老成都

[其ニ十]


巴蜀古蹟

 市場経済の改革・開放に伴い、成都での市民生活も物質的に豊かになりました。それを象徴するかの様に、各種のテーマパークが市内各地に造られています。特に成都西門から都江堰に向う途中には、これらのテーマパークがひしめき合っています。中でも世界楽園は、世界中の民族住宅や歴史的建造物を模写したアトラクションが人気を集め、免疫の無かった四川の人達の間に瞬く間に浸透し、開店当初から高い入場料にも関わらず、何年か後には投下資本を全て回収してしまう程の盛況を博しました。まるでどこぞのテーマパークと良く似ています。


    1992年6月 塔子山公園内にある巴蜀古蹟


 そんな中でこれらの派手な施設とは、全く趣を異にするテーマパークを塔子山公園内で見かけました。巴蜀古蹟と言い、そこには四川省内の歴史建造物や成都の旧市街を再現したミニチュアが展示されています。何故この時この様な街外れにこの様なシャビーな施設を造ったのか。普通に考えればある部分理解に苦しみますが、マイナー志向の私にとっては、やはりとても感動しました(果たして今でも有るかどうか?)。


    1992年6月 一番まともな楽山大仏のミニチュア


 ここにあるミニチュアの一部を紹介しますと、楽山大仏、剣門関、青城山の寺廟、チベット山塞、そして清代の成都の旧市街等々。個人的には成都の旧市街が特に気に入りました。都市としての変遷を時代的に検証した「成都城坊古蹟考」と言う本には、清代末の地図が添付されています。それと見比べても街路の位置関係がそっくりなので、多分相応の歴史研究者の意見を取り入れて、この三次元世界を造り上げたのでしょう。今毛沢東像と展覧館のある辺りは、かつて蜀王府が有りました。以前実際にこの蜀王府の取り壊しを見た人に話しを聞いた事が有りましたが、勿体無い事をしたものだと言っていました。毛沢東像から成都南駅には現在人民南路が一直線に繋がっていますが、これは1962年に駅が出来てから新しく工事で生まれた街路です。


    1992年6月 展覧館にかつて有った蜀王府


    1992年6月 南大街から続く南門と万里橋


    1992年6月 安順橋(手前)と九眼橋(奥)


 私の住んでいた九眼橋に目を向けますと、当時はまだ田畑ばかりの所だった様です。でも地名の由来となった橋桁の穴が九つある橋があります。私が住んでいた1991年には取り壊しが始まったので、現在この橋はありません。いずれは地名の由来も皆忘れてしまうのでしょうか。


    1991年11月 取り壊し工事で半分程壊された九眼橋


 現在の成都でも、今だ各種テーマパークは建設ラッシュです。はたして柳の下にまだ泥鰌はいるものか...
 作り物の仮想世界を楽しむ事もたまには良いと思います。でも私としては、自分達の住む身近な場所に、もっと沢山より価値ある空間が存在している様な気がします。


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