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| 『イロン写本』より(1p5)(2p5)(6p5)(16p5)(67p5) |
| かれらは運命神ヤーンによって動かされていた。 しかしかれら自身は自らが運命の糸の上にあることを、未だ知らなかった。 |
| ――そしてかれらは糸に引かれるようにノスフェラスへの道を歩んだ。。 かれらの上にはつねに暁の星があり、かれらをあるべき姿へと導いたのであった。 |
| いまや中原に黒きいくさののろしが上がり、それはすべての国々の空をおおいつくそうとしていた。 そしてそれは、それから獅子の年にまで及ぶ、長く大きな夜のはじまりであった。 |
| かくて戦いは終わりうら若き王は竜の玉座に上った。 人びとはうち群がり公爵の武勇をたたえて叫んだのであった。 |
| かれらは運命神ヤーンによって動かされていた。 しかしかれら自身は自らが運命の糸の上にあることを、未だ知らなかった。 そして、かれらはヤーンの操るおさのままに、 しだいにあやしくも魅入られたる宿命の模様を織り上げてゆこうとしていたのであった。 |
| アクメット《予言の書》より(3p5) |
| ――長い年月の後、はじめて模様はそれと知られるだろう。 しかし模様のすべては、かせとおさの最初のひと折りの中に、すでにあらわれているのだ。 賢者とは、糸の中に模様を見る人である。 |
| 古書《ノスフェラス・サーガ》より(4p5) |
| ――かくて戦いの雄叫びは曠野に満ちたり。 白き死とまた炎と、神々の手より曠野に放たれ、地に満つ。 人と馬とは昏き星のもとにかれらを導く黒死の幻影を見る。 蛮族の乗りたる馬、これなり。 |
| 「ケイロニア年代記」より(5p5) |
| ――豹頭の戦士グイン。彼は世にも孤独な放浪者としてルードの森にあらわれた。 しかし彼はいまや、ラゴンとセムという友を得たのである。 |
| 《予言の書》より(8p5) |
| 古き者について知れる者は古き者について語らず、 古き者について知らぬ者は古き者を見れど知らず。 されど南方に光あり、古き者よりつかわされし者をみちびきて 神々のかりそめの王座に安らわしめたり。 |
| 叙事詩《カナン》第四幕第三場より(13p5) |
| ガルダ カナンの都にさいごの日がやって来ました。 石の神殿は炎につつまれ、人々は泣き叫び逃げまどい、 母は子を火の中に投げこんでいます。 オルーフ 窓をしめよ、窓を。 せっかくの歌声がきこえぬではないか。 |
| 《ドール祭祀書》巻之一より(外2p5) |
| 汝、人間なるもの、淫らに生を弄ぶ事勿れ。 そは人間の触るるべき所に非ずなればなり。 汝、人間なるもの、徒らに死を恐る事勿れ。 そは全ての人間の免れざるところなればなり。 |
| 古代サーガ《氷雪の女王の歌》より(外2p5) |
| ――かの地に氷雪の女王ありて 氷雪の涯をおさめいたり かの女生千年を数うれども 永遠に老いず死することなし かの女王その名をば クリームヒルドとて知られぬ―― |
| 「ケイロンの書」《豹頭王のサーガ》より(17p5) |
| そして、三人の放浪者が三つ又のわかれ道にきたときに。 詩人はいった《ぼくはサリアを選ぶ》 傭兵はいった《いや、おれはドールにこの剣をささげよう》 そして豹頭の戦士はいった 《お前たちが、サリアとドールを選ぶなら 俺はそれではヤーンにかけよう、ヤーンは人を、真実の恐るべき顔へと導くだろう》 |
| ケイロンの書・編年譜より(40p5) |
| 蛇の年紫の月、この月、天空に大いなる異変のきざしがあった。 巨大なる白い彗星が獅子の星座に入り、 やがてそれはシレノスをあらわす北の星座へと流れ去った 予言者はそれを見て、北方より白き炎が起こり、 西より来る黒き流れとたたかうであろう、 との予言をしたと人々は噂したのであった。 |
| ケイロンの歌(20p5) |
| 時にはほんとうに、愛のために生き、愛のために死ぬ人間もいる。 多くの人びとが、愛のために生きはしても愛のために死のうとは思わぬなかで、 かの人は真実愛のために死ねると思ったのだった。 まさしくサリアがかの人の唯一の女神だあったのだ。 |
| 豹頭王のサーガより「竜の章」序詞(外10p23) |
| かくて豹頭王のサーガの新しい章がはじまったのであった。 それは死の都の怨霊の島を経て魔女の都、古き都、 そして真におそるべき竜の都までも経巡る、 かの伝説の豹頭王の驚嘆すべき生涯においてさえ、 最大の冒険とされる章にほかならなかった。 この驚くべき冒険にさいごまでつきしたがったのはすなわち、 黄昏の王国の女王とそして若き狼王であった…… |
