デビッド・クローネンバーグ


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1943年3月15日〜/カナダ/監督(演出家)

 クローネンバーグ作品の多くは”
ひとつではない現実”を確信する人々の生態を克明に捉えています。その行動原理が反社会的な行為に映ったとしても、ソレは異なる現実に反応した結果であり、健常者の持つ概念あるいは価値観など彼らの前では一切通用しません。自主映画時代を含め、初期作品の多くは、テクノロジーに対する警鐘!?がひとつではない現実を誘発するモチベーションでしたが「ザ・フライ」以降は、ドラッグや自動車事故等々突き付けられる絵空事への距離感はより現実味を帯びて来ました。

 ●クローネンバーグの音楽観

 「デッドゾーン」は配給会社が当時はまだネームバリューの無かったショアに対し難色を示したコトから、”マイケル・ケイメン”が起用されました。クローネンバーグは拒むことも可能であった様ですが、ショアを外すことを承諾し「デッドゾーン」を完成させました。ところがケイメンによるオリジナル・スコアは、ショアが展開してきたような弦楽器主体で構成した欝なトーンで溢れてあり、クローネンバーグ作品を覆う闇の正体は本人のビジョンを具現化したモノで在ることを証明したようにも思えます。 

 ショアとクローネンバーグの関係が大きく飛躍したのは、高評価を獲得した「戦慄の絆」からです。『メイン・タイトル』の自殺する者のために書かれたスコアを高く評価したクローネンバーグは、以降の作品でもショアの実験精神溢れるアイディアを柔軟に受け容れ、劇判という記号化された役割を果たす効果音の延長上にあるソレを”音楽”と認識したようです。

※(注)コレは海賊版です!

ヴィデオドローム

デッドゾーン

ザ・フライ

戦慄の絆

裸のランチ

M・バタフライ

クラッシュ

イグジステンズ

スパイダー

 1969年 『ステレオ/均衡の遺失』  脚本・監督・撮影/デビッド・クローネンバーグ  

 1970年 『クライム・オブ・ザ・フューチャー』  脚本・監督・製作・撮影/デビッド・クローネンバーグ  

 1975年 『シーバース 』<未>  脚本・監督/デビッド・クローネンバーグ  音楽/アイヴァン・ライトマン

 1977年 『ラビッド 』  脚本・監督/デビッド・クローネンバーグ  音楽/アイヴァン・ライトマン

 1978年 『ファイヤーボール 』<未>  脚本・監督/デビッド・クローネンバーグ  音楽/フレッド・モーリン

 1979年 『ザ・ブルード/怒りのメタファー』  脚本・監督/デビッド・クローネンバーグ  音楽/ハワード・ショア

 1981年 『スキャナーズ 』  脚本・監督/デビッド・クローネンバーグ  音楽/ハワード・ショア

 1982年 『ヴィデオドローム』  脚本・監督/デビッド・クローネンバーグ  音楽/ハワード・ショア

 1983年 『デッドゾーン』 監督/デビッド・クローネンバーグ  音楽/マイケル・ケイメン

 1986年 『ザ・フライ 』  脚本・監督・出演/デビッド・クローネンバーグ  音楽/ハワード・ショア

 1988年 『戦慄の絆』  脚本・監督・製作/デビッド・クローネンバーグ  音楽/ハワード・ショア

 1991年 『裸のランチ』  脚本・監督/デビッド・クローネンバーグ  音楽/ハワード・ショア

 1993年 『M・バタフライ』 監督/デビッド・クローネンバーグ  音楽/ハワード・ショア

 1996年 『クラッシュ』  脚本・監督・製作/デビッド・クローネンバーグ  音楽/ハワード・ショア

 1999年 『イグジステンズ』  脚本・監督・製作/デビッド・クローネンバーグ  音楽/ハワード・ショア

 2002年 『スパイダー・少年は蜘蛛にキスをする』  脚本・監督・製作/デビッド・クローネンバーグ  音楽/ハワード・ショア


◆◆◆デビッド・クローネンバーグ」監督作品の”サウンドトラック”紹介◆◆◆ 


「VIDEODROME」/「ビデオドローム」 VOLCANO CPC8−1039 (サントラ盤)
「VIDEODROME ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK」 音楽 ハワード・ショア (82年)

