●眠れぬ夜
「陛下、御決定をお願いします」リーナスはレムスに判断を仰いだ。
「その様なこと、予が決めるまでもない。ヴァレリウス、リーナスそちらに任す、良きに計らえ」
そう言い残すと、レムスは王宮の間を退出した。
リーナスはレムスの姿が見えなくなるとヴァレリウスにどうすると言うように視線を向けるが、
ヴァレリウスは仕方がないと云う顔でため息をついた。
(うーん、うーん・・・うっっ・・・)
「わあっ」レムスは飛び起きた。
自分でも脂汗をびっしょり掻いているのが判る。
薄暗い寝室に、レムスの隣で眠っていたアルミナも驚いて目が覚めた。
「まあ、陛下どうかしまして・・・」
すぐに、小姓が隣の控え室からランプ片手に駆け寄ってくる。
「陛下、ただいま何やらお声が聞こえましたが、何か、ございましたでしょうか」
ランプをレムスの顔に近づけると真っ青な顔をしているのが判った。
「大変だわ、どこかお身体の具合でも悪いのではありません」心配そうにアルミナが聞いた。
心臓の高鳴りが収まるのを待つと
「いや、何でもない。少し悪い夢を見ただけだ。騒がせてすまなかった。下がって良い」
アルミナが心配して口に出そうとしたが、それを制するとレムスは横になった。
小姓は怪訝そうな表情をしながら部屋を出た。
しかし、レムスが夜中に叫び声をあげるのはその晩だけでなく、その後も何度か続いた。
このことは、やがて王宮内の噂になった。
宮中すずめが三羽集まっている。
「これは伯爵夫人、ご機嫌麗しゅうございます。ところで、例の噂お聞きになりまして?」
「もちろんですとも侯爵夫人。わたくしも昨日聞きましたわ」
「えっ?何のことでしょうか。わたしは存じ上げませんわ」
「まあ、それはそれはいけませんわ。公爵夫人ともあろう方が」
「国王陛下が時々うなされて夜中に大声を上げるというお話が」
「きっと昔、リンダ様とノスフェラスをさまよった辛い日々がお心を・・・」
「いえいえ。これは大ぴっらにはお話しできませんけど、ほら、一時、噂になった、
国王陛下に何処ぞの霊が取りついているというお話・・・」
「ああっ、それなら私も聞いたことがありますわ」
「本当にそうなら恐ろしいことですわ。国王陛下、大丈夫なのでしょうか」
「顔色がすぐれず、ご政務も魔道宰相ヴァレリウスとリーナス様に任せきりのようですわ」
宮中すずめのさえずりはいつ果てるともなく続く・・・。
(うーん、うーん・・・うっっ・・・)
「わあっ」レムスは飛び起きた。
「違う!・・・ぼ、ぼくは・・・そんなことはない。ぼくだって、ぼくだって・・・」
はっとレムスは我に返った。
隣で、アルミナが目を丸くしてレムスを見つめている。
「なんでも無い。・・・いいからほっといてくれ!」
アルミナと小姓の心配をよそにレムスは枕に顔を埋めた。
(うっ、うっ、うっ、・・・)
むせび泣くレムスの脳裏にあの日の光景がよみがえる。ルードの森・・・。
(まったく、ばかなのね。何をやらせてもダメなのね、おまえは)
(ばかなのね。ダメなのね。ばかなのね。ダメなのね。ばかなのね。ダメなのね。)
頭の中でリンダの声がルアーの鐘の様に鳴り響く。
(くうっー、リンダのバカあ・・・)
レムスが国政に身が入らない本当の理由を知っている者は少ない。
「ねえリンダ・・・」ナリスは甘える声で云った。
「また、あのお話を聞かせておくれよ」
「まあ、しょうがない人ね」リンダはそっとナリスの髪をなでた。
「ふふふ・・・、その話を聞くと心が落ち着くのだよ、リンダ」
・コメント
わかりにくいし、ひねりが足らないね。