の螺鈿にじいろに      馬場龍吉

月の夜の川に入り来る海の魚     久保山敦子

尾花みな海にかたぶく岬かな      吉藤春美

星月夜デッキブラシと踊りけり      米元ひとみ

流星のひとつとびせり瀬戸の海     米元ひとみ

見送りのフェリーに乗つてしまふ秋   米元ひとみ

流星群待つ砂浜に焚火して        米元ひとみ

虫の夜をライトアップの豪華船      米元ひとみ

秋の燈をゆらし徹夜の浚渫船      米元ひとみ

吹かれくる浜辺の砂と秋の蝶      横山きっこ

あんぱんの袋引き裂く秋の海        金子敦

雲ひとつはぐれてゐたり海は秋 ,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,金子敦

港はや九月の海の暗さ負ひ          茂雄

秋の潮目を細めては開きては         茂雄

秋の波こころの浜に押し寄せて        茂雄

白浜の夕べを濡らす秋の波          茂雄

波白く砕けて秋の浜となる          茂雄

月光裡湾岸線に乗りしより          茂雄

秋晴れや海を遥かに船具店         茂雄




冬の海






水枕ガバリと寒い海がある       西東三鬼

路地ごとに海の暗さやクリスマス  加藤三七子

病めば蒲団のそと冬海の青きを覚え 中塚一碧楼

冬海や一隻の舟難航す          高浜虚子

あをあをと年越す北のうしほかな    飯田龍太

冬うらら海賊船は壜の中         中村苑子

鷺とんで白を彩とす冬の海        山口誓子

木がらしや目刺にのこる海の色   芥川龍之介

風花のかかりて青き目刺買ふ     石原舟月

水仙の花のむこうはいつも海      伊藤敬子

海を見るひとりひとりに雪降れり    小田郁子

海に出て木枯帰るところなし      山口誓子

哭く女窓の寒潮縞をなし         西東三鬼

凩や馬現れて海の上            松澤昭

核の冬天知る地知る海ぞ知る     高屋窓秋

皿洗う水のいつしか暗い海     林田紀音夫

冬の波冬の波止場に来て返す     加藤郁也

冬の海鮫の百尾もゐるごとし      藤崎久を

がうがうと朝日押上ぐ寒の海    小島みつ代

燈を点けて冬至の海の貨客船     川崎展宏

海鳴りの底よりにじむ一流木       穴井太

そそる石山水仙ひとむら海を聴き   友岡子郷

どこまでも海が蹤きくる冬の坂  鍵和田禾由子

海鳴りに覚める祖の血や野水仙 鍵和田禾由子

鏡餅こころの海の光るなり     鍵和田禾由子

初桜もう海に無い玉手箱      鍵和田禾由子

冬の海吐出す顎の如きもの       高橋睦郎

冬麗の海を木の間に子守唄     片山由美子

薄々と筆を下ろせば冬の海      正木ゆう子

海光を海にかへして冬の崖       平井照敏

またもとの如く昃り冬の海       波多野爽波

全身が書に飢えて冬の日は海となる  橋本夢道

冬苺海一枚となり光る         深見けん二

冬の海こころにも波確かなり       朝倉和江

編棒は荒海をあむ蔵の窓         渋谷道

母死んで海の青さよつわぶきよ    坪内稔典

冬の海をんなを畳みきれざるまま  小檜山繁子

冬海へ鳴らぬ時計をささげゆく    宇多喜代子

障子あけて置く海も暮れ切る      尾崎放哉

海見えて風花光るものとなる      稲畑汀子

母の櫛使えば吹雪く海が見ゆ     大井 恒行

一月の海まつさをに陸に着く        原田喬

