MLRS
用語:MLRS(Multiple Lanch Rocket Sytem)
和訳:多連装ロケット発射装置 MLRS
【要目】(M270自走発射機)
生産国:アメリカ
戦闘重量:25t
全長:7.0m
全幅:3.0m
全高:2.9m
発動機:カミンズ製YTA-903液冷V8ターボディーゼル500hp
変速機:GE製HMPT-500ハイドロメカニカル・トランスミッション(前進4段、後進2段)
燃料容量:617リットル
懸架装置:トーションバー 第1、2、3、6転輪に油圧ショックアブソーバー付
最高速度:路上 64km/h
航続距離:483km
武装:M26 戦術地対地弾道弾(M77子爆弾644発内蔵)
全長 3.94m
直径 0.227m
重量 308kg
速度 マッハ3.5
射程 31.8km
弾数 12発
射統装置:射撃統制コンピュータ(データは大隊の戦術射撃統制SYSYTEMより入手)
装甲:5083アルミ合金(アルミニウムとマグネシウムの2元合金)
乗員:3名
MLRS(Multiple Lanch Rocket Sytem:多連装ロケット発射システム)は、1976年より開発が進められ、1983年から実戦配備されたアメリカ陸軍初の本格的地域制圧用ロケットシステムである。開発は、3段階に別れており、第1段階のフェーズ1では、基本システム全般でロケット内の弾頭も通常の子爆弾とし、第2段階のフェーズ2では弾頭がAT-2散布地雷で第3段階が子爆弾に終末誘導機能を持たせた対戦車用となる。
MLRSの基本構造は、M270自走発射機、M26-SSM、FCSである。M270そのものはM2ブラッドレーのコンポーネントが流用され前部に装甲キャブ(乗員室)、その後方が機関室、後部がランチ/ローダーモジュール(LLM)となっている。キャブ内には左に操縦手、真ん中が射撃手、右に車長が乗車し、車内は与圧式NBC防護SYSTEMが備えられている。LLMは旋回角194度(5度/秒)、俯仰角0〜+60度(0.8度/秒)の能力があり、さらにロケットの再装填用のクレーンが設けられており約3分で再装填が行える。
MLRSの実戦での発射手順は、大隊FDC(戦術射撃指揮所)のTACFIRE(戦術射撃システム)から配信される目標データを中隊コンピュータ(BCS)で受け、各小隊FDCに流し、それを受けて各小隊M577コマンドポストの小隊指揮通信機(PLDMD)から各MLRSの射撃統制コンピュータに入力されミサイル発射となる。なお、MLRS大隊は中隊×3からなり、中隊はMLRS小隊×3と補給小隊×1からなる。MLRS小隊は、小隊指揮車M577コマンドポスト1両、M270自走発射機3両からなる。補給小隊は、M985補給トラック18両からなる。なお、補給トラックは2両で1両のMLRSに補給するため、基本的にはMLRS部隊は中隊規模の9両で行動を共にする場合が多い。
そのため、湾岸戦争時には目標が多いために中隊規模で多数の部隊を配置して、2中隊が組んで攻撃したり、1中隊で攻撃を行った。だが、もともとこの手の兵器は数射ってなんぼのものである。戦後の検討によると、やはり1大隊規模で移動及び攻撃した方が効果的であることがわかった。
で、件の湾岸戦争時の戦訓でわかったことは、MLRSでは射程が足りないということであった。実際に同じM270自走発射機で射てるATACMSの有効性等が指摘され、MLRSも最低50kmの射程を持つロケットが必要であるとのことから、改良型が開発されている。改良型ミサイルは、M26E1射程延長MLRS(Extended Range MLRS)と呼ばれているもので、射程は要求値50kmには及ばないものの45.5kmを誇る。だが、既存技術でのもののためか、ただ燃料を増やしただけの安易なものであり、搭載する子爆弾の数も644個から518個まで減少する。
MLRSのフェーズ1ロケット内の子爆弾(M77サブ・ミュニッション)は、203mm榴弾(M483A1)やランス弾道弾(M42)の改造型で重量230kg、形成炸薬による装甲貫通能力(40mm)と破片効果による対人及び軽装甲目標に使用する。フェーズ2は、ドイツの合弁会社RTG社が開発を担当したもので、107kgのAT-2対戦車地雷4個を収納するキャニスター7本を搭載する。そのため、ロケット単体の重量はフェーズ1より50kg弱軽量化され、射程は40kmとなる。破壊力はさすがに大きく140mm以上の装甲貫通能力を持ち、装甲車両が上を通過した場合と事前に設定された有効時間の87%以上を経過した場合に爆発させることが可能になっている。フェーズ3は、マーチン・マリエッタ社が中心で開発したが、結局、採用されなかった(笑)
代わりに、新型子爆弾として採用されたのが、SADARM(Sense And Destroy ArMor)とBAT(Brillant Anti-Armor Submunition)である。SADAM(サダーム)M109の砲弾にも仕込むことが出来る小型爆弾で、文字どおり自分で目標を探知して攻撃する能力を持っている。MLRS用は一番大きく、直径175mm、重量は12.8kgでロケット1発の搭載量は6個である。ちなみに、M109用は直径147mmで1砲弾に2個搭載される。センサーはミリメートル波と赤外線の2種類を持っており機甲車両を探知した場合、空中で爆発して内蔵の自鍛破片を撃ち込み目標を破壊する。BAT(バット)は基本的にはATACMSブロック2用で、詳細はATACMSの項を参照方。
なお、最近、陸自でもMLRSが配備されたが、ちゃちな自走砲でも最大射程での演習ができずにいるのに、MLRSの演習はどうするのだろうか? 部外者ではあるが、ちと心配である・・・
参考文献 戦車マガジン別冊「AFV94」
筆者:SM