|
と思う。もう我慢できなくなって、保育室に駆け込んだ。まだ新園舎を建てる前で、くま組(だったと思うが)は、今のひよこ組の部屋だった。駆け込んだとたんに、ウンチが飛び出した。我慢していただけ大量だったのに、自分で何とかしようとしたらしく、ウンチはパンツやズボンから床にまではみ出して、もはや手のつけようがないほどになった。周りの子は、鼻をつまんで、「くせえ、くせえ」と笑っている。
優太くんは、前かがみの姿勢で、片手でズボンを抑えたまま、「おい、だれか、かみ、かみ!」と叫んでいる。友だちがトイレからロールペーパーを外して持ってきた。それを片手でどうにかしようとしながら、優太くんは、悠然と、「人が困っているとき、笑ったりしないんだぞ」と友だちをたしなめた。
…ほんの一瞬、その状況を見て、手を貸そうとしたとき、担任が戻ってきた。担任が誰だったか、もう思い出せない。しかし、「こいつは大物だ!」と感嘆したのは昨日のことのように鮮明なのだ。
卒園して何年か経ち、夏まつりか、運動会で彼にあったことがある。「学校、面白いか?」と訊くボクに、優太くんは顔をしかめて、「おもしろくねえ!」と吐き捨てるように言った。そうだろうな。型にはめられちゃ、かわいそうな子だよ、とそのとき思った。それからまた10余年。
録画の中で、優太くんはアナウンサーのインタビューに答えて、中学のとき漁師になりたかった、でも両親と話し合って高校だけは行くことにした、高校を終えて漁師になりたかったが、また両親と話し合ってダイビングの専門学校へ行く。そこの実習で友だちは沖縄へ行ったが、彼は佐渡へ行く。漁師と知り合い、卒業してはれて漁師の見習いとなった。それから2年余。
幼いときの面影が残っている童顔だが、受け答えは落ち着いていて、しっかりしている。人生に迷いがない感じだ。「やっぱり大物!」と、ボクは幸せな気持ちで、録画を2度見た。ご両親は今もふじみ野市に在住のようだ。いい子に育って、おめでとうと言いたい。
|