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老成都
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[其十九]
沱牌大麹
中国九大銘酒と言われる中で、四川にはその四つが存在します。その理由は蜀山から流れ出る潤沢な天然水と、豊穣な穀産物によりもたらされている事は間違いないでしょう。その四つの白酒の内で筆頭格なのが宜賓の五糧液(その芳醇な香りは群を抜き、当に格別です)、次席は濾州の濾州老架(少し辛目、酒だけを楽しむ時の方が向いているかも)、そして成都の銘酒、全興大麹(まろやかな口当たりは、四川料理には最適です)、最後に綿竹の剣南春(バランスが良く、どんな時でも飲める酒。個人的にはかなり好きです)と言った所でしょうか。
まあ、この順番や印象は各人各様、意見のある所と思いますが、私個人の見方として一方的に上げてみました。中でも五糧液は大変人気があり、良く賄賂変わりに使われるので、常に品薄状態でもの凄い数の偽物が出まわっています。聞いた噂では、市場の数十パーセントが何らかの贋物とも言われ、まるで何処かの高級ブランド品と一緒です。そのせいか、これら空瓶も割と高い値段で廃品回収に買取ってもらえます。因みに五糧液の価格は、私の住んでいた頃で250元位が相場でしたが、今では本物ならば最低400〜500元位といった所です。
1989年11月 培根路の昼頃の雑踏
当然の如くと言うか、悲しい浮世の常として、当時の貧乏学生の私にとって、そんな高級酒はほとんど飲む機会はありませんでした(ごく稀に宴席等では、飲めた記憶はありますが...)。私が良く培根路の乾物屋で買っていたのは、沱牌酒(1.2元)、沱牌大麹(4.65元)、綿竹大麹(6元)等、その日の経済状態や気分で決めていました。また少しリッチな気分の時は文君酒(12元)を買っていました。不思議な事にもう十年近い時が流れているのに、当時の酒の価格を今だに全て覚えています。要は金額が頭にこびり付く程買っていたからなんでしょう。
1995年8月 久しぶりに訪れた際の培根路
沱牌は一番安かったけど、匂いがエチルアルコールそのもののと言った感じで、あまり馴染めませんでした。一番多く買っていたのは沱牌大麹でしょう。金額的に手頃だし、味もまあまあだったので割と納得していました。個人的には口当たりの良い綿竹大麹が好きだったので、友人宅にお呼ばれする時には、いつもこの酒を買って行きました。
1989年11月 寝ている門番の方を起こして...すいません
でもどちらかと言うと宿舎で飲むよりは、外で飲む機会の方が多かったと思います。改革開放が叫ばれる前の昔では、中国の友人達も皆割と閑を持て余していたので、良く遊びに行っては何時も宿舎に帰ると午前様でした。どうも酒が入ると口が軽くなるみたいで、皆に酒の肴みたいにされていた部分もありましたが、誘われればついのこのこと出向いてました。
1989年11月 裏門は11時で閉門、遅い帰りはいつも正門へ
でもこれらのお付合いが、色々な意味で良い勉強になりました。身内同志の酒の席では皆本音で語ってくれたので、中国の真の姿をその場で学ぶ事が出来ました。彼ら一人一人が、皆私にとって素晴らしい先生でした。
そんな席で、友人が教えてくれた漢詩(曹操作)が、今でも私にとって座右の銘になっています。
対酒当歌 (酒に向いて当に歌うべし)
人生幾何 (人生幾ばくぞ)
比如朝露 (例えれば朝露の如し)
去日苦多... (過ぎ行く日々は苦労ばかり...)
1999年7月 太平南街から九眼橋には、多くの雑貨店が並ぶ
その後、仕事の機会で中国での宴席に座る機会も増えました。そこでは以前飲む事の出来なかった五糧液もいやと言う程飲む場面もあります。でもいくら飲んでも心の底から酔うという事は決してありません。宴席でも腹の探り合い、仕方の無い事ですけど疲れます。
今の生活では酒を飲む事はめっきり減りましたが、久しぶりに成都を訪れると、かつての酒友と眠気も感じず夜更けまで...そんな時、改めて中国の酒文化を心の底から感る思いです。
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