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老成都
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[其九]
楊式太極拳
中国の朝のイメージとして、公園で太極拳をしている人々の姿を思い浮かべる人は少なくないと思いますが、私が住んでいた成都でも太極拳は盛んに行われていました。留学して暫くした頃、前々から誘われていた先生に太極拳を教えてもらう事になり、その後約三年間に渡り週に二日、教示を受ける様になりました。元々武術に興味が有った訳では有りませんが、何分貧乏学生の私に取って、当時の成都は遊びらしいものは全くと言って良い程無く、暇を持て余していた私にしてみれば、お金や道具も要らず好都合で、良い暇つぶしのつもりで始めまたのがきっかけでした。
董老師 第十七式 左右倒攅猴
私の先生は董老師と言って、武候祠の隣にある南郊公園の教練でした。老師は当時三十代後半の現役バリバリだったので、推手(組手)では投げ飛ばされる事もしばしばでした。太極拳は始めてみると中々奥が深く、型を覚えるだけでも一年以上の月日がかかりました。その後は推手、そして刀、剣と学び、棍は長さが3m近くもあり、練習で振りまわす場所が無かったので出来ませんでした。練習は普通、老師が仕事から帰宅した後の夜に行いました。先ず八十五ある型の練習を行い、その後に推手をします。一緒に練習する弟子は私一人だけの時も有りましたが、多い時でもニ〜三人位でした。練習はニ〜三時間位行い、その後は老師の家で白酒を飲みながら太極拳の理論を教えてもっていました。
そんなんで帰る時間はいつも零時を回っていました。一度帰りが遅くなり、深夜に刀と剣をぶら下げ、真っ赤な顔で自転車に乗っている所をパトカーに呼びとめられた事が有ります。言葉の解らないふりをして滅茶苦茶な英語を話すと、警官に面倒くさそうに手で追い払われ、その場はそれで済みました。でもそれ以降、刀と剣は老師の家に置かせてもらう事にしました。やはり天安門事件以降、夜間の取締は厳しくなっていたみたいです。
第十八式 斜飛式
それはさておき、老師に教えてもらった太極拳の簡単な概略を受け売りでそのまま紹介したいと思います。
太極拳は内功拳と言われています。内側への攻撃、つまり組手で敵の内臓や関節に打撃を与えるのが特徴です。その反対に外攻拳の代表格が少林拳と言われています。こちらは打撃系の攻撃技が多く、殴ったり、蹴ったり派手に打撃を与えるのが特徴です。中国の南の人間は背が低く体が小さいので組技を得意とし、北の人間は体格が良く手足が長い事を利用し足技を得意とするので、その身体的特徴から「南拳北腿」とも言われています。
太極刀 第七式 左撩
太極拳には大きく分けて五つの流派が有ります。
太極拳の創始者は、明末清初にいた陳王廷と言う人です。彼は河南・温県陳家溝の出身で、匪賊から農民で村を守る為、実践に基づいてこの拳法を作ったとされています。以来この陳式太極拳は、門外不出の拳法としてこの村だけに伝えられていました。この本家本元の陳式太極拳の特徴は、当に実戦に即した拳法であり、虚と実、軽と重、剛と柔、慢と快、そして上下、左右、内外、進退等が対極をなして織り交ざり、気を溜め一気に「発勁(攻撃)」を行う動作が多いのが特徴です。反面、修得が難しく、長い年月と深い鍛錬を積まないと一定のレベルに到達出来ません。
太極剣 第五式 大輝星
次に清末の楊露禅から子の楊健候、そして孫の楊澄甫に至り体系化されたのが、楊式太極拳です。最初の楊露禅は元々陳家で雇われていましたが、太極拳の練習の様子を盗み見している内に自らその拳法を修得し、その類まれな才能から、特に許され門外不出の太極拳の教示を受けたと言われています。彼の強さは伝説的で、今でもテレビドラマに度々登場しています。楊式太極拳の特徴と功績は、その型や練習方法を老若、男女、或いは体力条件に関わらず、誰でも修得し易い様に体系化した事です。今日広く行われる太極拳も実はこの楊式太極拳に準じたものがほとんどで、ここ迄普及させたのは彼らの功績によるものです。私が習っていたのも、この楊式太極拳でした。
三つ目として、満州族の全佑(後に漢姓の呉に改名)が楊露禅に随い、独自の改良を加えたのが呉式太極拳です。
四つ目として、武兎襄が同じく楊露禅に習い、その後陳家溝でも鍛錬を積み双方の改良をし、新しい一派を作ったのが武式太極拳です。この武式の継承者が解放後、上海で太極拳学習班を開設したので、この地方で普及している様です。
最後に、孫福全が創始したのが孫式太極拳です。彼は形意拳、八卦拳を修得した後、武式太極拳を修め、この三つの拳法の特徴を織り交ぜたのが孫式の特徴です。彼の太極拳も優れた評価を得ていましたが、ただ彼は男子に恵まれず、その太極拳を長女にだけ伝えた為、衰退してしまったとの事です。
以上、更なる話はまた別の回で紹介したいと思います。
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