群青の海に櫂漕ぐ冬の夢         妹尾 健

冬波の百千万の皆起伏        高野素十

寒潮の一つの色に湛へたる      高野素十

冬波に乗り夜が来る夜が来る      角川源義

波冴ゆる流木立たん立たんとす    山口草堂

冬の波退くや鉄鎖の響きして     長谷川櫂

凍港や楽器売り場のごと光る      櫂未知子

病室の窓はんぶんは冬の海      五島高資

どの海も海と繋がる大旦        辻美奈子

枯草の上に大きな海があり      山西雅子

木枯や佐渡を背に立つ良寛碑       のりこ

数へ日のひと日を海に遊びけり     吉藤春美

日矢あまた降りてしづかな冬の海   吉藤春美

寒月光海の底ひに届きけり      吉藤春美

海山の風をいとはず雪中花      吉藤春美

水仙の波打つ崖に上りけり      吉藤春美

灯台と海の暮れゆく野水仙      吉藤春美

寒の波雲湧くごとく立ち上がる    吉藤春美

一湾の波ともなれず百合鴎     吉藤春美

ホットレモン船の発着見てをりぬ   米元ひとみ

黒ブーツ寄港の夫に会ひにゆく    米元ひとみ

冬夕焼コンビナートに巨船入る    米元ひとみ

凩の港に立てりオリオン座       米元ひとみ

黒潮の浜にうたた寝十二月      米元ひとみ

沖の船灯り初めたる冬景色     米元ひとみ

冬凪へ胸の揚羽を放ちけり       横山きっこ

小春日の海に三つの汽笛かな     竹内一犀

月光をさりさり削る波がしら        金子敦

欠伸して冬麗の海見えて来し       金子敦

思い出になりかけてゐる冬の海      金子敦

冬かもめ白いページとなりて舞ふ     金子敦

空缶のななめに刺さり冬の海       金子敦

海を見て来しマフラーを畳みけり     金子敦

一歩づつ海盛り上がる枯野かな     金子敦

冬蝶や崖の下より波の音         金子敦

白息の声とはならず夜の海        金子敦

冬空と海のあはひの軋みけり       金子敦

冬晴の海や少年なら叫ぶ          金子敦

初日出で海の匂ひをまとひけり      金子敦

冬木の芽ひとつひとつが海に向く     金子敦

しばらくは海を見てゐる焼藷屋      金子敦

冬濤の砕けてはまた星となる         茂雄







歌仙

これは2004年5月からわたしの掲示板ではじまった連句です。
      宗匠役のひとみさんの呼びかけで始まったこの連句は、歌仙と
呼ばれる形式でやっているのですが、誤解を恐れずに言えば、イメージ
遊び、言葉遊びの楽しさがあります。まるでブレーンストーミングに似た、
連想が連想を呼び、イメージがイメージを生み、言葉が言葉を紡ぎ出す
という知的好奇心をくすぐる遊戯。しかも大人でないと付き合えないような、
長句から短句への付合(つけあい)の和。
まだお互いに一度も会ったこともないにもかかわらず、もう旧知のように
「しげちゃん、ラスカルちゃん」などと呼び合う連衆になりました。
わたしをはじめ最近始めた初心者が編んだ歌仙ですので、
専門家の方がご覧になったら、とても連句文芸などと言えない
かも知れませんが、楽しく繋ぐことが出来ました。掲示板「海の見える
カフェ・テラス」にて編まれた歌仙ですので、この「海の見える俳句」の
ページに置くことにしました。ご笑覧いただけると幸いです。
日付は歌仙が巻き上がった日です。文を中揃えにしたら句や名前が
乱れてしまいましたが、この乱れがまた波のイメージに似ている
のを幸いに、あえて揃えることをしせんでした。ご了承のほどを・・・
(文責・しげお)






