トップ 水晶デバイス技術支援 水晶デバイス豆知識 著書紹介 技術士資格ガイダンス 経歴概要
水晶
 

水晶振動子

水晶振動子は、使用用途により多種の振動モードが応用されていましたが、小形化が容易で周波数安定度が高い厚みすべり振動モード及び腕時計にも適合できる小形で耐衝撃性の高い音叉屈曲振動モードの2種類で大勢が占められいます。
  1. 厚みすべり振動モード:ATカット基本波の3〜30MHzが一般的
  2. 音叉屈曲振動モード:+2゜X、32kHz近辺が一般的
ATカットの基本波で周波数制御用としては、高い周波数の要求もありますが、周波数安定度、機械的強度の観点から、この範囲を超えますとあまり得策ではありません。 3、5次オーバトーンも対応できますので製造メーカーにご相談下さい。また、水晶振動子の保持器は大部分がSMD化され、大変小型化されていますので安定性を得るには、 発振器動作も大変厳しい条件が必要です。これらの問題点をここにガイド致しますので参考として下さい。
更に、水晶フィルタ用としては、基本波モードでの利点が得られるので、更に高い周波数帯の要求にも対応できますが、 機械的強度や水晶片に掛かる僅かな応力差でも等価パラメータの再現性を得ることが難しい等の観点から上記の2倍程度の範囲にとどめたいものです。 最近は、水晶フィルタの他にもVCO機能を得るために飛躍的に高い周波数帯の基本波水晶振動子の要求が増えています。 従来加工技術の延長から脱却し、厚さ10から20ミクロン程度の「振動領域部分のみを部分加工やエッチングのみによる薄板化した振動子」や「弾性表面波デバイス」もありますので比較検討して下さい。
水晶振動子のアプリケーションが増大し、誰でもが容易に使用できること、周波数安定度要求の高度化、高信頼性の要求、高い周波数帯に対応及び小型・薄形・表面実装化の要請が高まっています。 このために要求性能に応じた各種水晶応用製品の需要が急増しています。高い周波数安定性を求める場合にはユニット化された水晶発振器としてのご利用をお薦め致します。

水晶振動子の外形

水晶振動子は、要求性能により設計された水晶片の表面に薄膜電極を配し、これを機械的な支持と電気的リードを兼ねた支持薄板を持った保持器内に保持・密封されたものを言います。下図は一般的に使用されている代表的な3種類の水晶振動子の構造を示したものです。
水晶振動子の外形
水晶振動子の外形

水晶片のカットとその種類

水晶振動子は、その使用振動モードにより周波数温度特性が大きく変化し、結晶軸からの切り出し角度に依存するのです。 そこで古くから振動モードに対応する常温付近に零温度係数のあるカットの研究がなされ、沢山のカットが発明されています。タイトル図はその人工水晶上のカットを示したものですが、 現在では周波数温度特性の良好なATカット(厚みすべり振動)と+2゜Xカット(音叉屈曲振動)が大勢を占めています。

電気的等価回路

水晶振動子は、その共振周波数の近傍で下図に示すように等価直列キャパシタンス(C1)、等価直列インダクタンス(L1)、等価直列抵抗(R1)が直列に、更にこれに並列容量(C0)が入った電気的等価回路で示されます。 これにより直列共振周波数(fr)と並列共振周波数(fa)が存在することが分かるでしょう。
水晶振動子等価回路
水晶振動子等価回路

ATカット

厚みすべり振動の周波数は、ほぼ水晶片の厚み寸法で決まり、端部が振動の振幅も歪みも最小となるモードですので水晶片の支持構造の影響が殆どなく、 周波数安定度を確保するには最も適しています。中でもATカット水晶振動子は、X軸に平行でZ軸から35度15分近辺に切り出されたもので、 周波数温度特性が広温度範囲に亘って3次曲線の極めて良好な特性を示します。
水晶のカット
水晶のカット

