黄金の神々
第三話 黒い運命
◆ 第一章 難題
華やかな合同婚礼の未ださめやらぬ翌日の夕刻、アリストートスは強行にユラニア政府に対してねじ込んだ。
「ユラニアは今回のモンゴール大公夫であり、かつ右府将軍であるイシュトヴァーン将軍暗殺事件をどの様に償うつもりですか」
「そ、そ、それは……」
タリム宰相は何をどう答えて良いか全くわからずしどろもどろであった。
マックス公が慌ててかわりに、答える。
「ア、アリストートス卿、暗殺事件とは滅相もございません、あれはわがユラニアとクムとの絆が強くなることに心よく思わぬ、ごく一部の不逞の輩でありまして、決してイシュトヴァーン将軍のお命を狙ってのものではございません」
「なんですとッ! いいですか、私はこの耳ではっきりと聞いたのですよ。『ユラニアの怨敵、イシュトヴァーン将軍、覚悟ッ!』と。これは、ユラニアがわがモンゴール公国を敵と見なしているも同様ではありませんか。さては、わがモンゴールの最大の武将であるイシュトヴァーン将軍と参謀であるこの私めを葬ってからモンゴールに宣戦布告をしようという腹づもりでもありましたかな」
アリはしれっと云った。
あの時の襲撃者たちは全員その場で切り伏せてしまっていた、実は襲撃者たちがアリを狙ったというものであることはユラニア政府の人間は誰一人として知る由無かった。
「そんな無茶な」
マックス公爵は懸命に弁明した。
「アリストートス卿殿、まかり間違ってもユラニアがモンゴールを敵と見なすなどと云うことは金輪際ございませぬ。先の第二次ユラニア戦役で国内は疲弊し国民の生活は未だ立ち直っておらず、どうしてユラニアが戦をしようとなどと考えたりしましょうか」
「そんなことは私には判断つきかねますな」
「それでは、一体どうせよとおっしゃるのですか」
まってましたとばかりに、アリの目がしめたというようにずるくなる。
「そうですな。イシュトヴァーン将軍はモンゴールの至宝です。三千万ランの補償金とカール河と東カール河に挟まれたタス地方の割譲――ということで、手を打ちましょう」
「――!」
タリム宰相とマックス公は唖然として声も出ない。
「どうしましたかお二人とも」
「お、お待ち下さい、アリストートス卿殿。そのような重大な返答はこの場ではお答えしかねます。オル・カン大公に申し上げた上で他の重臣と相談してみないことには、とても我々だけでは決めかねます」
やっとの思いでマックス公が云った。
「どうぞ、どうぞ。私も鬼や悪魔ではありませんのでご返答に――」
アリは難しい顔をして少し考え込むと、
「今日より15日間の猶予といことでいかがでしょうか」
タリム宰相とマックス公はぐっと言葉につまったが、やがてマックス公が「あい、わかった」と答えた。
「良いご返事をお待ちしております。では失礼させていただきます」
アリはそういうとマルス伯ともども去っていった。
ユラニア政府を激怒させ震撼させたこのアリストートスの要求は、既にタルーと話はついていた。
タルーはどうも自分がこのままではクム大公になれそうもないことから、アリと組んで紅玉事件を起こし、二人の弟を殺害してクムの絶対的な後継者ならんと企んだが昨日の事件でそれ自体が不発に終わってしまい、何事もなくネリイと愛でたく結婚したのは良いが、このままでは父タリオ大公は何かと理由をつけて末っ子のタリクにクム大公の跡継ぎにする事は目に見えていた。
しかも、最近の情報によるとタリオ大公が力のある内に早々とタリクに大公の地位を譲り、自分はその後見人になるということであった。
そうなってしまっては、お手上げである。
その後に自分が大公を望んでも反逆者としか見られない。
現在のクム国内の情勢では6割方がタリク支持であり、残りの4割をタルーとタル・サンが分け合っていた。
かといって、ユラニア大公になれる保証もない。
なんといっても、ネリイはユラニア公国の次女である。
このままではユラニア大公はユラニア長女と結婚したタル・サンがなる可能性の方が強い。
ネリイはユラニアの軍事面で力を握っているがどうやら政府の金を握っているのはエイミアであるらしい、最後には資金の豊富さが物をいうだろう。
