ブライアン・イーノ/BRAIAN ENO

 ●1948年5月15日〜 ミュージシャン

 「斬新でクリエィティブでインスピレーションにあふれていて、深みがあって…と言った内容で3秒半の曲を作っていただきたい」〜これはマイクロソフト社がWindows95の機動音をイーノにオファーしたときに寄せた手紙の一節で、このような途方もない注文を事も無げに遂げてしまうのも実に”イーノ”らしい逸話と言えます。既成概念に捕らわれない音楽活動と並行して論文を書いたり世界各地で公演したりと、まさに”教授”という呼び名に相応しいブライアン・イーノ。70年代のロック・シーンを牽引した”デビッド・ボウイ”や”ロバート・フリップ”等との一連のコラボレーションや、数々のプロデュース・ワークの成功。或いは、80年代あたりから注目を集め始めた”アンンビエン・トミュージック”への積極的な取り組みなど、独自の音楽理論を”机上の空論”で終わらせない姿勢は、音楽を操るサイエンティストといった存在です。

 ※参考資料:宝島社「テクノボン」/「S&Rマガジン97年9月号」他

◆◆◆「ブライアン・イーノ」関連アルバム紹介◆◆◆


ROXY MUSIC」 ROXY MUSIC (72年)

 ◆9 26039 (輸入盤) ◆10トラック ◆ロック 

 ”ロキシー・ミュージック”に、エンジニアとして招かれながら”メンバー”に昇格したことがイーノのキャリアの原点。ロックン・ロールを軸にしたサウンドと対峙した音響的アプローチは、シンセから抽出した”ノイズ”と”テープ操作”。過剰なサービス精神の裏返しのように繰り出される”歪な”サウンドは、奇抜なライブ・パフォーマンスとの相乗効果でバンド躍進の原動力になります。
 ※補足:プロデュースを務めたピート・シンフィールドは、キングクリムゾンの詩人と呼ばれた人物。


NO PUSSYFOOTING」 FRIPP&ENO (73年)

 ◆EGCD 2 (輸入盤) ◆2トラック ◆ロック(インスト) 

 全2曲で構成された”実験的トラック”は、当時の記録媒体(アナログ・レコード)の物理的制約からか、それぞれ20分前後で編集されています。まるで一筆書きのように収められた”フリップ”のギター(トラック1)は、”音”に変換された際限のないイメージを延々と刻み続けます。一方”イーノ”によるシンセを含めた空間処理はギターに寄り添うような控えめなモノで、両者の個性が静かに調和しています。
 ※補足:両者のルーツ・ミュージックとしても興味深い作品。商業的な思想が皆無というのも潔し。


FOR YOUR PLEASURE」 ROXY MUSIC (73年)

 ◆TOCP−53044 (国内盤) ◆8トラック ◆ロック(ボーカル)  

 前作を踏襲したポップな前半と、プログレ的なアプローチを実践した後半は、それぞれ異なるプロデューサーを起用した成果であり、良くも悪くも全てはフェリーの制御下にあります。イーノの妙技は”演奏スキル”を重視しない後半でのトリッキーな編集(テープ操作)を主とし、セッションだけでは得られない”付加価値”を各トラックに施します。
 ※補足:このアルバムを最後にイーノはバンドを去りますが、その判断は双方に吉と出ます。


HERE COME THE WARM JETS」 BRIAN ENO (73年)

 ◆EGCD 11 (輸入盤) ◆10トラック ◆ロック(ボーカル) 

 個人名義で最初のリリースとなった本作は、”初期ロキシー”にも通じるロック色の濃い作りです。ソロであるにも関わらず、野心的な”音質”の探求などは得に含まれず、在りし日の(瑞々しい)イーノのボーカルを中心に軽快なバンド・フォームのスコアが並びます。録音には気心の知れたミュージシャン(フェリーを除くロキシーのメンバーなど)が多数参加。エキセントリックなフリップの”ギター”などは独立して楽しめます。


TAKING TIGER MOUNTAIN」 BRIAN ENO (74年)

 ◆EGCD 17 (輸入盤) ◆10トラック ◆ロック(ボーカル) 

