Power of the submarine


用語:Power of the submarine
和訳:潜水艦の動力

【概要説明】
現在、潜水艦の動力は大きく分けた場合は3種類に分類することが出来る。1つは原子力。2つ目はディーゼル・エレクトリック。3つ目は非大気依存エンジン(AIP)である。

ただし、実際の運用数からすればディーゼル・エレクトリックが圧倒的多数で原子力は少数派である。それ以外の方式は今後の主流になる可能性はあるが全世界でも数例のみにとどまっている。

潜水艦の動力に求められる性能は水上艦よりもシビアで、その時その時の最高技術が用いられている。なにしろ、馬力があればあるだけいいという安易なことができないのである。無論、あるに越したことは無い。しかし、原子力にしろディーゼルにしろ電池にしろ、大出力のものは高発熱である。また、電池はともかく内燃機関や原子力は高出力になると2次曲線的に騒音が大きくなる。また、現在の技術では大出力機関はどうしても相対的に大きくならざるを得ない。

以上のことから、必要最小限の出力で最大限の能力を発揮できるように開発されている。

基本的には静かで発熱量が少なく小型軽量であることが求められる。そして原子力以外は燃費も重要である。もっとも原子力も燃費はいいにこしたことはないが通常型よりも重要視はされない。

【詳細説明】

(1)原子力
原子力は内燃機関とはまったく違う方式で熱量を発生する。詳しくは原子力の項を参照願うこととして、ここでは潜水艦用の原子力についてのみ説明をする。

一般的な原子力の使用方法として御馴染みなのが原子力発電所である。軍用としては水爆の起爆剤としての利用である。原子力発電所の場合、コストが最優先であり、熱効率の面ではあまり優れた技術は取られていない。だが、軍用の場合、破壊力や熱効率が最優先であるため最先端の技術を使用している。特に潜水艦用原子力の場合、水上艦用などに比べてもかなりのハイテクが用いられている。

例えば、燃料のU235の純度がそうである。自然界に現有するウランの中に含まれているU235は通常は1〜3%程度であるが、原子力発電所などではこれを5〜10%程度まで純度を上げて使用している。さらに軍用ともなると15%あたりまで純度を上げて使用する。だが、最新型の原子力潜水艦の場合、純度を90%以上まで上げて使用している。

ここまで純度を上げると炉心温度もかなりのものになり制御を一歩間違えると簡単にメルトダウンを起こし、原子炉が原爆と化してしまう。そのため、純度を上げる技術もさることながら制御技術や格納技術や熱交換技術にかなりのハイテクを求められることになる。

当然のことながら水上艦よりも原子力機関そのものの容積は小さいものを要求されるために潜水艦用原子力機関は最先端のものが使用される。

原子力というものの基本は内燃機関と同様で熱を発生するだけなので、ここから推進力を得るためには往復運動または回転運動に変化させる必要がある。そのためなにも考えずに簡単に回転運動を得る方法としては発生した熱量を使用して液体を膨張または蒸発させて体積を増やしてタービンを回して回転力を得る方法が上げられる。

ただし、この方法の欠点は、戦闘時に原子力そのものを常時フルパワーで使用しなければならず、その場合の持続時間も自ずと短いものになってしまうという点が上げられる。さらに当然のことながら騒音もかなり大きなものになり静粛性が命の潜水艦にとっては致命傷になってしまう。

そのため、原潜保有各国では、この欠点を無くすためにさまざまな技術が用いられている。

だが、米露等の原子力大国ならばこれらの欠点を克服することが可能であるが、それ以外の国はなかなか欠点をぬぐえないでいる。そこで比較的簡単に上記欠点を無くす方法とし、原子力・電気推進方式が考えられた。これは原子力発電所をそっくりそのまま艦内に持ち、そこで発生した電力を使用して推進するものである。

この方法は既存のディーゼル・エレクトリックとほぼ同じ方式なので制御も簡単である。ただし、これはこれで新たな欠点を持っている。つまり、かなりのデットスペースが増え、重量もかさみ、絶対パワーも小さくなってしまうという点である。

