文×スケッチBag

甘夏さんの文が大好き!
1年前にラブコールして、ようやく『一緒になにか作ろう』が実現しました。
甘夏さんの文を読んで、私がイメージして作ったもの,
私のBagを見て、甘夏さんが文をつけてくれたもの,
お互い気ままに自然体で少しずつ作っています。

 

10/19new

カフェ ×Kbag16

 
旅の途中。
町外れのバスターミナルにいた。
 
時間はまだ、たっぷりある。
 
ブーツに木枯らしを巻き付けたまま
見慣れた看板のカフェにすべりこむ。
 
ショートカプチーノ
プリーズ プリーズ
 
ドリップドリップ
ポコポコポコ

 

 

夏服 ×Kbag17 (for Y.S)

 
向日葵の咲く通学路を、
自転車に乗って進んでゆく。
青空に膨らむ入道雲。
 
夏休みの学校が好きだった。
人気のない廊下と教室。
冷房の効いた図書館の窓辺。
生徒達の掛け声が響く校庭。
 
真夏の光の中で、
白いシャツとショートカットが
誰よりも似合っている友達がいた。

 

 

 ×Kbag15

 
卒業旅行にでも行こうよ。
と、友達が言った。

電車を乗り継いで、
海のある田舎町へ向かった。
蜜柑畑。サボテン。魚の干物。
それから、春の海。

波の音と一緒に、
未来の鼓動が聞こえた。


 

 

冬の月 ×Kbag14

雪の降りやむ静かな夜。
空に浮かぶ冬の月。
 
小さな兄弟は、小声で合図をして、
ベッドを抜け出し、温かな服を着る。
白いダウンジャケット。
黄色のとんがり帽子。
フリースの青い手袋。
そして、赤いスノーブーツ。
 
さあ、行こう。氷の湖へ。
きっとあの子が待っている。

 

 

人魚 ×Kbag13(for M.S)

冷たく青い冬の海で鯨に出会ったら、
赤い蝋燭を描いたという人魚の娘のところまで
連れて行ってもらおう。
お友達になれるかしら。
人間になりたかった人魚と、
人魚になりたかった人間。

 

 

秋の朝 ×Kbag12

目覚めの良い、秋の朝。
窓の外からレモン色の光が差し込む。
小鳥達の声が聞こえてくる。
キッチンのテーブルには、
クルミパンと葡萄ジャム。
冷蔵庫からミルクを出す。
朝食を済ませたら、
私もそろそろ出かけなくっちゃ。

 

 

流夏 ×Kbag11

するりするり
川面をすべる南風。

ちるりちるり
そっと響く風鈴の音。

とろりとろり
冷たい葛餅にかける黒蜜。

夏はりりりと流れていく。

 

 

林檎 ×Kbag10 (for W.F)

午前十時、一の森のバス停に集合。
紅い林檎をまるごと一つ、
お弁当と一緒に持ってくること。

遠い昔、そんな約束をして、
女の子とピクニックへ行った。
春の野で一緒にまるごとかじった林檎は、
季節外れで酸っぱかった。

 

 

盆踊り ×Kbag9 (for A.S)

湯上がりのさっぱりした体に、
白地に桃色の絣模様の浴衣を着せてもらう。
盆踊りに出かけるよ。
ふわふわした足どりで。

いくつもの堤燈灯りの下、
大人も子供も、知っている人も知らない人も、
みんなが一つの輪になって踊る。
音頭に合わせながら、同じ方向にゆっくりと。
手の平はひらひらと。

履いていたビーチサンダル。
脱げないように注意しながら、
大人をまねて夢中で踊る。

 

 

団地 ×Kbag8

冷たい闇に浮かぶ冷たいコンクリートの
縦横に並んだいくつもの小さな窓。
その一つ一つに明りが灯り始めると、
夜の団地は、夜の海を渡る何隻もの巨大な船になる。
たくさんの乗客を乗せて旅をしているのだ。

その数ある窓の一つから、
温かい明かりにすっぽりと包まれ守られて、
海を眺める。

波に揺られる大きな桜の木。
となりの船の美しい窓の羅列。
海の遠くを走りすぎる列車の音。

 

 

ろうそく ×Kbag7

誕生日ケーキの前に座っている子供たち。

ろうそくの灯った大きな丸いケーキの前で、
興奮しながら幸福そうに瞳をキラキラさせている顔。

子供にとってあの幸福は、
ろうそくの密やかな灯りよりも、
ずっと現実で強烈なのだろう。

 

遊園地 ×Kbag6

夜の遊園地。

人々の奇声とともに、色とりどりのネオンが、
観覧車やジェットコースターと一緒に回っている。
グルグルと、ガタガタと。

そのネオンの影の、
投げ捨てられたゴミの向こう側に、
おちこぼれの魔法使いが住んでいる。

魔法使いは知っている。
もうすぐ魔法が効かなくなることを。

どんなにネオンがキラキラと光っていても、
魔法は消え、夢の夜は終わるのだ。

 

 

 

野球場 ×Kbag5 (for T.K)

家の斜向かいに、大きな公園があった。

小さな野球場もあり、
夏はナイターの光が家まで届く。

強く明るいその白い光は、
夜の公園の緑を映して、
野球場は特別な空間のように見えた。

夏の夜空の底は、グラウンドの柔らかな緑色。

 

 

カルピス ×Kbag4 (for K.N)

真夏の庭の日差しは、暑いよりもまぶしかった。
キラキラと流れ落ちる如雨露の水。

家に入り、お風呂場で水を浴びた後、
畳の上で裸足の足を投げ出し、
せんぷうきの風に当たる。
額にかかる濡れた髪が乾いていく。

ガラスのコップには、
透き通るように光る氷と、
薄いカルピスが入っていた。

 

 

月 ×Kbag3 (for M.O)

何故だろう。

子供の頃、
月明かりに手をかざすと、
自分の指が、長くほっそりと
大人の女性の手のように見えた。

そしてその手は確かに実際より大きく見えた。

月をつかめそうな程に。

 

 

街 ×Kbag2

透き通った藍色の夜空を背景に、
ビルや街路樹のイルミネーションが楽しげに光る。
まるで、「ようこそ冬!」と
寒さを歓迎しているみたいに。
 
コートのポケットに手を入れ、
マフラーをぐるぐる首に巻き、
鼻の頭を冷たくして、
浮かれ気分の夜の街を通り抜ける。
隣に誰かがいればもっと楽しいのだろうけれど、
と思いながら。
 
それでも、背筋を伸ばし冷たい空気を吸いこめば、
自由で清らかな、十二月の夜の街。

 

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