 ジャケットに描かれたエキゾチックなニュアンスと、イーノが好む牧歌的な要素が取り込まれたソロ第二弾。ボーカル主体のアルバムだけに”奇をてらう”要素は控えめですが、楽曲によっては効果音をさり気なく貼り付けるなど、録音に対する執着等は相変わらず。ギターの”マンザネラ”を含め多種多様なゲストが参加していますが、最終的に卓(ミキサー)で束ねた音は”ロキシー”とは異なる歪なバンド・サウンドを呈示。


EVENINGSTAR」 FRIPP&ENO (75年)

 ◆EGCD 3 (輸入盤) ◆5トラック ◆ロック(インスト) 

 確信的な音響デザインへ向けた”習作”を思わせる前作と比べれば、「宵の明星」と名付けられた本作には、幾つかの表情を伴う自由な音像を用意。チョーキング等による持続音を凝らしたフィリップのギターと、時間の経過を意識させないイーノによるループ構成が”ロック”とは異なるインストを展開させます。後半28分に渡って展開する「トラック5」は、癒しの対極にあるようなサウンドで、前半の”まったり”ムードを一蹴し、最後まで予断を許しません。


「ANOTHER GREEN WORLD」 BRIAN ENO (75年)

 ◆VJCP 23194 (国内盤) ◆14トラック ◆ロック(ボーカル/インスト9曲あり)  

 ”ジョン・ケージ”が提唱した「音楽に偶然性や不確定な要素を導入する」という着想に惹かれていたイーノは、本作の制作開始時のトラブルを発端に通常の録音作業を破棄する英断を下します。ミュージシャンの選択には”無作為な指示を優先させる”手段が目的のレコーディングであるため、個性的な人材をチョイス。偶然を必然に変える事で得た楽曲には、予期せぬ面白さがあります。
 ※補足:本作にしびれた”デビッド・ボウイ”の接近は、ヨーロッパ三部作へ収束します。


DISCREET MUSIC」 BRIAN ENO (75年)

 ◆EGCD 23 (輸入盤) ◆4トラック ◆アンビエント(全曲インスト)   

 交通事故に伴う入院生活で”レコードの音量をコントロール出来なかった”という体験が、イーノに一つの確信を抱かせます。この作品は「聞くことも出来るが、無視することもまた容易い音楽」という”サティ(家具の音楽)を租借し”アンビエント”という概念に置換しています。音楽と向き合う距離感を提示した実験には、リズムやビートを拒絶した何処までも自由で”控えめな”音像が、前半約30分に渡り粛々と展開して行きます。


「CLUSTER & ENO」  クラスター&イーノ (77年)  

◆PLCP−105 (国内盤) ◆9トラック(36分15秒) ◆アンビエント(全曲インスト) 

 パーカッションやピアノ等で緩やかなリズムを刻むトラックもありますが、全般にゆったりとしたテンポの曲を収録。シンセ音の扱いに特徴があり、出力(発信)する段階で音に変化を含ませ、何気ない音階の移動も様々な表情を見せます。一方で、アナログ・シンセ特有のギラギラした艶めかしさや倍音は、巧みな音響設計で制御され”両者”の特質が高水準で融合した事を実感させられます。
 ※補足:クラスター(ハンス・ヨアヒム・ローデリウス&ディター・メビウス)/ドイツの実験音楽デュオ。


「BEFORE & AFTER SCIENCE」 BRIAN ENO (77年)

 ◆EGCD 32 (輸入盤) ◆10トラック ◆ロック(ボーカル/インスト1曲あり)  

 適材適所に多彩なゲストを配置した本作には、マンザネラ等の常連に混じり”カン”や”クラスター”等が初エントリー。比較的ファンキーな前半と、感傷(内省)的な後半で”それぞれ”の持ち味を確認出来ます。イーノの歌声にはソウルと対局にあるような冷ややかさがアリ、躍動感溢れる楽曲よりは『BY THIS RIVER』のような薄い(淡い)オケの方が落ち着きます。
 ※補足:『BY THIS RIVER』は、映画「息子の部屋」(01年)で観客の涙腺を刺激。


AFTER THE HEAT」  イーノ メビウス レデリウス (78年)  

◆PLCP−110 (国内盤) ◆10トラック ◆ロック(インスト/ボーカル曲あり) 