半歌仙<秋しぐれの巻> 2005/11/01

半歌仙<小鳥来るの巻> 2005/10/19

半歌仙<焼栗の巻> 2005/10/02

半歌仙〈星月夜の巻〉 2005/09/22

半歌仙<風の盆の巻> 2005/09/09

半歌仙<野分の巻> 2005/09/01

半歌仙<寅の小芋の煮つころがしの巻> 2005/8/17

歌仙〈花氷の巻> 2005/8/7

半歌仙〈夏旺んの巻〉 2005/0719

半歌仙<白南風の巻> 2005/07/10

半歌仙<夏炉の巻> 2005/06/29

歌仙<キャンプの巻> 2005/06/20

歌仙<若葉風の巻> 2005/06/02

歌仙〈初冬の巻〉 2004/11/29

歌仙〈泡立ち草の巻〉 2004/10/30

歌仙〈初紅葉の巻〉 2004/10/04

歌仙〈秋燕の巻〉 2004/09/20

歌仙〈秋晴れの巻〉 2004/09/11

歌仙〈つくつく法師の巻〉 2004/08/29

歌仙〈爽籟の巻〉 2004/08/19

歌仙〈夏木立の巻> 2004/08/06

歌仙〈噴水の巻〉 2004/07/21

歌仙〈花茣蓙の巻〉 2004/07/05

歌仙〈子蟷螂の巻〉 2004/06/21

歌仙〈白日傘の巻〉2004/05/xx




<秋しぐれの巻> 2005/11/01

発句 踏みしむるサヴィの紋章秋しぐれ      きりん
脇句 射す月光に舞ひ出づる蝶           しげお
第三句 白頭の杖先の萩のちるらん         猫髭
第四句 厳戒令の検問抜ける            ひとみ
第五句 口ずさむドレミの歌や大夏野        のりこ
第六句 コモ湖見下ろしアイスクリーム       きりん
折立 色紙をちぎる画伯の指太し          露草
裏二句 夜汽車に揺られ思ひ出の街         猫髭
裏三句 赤提灯ふいに降りたる駅前の        しげお
裏四句 つまみは君の歌だけでいい         ひとみ
裏五句 マドンナとメール交換同窓会        のりこ
裏六句 道後のお湯にどぶんと沈み         きりん
裏七句 かき混ぜる冬三日月を棒にして       しげお
裏八句 耳飾らむと外す凍星            ひとみ
裏九句 きりん見にブルートレインで草原へ     のりこ
裏十句 さらば西伊豆暮れなづむ海         猫髭
花の座 花便り父の帰りを待ち侘びて        露草
挙句 春の泉にきらめくコイン           のりこ




<小鳥来るの巻> 2005/10/19

発句 小鳥来る学園祭のカフェテラス       のりこ
脇句 マイクの声の巻き舌さやか         ひとみ
第三句 胡桃割り人形踊る月の夜に        きりん
第四句 思ひ出したる洞窟の部屋         しげお
第五句 大焚火虎のパンツの干されあり      露草
折端 千里の道を来て玉子酒           のりこ
折立 把瑠都てふ銀杏の色の大銀杏        ひとみ
裏二句 黄昏れてなお夕日の二人         しげお
裏三句 燒立ての麺麭のかをりの移り香に     猫髭
裏四句 腰に抱きつきコーナー抜ける       ひとみ
裏五句 放課後にいつも追ひかけられてをり    のりこ
裏六句 ポニーテールの跨る箒          しげお
月の座 夏月へ翼大きく旋回す          ひとみ
裏八句 青き裾野に人型の的           露草
裏九句 ポンペイの黒焦げのパン握りしめ     きりん
裏十句 現れ出づるポエムの女神         のりこ
花の座 山桜占ふ秋の豊穣を           猫髭
挙句  終日飛ばす春の白波           しげお




<焼栗の巻> 2005/10/02

発句 焼栗に通勤かばん膨れけり         露草
脇句 深爪の子も秋渇く子も             ひとみ
第三句 鍵盤の波立つ月の光にて         桃蹊
第四句 沈黙の舌音を結べり           猫髭
第五句 襟巻きに埋める頬のやや紅く       のりこ
折端 両手いつぱい刈る水仙花           きりん
折立 美丈夫な孫と宝の島めざし         露草
裏二句 波濤きらめく百選の海           のりこ
裏三句 同窓会助手席に彼躍らせて        ひとみ
裏四句 送りしがまた送られてをり         桃蹊   
裏五句 これよりは振りむかざりき橋づくし   猫髭
裏六句 川音ゆかし「ごりや」の二階       きりん
月の座 月涼し沙翁の訳の品定め        露草
裏八句 夜風のほどく紗の單衣帶         猫髭
裏九句 クイズ王目差して百科事典読む     桃蹊
裏十句 泣く泣く売れど二束三文          ひとみ
花の座 養生所跡一面の花むしろ         露草
挙句 しやぼん玉吹く小猿のおもちや      きりん