ATカット周波数温度特性

ATカットが周波数温度特性が良いと言っても切り出し角度の秒単位で変化するものですから、大変高い加工精度と切断面の角度チェックが必要です。 周波数変動要因のトップに挙げられる特性ですので頭に入れて置きたい数値です。
記は使用温度範囲と期待できる25℃を基準とした最小の周波数変化量ですので、通常は製造時のバラツキを配慮しなければなりません。 最近の移動体通信システムに使用される基準発振器には温度補償回路を具備した水晶発振器TCXOが使用される理由の1つです。
ATカット周波数温度特性
ATカット周波数温度特性
周囲温度範囲(℃) 25℃基準の周波数変化量(x10−6
−5〜+50 3.0
−10〜+60 5.0
−20〜+70 7.5
−30〜+80 15.0

水晶振動子はアナログ部品

(周波数安定度阻害要因) 水晶振動子を使用して安定な信号を取り出すためには発振回路が必要です。水晶振動子はアナログ素子ですから回路もアナログ回路で構成する方が適合するのですが、 最近はデジタル対応の素子を直接発振回路として使用する場合も散見れますし、アナログ回路でも動作条件が不適切であったりする場合が多く見受けられますので下記の注意が必要です。
  1. 発振回路の構成部品又はICで構成される素子の特性・信頼性
  2.  
  3. 水晶振動子の励振レベルの適正化
  4.  
  5. 水晶振動子を動作させる負荷容量値の適正化
  6.  
  7. 水晶振動子の小型化対策(振動子自身と発振回路)
周波数安定性を要求する用途では1項の発振回路の設計、素子の吟味が必要です。特に動作負荷容量励振レベルの選定2項が重要で、 高すぎる場合に水晶振動子の非直線性の発生等、期待性能が得られないことが起こりますのでご注意下さい。 特にICを使用される場合は、デジタル動作条件、保護ダイオード付加等に重点が置かれて設計されがちになりますので、これらの影響を十分吟味することが必要です。
3項について周波数可変を得るために負荷容量を小さく選ぶことは、回路側の影響を受けやすくすることにに繋がりますので適正化が必要です。
4項の水晶振動子の小形化は、水晶片の振動領域を狭めることが必要になりますので水晶インピーダンスは高くなり、 1〜3項の設計条件は益々厳しくなります。また、水晶片の支持による悪影響が起こりがちになり、安定性を阻害する要因となるので対策が必要しょう。

音叉型水晶振動子

腕時計用の時間基準として開発された水晶振動子で、音叉屈曲振動モードを使用しています。これもATカットと同様に振動の振幅、 歪みが最小の個所が音叉形状の底部にありますのでここを固定支持し、安定性も高く、衝撃にも強い特長を持った水晶振動子です。 中でも+2゜カット(詳細は必要な特性で微調整)は室温近傍に頂点温度のある2次曲線となって、時計、時間制御タイマー等の用途に大量に使用されています。

音叉型+2゜カットの周波数温度特性

周波数温度特性は2次曲線ですが、その2次係数は-3.4x10-8で身に付けるような腕時計ではかなり正確に時を刻むことが可能です。 また、時計は、腕に付けた状態が多いし、気候が温暖な地域では累積で時を表示しますので、皆さんもご経験があるでしょうが、年間を通じて殆ど修正無しでも十分に使用できる迄になっています。

使用上の留意事項

水晶振動子を使用するに当たって動作の異常等に遭遇する場合があります。ここに動作条件、環境条件が急変するような場合に、次のような水晶振動子の持つ本質的な現象があります。
1.不要振動の結合
動作励振レベルが規定値より大き過ぎて周波数温度特性に異常発生。
2.励振レベル依存性
発振回路の負性抵抗(利得)が不適切な場合に発振の立上がりが不安定。
3.サーマルショックの発生
周囲温度急変時に温度による周波数変化以上に大きく変化。
4.ヒステリシス特性
周囲温度変化過程により周波数温度特性差が発生。
5.振動子振動領域への応力発生
外部からの応力が水晶振動子内に及んだ場合の特性変化。
6.周波数経時変化
代表的なものとして長期エージングが一般的で高い安定性が必要な場合には更に立上がり、周波数再現性、エージングレイト等の周波数変化があるので注意。
以上の技術的解説は、著書「水晶周波数制御デバイス」に解説されておりますのでご利用下さい。