 「ビデオドローム」の劇伴はショアとしては珍しい”シンセサイザー”主体のサウンド。これはドラマのテーマと直結したイメージからの選択かもしれませんが、「スキャナーズ」で試みたスタイルを踏襲しただけで、新味に欠けます。日本盤の解説書で触れている”シンクラビア”とは”サンプラー”と呼ばれる録音機材(楽器)の呼称で、トリッキーな(当時としては)音色はこれらの機材をコントロールする事で得たようです。アンビエンスな構造に無機的な音づくりは音楽としての情感を一切断絶しており、難解な音の集合体ですが、後の降板を考えるとクローネンバーグは、コレが気に入らなかったのでしょうか?


「DEZD ZONE」/「デッド・ゾーン」 MILAN 73138-35694-2 (サントラ盤)
 「ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK」 音楽 マイケル・ケイメン (83年)

 スタジオ側の意向に従い”ショア”にコダわらなかったクローネンバーグは、”マイケル・ケイメン”にスティーブン・キング原作による本作の音楽を委ねます。メイン・タイトルで流れる木管楽器とストリングスが織りなす物悲しさは”ショア”のように”怖い”サウンドが基本ながら、観るモノの心を揺さぶる切なさも内包し、素晴らしいスコアと成っています。作曲中にアパートの住人の顰蹙を買ったというエピソードを持つ本作ですが、ケイメンというよりクローネンバーグの音楽的嗜好が優先された本作を代表作に数えるのは不本意でしょうか?


THE FLY 」/「ザ・フライ」  VCD47272 (サントラ盤)
「ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK」 音楽 ハワード・ショア(86年)

 クローネンバーグによる「蠅男の恐怖」のリメイクは、オリジナルでは描かれなかった登場人物のキャラクターを掘り下げることで、極めて分かり易い作品となりました。マイケル・ケイメンに変わり再びプロジェクトに招かれたショアは大作に相応しいフル・オーケストラの劇判でソレに臨みます。重厚な弦楽器群で構成された主題とドラマパートをしっとりと支えた翳りは、生理的な嫌悪感に執着した演出とは異なりドラマに深みを与えています。このオリジナル盤は現在廃盤で続編とカップリングしたバージョンのみが再発されましたが、オミットされた楽曲も捨てがたいモノばかりです。


「DEAD RINGERS」/「戦慄の絆」 SILVA SCREEN FILMCD 115(スコア盤)
DEAD RINGERS MUSIC FROM THE FILM OF DEVID CRONENBERG 音楽 ハワード・ショア 

 派手な視覚効果を極力抑えた映像を支え、絶えず緊張感をもたらせた「戦慄の絆」は”鬱”の魅力に溢れた楽曲が並びます。メインタイトルで流れる甘美な旋律は「あの男は分かっている」とクローネンバーグからも絶賛され、二人の相性の良さが窺えます。このサントラは映画の公開から4年を経て発売されましたが、副題に”クローネンバーグ作品集”と有るようにショアにとって未発売の「ブルート」と「スキャナーズ」をフォローするカタチで登場しました。弦楽器のみで構成された組曲「ブルート」と、シンセサイザーをエフェクト的に多様した「スキャナーズ」。ショアの才気がほとばしる好盤です。  


NAKID LUNCH」/「裸のランチ」 BVCF−35005 (サントラ盤)
 「NAKID LUNCH MUSIC FROM THE ORIGINAL SOUNDTRACK」 音楽 ハワード・ショア (91年)

