●古代機械
【1.正確な転送は可能か】
◆ナリスの操作
32巻「ヤヌスの戦い」p211に、ナリスの以下のような台詞がある。
「いいだろう。では、アルノーから順番にこのへやに入るがよい。私の手で皆の者を、いまいった国々へ転送してやろうゆえな。――案ずるな。いまの私は、もうほとんどこの機械をつくった人間と同じほどたしかにこれをあやつるぞ」
◆問題点
転送先は、トーラスと沿海州である。
しかし、ナリスは25巻「パロのワルツ」p250で次のように言っている。
「座標を正確にあわせられぬから、岩盤のまっただ中か、何か他の物質のあるところへ出現してしまうかもしれぬ」
トーラスと沿海州の転送先の緯度、経度、高度を正確に計れる道具はこの世界には無い。
今の彼らの科学力では、近くならまだしもそんな遠距離は不可能である。
◆解決への糸口(その1)
37巻「クリスタルの婚礼」p80でナリスは次のように述べている。
「きっとあの古代機械と同じように自分で考える機械があれこれの生活のささいな用はすべて足してくれ」
また、38巻「虹の道」p93でも、この様にも言っている。
「あの機械には特別な、何というか自分でものを考えたり決定したり、あるいは判断したり記憶したりする脳がそなわっているのだよ。もちろん作られたものだけれども――それが、私たちが与えたデータを勝手にあてはめていって自分で動き出すのだ。あの機械はある意味では私たち人間と同じように生きているんだよ」
従って、大まかな座標を設定すれば、後は的確に古代機械(物質転送機)が処理すると言うことである。
しかし、いくら過去のデータを蓄積し、生命があり、思考能力がある古代機械と言えど、地形は刻々と変化するだろうし、例えば、以前は無かったところに建築物等がその後、転送場所に存在するか否かは、動けぬ古代機械にはそこまで知ることは不可能である。
◆解決への糸口(その2)
キレノア大陸上の何処からでも見える東の星。
何ものにも左右されず曇らぬ目で、招くように、拒むように地上をしろしめす、ヤーンの一つ目それ自体である。
人々は《ヤーンの目》と呼ぶ。
これは《調整者》が設置した軌道静止衛星である。
ヤヌスの塔の天辺には、《ヤーンの目》と交信するアンテナが存在し、古代機械から入力されたデータを《ヤーンの目》に送る。
《ヤーンの目》はその座標データを元に、長距離望遠鏡や電波等でキレノア大陸を走査し、正確な緯度、経度、高度を古代機械に送り、その結果を元に古代機械は人間または物質を転送する。
【2.エネルギーは何か】
古代機械、軌道静止衛星を何千年何万年も動かすエネルギーとは何か?
無論、危険な割りにはエネルギーパワーが小さく、資源を用意するのも問題な原子力などではない。
核融合である。
原子同志がぶつかり合い新しい原子ができる時に、大量のエネルギーが発生する(例:太陽)。
核融合の燃料は、地球上のどこにでも存在し、五千年、一万年使用した位では尽きないほど無尽蔵である。
さらに、化石燃料のように地球温暖化や大気汚染の問題もクリア、原子力発電のように莫大な放射性廃棄物もない。
現在では、核融合は人類究極のエネルギーと見られているが、技術的に難しく各種発生方法を試みるもこれと言った解決法を見出していないのが現状である(各国撤退)。
しかし、宇宙狭しと行き来している《調整者》にとってはありふれたエネルギーと思われる。
こと宇宙空間を往来するには、核融合が生み出すエネルギーそのものでは、やはりパワーが足らない。
全く異なる方法で無いと銀河系内でさえ、自由に宇宙航行をするのは困難と思える。
《調整者》は当然、それらを備えている。
【3.レムスは古代機械に近づくことが出来ないのか】
37巻「クリスタルの婚礼」p56で、ナリスが疑問を投げかけている。
「レムスがどうして、王としての権利の最大のひとつとなっている、この機械の独占的な使用権を私にゆだねて平気でいられるのか、私にはとうてい理解できない」
勿論、あれだけ、野望に満ちているレムスが見逃すはずがない。
この時点で既に、レムスは古代機械に近づきたくても近づけなかったのである。
さらに、25巻「パロのワルツ」p250で、この様にも言っている。
「何重にもめぐらされた、科学と魔道双方の垣により、ここへはいまや私とランと魔道士たちしか、入ってくることがかなわない。レムスもリンダも入ることはできないのです。」
ナリスが許可しない人間は入れない、そしてレムスは(この時、既にヤンダルの影響が在ったかは不明だが)古代機械に近づくことが出来ないので、ナリスに研究を任せたのである。
【4.本当に物質転送装置は発明可能か】
現代科学では、一説にはタイム・マシンより不可能といわれているワープ(物質転送装置)である。
《調整者》は我々、現代地球人より遙か越えている科学力がある。
【5.古代機械を操作できるのはその世代でひとり】
上で述べたように、《調整者》の科学力があれば可能である。
個人個人を識別しその操作者が生存の間はその人間の意志で古代機械に近づくことを許す。
同様に、後継者も古代機械が候補者から識別選択する。
時に応じて、古代機械が認める操作者が存在しない期間もあり得る。
ただし、25巻「パロのワルツ」p250でのナリスの台詞。
「それというのも、これはパロ王家の王位継承権者だけに口づてにつたえられる、最も巨大な神聖な秘密」
および、37巻「クリスタルの婚礼」p54のナリスの台詞。
「聖王家の血筋につながる者にとっての最も神聖にして重大な任務とは、この古代機械を守り、その操作を覚え、それを朝夕に礼拝することとなった」
上記からは、ナリス自身は『古代機械を操作できるのはその世代でひとり』ということは知らないようである。
従って、ヤンダル・ゾックがナリスに説明したと思われる。
【6.果たしてこれで良いのだろうか】
にしても、その世代でただ一人が古代機械への命令権をもつ、その者の許可がなければ操作どころか、古代機械に近づくことさえ出来ない。
いやあ、良かったねナリス、そんな驚くべき事実があったとは。
これで、まだまだ、しばらくは活躍できます。
でも、これでは古代機械の存在より、ナリスの存在に押し切られたと云う感は拭えない。
あまり、強引に物語を展開する今までの伏線はもとより、本筋も飛んでいってしまう。
さらに、その時が、近づいたら、また新たな隠された新事実が……(笑)