HABLE CON ELLA
トーク・トゥ・ハー
Hable con ella2002年 スペイン映画
監督・脚本:ペドロ・アルモドバル
撮影:ハビエル・アギレサロベ
音楽:アルベルト・イグレシアス
編集:ホセ・サルセド
製作総指揮:アグスティン・アルモドバル
出演:レオノール・ワトリング(アリシア)、ハビエル・カマラ(ベニグノ)、ダリオ・グランディネッティ(マルコ)、ロサリオ・フロレス(リディア)、ジェラルディン・チャップリン(カタリナ)、パス・ベガフェレ・マルティネス
* sinopsis + comentarios *


 クリニックの一室で、昏睡状態のアリシアを献身的に介護する看護師のベニグノ。彼は15年間、自宅で母親の介護をしてきた。母親の世話に身を費やし、恋愛とは無縁な人生を送ってきた彼は、自宅の窓から見えるバレエスタジオでレッスンをするアリシアに恋心を抱くようになっていた。母親が亡くなった後、彼はようやくアリシアへの接触を試みるけれど、ほとんど会話を交わすこともできず、不器用なベニグノはどうしたらよいのかわからない。そして、ある雨の日、アリシアは交通事故に遭い、植物状態となってしまった。それを知ったベニグノは母親の介護をしていた経験を活かして、アリシア専属の介護士となり、事故から4年間、ずっとアリシアの身のまわりの世話をしてきた。
 アリシアとベニグノがいるクリニックに、ジャーナリストである恋人マルコに付き添われ、女性闘牛士のリディアも入院する。取材がきっかけで知り合い、過去の恋愛の影が見え隠れしつつも、交際をはじめたリディアとマルコ。彼女は闘牛の前に「終わったら話がある」と言ったまま、牛の角にかかり植物状態になってしまった。マルコは彼女が意識を取り戻すのは奇跡に等しい、という医者の言葉にショックを隠せず、ピクリとも動かないリディアを前に、どう接したらいいのかわからない。
 そして、アリシアの病室の前を通ったとき、ベニグノが普通に語りかけているのを見てマルコは衝撃を受ける。そんなマルコにベニグノは「語りかけてごらん。女性の脳は神秘的なものだから」とアドバイスをする。こうして全く性格の異なる2人の交流が始まる。しかし、マルコはリディアが試合の後に話そうとしていたことが何であったのかを知り、彼女の元を去る。その後、ベニグノの状況も一転する。

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 ベニグノはアリシアの入院着を脱がせ、全身をくまなく丁寧に拭く。爪を手入れし、髪を切り、マッサージを施し、生理の処理もする。看護師として、献身的にアリシアの世話をする様子は同僚も感心するほど。その姿に下心やいやらしさは感じられない。しかし、彼のアリシアへの思いは特別なものだった。彼にとってアリシアが生活の全てで、余暇もアリシアの好きな舞台やサイレント映画を観るのに費やす。それをアリシアに語るために。ベニグノは、アリシアが事故にあったことによって、「人生で最も充実した時間」を送っているのだった。しかし、「縮みゆく恋人」というサイレント映画を観たことによって彼に変化が生じる。

 この映画に対して、賛否両論あるのはよくわかるし、人それぞれいろんな感じ方がある映画だと思う。純粋で不器用なベニグノの「愛」をどうとらえるか。ベニグノにとってアリシアは生甲斐。では、アリシアにとっては・・・?ベニグノの一方的な愛を(植物状態である)アリシアはどう思うのだろうか。本当に彼女に伝わっているのだろうか。不気味さと共に、アリシアに同情心すら抱いてしまったけれど、最後のシーンで救われた。ベニグノの思いがアリシアに伝わっていたことを感じさせる印象的なシーンだった。(ちょっとネタバレ→)本当の奇跡はアリシアが目覚めたことよりも、目覚めたアリシアがマルコに気付いたことではないだろうか・・・。(おわり)

 エゴイスティックであるにもかかわらず、そんなに嫌悪感を抱かなかったのは、彼が単なる偽善者ではなく、根からの良い人であることが強調されているからなのかも。ジェラルディン・チャップリンが演じるバレエの先生カタリナとのやりとりも、ホッとさせられた。(ちょっとネタバレ→)だから、マルコがカタリナに、ベニグノの死を伝えたとき、涙がこぼれた。(おわり)結果としてベニグノは周囲のみんなを裏切ったけれど、彼女はベニグノの善良さをよく理解していたはず。わたしが感じたのと同じように、複雑な心境だったのだろうと思う。
 そして、マルコの存在。ベニグノにとって、マルコは初めて必要とし、必要とされた人間だったように感じられた。刑務所でのマルコとのやりとりはベニグノの人間性がよく表れていると思う。

 映画の舞台となるのは「エル・ボスケ(森)」という名前のクリニック。アリシアは文字通り、「眠れる森の美女」。王子さま役のベニグノは、王子さまというにはあまりに風采があがらない。(ちょっとネタバレ→)それもキスではなく、もっと過激な方法で目覚めさせてしまうという。(おわり)演じているハビエル・カマラ自身の魅力がなかったら、ただの変態で終わりかねない・・・かも。「マルティナは海」でマルティナ役だったレオノール・ワトリングがアリシアを演じている。リディア役のロサリオは今では歌手として活躍しているけれど、かつては女優として活動していた。日本で観られるものでは、「インセスト近親相姦」にアントニオ・バンデラスの恋人役で出演している。
 ピナ・バウシュとカエターノ・ヴェローゾの出演が話題になっているけれど、ほかの出演者も豪華。「オール・アバウト・マイ・マザー」のセシリア・ロスとマリサ・パレデスの姿もちらり。挿入されているサイレント映画「縮みゆく恋人」の主演は「テシス」や「オープン・ユア・アイズ」のフェレ・マルティネスと「ルシアとSEX」のパス・ベガ。マルコの元恋人は「カット!」「ウェルカム!ヘヴン」に出演しているエレナ・アナヤ。ちょっとした役でも有名俳優が演じていてさすがアルモドバル!って感じ。

 とにかく巧い。いろいろと言いたいことがあるけれど、書ききれない。上にも書いたように観た人それぞれ、感じ方が異なる映画だと思う。人の話を聞いて判断するよりも、まずは観るべし。

・ ロサンゼルス批評家協会賞監督賞
・ ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞
・ アカデミー賞(2003):最優秀脚本賞
・ 公式サイト(日本): http://www.gaga.ne.jp/talktoher/(日本)
・ 公式サイト(スペイン): http://www.clubcultura.com/clubcine/clubcineastas/
almodovar/hableconella/hableconella.htm

・ ノベライズ「トーク・トゥ・ハー」 ペドロ・アルモドバル著 ソニー・マガジンズ 4月19日発売
・ 2003年6月28日 日本劇場公開


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