<星月夜の巻> 2005/09/22

発句 言霊の飛び交つてゐる星月夜   ラスカル
脇句 魔女が三人ハロウィンパーティ    桃蹊
第三句 マンダレイの城あらはるる月光に 猫髭
第四句 ものほし竿に証拠の指紋      露草
第五句 先生の書棚にのぞく綿レース       ひとみ
折端 隠れて食べるアイスクリーム       のりこ
折立 ここの席とつていますと鞄置く       ひとみ
裏二句 盗られたものはハートの形       桃蹊
裏三句 目覚めては夢の息する煙草の輪    猫髭
裏四句 ディオリッシモの香り残して       のりこ
裏五句 ビンテージショップの窓に人の顔    きりん
裏六句 修行のすゑの如来神拳        露草
月の座 月冴ゆる駅に痴漢を引き渡す     ひとみ
裏八句 電車男に年末賞与           桃蹊
裏九句 猫去つて何やらの骨残りたる        ラスカル
裏十句 土の中より古伊万里の壷         のりこ
花の座 カラオケの宴となりたり花筵       きりん
挙句  チャイナドレスもサリーも朧       ひとみ




<風の盆の巻> 2005/09/09

発句 編笠のあぎと美し風の盆          きりん
脇句 囃す胡弓に添ふ酔芙蓉           猫髭
第三句 名月をロッカールームに仰ぎ見て     ひとみ
第四句 報道陣の待つ会場へ           のりこ
第五句 俳句部のしごき発覚落し文        露草
折端 山青く切り開く注連縄           桃蹊
折立 また一つパラグライダー風に乗り      きりん
裏二句 もがき目覚むる香具師の親分       露草
裏三句 映画館出づる瞳のうるうると       ラスカル
裏四句 エレベーターの中の抱擁         ひとみ
裏五句 飛び込んで来る社長の臭い息       桃蹊
裏六句 雨に打たるる高階の窓          きりん
月の座 終電のあとのホームや冬の月       のりこ
裏八句 凍蜂とまる必勝だるま          露草
裏九句 強面がお笑ひ界に躍り出て        ひとみ
裏十句 硝子細工のやうなキャンディ       ラスカル
花の座 花びらの舞ひこむ庭の明るさに      桃蹊
挙句 粋な話の出る春障子            猫髭




<野分の巻> 2005/09/01

発句 玄関に百花とりこむ野分かな        猫髭
脇句 安全靴にひそむ蟋蟀             ひとみ
第三句 楽洩るる飯場に月の渡るらむ      ラスカル
第四句 名前を変へて劇団通ひ         のりこ
第五句 悴みし手に売れ残る前売り券      きりん
折端  蜜柑を剥いて語る大叔母         桃蹊
 折立  太ももで止まつてしまふ白きチュチュ   ひとみ
裏二句 空缶つぶし政見をぶつ           露草
裏三句 マイレージ溜め飛行機で逢ひに行く    のりこ
裏四句 コイン投げ込むトレビの泉          きりん
裏五句 王子生る露草色のまなこして       露草
裏六句 髯生ひ茂る英雄の像            桃蹊
 月の座 試写会にパールのピアス夏の月      のりこ
 裏八句 肩で風切り炎天に消ゆ            ひとみ
裏九句 網棚に金襴の袈裟置き忘れ        露草
裏十句 鍼灸院の細きベッドに            きりん
花の座 黒猫の尻尾揺れたる花の幹       猫髭
挙句 膝膝膝にたんぽぽの絮           桃蹊




<寅の小芋の煮つころがしの巻> 2005/8/17

発句  寅を待つ煮つころがしの小芋かな   ひとみ
脇句   取つて置きなる新酒のかをり     猫髭
第三句 月の宴地球の青さ如何ならむ     しげお
第四句 柱かたむく印刷会社         露草
第五句 出目金とにらめつこするタコ社長   きりん
第六句 茅の輪に近く名調子なる       ひとみ
裏一句 雲つれて竿竹売りの通りけり     しげお
裏二句 血相変へてきたる源公        露草
裏三句 好きですと差出の無きラブレター   きりん
裏四句 いま出た鴉戻る団子屋        ひとみ
裏五句 胸焦がす薄くれなゐの押し花に    露草
裏六句 愛蔵書より零れる栞         しげお
月の座 冬月や眼鏡のままに居眠りて     ひとみ
裏八句 炬燵抜け出す縞縞の猫        きりん
裏九句 はばかりへ満男に魚籠の番させて   露草
裏十句 海の色したひとみの瞳        しげお
花の座 煮炊きするさくらに桜ひらき初む   ひとみ
挙句  鞄片手に春風の中           きりん




