老成都

[其十一]


節日

 夏になると子供の頃よく行った、お祭りの情景を思い出します。成都でも夏に限らず季節の変わり目や節目毎に、各種のお祭りが執り行われていました。年末から年始まで順を追って見てみましょう。
 年始はなんと言っても春節です。日本と違い中国では、旧暦の元旦を祝います。その為年毎に元旦が違う事になりますが、一年の中で最も盛大に祝う行事です。大晦日から身内が集まり深夜まで飲みながら食卓を囲みます。日本と形は少し違いますが、お餅も食べます。また大いに爆竹を鳴らすのが慣わしでしたが、今は都市部での爆竹は禁止されてしまいました。以前は成都でも毎年の様に、火事騒ぎや怪我人が出ていたので、時代の流れ的にそうなってしまったのでしょう。


    1991年2月 春節の飾り付けが行われた杜甫草堂


 春には桃の花を愛でる桃花会が東郊の龍泉澤で行われています。ここは桃の木が丘一面に埋められており、景勝地でもあり私も訪れた事がありますが、桃会には行きませんでした。
 夏になると収穫を祝い町毎で各種の農業祭が行われていました。お祭りと行っても露天商が立ち並び商品交易の意味合いが濃かった感じです。夜には花火を打ち上げたり、日本の祭りに合い通じる雰囲気も有りました。でも流石に盆踊りに似た事はしていませんでした。


    1989年11月 西遊記を題材とした菊飾り


    1990年11月 菊花節の行われる人民公園門前


 秋になると成都では菊の花が咲き誇ります。十一月に人民公園で開かれる菊花節は成都の風物誌の一つです。ここには成都近在の各種企業も出展し、その華麗さを競っていました。文革中はブルジュア的との事で、禁止されていましたが、元々歴史有る行事だったので直ぐに復活したみたいです。
 またメーデーや国慶節等、国のお祭りも有りましたが、休日的意味合いが濃かった気がします。
 その他各種お祭り行事は枚挙にいとま有りませんが、私の覚えている節日(お祭り)はこんなものです。


    1989年10月 40周年国慶節に沸く望江楼公園


    1989年10月 ミッキーマウスを操るおじさんが怪しくて実に好い


 これらお祭りの特徴として、都市部では農村色が出て、逆に農村部では都市色を前面に出している印象を受けました。露天商の扱う物も、都市では地方の特産品や工芸品、逆に農村では、工業製品や衣料品等、お互いそこにない物を売り、都市と農村の接点を自然発生的に作り上げている感がありました。そこで人々は多少高くとも、それぞれ憧憬を込め物を買い求めます。
 でも最近では様相が少しずつ変わり始めています。国家や大企業主宰の各種人工的なお祭りばかリが注目を集め、昔ながらのお祭りの習慣が失われつつあります。より格調高くより盛大にがテーマになり、地方の人々、時には一般の人々にさえ敷居が高く、阻害感すら与えている感じです。


    1990年7月 卑県で行われた夏の芸術祭


    1990年7月 扇子を売る露天商


 話は変わりますが、成都では「男はつらいよ」が常に大ヒットしていました。中国で放映される際は、「寅次郎」と改名されており、日本の好きな映画を聞くと、この映画を挙げる人がほとんどです。一般的に言って日本の映画はそれ程人気が有りませんが、この映画だけは別格です。何故なのでしょう。人に分け隔て無く、夢を与えてくれる、お祭り男そのものの寅さんに共感したからでしょうか?
 寅さんの復活を望む声は、日本だけでは無い気がします。


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