エイドリアン・スライウォツキー: ザ・プロフィット ― 利益はどのようにして生まれるのか,ダイヤモンド社(2002年12月) 「利益の源泉は顧客である」これがこの本に込められたメッセージだと聞かされて得られる反応はふたつあるでしょう。ひとつは「そんなの当たり前じゃないか。何をいまさら……」というものであり、もうひとつは「確かにその通りだ。で、何をどうしたら良いの?もっと教えて!」というものです。 大方の日本企業の経営者は前者なのではないかと思います。なぜならば、儲かっていないからです。バランスシートを見る目はあるけれども、顧客を見る目を持っていないがために失っているものが相当あるように思われてなりません。 たとえば、マクドナルド。「デフレ時代の勝ち組」だなんてもてはやされていましたけれども、今は一転して業績不振にあえいでいます。BSE(いわゆる狂牛病)騒動の影響で売上が減少したという問題もありますが、それ以上に大きな問題は同社の価格戦略のミスでありましょう。すなわち、「半額バーガー」を2年近く続けてしまったことです。 マクドナルドの側はキャンペーンのつもりでいたかもしれませんが、消費者はそうは受止めませんでした。「1個65円でも商売になるんだな」と認識してしまったのです。この認識のギャップ、つまり顧客の変化に気づかぬままに価格を変更したことが今に至るまで尾を引いているのではないでしょうか。 前世紀は市場シェアさえ抑えれば儲けは後から付いてくるというモデルが有効でした。ところがそのモデルが通用しなくなっています。市場シェアさえとっていれば勝者になれるのであれば、今でもマクドナルドは業績好調なはずです。しかし現実には苦しんでいます。それは市場シェアの大きさが利益をもたらすとする収益モデルが破綻していることの証でしょう。新たな収益モデルを確立しなければならなくなっていることを示しているのです。 本書は、新たな収益モデルの確立を迫られている人たちにとって救いになるはずです。問題解決の鍵がちりばめられています。物語の舞台は大企業ですけれども、中小中堅企業でも生かすことのできる鍵です。「利益の源泉は顧客である」というメッセージを当然のことと感じる経営者も一歩掘り下げて行動レベルで点検してみると顧客の都合を考慮しない政策を放置しているかもしれません。その意味で「利益の源泉は顧客である」というメッセージを当然視している人々にこそ読んでいただきたい1冊です。
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