 ”クラスター”と共作による第二弾。全体を覆うアンビエンスな質感は変わらないモノの、楽曲によってはビートやボーカルで組みたてたスコアも登場します。数曲にフィーチャーされた何処か”ぶっきらぼう”なイーノの歌の放つユーモアや、ベースにピアノ等で繰り出される有機的なループ・サウンドの心地良さなど、シリアス一辺倒だった前作に比べると適度なポップさも加わりました。
 ※補足:このアルバムのアーティスト名義で、クラスターの二人は個別に並列でクレジット。


MUSIC FOR FILMS」 BRIAN ENO (78年)

 ◆EEGCD 5 (輸入盤) ◆18トラック ◆アンビエント(全曲インスト)    

 不特定の映像に添附されることを想定した架空のサウンドトラックとして本作は録音されました。柔らかく浮遊感の有るサウンドをシンセ主体で形成しますが、劇伴としての汎用性を高めたため、個々のトラックは比較的コンパクトに収録されています。常にフェード・アウトでスコアの切れ目を意識させられるのは、有る意味で非情にサントラ的な感触。
 ※補足:オリジナル音源(アナログ盤)は一般販売されず、CDとは収録内容も異なるようです。


AMBIENT 1 MUSIC FOR AIRPORTS」 BRIAN ENO (78年)

 ◆EEGCD 17 (輸入盤) ◆4トラック ◆アンビエント(全曲インスト)    

 空港という空間に配置すべき条件を満たした”音源”は、”アンビエント”シリーズの第1弾として発表されました。テープに録音された”素材”をループさせ、再構築するという手法はディスクリートミュージック等でも実践されましたが、直接のヒントは”スティーブ・ライヒ”の初期作品集で示した”持続”と”反復”。 緩やかな時間軸に沿って漂う優しい音の連鎖は得も言われぬ美しさです。
 
※補足:イーノは、BGM(背景音楽)との差別化をこの作品で宣言。


AMBIENT 2 THE PLATEAUX MIRROR」 ハロルド・バッド/ ブライアン・イーノ (80年)

 ◆EEGCD 18 (輸入盤) ◆10トラック ◆アンビエント(全曲インスト)    

 作曲家”ハロルド・バッド”を迎えた本作はアンビエント関連のシリーズ中、最もリリカルで美麗な音が連なります。録音済みの素材を元に組み立てた前作とは自由度が異なり、バッドによるピアノとの分業化で、音の質感を磨き上げることに専念出来たイーノのエフェクト・ワークがアルバムの随所に潤いをもたらしています。
 
※補足:国内版のタイトルは”鏡面界”としてリリース


REMAIN IN LIGHT」 TALKING HEADS (80年)

 ◆WPCP-3236 (国内盤) ◆8トラック ◆ロック    

 アフリカン・ルーツの探求をコンセプトに、ロックの可能性を示唆した至高のサウンド。通常のポップ・ミュージックが抱えるドラマ性(歌謡構造)を楽想から取り除き、セッションで模索したサウンドをイーノとバーンで徹底的に再構築した成果が本作です。録音テイクの解体と引き替えに再生されたファンキーなグルーヴの放つ輝きは、イーノを排除することで結束を固めた以降の作品でも、越えられなかった高い壁。ロック史を代表する名盤のひとつ。


FOURTH WORLD VOL.1 POSSIBLE MUSICS」 ジョン・ハッセル/ブライアン・イーノ (80年)  

 ◆EEGCD 7 (輸入盤) ◆6トラック ◆アンビエント(全曲インスト)    

 民族音楽を採り上げた連作の中でも”ジョン・ハッセル”と共鳴する事で異彩を放ったのが、”第四世界の鼓動”(邦盤タイトル)と名付けられたシリーズです。淡々と刻まれる呪術的なリズム・ループに彷徨う”ハッセル”のトランペットは、その音色との相乗効果で不思議な余韻を添えています。イーノによる音響デザインはシンセや効果音を中心に配置したシンプルなモノですが、全体を見据えたバランス感覚など、この作品に寄せる”質感”も特異です。


DREAM THEORY IN MALAYA FOURTH WORLD VOL.2」 ジョン・ハッセル (81年)  

 ◆EEGCD 13 (輸入盤) ◆7トラック ◆ミニマル?(全曲インスト)    