なお、旧ソ連時代のアルファ級の場合、ある程度の欠点は無視して作られた原潜である。なにしろ、42ノット以上の速力を持ち、安全深度も900m以上という驚異的スペックを持っていたからである。そのため、少々騒音がうるさくて簡単に発見されようが、簡単に敵水上艦や原潜に接近でき、魚雷を撃たれようが簡単に回避できるためにまさに深海の怪物とも言えたのである。

それでは現在、ロシアは、アルファ級を量産しているかというとそうではなく逆に退役させている。確かに潜水能力は化物じみた性能を誇るが、それは米国原潜やイージス艦が「やぁやぁ我こそは・・・」と1対1の対決を望んだ場合であって、それ以外の能力と言うとかなりお寒いものだからである。

なにしろアルファ級はインターセプトだけに特化した原潜であるため、攻撃オプションは基本的には短魚雷だけである。また搭載量も少なく活動時間も短くなっている。なにしろ、冷戦時代のソ連原潜聖域確保用で作られたため、冷戦終結後の現在では下手に外洋に出たら対潜哨戒機の餌食である。

無論、制空権を取っている海域ならば活躍の場はあるが、いかんせん、現在のロシアにその力は無い。

話が少し脱線したのでまた戻すことにする。

原子力機関の基本は上記で述べたように2種類あるが、現在、一般的なのが前者でタービンを回して回転力を得る方法である。この方式は原子力発電所と同じで原子炉で得た熱を流体に伝え、その流体で原子炉外の別の流体を膨張または蒸発(一般には水が用いられるために水蒸気の膨張を利用する)させ、その際の圧力差でタービンを回す方法である。

ここで問題なのが燃料のウランは有毒物質であるという点と制御を誤ると核爆発を起こしてしまうという点である。そのため、原子力機関の取り扱いはドが付くくらい慎重に行われている。

余談だが、実際問題、よく原子力は安全で放射能漏れなどは一切無いと電力会社は言っているが・・・あれは・・・大きな声ではいえないが嘘である・・・と、言い切ると怒られるので言い切らないが(笑)

噂としては、原子力発電所で働いている電力会社の社員のお子さんはなぜか殆ど女の子である。また、原潜乗組員もなぜか同様である。ということで・・・以下16行省略

(2)ディーゼル・エレクトリック
浮上時及びシュノーケル深度はディーゼルエンジンで航行及び電池に充電して、潜航時は電気で推進する方式である。この方式が現在は一般的である。我が国海上自衛隊の潜水艦もこの方式である。

この方式の利点は既存技術であるということである。無論、年々進歩はしている。が、コストは比較的安く仕上がるという点である。

欠点は、やはり長時間潜航が出来ないという点である。潜水艦の性能は各国とも最秘匿項目であるために正確なことは不明だが電池のみで潜航した場合、だいたい600kmまでが航続距離となる。600kmというと結構長い距離だが、この距離は時速5〜10km程度の速度であるためあまり意味が無い数値である。意味のある数値となると戦闘速度では何kmかということになるが、これはその潜水艦によって大きく変わってくる。一般的にはせいぜい300kmが限界であると思われる。これまた300kmというとかなり長い距離と思われるが時速30kmで走行すると10時間持たないということになる。

さらに、実際の戦闘となると、これ以外にも電力は使用されるため、実際には200km程度まで低下する場合もある。つまり、限界的な使われ方をすると5〜6時間が行動時間とも言える。そのため、戦闘中は極力電力を使用しないため照明も必要最小限まで落とされ環境は劣悪極まるものになっている。

また、沈黙の艦隊でも言われているように燃料やエンジンから出るディーゼル臭がこれまた劣悪なのである。この臭いのきつさは言葉では表せないほど酷いものである。ちなみに筆者はまだ経験が無いのだが私の部署では潜水艦の一部を製作したり修理したりもする。そこで実際に海自の船水艦を修理(定期点検)したことがある同僚に聞いたところ

「仕事が終わって作業服を脱いでシャワーを浴びて私服に着替えて電車に乗っても体に染み付いた臭いで近くの客が顔をしかめる」
と言っていた。

それくらい酷いものらしいのである。だが、沈黙の艦隊の深町艦長曰く「このディーゼル臭こそ優秀なディーゼル・エレクトリック艦の証」と言っているので潜水艦乗りにはそれはそれで誇りである、らしい(笑)

