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●アリとイシュトヴァーン
 27巻p19に、イシュトヴァーンの性格について、この様なくだりの文章がある。(一部、要約)
『とうてい性格の良い、優しい、温和なとは、彼を好いている人間さえも口が裂けても云いかねる。
生来の性格が、大体、身勝手で、酷薄で、その上自らのためにさえよければ他人を犠牲にしようが、ふみつけにしようが――といった情のこわい、冷たいものがある。野心家で、うぬぼれのつよく、性急で気短だが、天性の陽気さやしたたかさは欠点をおぎなってあまりある不思議な愛嬌があり、人を引きつけ、魅力をつくり出す。
 ところが、このアリといるときに限っては、イシュトヴァーンの中のその、愛すべきところや、明るいところ、人をひきつけるところはすべて影をひそめてしまい、日に日に彼の性格の中の倨傲な面、残酷な、無知な、人を人とも思わぬ面ばかりがつのってゆくようなのであった。
 これについては、どう考えてみても、責任の大半はアリにあるのは明らかであった。
 みにくい顔と体をもつ不幸なアリの恵まれぬ不幸な外見をみれば、むりからぬことではあったが、イシュトヴァーンの均斉のとれた体つきや、するどく精悍な、若い狼のような美貌であり、それにひきつけられるあまり、アリはイシュトヴァーンをとほうもなく甘やかし、おだて、崇拝してしまっていたからである。』

と、ある。
本当に、それだけだろうか。
イシュトヴァーンのわがままな行動は自分の性格によるものであろうし、それは多重人格によるものでは無かったのか?
イシュトヴァーンも最早、子供ではないし、彼自身も
(もっとずっとずっとささいな理由で俺は、きさまよりずっとずっと俺にとって大切な人間を何人も手にかけてきた。裏切り、死に追いやり、この手でむろん殺したんだ)
というように、アリと出会う前からそれほど性格は変わっていないように思える。

アリはイシュトヴァーンを一目見て惹かれ、彼を王にせんと欲し、全てをイシュトヴァーンのために尽くす。
無論、アリの個人的な欲望、野望はある。
 以下に、アリの言葉を抜粋する。
「焦るな。焦ることなどない。俺を信じてくれ、必ず、俺が、お前を大国の大王につけてやる。俺はそのためにならドールに魂を売ると誓ったんだ」

茶目っ気もあり、軍師としての才能もそこそこあり、イシュトヴァーンに忠誠を誓い、《赤い盗賊》団の部下達から人望もあった。
何がこの二人を狂わせたのだろうか。


この頃のアリは、野望に燃え、妄想に狂う、特異な偏狭な男で、その存在が面白かったものだが。
話が進むに連れ、極端にルブリウスに狂う、只の残虐な男になってしまった。
面白いキャラクターではあっただけに、少し残念ではある。


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