|
アンは23歳。母親の家の庭にあるトレーラーハウスで、夫と幼い2人の娘たちと暮らしている。夫ダンは失業中で、生活のためにアンは夜間、大学の清掃の仕事をしている。ファーストキスの相手だったダンとの間に子供ができ、17歳で長女を出産した。それからは妻として母親として毎日に追われる日々を過ごしてきた。真面目で子供の面倒もみる優しい夫とかわいい娘たちに囲まれて、贅沢はできないけれど、平穏な生活を送っていたある日、彼女はガンであることを告知される。ガンは全身に転移をしていて、余命2ヶ月の宣告を受けたアンは死ぬまでにしておきたいことを10項目書き出す。
1.娘たちに毎日「愛してる」という。
2.娘たちの気に入る新しいママを見つける。
3.娘たちが18歳になるまで毎年贈る誕生日のメッセージを録音する。
4.家族でビーチへ行く。
5.好きなだけお酒とタバコを楽しむ。
6.思っていることを話す。
7.夫以外の男の人とつきあってみる。
8.誰かが私と恋に落ちるよう誘惑をする。
9.刑務所にいるパパに会いに行く。
10.爪とヘアスタイルを変える。
家族に自分の病気のことを隠したままアンは一つずつ実行していく。娘たちのためにこっそりとテープにメッセージを吹き込む姿は見ていてやりきれない。早くに結婚してしまったアンは青春を育児と家事に費やしてきた。もっと人生を楽しみたかった、恋愛もしたかった、という気持ちがこれらの項目にも現れていて、死ぬ前くらい自分のために生きてみよう、というアンの気持ちが伝わってくる。そして、アンはコインランドリーで知り合ったリーと親しくなる。自分の生まれ育った町しかしらないアンは、仕事で世界中を巡っているリーに憧れる。そして、アンは夫との間に、最初で最後の秘密を抱えることに。夫ダンのことを考えると複雑な気持ちになるし、このアンの気持ちを理解できない人もいるかもしれない。けれど、死んでゆく自分を最優先に考えた結果なのだろうと思うと、ダンに知られなければこのくらいのわがままはいいじゃない、という気持ちにさせられる。わたしがもしアンだったら、やっぱり恋をしたいと思うかもしれない。
この映画を見ると、自分が余命2ヶ月だとしたらやっておきたいことって何だろう?って10項目挙げてみたくなる。でも、きっと今考える10項目と実際に余命2ヶ月と宣告されたときの10項目って全然違うに違いない。
スペイン映画(カナダとの合作だけど)と言っても、舞台はカナダで、台詞は英語。バルセロナ出身のイサベル・コヘットが監督し、エグゼクティブ・プロデューサーとしてペドロ・アルモドバルがバックアップしている。
主役のアンを演じるサラ・ポーリーの地味さと普通っぽさがとてもよかった。スペイン人では隣のアン役をレオノール・ワトリングが演じている。
死んでいく1人の若い母親が主人公で、「わたしのいないわたしの人生」という、聞いただけで心の奥がズキッとしてしまうようなタイトル(原題)で、見る前からちょっとした感傷にひたってしまった。確かに病気を隠して1人死ぬ準備をする姿は見ていてつらいのだけれど、アンは自分のことだけでなく、家族の将来を考えて前向きに死を迎える。悲しい物語であるのに、重苦しい感じが残らないのがこの映画のすばらしいところだと思う。
2003年10月25日日本劇場公開
公式サイト(日本):
http://www.shinumade10.jp/
|