老成都

[其四]

黄龍渓

 成都は近年都市の再開発が著しく、市内では古い街並がめっきり減ってしまいました。でも郊外のいくつかの街には、昔ながらの街並が残っている所がまだいくつかあります。その中でも最も有名な場所が、黄龍渓です。もう何年も前になりますが、香港の「霊幻道士」と言う映画が少し流行りましたが、その撮影に使われた事もあるのがこの村です。


   
 1994年7月 霊幻道士で登場する寺、今は茶館になってます 


    
1992年12月 ご当地名物「豆花」の看板


 この村は、清代に作られた街並をほぼそのままの状態で保存しています。元々小さな村なので、歩いて回っても1時間程で回りきる事が出来ますが、一つ一つの家はそれぞれ風格が有り、まるで清の時代にタイムスリップした様な感覚になります。またあちこちに、名物料理の「豆花」(日本の湯豆腐に似ていますが、辛子味噌をつけて食べるのが四川風です)を売る店や茶館があり、何時までいても飽きない所です。でも最近は、観光地化が進んでしまい、以前程落ち着いたムードが無くなってしまったのが少し残念です。


    
1994年7月 村に残る清代の古い街並の一つ


    
1991年2月 村の正面にある保存地区を示す看板


 四川では、黄龍と言う地名を良く見かけます。これは、伝説の帝王兎が、東海に住む黄龍の助けを借りて治水に成功した故事に因んでいるからでしょう。
 この村は、成都市内を流れ華陽鎮を経た府河の下流にあります。黄龍渓の村の直ぐ横を府河が流れ、ここから岷江そして更に長江へと川の流れは続きます。岷江へと向う分岐点には大木が道標替りに植えられており、木陰では茶館が開かれています。
 私も昔から川の側に住んでおり、子供の頃よく川沿いをある時は遡ったり、ある時は下ったりしたのを今でも覚えています。川沿いなら道に迷う心配が無いからですが、遠くに行けば何か楽しい事が見つかりそうな気がしたからです。私にとってあれがささやかな旅の原点でした。


    
1991年11月 府河から岷江へ、この大木が道標


 昔、四川を出て旅に出るには、多くの場合これら水運に頼っていました。成都を発ち先ず府河を下り楽山に出ます。それから岷江を下り宜賓に出て、長江を行き来する船に乗り換えました。そして三峡を通り下流の大都会へと向う訳です。下りは水流に任せてしまえば言いのでとても楽です。でも上りはとても大変です。流れの急な川を遡る為、動力の無い昔は、繊夫と言う人足を雇い船を岸から牽引していました。だから上りの船賃は下りに比べて値段がとても高くなります。まして三峡の難所を超える訳ですから、四川を出て行く人達はそれ相応の覚悟で、故郷を後にしました。多くの詩人もこの三峡の菱門を越える時の思いを詩に詠っています。
 現在は交通が便利になり、多くの四川人が、広州や上海へと出稼ぎに向っています。でも彼らが故郷を離れる際は、今も同じ様な思いが去来するのでしょう。 


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