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アメリカには公的な健康保険制度がない。国民の60%は保険会社の保険に依存しているが、利潤を追求する営利企業だから、口実を設けては保険を支払わず、治療を受けられないまま病死する人が後を絶たないという。恐るべきアメリカの貧しさ、非人道性をムーアは容赦もなく告発する。
映画は同じ資本主義国でも隣国カナダ、イギリス、フランスなどで医療費の無料制度が確立されていることを、取材によって具体的に示す。911事件の後、ボランティアで現場の発掘に参加し病気になった人が、何の治療も受けられないでいるのを、社会主義国キューバで行き届いた診療を受ける姿を、映画は皮肉に描き出す。速いテンポで訴えてくる深刻なアメリカ医療の実態に、息が詰まった。
ボクは75歳を過ぎたので、来年4月実施の新しい医療制度により、「その」で入っている健康保険を強制的に脱退させられ、後期高齢者医療制度に組み込まれる。そして、途方もなく高額の保険料を年金から天引きされることになるらしい。以前は65歳を過ぎれば医療費は無料だったが、いまは3割負担だ。先日も「念のため血液検査をしましょうか」と医師に言われて、「先生、念のためだったら止めて下さい。患者負担も大変なんですよ」と断った。それに薬代もばかにできない。
小泉さん以来露骨になった福祉や医療保障の切り捨てだが、映画を見て、お手本はアメリカだったのかと考えさせられた。ほとんど病気なのはアメリカの医療制度だけではない。日本の政治もしかりではないのか。
民間活力という名の福祉への企業採算の導入、自助努力という名の個人負担の強化、こうした行政改革の目指すものは、アメリカ風の弱肉強食の社会なのだろう。映画「シッコ」は、国民が行動に立ち上がることを訴えているが、これは我々への呼びかけに違いあるまい。
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