巴山蜀水

[其十一]


夾江 (JiaJiang) - 〈豆腐乳〉 

  夾江と聞いて、臭豆腐を思い浮かべる人は間違い無く四川通。或いは四川食通と言うべきか。私は個人的にこの臭豆腐が好きな訳ではないのに、と言うよりあまり好きな方ではないのに、何故か四川を訪れると毎度決まって、友人からこの臭豆腐をお土産に持たされていた。そしてその臭豆腐が「夾江豆腐乳」と書かれているので、いつの間にかこの名を覚えてしまった。臭豆腐とは、豆腐を発酵させて作られたもので、辛味で臭いが強烈である。


    夾江で見かけたかつての分限者の門戸、今は重点文物


 日本に持ちかえり、何度かつまみに試してみたけれど、どうもこのままでは未だにこの味に馴染めない。その後一時期上海に住んでいた時、この臭豆腐揚げを売っている屋台を住まいの近くで見かけた。ほんとうは揚春巻がお目当てで覗いた訳だが、丁度売りきれていた。生では食欲をそそらない物でも、揚物になると変わった味に見えてくるから不思議なものである。空腹にも我慢出来ずこの臭豆腐揚を食べてみた。すると驚いた事に、生の時と比べ臭みが無く、日本の揚豆腐とも違い、まるでチーズを揚げた様な香ばしさがありとても美味しかった。つい昨年も成都の春煕路の夜市で、この小吃を見かけ思わず衝動買いしてしまった。流石に四川風らしく椒塩(胡椒と塩味)で塗されており、一段と美味しく感じた。


    千仏崖石刻への入り口


    左側に見えるのが青衣江の流れ


 夾江の街は楽山から然程離れていない位置にある。その為わざわざここを訪れる人はあまりいないみたいである。また、時間を割いて見て回る程の観光スポットも無いので、ほとんど知られる事の無い街なのだろう。私もたまたま立ち寄った感じだった。
 唯一とも言える見所は、青衣江の岸辺にある千仏崖石刻である。唐代から開削され始め、石刻中には咸通年間と大中十三年(859年)の題記も見える。ここには全部で各種約270程の石刻が有り、一番大きな弥勒仏で2.7mの高さがある。しかし、ほんとうに残念なのは、ここの石刻群もその多くが文革による破壊を受けており、首のない痛ましい石刻が沢山有った事である。


    災難を免れた石仏の一つ


 多分再びこの街を訪れる機会はもう無い様な、そんな気のする街の一つである。


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