「戦下のレシピ 太平洋戦争下の食を知る」

 戦争中にこども時代をすごした両親から、戦争のときにいかにひもじい思いをしたか、よく聞かされた。そこで出てくる食べ物には、「すいとん」などいまも目にする食べ物もあれば、「芋がら入りごはん」など想像できないものもある。ひもじかったとか、食べ物がなかった、とか、かぼちゃも今よりずっとまずかった、とか言われても、そういうものかと思うくらいで、そういう「食生活」あるいは、「そういう食事でなりたつ生活」をトータルでイメージするのはなかなか難しい。
 この本は、そういう時代の「食」を丹念に再現した、ユニークな書物だ。文字通り、作り方を記した「レシピ」もあれば、再現したメニューのグラビアまである。「飛行機メンチボール」「軍艦サラダ」「鉄兜マッシュ」なんて、いくら説明されてもわかりそうもないが、写真を見れば、のけぞるほどに了解される。
 しかし、この本は、ただ、昔を懐かしんだり、「たいへんだったんだよね」という回顧に終わるものではない。まじめな研究書として、「戦争中」とひとくくりにするのではなく、時代をたんねんにたどることで、戦争が民衆の食生活をいかにおびやかしていったかをひしひしと追体験させてくれる。
 そして、本書の末尾では、「戦争とは何か」ということを、生活のレベルで教えてくれる。「寝不足で重労働で飯がない」ということが戦争の本質かもしれない、という指摘は鋭い。そして「戦争になれば、なぜ食べ物が欠乏するのか」という問いに、著者は、 「ひとつめの理由は、すべての産業に軍事が優先するから」「もうひとつの理由、それは輸送の問題だ」と喝破する。そして、最後に「戦争になれば必ずまた同じことが起きる。戦争の影響で食糧がなくなるのではない。食糧がなくなることが戦争なのだ」というまとめが、ずしりと心に残るのだ。