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QCMセンサー技術ガイド

QCM (Quartz Crystal Microbalance)とは

水晶振動子表面に物質を付着させ、水晶振動体寸法、弾性率、密度等を等価的に変化させた場合に振動子の圧電気性質により電気的共振周波数の変化が起こる。 更にこの物質が物理的化学的こ変化が起これば、水晶振動体の弾性定数及び密度が変化し、周波数変化も起こるので水晶振動子の高い周波数安定性と分解能に付随して周波数変化が得られる。
結果として水晶振動子の共振周波数の変化量により極めて微量な付着物を定量的に捉えることができる。 このように設計された水晶振動子の総称がQCMである。形状、カット、等価パラメータ、諸特性等は、「水晶デバイス豆知識」中の水晶振動子または私の「著書」を参考として下さい。
古くから膜厚計のセンシングエレメントとして乾式の重量のみのセンシングには大きな実績を持っている。最近は、化学物質、 バイオ分析のために水中でのセンシングに利用されるので各種の多彩な要求がなされており、これからの需要増が見込まれるでしょう。

QCMの原理

水晶振動子はその安定性から殆どがATカット厚みすべり振動子が利用され、この共振周波数は下記の通りです。
f=1/2t(√C/ρ) t:水晶片の厚み C:弾性定数 ρ:密度

周波数の変化は、付着物質による弾性定数の変化と物質の付着厚みを水晶密度に換算したときの厚み寸法で決まるものと考えられ、 この結果として付着物の重量に換算することができる。弾性定数Cの変化が無視できる乾式の場合には、重量のみによる周波数変化となるので、 比較的容易に分析できることも理解できるでしょう。

QCMの高分解能が得られる理由

水晶振動子(特にATカット)の高安定特性を駆使し、そこに関わる物理的、化学的変化量が水晶振動子の等価パラメータを変化させ、共振周波数、振動損失の変化が起こる。 とくに共振周波数は、水晶振動子のQ値が高いために8桁程度の計測が容易であり、振動子の周波数安定性が維持できる範囲で周波数変化量を計測できるが、 付着物質に対する周波数変化が通常10-6オーダの安定性で計測できれば、変化量としては確実に10-5オーダの分解能を持つことになる。
ここで、水晶振動子が安定に作動するための動作条件とできる限り高いQ値・安定性を維持できる振動子設計(構造上の問題も含む)が高分解能と分析の再現性確保のポイントとなる。

QCMの使用上のポイント

液中での利用は、通常片面を液中に曝す構造のものが必要とされるので構造的にも水晶振動子に工夫がなされるが水晶デバイス豆知識2の使用上の留意事項や最近の学会等発表資料に記載している外部環境による変動要因を極力避ける工夫を忘れていることが多い。 更に、この場合は振動損失も大きく(Q値が低下)なるために上記の分解能も1〜2桁以上落ちることも予想され、 これらの液中での評価のマイナス要因は、QCMの設計・使用に当たって常に管理しなければなりません。
とくに水晶振動子を励振させるための電極は、上面は金電極が要求されるので、付着強度が問題となる場合が多数見受けられる。 下地電極材の選定、電極デポジット方法等のノウハウを必要とすることとなるでしょう。

研究段階におけるQCMによる測定法の推奨

測定の再現性が得られる計測手法として、通常の発振回路ではなく、伝送法による水晶振動子の直列共振周波数の測定を開発時には推薦する。 振動損失が大きく増えても正確に直列直列共振が捉えることが容易であると同時に、振動子の等価パラメータの計測も容易である。 C1は粘度、L1は密度、R1は振動損失を示すファクターであり、付着物の粘度、密度、振動損失の各変化量も捉えることが可能となる。 QCM用途にもよるが、研究段階で良く調査しておかねばならない。

液中のQCM計測と作動イメージ

  1. QCMを純水中におくと一般的に振動損失が増加し、そのQが落ちて大気中の場合に比べ共振特性は大きく鈍化する。
  2. 水の粘性、質量付加効果により、周波数はマイナスに大きく変化する。この場合電極範囲に閉じ込め振動モードとすれば 解析が容易となる。
  3. さらに反応膜に分析対象の物質吸着が起これば、振動損失も増加してさらに鈍化すると同時に、この影響による粘性、 質量付加効果により、周波数もマイナスにシフトする。
このイメージを下図に示した。このことは振動子パラメータの計測により(R1、L1、C1)吸着物質の相違による情報が得られ、 定量的な分析も可能となる。
QCM分析

QCMの分解能と使用周波数

QCM水晶振動子の周波数選定は、計測物質の質量及び検出量、反応させる吸着酵素/生体膜や計測環境に適合させて選択するが、 重量の影響のみで考えると、目安として電極上に付着する厚味寸法に換算して評価すると分かり易い。 下表はこの目安を示すもので、ナノメータ近辺の分解能を持つセンサーであることが理解できるでしょう。
振動領域は、電極下に閉じ込めて、電極上にのみ検出物質が付着するように設計することが望ましい。 下図のように中央部分が最も感度が高いので電極上に均一に付着させるように配慮することが必要である。 電極
更に周波数の高い30、60MHz帯も製作できるレベルにあるが、大変薄い板状の水晶振動子であるので外的要因の感度も高く、 センサーとしての構造設計には上記使用上のポイント事項を十分に配慮した設計とする必要がある。
小型化は、直径:8.5mm限界値でベベリングよりレンズ形状が望ましい。
QCM周波数 水晶片厚み
寸法
水晶直径
推奨値
付着厚み
変化量
周波数
変化量
分解能コメント
9MHz 0.185mm 8.5mm 185nm 9kHz ・付着量の多い場合に適合
・分解能:数十分子層
1.85nm 90Hz
10MHz 0.1665mm 166.5nm 10kHz
1.665nm 100H
30MHz 0.0555m 5.0mm 55.5nm 30kHz ・通常分析用としては用途は広い
・構造設計要注意
0.555nm 300Hz
60MHz 0.0278mm 27.75nm 60kHz ・高度の分解能を必要とする場合
・分解能:単分子層
・構造設計要注意
0.278nm 600Hz
注)1.付着物質の密度が水晶とほぼ同じ条件としたとき、直線領域で計算した概数値
2.電極径/水晶片径=0.5以下で電極下の閉じ込めモード設計

QCM設計に関する支援活動

QCMは、微細な付着物質を定量的に分析する目的を持ったセンサーであるが、単なる検出するために使用することも勿論、可能である。 初期には定性的な用途で使用しても、最終的には上記のポイントを良く理解して使用して頂きたいものです。 最終的には、簡易で微細な定量的分析が可能ですので、QCMとしてのしっかりした目的に応じた設計のもとに作らねばなりません。 これらの支援活動もご相談に応じます。
また、目的に叶ったセンサーの最も重要なポイントは、目的の物質を選択的に吸着させる反応物/酵素/生体膜であり次に捉えた量を再現性のある評価ができるセンサー(QCM)と言って良く、 ここに使用目的によるQCMの最適化設計を支援が必要があるものと考えられますので興味を持たれた方々は、ご相談に応じます。電子メールでご連絡下さい。