〈花氷の巻> 2005/8/7

発句  花氷岬の果てのホテルかな          桃蹊
脇句  浴衣に着替へ初顔合はせ           ひとみ
第三句 銅鑼鳴つて食材の虎放つらん         露草
第四句 ロケのセットの壊れ易くて          きりん
月の座 末つ子の煉瓦の家や月出づる         のりこ
第六句 色うしなひし山萩の花            猫髭
裏一句 火のごとき紅葉づる枝を渡されて       桃蹊 
裏二句 雲越えてゆくリフトの二人          ひとみ
裏三句 惑星を眼下に姫とランデブー         露草
裏四句 青き氷河の深き割れ目に           きりん
裏五句 お互ひの指先そつと突付きあひ        ラスカル
裏六句 試合きめたる竜巻落とし           露草
裏七句 観客へ飛び込むボール冬の月         ひとみ
裏八句 小人の家に降れる白雪            のりこ
裏九句 とびつきりお茶目な女の子が来て       桃蹊
裏十句 ピザトーストにボルドーワイン        きりん
花の座 九十を越してまだまだ花盛り         露草
折端  春のいちごを摘む車椅子           ひとみ
ナ表一句 アルプスの山より届く雪解水        桃蹊
ナ表二句 パレットに出す青空の色          のりこ
ナ表三句 美しきボッティチェルリの女神たち     きりん
ナ表四句 上半身を貝にはさまれ           露草
ナ表五句 白靴に真珠の涙こぼしけり         ひとみ
ナ表六句 Allegro洩るる避暑地のコテージ       猫髭
ナ表七句 メール打つロマンス小説を読んで      桃蹊 
ナ表八句 最終便を待つエアポート          のりこ
ナ表九句 催事終へ人影絶ゆる河川敷         きりん
ナ表十句 寅の口笛しだいに遠く           露草
月の座  月祭る小庭親しき町工場          ひとみ
裏十二句 錆びし鐵路に鳴くきりぎりす       猫髭
裏一句 淋しさの果てなる國ぞ芒茂る        桃蹊
裏二句 世界遺産に沖つ白波            のりこ
裏三句 古代文字最中の皮に焼きつけて       露草
裏四句 番屋の隅に薄茶の香り           ひとみ
花の座 蝦夷富士をはるかに花の咲き初むる     きりん
挙句  加速楽しき駒に春風             のりこ




〈夏旺んの巻〉 2005/0719

発句  夏旺ん洋書ひらけば文字に影         露草
脇句  軌道くづさず雲の峰へと           のりこ
第三句 宙へ浮き少年の夢かなふらむ         ひとみ
第四句 オールスターの球場に立つ          きりん
月の座 星月夜海へ海へと白い道           桃蹊
第六句 唐辛子にもオモニの好み           露草
裏一句 川の字に一休と寝る秋の蚊帳         のりこ
裏二句 悪代官に利かすはつたり           ひとみ
裏三句 芝居跳ね京の夜風に吹かれをり        きりん
裏四句 波乗り上手のヒロシの噂           桃蹊
裏五句 いたづらな指の包帯太巻きに         露草
裏六句 湯治場までの青春切符            のりこ
月の座 歌姫の白きピアノや冬の月          猫髭
裏八句 悴む足がカクテルにとけ           ひとみ
裏九句 出張す鞄にフラスコを詰めて         桃蹊
裏十句 美女の隣のファーストクラス         きりん
花の座 桑港の橋渡り来し桜かな           のりこ
挙句  さざ波生れて透ける春服           ひとみ