そこに、明け方アリストートスが密かにタルーに連絡を繋いできた。
「アリストートス殿、まずいことになった。どうすればよい」
タルーの表情からは焦りの色がありありとうかがえた。
アリは狡そうにタルーを盗み見ると密かに心の中でせせら笑った。
(ふん。陰謀家だといっても所詮この程度か。ひとつの企みがダメになってもすぐに次の計画を思いつかないようでは本当の陰謀家とはいえんよ)
「まあまあ。タルー殿、私にひとつ提案がございます」
「まだ、何か悪巧みを思い浮かんだというのか」
「悪巧みとは人聞きの悪い。あなたがユラニア大公になるために私が一晩寝ずに考えた素晴らしい計画ですよ」
アリは今度のユラニアの不祥事でモンゴールは三千万ランの補償金とタス地方の割譲を要求することを話した。
タルーはそれを聞くと呆れた表情をした。
「なんと、無茶苦茶な話だ。そんなことをユラニアがのむわけないだろうが。今のユラニアにはそれだけの金は無いし、タス地方といったらユラニア平野でももっとも豊饒な地方だ。手放すはずがない。そんな要求は国際的にも通らんぞ。紛争の元だ。新生モンゴール政府とて、今は戦を起こしたいとは考えてはいないだろう。お前さん方がトーラスに戻ればこぞってトーラス宮廷の重臣たちに反対されそんな要求は却下されるに決まっているぞ」
「戻ればね」
「戻らぬつもりなのか」
「いえいえ戻るつもりですよ」
「一体どっちなんだ!」
タルーはアリののらりくらりとした物言いにイライラした。
「お前のその無茶な要求をユラニアがのむことは決してあり得ないし、だからと云ってモンゴールに対して戦争をしかけることもしまい。おそらく、クム、ケイロニア、パロに泣きついて仲介を取ってもらうことになるぞ。そうしたら、モンゴールとてそんな無茶な要求が通らぬ事ぐらい知っているから取り下げて、それまでだぞ。まさか、ユラニアに対して挑発行為などすれば逆に国際世論の批判を浴びるだけだし、四千人では逆に皆殺しにあうのがおちだ」
タルーは憤然やるかたないというように、言い切った。
「もちろんイシュトはあの通り、今は戦えない状態です。回復するまで十日はかかるでしょう。しかし、今しかチャンスはないのです。我々モンゴール軍は三日後――イシュトがある程度傷の回復する頃ですがね。トーラスに戻ります」
「……」
「我々がアルセイスを出発する前にタス地方にユラニア政府が、タス地方の割譲を認めたという情報を流してやりますよ。そうしたらどうなるでしょうね」
アリはいやらしそうな笑い方をした。
「そんなことをしたら暴動が起こるぞ。市民だけでなく地方の守備隊も混ざった奴らが襲って来るぞ――トーラスに戻るにはタス地方を避けては帰れまい。下手をするとモンゴール国内に入る前に命を落とすぞ」
「そのくらいの危険は承知です。これは賭けですからね。しかし、ここで現在のユラニアをつぶさなくては――その時、タルー殿下、あなたにはタリオ大公が中立の態度をとるようにしていただきたい。そして、無事、我々がモンゴールに戻れたのなら、今度こそユラニアをつぶして入れましょう。ちゃんと正当な理由があるのですから――そうしたら我々モンゴールがタルー殿下がユラニア大公になる後押しをしましょう。ひっひひひ。」
(このガルムめ――しかし、そうなると俺は危ない橋を渡る必要がなく、ユラニア大公になれる――ふむ)
◆ 第二章 布石
――パロ、マルガ。
空間がゆらぐと、一人の魔道師があらわれた。
「アルノーか」
「さようでございます」
「ひとつ、やって欲しいことがあるのだが。来旬の初めカラヴィア公がカブール大森林の北部で大がかりな狩りをおこなう。その時、私は自分の領地であるカレニア領に視察という名目で行きます。リンダとの新婚旅行でカレニアを訪れた時は時間がなくて見る暇がなかったからね。その時に、カレニアとカラヴィアの国境でアドロンと会いたい」
「アドロン公とですか。判りましたそのように手配いたします。他には何か御用はございますでしょうか」