 ”第四世界の鼓動”の第二弾は”アジア圏”をモチーフに、ハッセルの個人名義でリリース。イーノがサポートに専念した事で前作に含まれていたロック的な要素は、ほぼ削ぎ落とされますが、独自の奏法によるトランペットと民族楽器で組み上げたループのユニークさは健在です。”近代音楽”ではポピュラーな、ミニマル(反復)を基本とした楽曲構成ですが、生演奏による音色の艶めかしさは、テクノ系の(アナログ・シーケンサー等による)反復が、もたらす高揚感とは異なる余韻を醸します。


MY LIFE IN THE BUSH OF GHOSTS」 ブライアン・イーノ/デヴッド・バーン (81年) 

 ◆9 45374−2 (輸入盤) ◆11トラック ◆ロック 

 リメイン・イン・ライト」への布石と考えれば、イーノとバーンによる実験音楽集といった趣でしょうか。バンド・アレンジを省いた骨組みには、最小限の和声で組み上げられたループが様々なフォームで展開して行きます。土台に被せる歌を除いたコーラス等の言葉の加工は”ライヒ”の実験を踏襲したモノですが、オリジナルの何処までも生真面目な姿勢には感じられなかった、イーノらしい遊び心が本作をユニークな作品へと昇華させました。


AMBIENT 4/ON LAND」 ブライアン・イーノ (82年)

 ◆EEGCD 20 (輸入盤) ◆8トラック ◆アンビエント(全曲インスト)    

 シリーズ中、最も音響を重視した内容で、録音も作曲と定義するイーノの思想が集約された作品です。音階の移動がもたらす感情を刺激する成分の放棄などは序の口で、あらゆる要素のサウンドが渾然一体となり、奇妙な音像を練り上げています。トラックを埋め尽くす音の断片から増幅されるイマジネーションには個人差が生じるでしょうが、3台のスピーカーを用いる再生システムを自ら考案するなど、アンビエントに対する確信は新たな局面に突入した模様です。


「THE PEARL」 ハロルド・バッド/ ブライアン・イーノ (82年)  

 ◆EEGCD 37 (輸入盤) ◆11トラック ◆アンビエント(全曲インスト)    

鏡面界」における方法論は継続されますが、音響デザイン等を修正ことで、より”耽美”な音像を追求しています。バッドによるピアノの殆どは、得に主題などを含ませず”点”の様に緩やかに漂うモノですが、深く掛けられたエフェクトにより”背景音”へ”しっくり”と同化しています。短調の音がよりメランコリックな効果を醸していますが、イーノの”湿り気”を含ませたような音色のコントロールも、作品をより魅惑的に演出しています。


APOLLO:Atmospheres & Soundtracks 」 ブライアン・イーノ (83年)  

 ◆EEGCD 53 (輸入盤) ◆11トラック ◆サントラ(全曲インスト)    

本作は”アポロ計画”のドキュメンタリーに関する”サントラ”であり、”ダニエル・ラノワ”や実弟のロジャー・イーノとの共同作業で各トラックを組み上げています。イーノが単独で仕上げたスコアでは、アンビエント関連で培ってきた音作りが主体となりますが、淡いシンセ重ねる独自の浮遊感溢れる音色が”無重力感覚”を巧みに演出しています。サントラという構成から、劇伴的な意図を認識させられる楽曲もありますが、三者三様の個性が噛み合い、味のあるサウンドを形成しています。


「DUNE/砂の惑星」 TOTO/ブライアン・イーノ (84年)  

 ◆P33P 50011 823 (国内盤) ◆11トラック ◆サントラ  

達者なスタジオ・ミュージシャンで結束したバンドが”TOTO”であり、その職人気質は映画のサントラという状況にも怯むことはありません。キーボード奏者のデビッド・ベイチを中心に組み上げたスコアはシンセを中心にしたバンド・アレンジを基本としますが、作品のスケールを損なうような陳腐なモノでは無く、丁寧な仕事振りが伺えます。イーノは「予言のテーマ」で1トラックのみを提供していますが、デジタル・シンセの持つ硬質な響きを加えることで、従来の諸作品とは異なる感触を見せます。


THURSDAY AFTERNOON」 ブライアン・イーノ (85年)  