<白南風の巻> 2005/07/10

発句  白南風や島を巡りて並木道          のりこ
脇句  自転車漕げば波立つ青田           桃蹊
第三句 焼きたてのピザを頬張りゴンドラに      きりん
第四句 気位高くテノール響く              ひとみ
月の座 湯あたりの顔煽られて寝待月        露草
第六句 塀乗り越えてコスモスの駅          のりこ
裏一句 大空へ投ぐる釣り糸秋うらら         きりん
裏二句 そろりそろりと猫の寄り来る         ラスカル
裏三句 抱擁す白い海岸線冒し              桃蹊
裏四句 一番高き塔までタンゴ               猫髭
裏五句 究極の愛の薬に博士の名            露草
裏六句 大和の国にたなびく襁褓            のりこ
月の座 寒月や背に彫りたる地蔵尊          のりこ
裏八句 クレーンうごめく冬霧の中           ひとみ
裏九句 裕次郎の映画なつかし見てみたし      きりん
裏十句 大波ひとつ帆船となる            桃蹊
花の座 あたふたと狼煙あげたる花の山       露草
挙句  阿蘭陀坂を春日傘揺れ   猫髭




<夏炉の巻> 2005/06/29

発句  白樺の榾芳しき夏炉かな          きりん
脇句  扇子に青き波の文様            桃蹊
第三句 脇役の大輪の花咲くならむ         ひとみ
第四句 蝶の香ぞする櫛比の路地に        猫髭
第五句 蓋開くタイムカプセル月今宵        露草
折端  虫の声する竪穴住居             ぴーこ
折立  新米のおむすび三つ懐に          きりん
裏二句 男子生徒にひろまる噂           露草
裏三句 しんしんと二人船首に碧むまで       桃蹊 
裏四句 妻であること伏せる蜜月          ひとみ
裏五句 火膨れのやうな手錠の跡さすり      露草
裏六句 おゆずりしますピアノと子猫        ぴーこ
月の座 上弦へライトセーバー翳したる       きっこ
裏八句 1549の秋へスリップ           桃蹊 
裏九句 お芝居の稽古見舞ひに餡ドーナツ     きりん
裏十句 Mobit Card貰つて帰る            露草
花の座 花見酒まはらぬ首をまはしては       ひとみ
挙句  お江戸の鐘を聞く春袷        猫髭




<キャンプの巻>2005/06/20

発句 お隣の味噌かりてくるキャンプかな      ひとみ
脇句 時計の跡の真白き手首            桃蹊 
第三句 ぼろ車名馬のやうに洗ふらん        露草
第四句 草に寝転び口笛吹いて           きりん
第五句 夭夭たる桃の實愛づる月下老        猫髭
折端 吉備団子提げ喧嘩上等            露草
折立 セッションは子供同士やきりぎりす      ぴーこ
裏二句 マイク離さぬ親方の夜            ひとみ
裏三句 ぬいぐるみ私のためにキャッチして     のりこ
裏四句 綱するすると登る逢引           露草
裏五句 サーカスの二人手を取り足を取り      桃蹊
裏六句 のんのこずんずい小象のダンス       猫髭
裏七句 大鼓の紐しめなほす冬の月         きりん
裏八句 金柑ひとつことりと跳ねて         のりこ
裏九句 総書記のご機嫌悪しき徹夜明        露草
裏十句 島一周の鉄人レース            ぴーこ
花の座 赤チンを吹いて乾かす夕ざくら       ひとみ
折端  春の道来る美少女の靴           桃蹊  
ナ表一句 雪形の髭もじやおんじ耀ける       露草  
ナ表二句 犬も積み込み飛び立つ気球        きりん
ナ表三句 盛り上がる開田高原鳥瞰図        のりこ
ナ表四句 遅れて届くその日の写真         ラスカル
ナ表五句 夏祭森より深きところにて        桃蹊 
ナ表六句 愛の指圧にあふるる泉          露草
ナ表七句 廻廊へ黄金園丁しづしづと        猫髭
ナ表八句 丸つけてゐるギブス外す日        ひとみ
ナ表九句 ふところのあんぱんのまだ温かき    ラスカル
ナ表十句 佐渡を目指して盥のお舟        きりん
月の座  月光に真珠の指輪かざしけり      ぴーこ 
折端   髑髏小町は