ムルシア
ムルシア滞在 1998年2月20日
ムルシアの町
バエサからアリカンテ行きのチケットを買って、バスに乗り込んだわたしは、ムルシアの町が見えるまで
迷っていた。アリカンテまで行こうか、ムルシアで降りようか。
バエサを10時20分に出たバスは予定では16時30分にムルシアに着く。アリカンテならばさらに
二時間かかる。
バスはバエサを出てウベダに寄り、その後はひたすら険しい山に中を走っていく。岩山をいくつも越え、
こんなところにも人が住んでいるのか、と驚くようないくつもの小さな村に立ち寄っる。オリーブ畑
が一面に広がったかと思うと、すぐ不毛の岩山がそびえ、気がつくと松林やアーモンド畑が広がる。
13時半にはある村で30分間の休憩があった。もちろん、どこをどう通って来たのか、この村が何という
村なのか、さっぱりわからない。同じバスに乗っていたおばさんに聞くと「ウエスカル」という村という
ことがわかった。乗客はみな、バスが停車した目の前のバルに入っていく。わたしはちょっと離れたバルに
入ってみた。するとどこからともなく一人の男の人がやってきて、しつこく話かけてきた。話すのが不自由
な人だったが、事故でこうなった、という。お店のお兄さんは「しょうがないなぁ・・・」といった
様子をしている。その言葉の不自由な人はホセ・カルロスというのだが、新聞を持って来て、日本の記事
をわたしに見せた。失礼な言い方だけど、思ったよりもアタマはしっかりしているようだ。
お店のおにいさんはわたしを庇おうとしてくれる。きっと、ホセ・カルロスはいつもこんな感じで
誰かにかまってもらいたくて仕方がないのだろう。バルのお兄さんに「スペインで何しているの」と
聞かれたので「旅行をしている」と答えると、こんなところに旅行者、それも日本人がくることが珍しい
らしく、「旅行かぁ、sin rumboだね」と言った。sin rumboとは「行く当てのない」ということ。
そうなのだ、今日はどこへ行こう。まだ迷っているのだ。
結局、このお店で飲んだコーラ代はホセ・カルロスがおごってくれた。そして、「buen viaje」という言葉
を耳に、お店を出た。
ウエスカルの郊外には洞窟住居がいくつもあった。洞窟住居で有名なグアディックスにも近い。グアディックス
には行ったことがないが、きっとこんな感じだろう、と思いながら車窓から眺めた。
その後もいくつもの村を抜けていく。中でもムラという村はカーニバルの雰囲気にあふれ、高い山の上に
そびえ立った城跡は圧巻で印象的だった。
ムルシアが近づくにつれ、大地がだんだん白っぽくなってきた。オレンジやレモンが木が多くなる。もう
ムルシアは近いのだろう。街が見えてきて、あまりの大きさにビビりまくった。今まで比較的田舎にばかり
いたから余計にそう感じる。バスターミナルに向かうまではこんなところで降りたら大変なことになり
そうな感じがした。地図も何もない、バスターミナルに行く途中、オスタルらしき看板も見当たらないのだ。
不安でいっぱいだったが、このままアリカンテに行っても、時間が遅い。それに、後で後悔するのでは
ないか。結局、ムルシアでバスを降りた。
ムルシアに着いたはいいが、右も左もわからない。しばらく歩いてみるがオスタルらしき看板はやっぱり
ない。これだけの大きさの町なら、バスターミナル周辺とか、もっとオスタルがあってもいいんじゃない!
と思いつつ、重い荷物を背負って歩く。結局、通り掛かりの人に教えてもらった4つ星のホテルに泊まる
ことにしてしまった。ちょっと諦めが早かったような気がするが、仕方ない。
正直言って、こんな良いホテルは泊まったことがない。でも、もう歩くのは嫌だ。たまにはこんな
ホテルもいいんじゃないか。隣にはエル・コルテ・イングレスもあるし、何かと便利そうだ。
ホテルに荷物を置いて、グランビアを目指して歩くと、劇場の前にインフォメーションがあった。
ツーリスト向けではなくて、一般市民向けの
インフォメーションのようだ。とりあえず、地図をもらい、人の流れに身を任せる。と、大きな木が植わった
広場に出た。木の下のベンチにはたくさんの人たちがおしゃべりをしている。カーニバルが近いので
仮装をしている子どもたちもたくさんいる。その広場から歩行者専用道路を抜けるとそこがカテドラルだ。
カテドラルのシンボルである塔は残念ながら工事用のフェンスで覆われていて、よく見えなかった。ここまで歩いてきて、結局、オスタル
はこのカテドラルの前にあった一件しか見つけることができなかった。それにしても、少ない。
ムルシアの町に来て、まず気づいたのは黒人が多いということ。カルタヘナが近いからだろう。そして
町にはバルというより、カフェが多い。日本でもはやりのお洒落なカフェがたくさんあり、御婦人たち
がお茶とおしゃべりを楽しんでいるという光景は今までスペインを旅行してきても目にしたことが
ない。
ムルシアという町は大きな町だけれど、日本のガイドブックではまず、紹介されることがない。
でも、どんな所だろう、と気になっていたので、こうして途中下車してよかったと思う。
翌朝、11時のバスでアリカンテに向かうことにした。朝はゆっくりと起きてバスターミナルに
向かう。もう迷うことはない・・・はずだった。でも、気づくとバスターミナルを行き過ぎていたらしい。
近くにいた人に尋ねたら、笑われてしまった。どうも方向音痴は直らないようだ。
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