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ビジネス・ラボラトリ/おすすめの1冊

最終更新日:2004年11月15日

おすすめの1冊


「おすすめの1冊」で取り上げた本の紹介です。

『カルロス・ゴーン経営を語る』カバー写真 カルロス・ゴーン,フィリップ・リエス:
カルロス・ゴーン経営を語る,
日本経済新聞社(2003年9月)

この本は単なる著名な経営者の成功譚ではありません。変えなくてはならないことと変えてはならないこと、その見極めが極めて重要であることを改めて認識させてくれると共に、そのセンスを磨く手助けもしてくれるのです。

妙なエリート意識と猛烈な労働争議の後遺症から技術力と販売力がうまく噛み合わず、深刻な経営不振に陥った日産自動車。1999年6月、天文学的な数字の赤字を抱えていた同社がフランスの自動車メーカー・ルノーの傘下に入り、「コスト・カッター」という異名ぐらいしか聞こえてこなかったカルロス・ゴーンがCOO(最高執行責任者)として送り込まれてきたとき、その復活を予見していた人は誰もいないでしょう。少なくともこれほどのV字回復を予測した人は皆無なのではないでしょうか。

実際には大方の人が懐疑的に見ていた計画を前倒しして達成し、新たな成長の軌道に乗せることに成功しています。その秘訣は選択と集中にあるように見えますが、どうもそれだけではないようです。日本企業の停滞の原因とされている集団主義や現場主義を失ってはならないものとして受け止め、それを最大限活用したことが成功の背景にあるようなのです。

本書は、ゴーンさんの生い立ちとビジネス上の意思決定の記録をまとめたもの、ということができるでしょう。2001年10月に出版された「ルネッサンス ― 再生への挑戦」(ダイヤモンド社)よりも踏み込んだ記述がされていますので、物足りなさを感じた方はぜひ新しいこの本を読むことをお勧めします。

もちろん「ルネッサンス ― 再生への挑戦」を読んでいない方にもお勧めします。付け焼刃でない日本企業のマネジメントを模索している方の役に立つでしょう。それから、日本に限らずグローバルな視点からマネジメントを学ぼうとしている方にも得るところが多いと思います。

ごちゃごちゃ言ってきましたけれども、ともかくビジネスの成功は人に行き着くということ、情熱や献身のないところに成功や幸福はありえないということを再確認させてくれる1冊です。

『ザ・プロフィット』カバー写真 エイドリアン・スライウォツキー:
ザ・プロフィット ― 利益はどのようにして生まれるのか,ダイヤモンド社(2002年12月)

「利益の源泉は顧客である」これがこの本に込められたメッセージだと聞かされて得られる反応はふたつあるでしょう。ひとつは「そんなの当たり前じゃないか。何をいまさら……」というものであり、もうひとつは「確かにその通りだ。で、何をどうしたら良いの?もっと教えて!」というものです。

大方の日本企業の経営者は前者なのではないかと思います。なぜならば、儲かっていないからです。バランスシートを見る目はあるけれども、顧客を見る目を持っていないがために失っているものが相当あるように思われてなりません。

たとえば、マクドナルド。「デフレ時代の勝ち組」だなんてもてはやされていましたけれども、今は一転して業績不振にあえいでいます。BSE(いわゆる狂牛病)騒動の影響で売上が減少したという問題もありますが、それ以上に大きな問題は同社の価格戦略のミスでありましょう。すなわち、「半額バーガー」を2年近く続けてしまったことです。

マクドナルドの側はキャンペーンのつもりでいたかもしれませんが、消費者はそうは受止めませんでした。「1個65円でも商売になるんだな」と認識してしまったのです。この認識のギャップ、つまり顧客の変化に気づかぬままに価格を変更したことが今に至るまで尾を引いているのではないでしょうか。

前世紀は市場シェアさえ抑えれば儲けは後から付いてくるというモデルが有効でした。ところがそのモデルが通用しなくなっています。市場シェアさえとっていれば勝者になれるのであれば、今でもマクドナルドは業績好調なはずです。しかし現実には苦しんでいます。それは市場シェアの大きさが利益をもたらすとする収益モデルが破綻していることの証でしょう。新たな収益モデルを確立しなければならなくなっていることを示しているのです。

本書は、新たな収益モデルの確立を迫られている人たちにとって救いになるはずです。問題解決の鍵がちりばめられています。物語の舞台は大企業ですけれども、中小中堅企業でも生かすことのできる鍵です。「利益の源泉は顧客である」というメッセージを当然のことと感じる経営者も一歩掘り下げて行動レベルで点検してみると顧客の都合を考慮しない政策を放置しているかもしれません。その意味で「利益の源泉は顧客である」というメッセージを当然視している人々にこそ読んでいただきたい1冊です。

『人はなぜネットでものを買わないのか』カバー写真 中谷俊介:人はなぜネットでものを買わないのか ―― タイプ別「潜在顧客」アプローチ法,ソフトバンクパブリッシング(2002年9月)
消費者がネットショップ(オンラインショップ)をどのように見ているか、実証的な論考を展開している。


『あのブランドばかり、なぜ選んでしまうのか』カバー写真 アンドレアス・ブーフフォルツ, ボルフラム・ホルデマン:あのブランドばかり、なぜ選んでしまうのか――購買心理のエッセンス,東洋経済新報社(2002年)

ブランド論はマーケティングの大きな柱のひとつになっています。しかしながら従来のそれは企業の視点で記述されたものばかりでした。

このアンドレアス・ブーフフォルツ, ボルフラム・ホルデマン共著 『あのブランドばかり、なぜ選んでしまうのか――購買心理のエッセンス』(東洋経済新報社)は消費者視点でブランドを語っている数少ない本。新しいマーケットが見えてくるかも。


『チェンジ・ザ・ルール!』カバー写真 エリヤフ・ゴールドラット:チェンジ・ザ・ルール!,ダイヤモンド社(2002年月)

『ザ・ゴール』でTOC(制約条件の理論)を紹介したゴールドラットさんの第3弾。今回はコンピュータソフト会社が舞台だそうです。

TOCというと生産管理の手法と捉えられがちですが、それは違います。むしろ、マネジメントの質を向上させる枠組みと考え方が適当なのではないでしょうか。

部分部分の生産性を上げたからと言って全体の生産性が向上するとは限らない。全体としての生産性を最大にし、収益性を高めるためにボトルネックを探し出してそれを活用すべしというのが、TOCの考え方。それはとても非常に応用の利くものなのです。そのことを今回はソフトハウスを舞台に小説の形を借りて紹介しています。

前作を読んだ人も読んでいない人も、読んで損のない一冊だと思い ます。

なお、TOC理論についてもっと詳しく知りたい方は、小林英三著 『制約理論(TOC)についてのノート』がお勧めです。(『ビジネス誌斜め読み』 第304号 2002.10.7より)


『マーケティングゲーム』カバー写真 エリック・シュルツ:マーケティングゲーム〜世界的優良企業に学ぶ勝つための原則,東洋経済新報社(2002年月)

コカ・コーラ、P&G、ディズニーといった世界的な優良企業がその地位を獲得するためにどんなことをやってきたのかを紹介しながら、それらを生み出すための原理・原則の解明をしようとしています。理論書でもなく、実践書でもない不思議な本です。(『今日のひとこと』2002年5月2日より)



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