 ◆EEGCD 64 (輸入盤) ◆1トラック ◆サントラ(アンビエント)     

CDによる再生を想定して、1トラック(約61分)のみで構成したアンビエント。主題の反復などは得に設けず、点の様に漂うピアノをやさしく包み込むシンセという状況を設定し、”バッド”不在で”鏡面界”を再構築しています。オリジナル音源はヴィデオ映像の背景音楽として意図されたモノであり、聴くというより、環境(もしくは空間)に配置するというスタンスで臨むのが適切な処方でしょうか?
 補足:
ダニエル・ラノワにロジャー・イーノなど、お馴染みの面々が参加。


「THE JOSHUA TREE」 U2 (87年)  

 ◆PHCR−1706 (国内盤) ◆11トラック ◆ロック    

 緻密な音作りで”イーノ”と”ダニエル・ラノワ”が目指した改革は、U2のアイデンティティをより磨き上げる事でした。本作には、初期サウンドを支えた”スティーブ・リリィーホワイト”をミックスに起用した事で躍動感が増したトラックもありますが、全体を覆う独自のニュアンスは、この作品でを確立したと言えます。適度な湿り気がたまらない『ウイズ・オア・ウイズアウト・ユー』など名曲も収録。
 補足:
88年度グラミー賞・最優秀アルバム賞を獲得。


オペラ座・血の喝采/OPERA」 ブライアン・イーノetc (88年)  

 ◆SLCS-715 (国内盤) ◆14トラック ◆サントラ   

 80年代の中盤あたりから、イーノもDX−7などのデジタル・シンセを活用するようになりますが、この音源もその時期に録音された作品。サントラに収録されたスコアは、実際に劇伴で使用されたモノですが、アンビエントらしい時間の経過を感じさせない構成が災いして、本編ではFM音源特有の金属質な感触のみが、効果音的に採用されています。同じシンセ主体のクラウディオ・シモネッティとは、まるで異なる音の構築を聞き比べてみるのも面白いかも。


NERVENET」  ブライアン・イーノ (92年)  

 ◆9 45033−2 (輸入盤) ◆12トラック ◆ロック    

 7年振りとなるソロは、久々にアンビエントから離れた作風を展開。幻となった「マイ・スケルチイ・ライフ」から再録されたスコアは僅か2曲ですが、何れもタイトな演奏が生み出すグルーヴに、トリッキーなサウンドを散りばめて混沌としたサウンドを積み上げています。共同プロデューサーである”Markus Draws”は、リズム・パートを重視したミックスでアグレッシブな音作りをサポート。
 補足:「マイ・スケルチイ・ライフ」は、リリースのタイミングを逸した事で作品その物が抹消されました


「THE SHUTOV ASSEMBLY」  ブライアン・イーノ (92年)  

 ◆WPCP-4997 (国内盤) ◆10トラック ◆アンビエント    

 85年から90年に録音した様々な用途のアンビエントを集めた作品集。デジタル・シンセを積極的に活用した事で、アナログ・シンセには無い音色の変化(モジュレーション音源などをプログラム)と、ノイズの少ないクリヤーなサウンドを実現しています。本作には独立したタイトルを持つ全10曲が収められますが、ここに収束することを意図したかのような一体感で各スコアが調和。
 
補足:ショトフとはモスクワ在住の画家で、その作品の音楽化というインフォメーションもあり


「OUT SIDE」  デビット・ボウイ (96年)  

 ◆WPCP-4997 (国内初回盤) ◆19(20)トラック・2枚組 ◆ロック    

 猟奇殺人をテーマにした本作は、ベルリン三部作以来となるイーノをプロデューサーに起用したコンセプト・アルバム。最重要人物である”ネイサン・アドラー”が抱えた虚構を彩る”ボウイ”の艶っぽいボーカルには、退廃的なノイズや変則的なリズムを絡め刺激的なサウンドを組み立てています。映画『セブン』や『ロスト・ハイウェイ』にトラック(3)と(16)がそれぞれ採用されています。
 
補足:日本盤には、1曲ボーナス・トラックを収録したものなど幾つかのバージョン違いあり。


THE DROP」  ブライアン・イーノ (97年)  

 ◆FLCP-1005 (国内初回盤) ◆17トラック(+3) ◆インスト(ジャズ?)    

