●貴人
それはパロ内乱初期の出来事であった。
パロ国王レムスに内乱を起こしたナリス派はアルド・ナリスを
古代機械でナリスをカレニアに転送するため、ヤヌスの塔へ攻め込み占拠した。
「急げ!ラン。準備はまだ出来ぬのか!」
ランズベール候リュイスは大声を上げた。
「敵は――そこまで来ているぞ」
カラヴィアのランは焦りつつも慎重にパネルのスイッチを操作する。
最後にその指が転送スイッチを押した。
刹那!
「あっ!」
カラヴィアのランは叫んだ。
「座標が!……座標が……。ナリスさま――ッ」
(――ここは、何処だ、――何故、わたしはここにいる……)
ナリスは我が目を疑った。
ナリスの目に映るのは、砂、砂、砂。
どこまでも果てしなく続く砂の海。
(ああっ……ここは夢にまで見た――)
(私は来たのだ。はからずも、ついに来てしまったのだ)
(暑い!――リンダ……今、あなたは無事でいるのだろうか)
ナリスは目をつぶると、そのまま眠るように息を引き取った。
ここに人類生誕以来、もっとも美しく繊細で、
《美の裁決者》《典雅の判定者》と謳われたクリスタル大公アルド・ナリス、死す!
時にナリス30歳、華麗なるも波乱に満ちたその人生に幕が下りた。
時代は下り、――暗黒歴734年。
パロ国レムス朝、第41代国王レムールとアルゴス国スカール朝、第36代国王スランとの
話し合いにより、ノスフェラス調査隊が結成され、遙か人跡未踏の地、ノスフェラスへと派遣された。
ノスフェラス調査隊がケス河を越えて砂漠に踏みいってから、既に2ヶ月を過ぎようとしていた。
ノスフェラス調査隊を率いる隊長、パロ聖騎士伯ファロンは照りつける太陽に、
すっかり参っていた。
いや、彼だけではない、パロ国精強を誇るパロ聖騎士達、
屈強で弱音を吐かぬ草原の民を率いるアルゴス隊長スー・ミンとその部下達さえも――。
狗頭山を越えてから部隊はすでに脱落者が続出。
パロ出立時、二千余名を数えた調査隊も、既に八百名ほどに減っていた。
元気なのは案内を頼んだセム族の族長シバンを含むセム族の十人ほどである。
スー・ミンは朦朧とした意識の中でいつもの考えが頭の中をよぎる。
(ああっ、本当に俺たちの祖先はこの魔の地を行ったのだろうか?)
(やはり、その時もこんなに辛かったのだろうか)
調査隊の一行の馬たちは音もなく進む。
突然、シバンが叫んだ。
「アラシダ。アラシガクル」
シバンは前方を指さした。
見るとどんよりとした黒雲が瞬く間に近づいてくる。
パロ聖騎士伯ファロンは腕を上げて一隊を停止させる。
「あの近づく速度から判断すると、もはや避けることは出来まい。
ここで野営をして嵐をやり過ごす。準備にかかれ!」
嵐のもたらした被害は決して少なくはなかった。
30人近くの男たちと10頭の馬、それに猿2匹と共に、嵐は去った。
やれやれと思いながら、ファロン伯は一行の点検を終えると、
出発の合図をした。
その時、金切り声が響きわたる。
「キッー、アイヤヤ、ヤー!」
何事かと皆の視線が声のする方に集まる。
するとセム族の若者の一人が足もとの砂を指さしている。
パロ聖騎士達が集まり、砂を掘り返す。
おおっ、そこに現れたるは一体のミイラ。
ファロン伯はミイラに近づいて検分する間もなく、
目が見開き唇が震え始めた。
「……」
「如何なされた」
そばにいたスー・ミンが声をかける。
「これは――」
ファロン伯はやっとの思いで口を開いた。
「これは、《王家の環》――」
「そして、この方はまぎれもなく、パロに伝わる伝説の……」
・コメント
さてさて、中原の未来はどうなっていることでしょう。
輝ける未来か、はたまた暗黒の世界か。
ナリスふぁんの皆様、申し訳ありませんm(_ _)m