| 豹頭王・東方のサーガより(外11p5) |
| 豹頭王、失われしケイロンの真珠を求めその旅はるか東方に及びし時。 かの地すでに竜神王しろしめす処となれり。 かの地にあやしき古き都市あり、名をフェラーラという。 豹頭王古都フェラーラにいたりし時、天地動く。 すざまじきことどもあまたあり。 |
| 豹頭王・東方のサーガ《東方録》より(外12p5) |
| 豹頭王、かくて魔都フェラーラをいでまい、妖しき都ホータンに辿り着き給いぬ。 ホータンにあやしき者どもあまたあり、数多き怪異豹頭王を待ち受け了んぬ。 奇妙なることども多く起こりき。 かかるが如きも又、豹頭王、カナンにめぐり会わるるが為の試練なりき。 |
| 豹頭王のキタイの冒険のサーガより「惜別の章」(外15p5) |
| それははや出発のときであった。 ――道はひとすじに、はるか中原までも続いている。 その同じ空のもとに、はるかなケイロニア、なつかしいサイロンがかれらを待っているだろう。 それははや、旅立ちとそして別れの朝であった。 |
| 豹頭王のサーガより(68p5)(70p5) |
| かくて豹頭王は中原にかえり、おのが王国に君臨することになった。 その豹頭にいだかれしケイロニア熾王冠こそは、豹頭王のもとにゆたかなる緑の国ケイロニアが末長く守られてゆくであろうという希望と栄光のまばゆいあかしであった。 サイロンに、王をたたえる声はみち、ケイロニア全土に「マルーク・グイン」の声はこだましたのであった。 |
| その日、正午ちょうど、七つの緑の丘にかこまれた、大サイロン市のすべての鐘楼の鐘が、いっせいに歓喜をこめてうちならされはじめたのであった。 むろん、大サイロン市のみでない。ケイロニア全土のすべての鐘楼がいっせいに鐘を鳴らし、獅子心皇帝アキレウス・ケイロニウスに豹頭の息子が誕生したこと、アキレウス大帝の息女シルヴィア姫が夫を迎え、そしてその夫はこののち「ケイロニア王・大元帥」の称号をもつようになったことをすべてのケイロニア国民とそして世界じゅうとに告げ知らせたのだ。 鳴りわたる鐘の音に、緑の丘そのものさえも祝福の歓呼の声をあげるかと思われた。 それはケイロニアにとり、建国以来最良の一日のひとつであった。 |
| 豹頭王のサーガより「星の章」(88p5) |
| 地上にはかがり火の星々が満ち、その星は 葬送のしらべをうたった。 空の星と地上の星 と、双方がbみちびきあい、 照らしあううちに、すべては星の歌となって人々に《運命》のみしるしを伝えたのであった。 |
| 豹頭王のサーガ(93p5) |
| あこがれの砂漠に彼はまた佇った。 だがその炎熱は彼を灼き、その夜の冷気は彼を凍えさせた。 砂漠は永遠の海、それはいつまでもぎらつく陽光の下にたゆたいつづける。 身よ、砂漠に、その王が帰還したのだ。 |
| ノスフェラスのサーガより 「豹頭王の砂漠の放浪」の一部(98p5) |
| 夢の中で彼は一つ目にヤギのひづめ、長い曲がりくねった杖をもち、白い長い髯を生やした不思議な老人に出会った。 老人は杖をふりまわしながら、怒り狂ったように、彼にむかって『この、愚か者め! 早く、眼を開くのだ。眼を開いて、あらたな脅威から逃れるのだ!』と叫び続けているのだった。 夢からさめたとき、彼をとりまいていたのは、粛々と鳴る砂漠の風だけであったのだが―― |
| 豹頭王のサーガより(100p5) |
| それは―― 異形であった。 そしてまた、それに似たものはひとつとして、人々は知らなかった。 それへの畏怖と憧れと、そして少しのおそれにみちて、人々は、それをこう呼んだ。 ――《豹頭王グイン》と。 |
| ケイロンの歌より「豹頭王の降臨」(123p5) |
| それは神々のめでたまいし伝説の王の、生きてあられたすがたであった。 そこに立つ豹頭の英雄のすがたのつきづきしさは神話のそれに似て、ケイロンの人々を刮目させた。 それはケイロンの長い歴史に、全くあらたなる一頁が開かれた、その瞬間であった。 |
| 《ケイロンの書》より(外1p5) |
| ――黒竜戦役より三つ目の猫の年、七つの丘なすケイロニアの都サイロンに黒き死が満ち、また巨大なる双頭があらわれてサイロンの覇を争った。しかしそれとてもやがてサイロンに来たるべき災厄の、最もささやかな予兆でしかなかった。 |
| 吟遊詩人の歌集より《イシュトヴァーン王のサーガ》(12p5) |
