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巴山蜀水
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[其四]
紅原 (HongYuan) − 〈大草原の小さなテント〉
松潘から西へ向い、紅原を目指す。バスの窓に見えるのは、どこまでも続く地平線、そして点在するチベット族のテント(ゲル)。たまに動いている点々は、目を凝らして見ると、ヤクとそれを放牧する人々の姿だった。あまりの広大さに、バスの窓から見える景色はいつまでたっても変わらない。
ヤクを放牧しているチベット族とその住居(ゲル)
馬に乗ったチベット族に出くわす。バスが珍しいのか、それとも冷やかしか、バスを取り囲んで追いかけて来る。
ここまで来た目的は、大草原を見る事の他に、馬に乗る事。チベット族の村でお金を払って馬に乗せてもらう訳だ。村の前でバスを降りると、たちまち馬に乗れと群がって来る。馬に乗るのは初めてだが、人に慣れていてよく言う事をきく。
観光客相手に乗馬の商売をするチベット族
気分がよいので、もう一回り回ってみる。戻って来て馬から降り、金を払おうとすると、馬主は不服顔だ。彼が初めに言った金額は1元だったのに、今になって50元払えと言い出した。押し問答していると、ひとり、またひとりとやって来て、取り囲まれる。こうなると多勢に無勢。結局15元支払う事で合意した。ウーム、これが農耕民族の辛さといったところだろうか。
紅原付近の大草原
紅原の町の入り口にある歓迎を示す看板
紅原の町に着いた。人口2.8万の町である。標高は3,000mを越えているが、あまり実感がない。ここで一泊した後、七日間の旅を終え、成都への帰途につくことになる。
この地方では、時間というものはあまり意識しなかった。あるのはただ昼と夜だけだ。もちろん物質的には何も無い訳だが、日本には無い無限の豊かさを感じる。私が一番美しいと感じたもの、それはこの地方に住む人々の表情の素晴らしさだった。
道にたたずむチベット族のおじさん
[山と渓谷1991年6月号/海外特別レポート「中国四川省北西部バスの旅」改訂]
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