老成都

[其三十一]

東大街的芳香

 最近の事ですが仕事の帰り道、電車を降りて駅のロータリーに出た時、ふと成都の街の匂いを嗅いだ様な気がしました。それは駅前ビルの改築工事を行っている辺りで、粉塵と車の排気ガスの臭いが混じりあったものでした。何故こんな臭いを嗅いで突然成都を思い出したのか不思議に思いましたが、考えてみれば90年代の後半から街中ひっくり返した様に再開発が始まり、至る所渋滞する程格段に車の量も増えた訳ですから、その頃から成都に行く度にこの臭いを嗅ぎ続けていたせいからだと思います。


    2000年1月 東大街で渋滞する車両の群


 スチュアーデスさんの話として、各都市には独特の臭いがあるとかで、成田空港に帰ると醤油の臭いがすると聞いた事があります。私が成都を初めて訪れたのは86年ですが、その頃の印象として残っている街の臭いは、中国醤油の強烈な臭いでした。当時中国の街を他にも幾つか回りましたが、他の都市ではこれ程臭いの印象は持っていません。でも、成都だけはこの強烈な臭いが印象として残っています。当時の記憶では、街中やたら麺屋が多かった気がします。そして、その食べ残しのスープをそのまま道路の側溝に棄てていた訳ですから、臭うのも当たり前だったのでしょう。しかしこの臭いも、街の衛生状態が多少なりとも良くなるに連れ無くなって来たんだと思います。


    1989年10月 かつての義学巷の街並


    2000年1月 唯一古い街街を残す現在の義学巷付近


 成都の街でも季節毎に色々な臭いが有ったと思います。春には花弁の香り、夏には各種果物の熟した臭い、秋には屋台で栗を燻す芳ばしい香り、また冬には練炭を焚く煤の臭い、等々。風に運ばれたその臭いを嗅ぐ度に、その時の季節を感じていました。
 この季節毎の臭いを一番良く感じる事が出来たのが、東大街でした。ただ単に宿舎から中心街にある塩市口や春煕路に出る際に、自転車で一番良く通る道だったからですが、この道を通る度に季節の移り変わりを感じていた気がします。


    1989年10月 商店街が軒を並べる上東大街


    1989年10月 上東大街でみかけたかつての理髪店


 
「成都城区街名通覧」によると、東大街は66年に一度勝利路と改名されたそうですが、81年にはまた東大街に複名したそうです。また抗日戦争時代に、老東門に無名英雄銅像が有ったそうですが、60年に撤去されたそうで、80年に万年場に新たに塑像が作リ直されました。道の名称としては、個人的には一番響きの良い名前だと感じています。


    1989年10月 老東門付近の様子



 再開発は続き、東大街の古い街並は無くなりつつあります。面貌を一新した後、今度は新たにどんな香りが出来るのでしょうか。



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