●ロザリアの嵐
レムスは、リーナスを含めた数人の供を引き連れて、南クリスタル・パレスの大通りを見聞していた。
今日は月一回のクリスタルパレス巡回お忍びの日。
一行はとある店の前で立ち止まった。
入り口の上には仰々しく大看板が出ている。
『パロ王室御用達ブロマイド屋・トーマスの店』
供の者を残してレムスとリーナスは店に入った。
入るなり大きな一覧が目に入る。
それを見るなりレムスの頬がひきつった。
(……!)
《今月のブロマイド・ベスト30》
1位:クリスタル大公 アルド・ナリスさま
2位:クリスタル大公妃 リンダさま
3位:デビ・アウレリアさま
4位:カラヴィア公ご子息、子爵 アドリアンさま
5位:ベック公 ファーンさま
6位:聖騎士伯 オヴィディウスさま
7位:聖騎士伯 リーナスさま
8位:聖騎士伯 リギアさま
9位:聖騎士候 ワリスさま
10位:カラヴィア公ご息女 アリナさま
レムスは、さらに下に視線を下げた。
23位:パロ国王 レムス一世陛下
(なっ!――け、けしからん)
ぷるぷると拳が震える。
名前の横には小さな肖像画があり、そこには頬がやせこけた陰気な目をしている自分がいた。
(なんだ、この似顔絵はちっとも似てないじゃないか)
後ろでは、リーナスはニヤニヤして、ひとりほくそ笑んでいる。
(おおっ!7位に。先月よりひとつ上がっている。俺もまんざら捨てたものではないな)
間もなく、店主がもみ手をしながら近づいてきた。
「若さま、どうでしょうか。拝見したところまだお若いようで――。デビ・アウレリアさまは、若い貴族の中で一番の人気です」
それを制するように、レムスは云った。
「ところで、店主に尋ねるが、パロ国王が――」
レムスが言い終わらぬ内に、店主は手をふった。
「はっはっは、ダメダメ、全然ダメですよ」
店主は声をひそめると言った。
「黒竜戦役の前までは、リンダ様と一緒に描かれた”パロの聖双生児”なんかは、結構、売れたんですがね。あまり大きな声では話せませんが、国王の肖像画なぞ魔除けにもなりませんて」
「はっははは」
店主は声高に笑った。
レムスの密かにムッとした顔はフードに包まれて見えない。
(この腐れオヤジが……いつか、ネルバ塔送りにしてくれる)
五分後、レムスは渋い顔をしてリーナスと出てきた。
ひそひそと、供の者たちがささやく。
(あらら、レムス陛下、いたってご機嫌麗しからず)
(それどころかベストテンにさえ……)
(それは、仕方がない)
じろっとレムスが共の者達に目を向けるとあわてて全員黙った。
レムスは小言をつぶやきながら店を後にした。
翌日、『パロ王室御用達ブロマイド屋・トーマスの店』の前に張り紙がしてあった。
『店じまい――近日中に花屋・トーマスの店オープン予定』
・コメント
この位の嵐ですめば、平和なのでしょう。