「そうだね。ディランを明日マルガに来るようにと。――それとその時にカレニア行きの私を監視する魔道士はだれ」
「おそらく、シュラナーかダートンかと思います」
「私とアドロンとの密会がばれることのないようにそちらもお願いするよ」
「わかりました。では失礼いたします」
ひとり取り残されたナリスは冷たい眼差しを窓から見えるリリア湖に向けた。
(今の私の直接の勢力はカレニア衛兵隊が三千。マルガ守備隊が千。大公騎士団がこれも千。そして、クリスタル騎士団が半分の二千。これで七千――味方になるのはルナン聖騎士団とその配下の聖騎士伯たちの手勢合わせて三千。同じくワリス聖騎士団とその配下の聖騎士伯たちの手勢合わせて三千。ランズベール候騎士団三千サラミス公騎士団が四千。マール公騎士団千。――傭兵は五千ほど確保できるだろうがパロ国内に入れるのは、その時の直前なるまでは無理だな。これでやっと二万三千、問題にならないな)
ナリスは、静かに溜息をついた。
(あと二人は聖騎士候をこちらに引き入れたいが、ダーヴァルス、オヴィディウスははっきりと国王派だ。ファーンは動くまい、動かないと云うよりパロ聖王家に忠実すぎる。現パロ聖王家に味方するだろう。そうなると、ほとんどの聖騎士候が国王派につくことになり、聖騎士候につきしたがう聖騎士伯たちも自然と国王派になる。リーナス宰相、ネルヴァ候も国王派。ライアー長官はどうかな、パロ最強の近衛騎士団の半分でも味方についてくれれば有り難いが、近衛騎士団はもっとも国王に忠実な軍隊だ、いくらライアー近衛長官が私のシンパと云えども、これは計算に入れることは出来ない。国王派はざっと見積もって、恐らく多くの各地の領主たちも国王派につくだろう。そうなると六万にはなるな。パロ国境を守る国境警備隊三万は参加出来ないだろう。それでもこちらの二倍強――。やはり鍵はカラヴィア公の三万が握るか。アドロンさえ味方につけばこちらも五万以上になり戦に持ち込めるというものだ。その体制にもっていきさえすれば、私の戦略でどうにでもなる)
翌日、ひっそりとしたマルガ離宮にディランが姿を現した。
「ナリスさま、いかような御用の向きで」
「やあ、ディラン、あなたはまだ上級魔道師にはなれないのですか」
ディランはわずかに、はっと身体全体をふるわせたが何事もなかったかのように答えた。
「残念ながら、未だ力足らず――」
「ふむ、ところでレムス陛下はどう?」
「いたって穏やかな日々をお過ごしであらせられます。アルミナ姫との仲も婚礼の日が近づくにつれ、ますますよろしいとの評判でございます。また、パロ国内の政治面もリーナス宰相殿がそれなりに取り仕切り順調に進んでいるように見受けられ、いたって安定しております。アルセイスでは二日前、クム三公子とユラニア三公女の婚礼がとりおこなわれた由にございます。なお、その前日にモンゴール右府将軍イシュトヴァーン将軍がユラニアの過激な愛国一味に襲撃され軽傷を負ったとのことでございます」
「イシュトヴァーン将軍が――まあ、先の第二次ユラニア戦役でアルセイスを燃やした張本人だからアルセイス市民には怨まれているだろうね」
(イシュトヴァーンに付き添う、あのアリストートスとかいう参謀。彼は一体なにをたくらんでいるのだ。クムとユラニアの結束を固めるのが目的ではあるまい。これもだれか魔道士にその辺の詳細を調べさせる必要があるな)
アルド・ナリスはディヴァンに深く身を沈めると、カラム水を一口のんだ。
「魔道師の塔に、カル=ファン事件で彼と組んで失脚した、確か――」
「ヴルス上級魔道師ですか。今はその資格も剥奪され魔道師の塔の地下牢に監禁されています」
「そのヴルスだがなんとかならないか」
「なんとかとは?」
「彼はもともと魔道師の塔では非主流派だったのだろう。野望はあったみたいだが組んだ相手が無能すぎたな。このままでは彼も地下牢で朽ち果てるのを待つばかりの身の上だ。彼は別に私を憎くて、嫌って敵になったわけではないはずだ。本当なら一度でも私の敵となった人間を許したりはしないのだが、私としてもぜひ強力な魔道師が味方に欲しい」
