老成都

[其三十ニ]

紅光門

 成都の郊外にある衛星都市の一つに、紅光鎮があります。近郊の観光地として名高い都江堰に行く途中、小さな町には不似合いな大きな赤い門が左手に目に入るので、奇異な存在として直ぐ分かると思います。この町は以前人民公社が全国的に展開された際、四川で最も先進的な存在として鳥沙汰された歴史があります。その残像は、前述の紅光門や毛沢東像と言った形有る物で今でも見る事が出来ます。


    1995年8月 紅光鎮のシンボル的存在の紅光門


 個人的にこれら共産党の近代史の遺物に興味がある訳ではありませんが、友人の一人が再開発による立退きで、偶々市内からここに移り住んだので、良くこの街を訪れる様になりました。彼はここから市内にある会社に通う訳にも行かず、ウィークデーは市内の小さなアパートに住んでおり、週末になるとここに帰って来る様になりました。週末になる度に田舎で過ごす、まるで日本でも一部流行だしたライフスタイルとそっくりですが、最近の中国では珍しい現象ではありません。彼もここに帰ってくるとほっとするそうで、とても気に入っているみたいです。


    2000年1月 一歩町外れに出れば田園風景


 紅光鎮から成都市内まで、距離的に見れば日本では十分通勤距離圏内ですが、成都では毎朝もの凄い交通渋滞が起きるので、まだ現実的には、近郊都市からの通勤には無理があるみたいです。でも、通勤電車や市街道路の整備が順次整ってくれば、何れはこの状況も変わるものと思います。
 最近使われだした「両栖人」と言う言葉は、日本で言う兼業農家に相当すると思いますが、これも逆の現象です。都市の拡大により、郊外の農民層が都市の流通経済に飲みこまれた形によるものです。


    1995年8月 バイクで豚を運ぶ姿も四川的


 日本の通勤電車を考え単純に計算してみると、一日一時間の時間をかけて35年間会社通いをしたと仮定すると、人生の約2年間は満員電車の中で過ごす事になります。一般的に言ってサラリーマンが一生にもらえる給与は、平均して約2億円位になるそうです。そう考えると悪魔の囁きを聞いて、数億円の公金を横領し使い切っても、数年の実刑で済んでしまうのなら、合理的に考えればどちらが得なのか分からなくなります。物事ただ便利になるとしても、必ずしも人にとってプラスになるとは限らないのかも知れません。


    2000年1月 町の市場付近で出店する露天商


 市場経済の導入に伴う不動産の改革以降、個人の住居もその多くが自己責任になりました。その結果最近では富裕層が中心部に住み、低所得者層は郊外に追いやられる傾向が見受けられます。また、住居の取得にも、経済的な理由以外多分に社会的なコネが関係しているみたいです。そのせいか、市内中心部の雰囲気は益々無機質化しているのに反し、郊外の町の方に下町的人情が移行していると個人的には感じています。


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