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ビジネス誌斜め読み 第304号 2002.10.7(MON)  7,132人の仲間へ
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●「世界一魅力的な国」を目指せ〜迷走する日本に示された方向性

●実用段階を迎えた燃料電池

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●「世界一魅力的な国」を目指せ〜迷走する日本に示された方向性
    これまでは「日本の企業だから日本で税金を納めるのは
  義務」という暗黙の了解があったのかもしれない。事実、
  そう発言する経営者も多かった。しかし、そいう精神論で
  企業が日本にとどまってくれると考えるのはもはや甘い。
                       <中略>
    日本の空洞化を心配するなら、「なぜ企業は出ていくか」
  だけでなく、「なぜ企業は入ってこないのか」も検討すべ
  きなのだ。

と言うのは、『日経ビジネス』(2002.10.7号)。「国を捨て日本を救
う〜立身出国のススメ」という特集の中でです。

  それによれば高い収益を上げられる企業と資金や技術・技能を持
つ個人の争奪戦が地球レベルで繰り広げられており、すでに日本を
脱出している企業や個人も少なくないといいます。

  たとえば、商船三井はコンテナ船を中心とした定期船部門の本社
機能をコンコルド(カリフォルニア州)、香港、ロッテルダム(オラン
ダ)に移しています。早くからグローバリゼーションの波に曝されて
きた海運業界では激しい競争に勝つために意思決定の権限を極力現
場に下ろして行く必要がありました。それを実践していったら自然
と日本はアジア本社傘下の現地法人のひとつという位置づけになっ
たのだといいます。現在では最大の設備投資である船の購入以外の
ことは地域本社に決定権があるといいます。
  これにより採算割れが常態化していたビジネスにまだまだ改善の
余地があり、競争力を高めることに役立っているというのです。

  エレベーターやエスカレーター、動く歩道などの専業メーカーで
あるフジテックは本社機能をオハイオ州シンシナティに移したのだ
そうです。理由は、世界シェアナンバーワンのオーチス・エレベー
タの動向を逸早く掴み、世界レベルでの戦略を立案するためなのだ
とか。登記上の本社は今でも大阪ですが、日本国内に残っていたら
国内のシェア争いに巻き込まれていたといいます。歴史も市場規模
もあるアメリカに出たことで買収による業容拡大などに成果を上げ
ているのだそうです。
  余談ですが、発明以来、原理的には変わることなかったエレベー
ターにまったく新しい機構を取り入れた新製品を開発したのがフジ
テックだったように記憶しています。これもアメリカに本社機能を
移した成果だったのですね。というのは、この新製品、確かアメリ
カ市場に多い入れ替え需要を開拓するために開発されたものと記憶
しています。しかも、ランニングコストも引き下げられるのではな
かったかと。

  それはともかく、すでに多くの国や地域が企業やお金を持ってい
る個人を優遇する政策で富を集積しようと動いていて、ここで紹介
した以外にも多くの企業や個人が日本を後にしているのだそうです。
  「他国との投資誘致競争の意識がなく、人や企業を単なる課税対
象としか見られないままでは、他国から企業や人を招き入れられな
いだけではなく、自国の企業や人にまで逃げられる。その結果、企
業や個人、言い換えれば国の保護が必要な企業や人だけが残る国に
なってしまう。日本がそうした事態を避けるには、世界を視野に入
れて競争力のある環境を作るほかない」(p.41)と『日経ビジネス』
は指摘しているのですが、同感です。

  1990年代の始め、世界一国際競争力があるとされた国がわずか10
年で30位にまで転落してしまいました。すでに韓国には追い抜かれ、
直後には中国が迫ってきています。このままいけば来年には中国に
も抜かれることでしょう。評価基準に問題があるという指摘もあり
ますし、ある面ではその指摘は的を射ているとは思いますが、日本
の国際競争力が著しく低下している事実は覆しようがありません。
もし競争力があるのなら、人もモノもカネもどんどん日本にやって
きているはずです。しかし現実にはどんどん流出しています。
  世界一であったとき、「もはやアメリカに学ぶものはない」と豪
語していた思い上がりを反省し、世界中の国々や地域を研究して、
最も事業を進めやすい国、個人が暮らしやすい国にしなければなり
ません。そのためには税制を変える必要もあるでしょう。今、話題
に上っている株価対策・デフレ対策としての減税には反対ですが、
「世界一魅力的な国」を実現する改革の一環しての減税には私は賛
成します。
  また、社会的な慣習にも改めるべき点があるでしょう。たとえば
住宅です。外国人が住宅を借りようとすると、理不尽なまでのバリ
アが存在するといいます。日本人でないというだけで借りられない
というのです。そんなことのないようなしくみを用意しておかなけ
ればならないでしょう。
  技術や資金を持った人の在留期間を延長し、面倒な手続を少なく
することも必要です。具体的には外国で取得した医師免許などの日
本国内での扱いを変更するなどの対応が必要です。

  「日本経済の再生」とか「不良債権処理の推進」などといったと
ころに目標を置いているようでは、日本は沈没するばかりです。企
業にとっても個人にとっても「世界一魅力的な国」を実現する旗印
を掲げることが大切だと思います。


●実用段階を迎えた燃料電池
  トヨタが今年中に燃料電池車の販売に乗り出すと発表したのに続
き、ホンダも追随することが明らかになりました。長らく次世代エ
ネルギーのエースとされてきた燃料電池がいよいよ実用段階を迎え
たといって良いでしょう。