「ヴルスは失脚するまでは魔道師の塔ではNo.8の地位にありました。また、その後、キタイに派遣されたキタイ調査団を指揮していたゴール上級魔道師、ダンカン上級魔道師と相次いで連絡が途絶え、――恐らく既に死亡していると思われますが、魔道師の塔での序列にも大きな変動がありました」
「もともと魔道師の塔はパロ聖王家を守る存在だ。カロン大導師は国王派だろうし、その下の導師クラスはどうなっているの」
「はい。導師は現在、ファイ導師さまを含め三人おりますが、いづれもカロン大導師派で結束も固く、その下に10名いる上級魔道師の内、七名までが明らかなカロン大導師派でございます。それ以下の私を含め一級魔道師クラスでは魔道師の塔の体制を動かすには至りません。また、魔道師の塔ではカロン大導師派でなくとも非主流派であるヴァレリウス殿は現在No.10にあります」
「おやおや、確か彼はパロ副宰相に任命されるにあたり、道政分離ということでいったん魔道師の塔から除名され離籍したのではなかったのかね」
「それは名目上でございます。いったん魔道師ギルドに入ったからには黒魔道師にならない限りは魔道師ギルドの拘束を一生受けます」
「蛇の道は蛇、だね。ディラン、そのヴルスを何とか地下牢から出せないかな」
「恐れながら、魔道師の塔の地下牢には常時結界が張られており、私一人の力では破ることは困難かと、無理に破ればその時点で発覚し私は捕まります」
「ランズベールの塔と並び称される、あの厳重な魔道師の塔から、別に力ずくで脱走させようとは云っていないよ」
「では?」
「死ねばその死体は外に出ることが出来るのだろう」
アルド・ナリスは妖しく微笑んだ。
◆ 第三章 動乱
「わぁー、わぁー」
「殺せ!」
「イシュトヴァーンをモンゴールに生きて帰すな!」
「我々のタスをモンゴールに渡すな!」
まわりは蜂起したユラニア人民、及びユラニア地方守備隊の人々に囲まれながら、モンゴール軍は一丸となって突き進んでいた。
「奴らの相手をするな。目指すはトーラス! 急げっ、急げーっ!」
モンゴール軍の隊長たちの怒号が飛び交う。
「一体、どうしたってんだっ」
イシュトヴァーンは自分たちに迫り来る何十万というユラニアの人民に驚いていた。
ユラニア地方守備隊は無論のこと、市民たちも手に手を武器をもって襲いかかってくる。
「こんな奴ら相手ににげるんじゃんねえ。俺さまがあいてしてやる」
イシュトヴァーンはいきり立って旗本隊に引き返して突撃するように命じた。
「将軍、それはなりませぬッ」
「烏合の衆とは云え、あれだけの数。囲まれたらそれまででございます。しばらく、しばらくッ」
はやるイシュトヴァーンを抑えるのに隊長たちは必死になって止めた。
イシュトヴァーン軍は群がるユラニア蜂起軍の中を血路をひらいてモンゴール国境へと突き進んだ。
イシュトヴァーンたちが、東カール河を越えモンゴール国内の国境沿いにあるボルボロス砦にたどり着いた時には、4千人の兵は八百名になっていた。
既に、オーガス砦から三千の援軍、オーダイン、カダインからはそれぞれ三千づつの守備隊が到着しており、ボルボロス砦はもともとの守備兵1万と合わせ二万近くにふくれあがり、岸に沿って柵を並べ、弓兵がずらりと並びユラニア蜂起軍の前に防衛戦を築いたので、東カール河を挟んで両軍はにらみ合った。
トーラスはユラニア領内でイシュトヴァーン軍が攻撃を受けている早馬の知らせを受け、この出来事に驚いてすぐさま、カメロン左府将軍に副将アリオンをつけて4万の兵を派遣した。
東カール河まで追ってきたユラニア蜂起軍もさすがに2万のモンゴール軍が待ちかまえているとわかると、渡河してまで攻める力はなく、またモンゴール軍をユラニア国内から追い出せたということで満足していた。
二日後、カメロン軍がボルボロス砦に到着するとイシュトヴァーンはすぐさま反撃を命じた。
「イシュト、待て、落ち着け」
カメロンは取りなしたがイシュトヴァーンは聞き耳を持たず、焼け石に水であった。
「ふざけるな。俺たちは何もしてねえのに殺されはぐったんだぞ。マルスを見ろッ」
マルスは運悪くユラニア蜂起軍の攻撃に重傷を負っていた。
