公開シンポジウム

岐路に立つブラックバス問題





 シンポジウム・ブラックバス問題を考える4(主催:立教大学ウエルネス研究所・共催:生物多様性研究会)が、9月25日(土)、盛況のうちに終了いたしました。御参加くださった多数のみなさまやサポートしてくださった方々に御礼申し上げます。
 ここでは、若干の私的所感を交えつつ、当日の模様をごく簡単にお知らせいたしております。なお詳細につきましては、生物多様性研究会のサイト上で紹介される予定です。合わせてご覧ください。



櫻井よしこ氏の基調講演、高橋清孝氏および鈴木盛智氏による現場報告に続いてのパネルデュスカッション。

足立倫行氏の司会進行のもと、秋月岩魚氏、有路昌彦氏、杉山秀樹氏ら個性溢れるパネラーがつぎつぎと発言。



当日の参加はおよそ250人。大半が終了まで熱心に聞き入っていました。


 会は、ジャーナリスト・櫻井よしこ氏による基調講演「日本の自然と私」で開幕、ブラックバスなど外来魚問題がとくにご専門ではない氏ですが、日ごろ感じていることを中心にジャーナリストらしい視線で話が進行しました。
「日本人は、本当に自然を愛しているのだろうか?」氏の問いかけは、ステレオタイプ的なイメージと現実とのギャップに対して鋭い指摘を投げかけつつ、「(日本人は)自分たちの自然を大切にしていないという意識」を認識すべきではないかと進み、いちど壊された自然の回復がいかに困難なことであるかを語っています。そのうえで、「大衆が諦めてしまうことが怖い」、すなわち、現状追認型の思考についての所感へと続いていきました。
 誰彼に関わらず、ややもすると、「現実がこうなんだから仕方がない」という思考に陥りがちな面を否定てきないと思います。それがアンチテーゼに基づく立場からのものであっても、案外と“物わかりのいい”考えにはまりこんでしまうことはありはしませんでしょうか? バス問題だけではありませんが、ときには原理原則を貫く姿勢も必要です。「(バス問題については)ほとんど知りません」という櫻井氏ですが、ある意味、問題の本質を鋭く見抜いているといえます。

 続く現場報告では、ブラックバス駆除の切り札のひとつとして考えられている人工産卵床の実施の模様を中心に、伊豆沼(宮城県)の実態が高橋清孝氏(シナイモツゴ郷の会)と、人工産卵床を野田市(千葉県)の沼で実施した鈴木盛智氏(野田自然保護連合会)による発表が行なわれました。
 人工産卵床とは、苗ポットのトレー(網状のプラスチック製品)を用いてつくられるもので、砕石を敷き詰めて産卵床をつくり産みつけられた卵を一気にせん滅するというものです。制作の費用は1台およそ650円。設置後にこまめに見回る必要はありますが、網などを用いる方法に比べて手軽さが特徴です。野田の例でもオオクチバスとブルーギルの産卵が確認され、孵化前に一気に駆除できることから大きな期待が寄せられています。
 ちなみに、高橋氏が所属しているシナイモツゴ郷の会ですが、シナイモツゴというのはようするにクチボソです。自分が子どものころには「クチボソなんか」と半分バカにされていたほどどこにでもいた魚ですが、いまや保護が必要な事態になっていることは、多くの人に知っていただきたいことでもあります。

 メインとなるパネルディスカッションは、「特定外来生物被害防止基本方針」を演題に、有路昌彦氏(UFJ総合研究所研究開発本部地域・環境室農林水産業グループ研究員)・草刈昌彦氏(WWFジャパン自然保護室次長)・杉山秀樹氏(秋田県水産振興センター内水面利用部長)・丸山隆氏(東京海洋大学海洋科学部海洋環境学科助手)およびm生物多様性研究会代表の秋月岩魚氏(写真家)によって進められました(司会進行・足立倫行氏・ノンフィクション作家)。この法案が演題に掲げられたことの背景には、2005年5月の法施行に向けての具体的な種の選定がこれらからであり、そのさなかにあってオオクチバスを選定から外そうという動きがあることがあります(シンポジウム後に新たな動きが判明していますが、これにつきましては後日アップする予定です)。オオクチバス(なぜかコクチバスやブルーギルについては対象から外せという声があまり大きくないようです。不思議ですね)を規制種から外したいというのは、バス釣り愛好家にとっては切実な願いだと思いますが、言うまでもなく、具体的な動きのなかで選定から外そうとして動いているのは彼ら末端の釣り人ではありません。

 会では、パネラーがそれぞれ行なっている日ごろの活動などの報告とともに、バス問題への所感が語られていったなかで、「(釣り業界は)バスがあるほうが儲かるという考えに導かれているが、駆除事業を行なうほうが(経済的に)潤おう」という逆手の発想が有路氏によって紹介され、参加者の関心を集めていました。残念ながら充分に語り尽くすだけの時間がなく、「もっと詳しく聞きたかった」という声があったことも事実ですが、環境経済学という視点で語られた氏の発表が、広範な刺激剤となったことは間違いなさそうです。また、同氏は「法案は(バス)釣り禁止をうたっていない。にも関わらず反対するということは、(バスの)密放流や移動(これも密放流)をしたいということにつながる」とも続けました。放流を禁止するということは、キャッチ&リリースの“リリース”が制限されるということにつながってくるとはいえ、“キャッチ”そのものを規制するわけではありませんので、まさに有路氏が指摘する通りだということになります。
 余談ですが、先日たまたま話をした女性が、「バス釣りって、バスがかわいそうですよね。キャッチ&リリースっていうけれど、キャッチするときに魚を傷つけているんでしょう?」と話していました。彼女はバス問題のことなどほとんど知りません。ですが、キャッチ&リリースという行為の本質は十二分に理解してるようです。

 以上、ごく一部の抜粋ですが、シンポジウムの報告といたします。最後に、杉山秀樹氏の所感を紹介しておきます。
「自分たちがいかに豊かな自然を持っているか? それが(いま)どういう状態にあるのかを知ることが大切」
「(バス駆除などの活動は)思いつきの一発屋ではダメで、持続することが必要」

   シンポジウムの開催前のご案内はこちらに掲載してあります。

*写真提供:生物多様性研究会©2004 生物多様性研究会

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