 ウィリアム・S・バロウズの「裸のランチ」は、クローネンバーグが「ザ・フライ」の撮影以前から映画化を模索していた念願の企画であり、完成した作品の大胆かつ斬新な解釈は当時、様々な論争を巻き起こしました。そんな本編と呼応する音楽も複雑なテイストで構成され、ショアは尊敬するアルト・サックス奏者”オーネット・コールマン”をフィーチャーする事により、その混乱に拍車を掛けます。通常のオーケストラ・サウンドに、コールマン等のバンド演奏を絡めるスタイルは、ある種”実験指向”の強いサウンドとなり、”劇伴”でありながらアーティスティックな指向性を強く打ち出しました。


M・BUTTERFLY」/「エム・バタフライ」 SLCS-7218 (サントラ盤)
「ORIGINAL SOUNDTRACK M・BUTTERFLY」 (サントラ盤)  音楽 ハワード・ショア (93年)

 「エム・バタフライ」のオリジナル戯曲そのものは”メロドラマ”であり、特異な設定ながらクールなスタンスの両者からは想像も出来ない”しっとり”とした劇判が用意されます。本編のシークエンスと関連した”京劇”や”民衆歌”などの既成の楽曲も用いられていますが、オリエンタルな趣のメイン・タイトルは、ライト・モチーフとしてサントラの随所に登場し、鮮烈なイメージを焼き付けます。弦楽器を中心にしたショアのシンフォニーには、クローネンバーグ演出に潤いを満たし、映像的に無理のあるロマンスを確実に救っています。


CRASH」/「クラッシュ」 MILAN 73138 35774-2 (サントラ盤)
「ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK CRASH」 音楽 ハワード・ショア (96年)

 インプロバイズ風なギターによるテーマ曲『CRASH』から本編に劣らずショアのスコアも、いかがわしさを醸します。複数のエレキ・ギターで紬だされたハーモニーは、凄〜い気怠さと、悪意に満ち溢れたサウンド。自動車だけでなく登場人物の大半が心身共にブッ壊れっ放しの作品を象徴するこのテーマ曲は、流れるだけで妙な嫌悪感を催すほど強烈なインパクトがあります。サントラは終盤に向かい、テーマ曲のギターサウンドに音響処理を懲らしたコラージュへと変貌。いよいよクライマックスの組曲では重厚なストリングスが溢れ出し、全てを失意のドン底に叩き落としてくれます。


eXistenZ」/イグジステンズ」 BMG BVCF−31058 (サントラ盤)
「eXistenZ 
MUSIC FROM THE MOTION PICTURE SOUNDTRACK」 音楽 ハワード・ショア (99年) 

 ゲームによる仮想現実を体感するというデジタルな発想に、敢えてアコースティック(アナログ的)な音楽で迎えるというスタンスが「イグジステンズ」を見つめるショアの見解。弦楽器群に金管も加えた重厚な音の壁を構えますが、そこへテレミンを加味することで不気味な余韻を醸しているのが今作の面白さです。ショアが自身の音楽をプロデュースできる立場にある最大のメリットが今回の様なケースであり、音響に対する独自のアイディアの消化のしかたにもオリジナリティーを感じます。やはりクローネンバーグ作品の柔軟さは見逃せません。


SPIDER」/「スパイダー・少年は蜘蛛にキスをする」 74325−8037128 
(サントラ盤) 音楽 ハワード・ショア/クロノス・カルテット
 (02年)

 総合失調症に囚われた孤独な男と、その心の闇を巡るドラマに、個人的なテーマを摺り合わせるクローネンバーグですが、ショアによる劇判にも、その意図は充分に届いているようです。オープニングで、タイトル・バックとのミス・マッチを狙った『Love will find out the way』の投入から、オリジナル・スコアの演奏に”クロノス・カルテット”をフィーチャーするなど、翳りを帯びた楽想を奏でる音色には、研鑽した成果が上手く作用しています。小規模な編成ながら、ピアノと弦楽器で組み立てた楽曲には、大編成にも引けを取らない冷淡な響きが宿ります。


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