  とはいえ、最も早く大きな市場を築くのは家庭用コージェネシス
テムだといいます。矢野経済研究所上級研究員の伊達陸宏(だて・た
かひろ)さんによれば、「2010年ごろには、台数ベースで85万台、金
額ベースで2650億円程度の市場が予測される」(『週刊エコノミス
ト』(2002.10.15号)p.44)とのこと。
  タイプとしては固体分子型(PEFC)と呼ばれるもので、電解質
にイオン交換膜を、燃料には天然ガスやLPG、メタノール、ナフ
サ、灯油などが用いられ、電気と温水をまかなうシステムです。
  最初は100万円あまりの価格設定をせざるをえないため国による補
助が必要になるかもしれませんが、量産効果から2010年頃には補助
金がなくても消費者が購入できる価格になるそうです。

  ガスや電力、石油など既存のエネルギーを扱っている企業には経
営環境の激変が訪れる可能性がありますね。街中から電柱がなくな
る日もそう遠くはないでしょう。すると今電柱を作ったり、電力線
のメンテナンスをしている企業は、新たな事業を見つけなければな
らないかも知れません。発電所や変電所の設備機器を作っている重
電メーカーも同様です。石油は熱源としてでなく高分子材料の原料
として使われることになるのかもしれません。もしそうなれば国際
政治の地図も大きく塗り替えられることでしょう。

  他の用途としては、携帯電話やノートパソコン、PDA(携帯情報
端末)の電源があるといいます。前出の伊達さんによると「2010年ご
ろに台数ベースで330万台、金額ベースで440億円程度の市場拡大が
予想される」といいます。

  燃料電池の普及は産業構造を大きく変えることになりそうです。


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【今日の1冊】
エリヤフ・ゴールドラット:チェンジ・ザ・ルール!,
ダイヤモンド社(2002年10月)

『ザ・ゴール』でTOC(制約条件の理論)を紹介したゴールドラット
さんの第3弾。今回はコンピュータソフト会社が舞台だそうです。

TOCというと生産管理の手法と捉えられがちですが、それは違い
ます。むしろ、マネジメントの質を向上させる枠組みと考え方が適
当なのではないでしょうか。

部分部分の生産性を上げたからと言って全体の生産性が向上すると
は限らない。全体としての生産性を最大にし、収益性を高めるため
にボトルネックを探し出してそれを活用すべしというのが、TOC
の考え方。それはとても非常に応用の利くものなのです。そのこと
を今回はソフトハウスを舞台に小説の形を借りて紹介しています。

前作を読んだ人も読んでいない人も、読んで損のない一冊だと思い
ます。

なお、TOC理論についてもっと詳しく知りたい方は、小林英三著
『制約理論(TOC)についてのノート』がお勧めです。


※途中で改行されてしまうなどきちんとURLが表示されない場合は、
『ビジネス・ラボラトリ』をご利用ください。
 
※ここで紹介した本を読んでの感想をお待ちしています。
※読者の皆さんのおすすめ本もご紹介ください。

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【ひとこと】
  いつも『ビジネス誌斜め読み』をお読みいただきありがとうござ
います。


  今回紹介した『日経ビジネス』の仕事はとても良いものでした。
日本経済の再生をテーマとした記事はいろいろ出ていますが、それ
らとは一線を画しています。新たな視座を提供するとともに、納得
できる方向性を示していると思います。このような記事を世に問う
ことができるのは、編集者が雑誌という媒体の特性を良く理解して
いるからではないでしょうか。

  雑誌の特性を生かしているといえば『現代』(2002年11月号)に掲
載されている「知られざる平壌『貧民街』に北朝鮮の現実をみた」
というルポルタージュも良かったです。本編では取り上げませんが、
興味のある方はぜひご一読ください。


  「広告が集まらないから配信できないのだ」と「まぐクリック」
は説明してきました。しかし、彼らが排除した広告代理店各社は、
厳しい経済状況にありながらも業容を拡大しています。必死で広告
を集め、配信を切らすことはありませんでした。一方、競合先の排
除に走った「まぐクリック」は今もってまともに広告を配信するこ
とができずにいます。これってどういうことなんでしょうね……。
  自力で広告集めができないのなら、広告代理店から買うことも考
えるべきでありましょう。手数料収入を徴収するビジネスデザイン
にしておけば、「まぐまぐ」の配信部数は大きいですから単価を下
げたとしてもそこそこの売上になったはずなんですけれどもね。広
告代理店が逃げ出すような手数料を要求したツケは大きいのではな
いかしらん。


  昨年5月から始めた Amazon.co.jpのアソシエイトプログラムの
フィーが先月やっと支払基準に達しました。書籍、VTR、CD、
DVDなど130点余りを売った対価です。 「本を買うなら、DVD
ソフトを買うならSOCIERATで買おう」と皆さんに利用していただい
たお陰です。どうもありがとうございました。今後とも宜しくお願
いいたします。

  Amazon.co.jpのご利用はこちらから。

  もしくは「今日の1冊」や SOCIERATのサイトの「今日のひとこ
と」および「ビジネス・ラボラトリ」で紹介している個別の本をク
リックしてください。SOCIERATのサイトの一部に設置されている検
索ボックスからのアクセスも有効です。


  最後にもうひとつおすすめ情報があります。
  今度の金曜日、夜11時からNHKで『ザ・ホワイトハウス』とい
う連続ドラマがスタートします。これとてもおもしろそうです。
  「政治は難しそうで近寄りがたい」と言われる方にも楽しみなが
らアメリカの政界の裏表が理解できるのではないでしょうか。
(ただし北海道は10月17日(木曜日)から)

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