 仮タイトルに含まれた”ジャズ”という先入観で臨まなければ、リスニング系テクノといった趣のインスト集。16曲のショートトラックと32分に及ぶ音源で構成されますが、主にプログラムされた起伏の少ないリズムと、冷ややかなシンセの音色で組み立てたループは少々淡泊な印象です。何か起こりそうで起きない、寸止めのような楽想も相変わらずであり、音楽家不在をセンスだけではカバー出来なかったのでしょうか?日本盤の初回出荷バージョンは、オミットされた未収録音源3曲を、8cm盤に別収録。


「MUSIC FOR AIRPORTS」 バング・オン・ア・キャン/BRIAN ENO (98年)

 ◆314 536 847−2 (輸入盤) ◆4トラック ◆アンビエント(全曲インスト)    

 録音済みの素材を編集することで組み立てたオリジナルに対し、楽器の演奏主体で再現を試みたモノが本作です。概ね精密なトレースですが、各楽器の放つ余韻は艶めかしくその感触は、イーノの仕上げた質感とは微妙に異なります。アンビエントの趣旨と照らし合わせれば、録音そのものが目的の本作と、背景音楽としての再生を目指したオリジナルでは供給意図が明らかに異なるわけですが、この倒錯した思想こそが本作の魅力と言えます。


music for 陰陽師」 伶楽舎/ブライアン・イーノ (00年)

◆VICP-60980〜1 (国内盤) ◆ディスク2は、6曲(2枚組) ◆アンビエント(全インスト)    

 夢枕獏+岡野玲子による「陰陽師」のイメージアルバム。2枚組の構成で、1枚目を担当した伶楽舎による雅楽のボリュームに比べると、2枚目に収録されたイーノのアンビエントは若干30分と少なめ。雅楽にインスパイアされた節の音質は、和声より音響を重視した”如何にもといった音像。前半の高音域で構築したトラックなどは、雅楽特有の周波数帯をシンセで模したモノでしょうか?
 補足:シュワルムも録音(ディスク2)に参加し、Withでクレジットされています。


「DRAWN FROM LIFE」 ブライアン・イーノ/J・ピーター・シュワルム (01年)

 ◆VJCP 68327 (国内盤) ◆11トラック ◆アンビエント(全曲インスト)    

 J・ピーター・シュワルムによるジャズ寄りな構成は、コレまでのアンビエント路線とも異なる作風を感じさせます。パッド系のシンセが奏でる背景音は、意図した和声で制御されていますが、イーノ特有の心地良さはスポイルされていません。全般に”ゆったり”としたテンポで各スコアを展開させて行きますが、緻密に計算された楽想と音響の融合に”うっとり”。
 補足:シュワルムと意気投合した成果の一つが、「
music for 陰陽師


THE EQUATORIAL STARS」 FRIPP&ENO (04年)

 ◆DGM0550  (輸入盤) ◆7トラック ◆アンビエント(全曲インスト) 

 ”オウテカ”を思わせるような『トラック1』の導入部も、フィリップのギターがゆっくり絡み出すと唯一無二のあのサウンドが蘇ります。中盤辺りで多少シンセの重なり具合が煩く感じる楽曲もありますが、音響デザイン的には「宵の明星」と地続きであり、それぞれのパフォーマンスに新味は無いモノの、変わらないことに対する失望も無し!とファンなら納得の邂逅。
 補足:イーノ単独のプロデュースで、楽想等は90年代以降の
諸作品に類似しています。


ANOTHER DAY ON EARTH」 ブライアン・イーノ (05年)

◆BRC−1280 (国内盤) ◆11+1トラック(国内盤は+1) ◆アンビエント(ボーカルあり) 

 アンビエント的な趣の強い内容で、一部のトラックではボーカルも音響を形成するパーツとして扱われています。”歌モノ”という事で、各楽曲は比較的コンパクトに設計されていますが、背景音楽で重要な要素とも言える”身を委ねる”という処方が得られない事は、少々残念に思います。ただ、シンセを中心にした淡く綺麗な音色に呼応する各ゲストミュージシャンの素晴らしいパフォーマンス等は、充分に官能的であり、(アンビエントの)バリエーション的には”あり”と判断します。


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