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そのとき

その、とき――
そのときであった。

(むっ!)
アレスの丘の戦いを冷ややかに見下ろしていたヤンダル・ゾックは、巨大なエネルギーの塊が向かってくるのを感じ取った。
(これは間違いなく《閉じた空間》のエネルギー。――西から来る――この忌々しい気。ということは、《闇の司祭》グラチウスか――。性懲りもなく、われの邪魔だてをしようというのか。おのれの力をわきまえぬじじいが――今度こそ、息の根を止めてくれるわ。フッフッフ)
ヤンダル・ゾックは念を凝らした。
(これで、良しと――この大事なときに、奴が如きに時間をさいているいとまはないわ)
(――来るな。むっ! これは、何だ。――このエネルギーの感じは白魔道師のものだ。これだけのエネルギーを持つ白魔道師がパロにはいないはず。――北。北から来る。まさか、イェライシャか! おのれっ、あやつら――)

やがて、アレスの丘はるか上空にふたつの影があらわれた。
ヤンダル・ゾックはじろりと二人を睨んだ。
「《闇の司祭》よ、《ドールに追われる男》よ。おぬしたちが手を組むとはな、遂に頭がおかしくなったか」
グラチウスはわずかに鼻でせせら笑った。
「なんとでも、ほざくが良い、竜王。まずは己の心配をすることだな」
しかし、ヤンダル・ゾックは妙に落ち着き払い油断無く二人に視線を向けると、ふいに笑い出した。
「ファハハハハ」
「何が、おかしい!」
「わからぬのか。愚かなるじじいども――」
ヤンダルがそう言い終わらぬ内にグラチウスとイェライシャのまわりに何やら複数の影が浮かび上がった。
「何者!」
グラチウスは虚を突かれて叫んだ。
「おおっ!」
イェライシャの口からも驚愕の声がもれる。
現れたその姿はまさしく竜頭人身。
(幻影――か。いや、違う。この巨大な邪悪な気。まさしく実在しなければ感じることは出来ぬ)
ヤンダル・ゾックはいやらしい笑いをした。
「ハッハハハ。グラチウスよ、イェライシャよ。何を驚いている――紹介しよう、われの子供たちだ」
一人がまず名乗りをあげた。
「われは長男、ヤンダル・アサゲ」
「次男、ヤンダル・バッタ」
「三男、ヤンダル・クッパ」
「末弟、ヤンダル・キンキ」
「長女、ヤンダル・クイナ」
そして五人は声を合わせると身構えた。
「五人揃って、シーアン五鬼竜。ただいま見参!」
「なっ、なんと!」
グラチウスは身体の芯から恐怖を感じた。
(こ、こいつは危険だ)
いち早く、グラチウスは姿を消した。
「あっ!」
イェライシャはそう叫びながらも《閉じた空間》に身を躍らせた。
(グラチウス――やはり、奴は信用ならん。それにしても、あ奴ら。……やはり、グインにまかせよう)
イェライシャは鼻歌を歌いながら北へ向かった。


・性もない^^;
新刊76巻「魔の聖域」のラスト・シーン・ネタと言うことで許して下さいませm(_ _)m


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