さて、潜航中の動力は電力だが、この電力を生み出すのが電池である。

電池にはいろいろ種類があるが、一般的には大衆自動車とかにも使用されている鉛電池が使用されている。鉛電池は歴史が古くすでに枯れた技術であるために安価で性能も安定している。無論のことながら最新型の電池に比べるとスペック的にはかなり劣っており、最先端技術オンパレードの潜水艦に使用されているのが意外と思われるかもしれない。

だが、兵器は何が何でも新技術が優れているとは限らないのである。確かに旧技術よりも新技術が全てにおいて優れている場合は新技術が採用されるが、たった1点だけが優れているだけの新技術などは採用されない。大戦略でも同様である。スプルーアンスよりも魚雷の射程が1だけ長くそれ以外は全て劣っている新鋭艦ウダロイは誰も使用しない。

大電力保持力を誇るニッカド電池は利点はそれだけである。欠点としてはメモリ効果や高コストなどで兵器には使用しにくいのである。

ちなみに筆者は仕事柄、鉛電池を扱っているが発電所や変電所で使用されている鉛電池などの寿命はうまく使用すると40年は持つのである。もっとも基本的には鉛電池は半永久的寿命であるためにそれほど意外ではない。自動車などではよく寿命が2年と言われているが、筆者の愛車の電池は10年くらいは交換しない。電池の性質を知っていれば結構もつものである。

だが、軍用の場合、このような電池を持たす使い方はなかなかされない。そのため鉛電池でせいぜい6年、ニッカドならば1年であろう。そのため鉛電池の場合、艦が退役するまでに3〜4回(理論上)程度の交換で済むがニッカドならば10数回の交換は必要である。さらにニッカドは鉛電池の数倍の価格である。無論、戦時ならば兵器が耐用年数を全うするなどは最初から考えられていない。そのため戦時ならば竣工時だけのコストが問題であって20年使ったらなどは考えていないのである。

ならば、戦時にはさらに高性能なインフォリチウムなどが使用されるかというと、否、である。

それはいくら戦時とはいえあまりに高コストだからである。なにしろノートパソコン用の小さなものでも1万円はする代物である。潜水艦用ならば、最低でもその100万倍の容量は必要で単純計算でも100億円はする。

しかし、高いだけならまだいいのだが、あまりに高性能なために現在の技術では全力運転時に発生する熱を冷却する方法が問題である。なにしろ冷却も電気に頼っていては本末転倒であるからである。水冷という方法もあるが、単純な方法を取ると温水を吐き出すことになり対戦哨戒機に簡単に発見されてしまう。ちなみに高性能エンジンである原子力もこの冷却にはなかなかいい方法が見つかっていないが豊富な電力を使用して力技で解決している。もっとも、それでも通常動力艦に比べれば温度変化はかなり高いために完璧な解決には至っていない。

ちなみに鉛電池の構造上、完全密閉は困難で強度も低い。そのため損傷を受けた場合は液漏れを起こしやすい。そして充電時に発生する水素ガスは爆発の危険性があり、電解液は海水と交わると有毒な塩素ガスを発生する欠点がある。
(3)非大気依存エンジン(AIP)
有名なところではスターリング機関があるが、これはスウェーデンの「ゴトランド」型3隻に使用されている。この機関は一般的にはクローズドサイクル機関と呼ばれていて大気を取り込まなくとも燃焼できる特徴がある。当然、酸素を最初から搭載しているためである。

スターリング機関は外燃機関で、発生した熱で内部にあるヘリウムを作動ガスとしピストンを動作させ回転運動に変化させている。欠点は、燃焼時の排ガスを安易に浅海で放出した場合、発見される恐れがあるという点と、深海では水圧が高いために放出が困難であるという点である。

それでも、ディーゼルなどと比べると水中巡航中でもある程度のエンジン駆動は可能なので原子力にはかなわないまでも通常の戦術行動を取る分には支障が無いくらいの潜航時間・潜航航続距離がある。

現在の技術ではだいたい10〜20日間程度まで潜航が可能で航続距離も1000〜1500km程度は可能となっている。この程度ならば、一般的な戦術行動を行うことが可能で原潜なみに隠密行動を取ることが可能である。