「このまま済ましてたまるか。皆殺しだ。このままアルセイスまで攻め込むぞ」
かくして、ボルボロス砦に五千を残して、総勢5万五千のモンゴール軍は反撃に転じた。
さらに続けざまにランス准将とルキウス准将が2万の援軍として既にトーラスを出発していた。
あっと云う間にイシュトヴァーン軍は、ユラニア領内に攻め込むとユラニア蜂起軍を蹴散らし、タス砦、ガンビア砦を落とし、ミシアの町を殲滅し、破竹の勢いでアルセイスに迫った。
その後の増援で10万人に膨れ上がったモンゴール軍はアルセイスを蟻の這い出る隙間もないくらいに包囲した。
イシュトヴァーンは立て籠もるユラニア軍に対して強引に攻撃をかけようとしたが、カメロン初め、アリ、アリオンの必死の説得で三日間だけ攻撃する猶予をあたえた。
それでも降伏しない場合は、アルセイスを地上から消滅させると通告し、またクムのタルー公子も間に入って両国の間をとりもった。
かくして翌日には、イシュトヴァーンの恫喝の前にユラニア政府は無条件降伏した。
ネリイ公女一人が徹底抗戦を叫んだが、ユラニア政府としては蜂起軍のモンゴール軍への襲撃は全く今回の事件は寝耳に水で、どう対処してよいやら速やかな判断が出来なかった。
二日後、オル・カン大公はユラニア大公を退位して、新たにネリイ公女がユラニア新大公として即位した。
裏ではタルーが約束が違うではないかとアリと一悶着あったが今さらどうしようもなかった。
国際世論は今回のモンゴールのユラニア侵攻を止む得ないものとして認めた。
――サイロン
「陛下、このままモンゴールを、いやイシュトヴァーンの増長を見逃してよろしいのでございますか」
ハゾスは懸念を述べた。
「今度の一件はユラニアにも非があることは認めざるを得まい。無論、中原の平和を乱すのは誰あろうと、どこの国であろうと許すわけにはいかない。いざとなれば、ケイロニアが立つ。その時は断固、徹底的に叩くのみ」
「御意」
「そのためにも、一日でも早くグインには帰ってきて欲しいものだ」
アキレウス皇帝は、動乱の気配を予感した。
――トーラス。
イシュトヴァーン軍は、それから二日後にはアルセイスを発ち、トーラスに戻っていた。
左府将軍の執務室ではカメロンとヨナが向き合って今後の対応を錬っていた。
「どう思う」
カメロンはヨナにたずねた。
「アリストートス卿は強引ですね。やがてはつまづきます。今回、命を長らえたのは偶然の光明としかいえません。強いてはモンゴールそのもの自体を危うくしかねません」
「まったくだ。あんな危険な真似をして一体イシュトになんの得があるというのだ。結局、ユラニアはタルーとネリイのものだ。ふん、まだ、アリストートスはこの後に良からぬ事を考えているに違いあるまいがな。俺はイシュトのためになら命を捧げている。イシュトのためなら何でもしよう。しかし、それは人々の憎しみを集めるためではない。イシュトの夢をかなえるためだ。そのため多少の犠牲はやむを得ないが今回のようなのは論外だ。ヨナ、お前もそのつもりでモンゴールにきたのだろう?」
「はい、そうです」
ヨナは唇をかんだ。
(こんな、危ない橋をいつまでもイシュトに渡らすわけには行かない。イシュトには確実にゴーラ王になってもらう必要がある。たとえ時間がかかっても良い。しかし、イシュトはそれを望まないだろう。イシュト、何を急ぐ。今、あなたに倒られては困る。私は世界を――。そのためには――)
―― 第四話につづく ――
・コメント
グイン・パラレル・ワールドです。
ですから、登場人物の性格は基本は同じですが、細部では微妙に異なります(同じく書けません)
第二話を書いて気がついたのですが、このままではえらく長いパロディになってしまいます。
しかも、私は人物を描写するのが苦手です(何が得意だと云われても困りますが……)
今後は、筋メインで飛ばします、もともと筋しかありませんが、さらに筋パワーアップ(笑)
って、行き当たりばったりなので何も考えていません、どうしよう^^;
あっ! ――グインは何処にいったのでしょうか――シルヴィア姫を救い出した頃でしょうか(笑)