| 彼は青白き馬に乗り、風より疾くかけていった。 彼はかなしみと流血と死を運んできたのだ、そこで のちにすべての人は呼んだ、彼を 災いを呼ぶ男、と。 |
| イシュトヴァーンのサーガ(39p5) |
| 終わりなき夜に生命を享けし者。 深き闇の汚穢より生まれ出でし者。 ドールの血に呪われし者。 その名は…… |
| イシュトヴァーン王のサーガより(54p5) |
| 空に赤いサソリの星があらわれた。 それはやがて世界に嘆きと悲しみとをもたらす、災いの星座であった。 そしてそれは北西にむかい、ゆるやかに赤き血の進軍を開始したのであった。 |
| イシュトヴァーン・サーガより「イシュトヴァーン王のことば」(64p5) |
| 俺が生まれた嵐の夜、とりあげ婆あは、生まれ出た俺が手のひらにしっかりと白い玉石を握りしめていたのをみて、「この子はいまに偉い王様になるだろう。そして《光の公女》がこの子に王座をもたらすだろう」と予言した。 そのときから、すべては決まっていたのだ――俺がゴーラの王となること、すべてはもう、俺の生まれたそのときからさだめられていたのだ。 |
| カナン神殿の讚神碑より(31p5) |
| ヤーンの目、そは東方を示して動かざる一つ星。 ヤーンの手、そは人々の運命を織る紡ぎ車とおさを操る。 ヤーンの日、そのときなべて世の人はおのがさだめを逃るべからず。 |
| ――《カナンの滅びの書》より 「第三の滅びの書」(75p5) |
| そは未知なる、真紅き神々のいかづちなり。 小昏き空、俄かに裂け、二つに割れ、その内より神人あらわれ地上へとおりたちぬ。ひとびとはうろたえ騒ぎ、地上には死と地獄の炎、ふたつながらひらかれぬ。 洪水流れきたり、すべての魂を奪ひて去る。地上の神々嘆きたまひ、ひとの子を救わんとせしも、なすすべなく了んぬ。 地上にありすすべてのひとの子、及びけだもの、花々、魚、鳥、すべていっとき滅び去りて、地上、無人となりぬ。これより新しき時代はじまれりと伝える。 |
| ゴーラ年代記より(46p5) |
| こうして、第二次ユラニア戦役は終結をとげた。 それはゴーラの新しい時代の幕開けであり、ひいては中原全体、 さらにひいては世界全体の激動の変化のはじまりを告げるものであった。 それは、天に輝いていたゴーラの守護神、竜の星座から、 北の獅子宮、そしてさらに若いサソリの星座へと、 星辰が移って行くおおきな変化の前触れにほかならなかったのである。 |
| 〈不幸な予言者〉の歌より(48p5) |
| ごらん下さい。 あの赤い星は凶星でございます。 あの星はカナン滅亡のその前日、西の空に突然あらわれたといわれる、 《ダルダロスの目》ではございませんか。 皆様、ごらん下さい。 あの星はカナンの滅亡を予言したその星でございます。 |
| 母の予言書 クリスタルの章より(51p5) |
| 彼は選ばれた者として生まれ、選ばれた者として育ち、 そして選ばれた者として選ばれた者の死を死んでゆくでしょう。 彼を選ぶものは神だけでなく悪魔、光のみならず闇、ルアーのみならずドール、そしてヤーン。 彼のような者はすべて他の者と同じ一生を生きることはないでしょう。 彼の名は神々の碑文にしるされ、神々も彼の名を選ばれた愛児のそれと記憶にとどめられていられる。 しかし、娘よ、覚えておくがいい。 それは人の子の幸せと平凡な喜びすべてを捧げたことによってだけ得られる栄光なのです。 |
| ドルイットの墓碑銘より(60p5) |
| ガルムのごとく生きる者 バスのごとく地を這う者 イグレックのごとく闇に生きし者 ドールのごとくうとまれし者よ 汝の名は永遠にゾルードの黄泉に 封印されるであろう。 憎悪より生まれし者、その名を鬼哭と謂う。 |
| ザウル・トリステ祭祀書「予言の書」より(63p5) |
| はるかなる宇宙のはてから、時の弔鐘がきこえてくるとき。 赤き星が北の空にあらわれ、ひと月のあいだとどまりつづけるとき。 巨大なホウキ星があらわれ、獅子の星座の流星群が夜空よりあらわれるとき。 そのとき、カナンの伝説はくりかえされ、戦慄すべき破滅の伝承はうつつのものとなるであろう。 幸運にして災いを逃れ得ざる者はドールの黄泉にいこうであろう。 そして世界は新しき時代を迎える。 |
| 《魔道の書》ヴァーサム記より(74p5) |
| 魔道師の書は伝える。 そのかみ、魔道がこの世に出現して以来このかた、その偉大なる力をもって知られる、驚くべき魔道の徒、三人のみありと。そしてその他の魔道師多しといえど、この三人の魔力に匹敵するものなかりしと。 一に3000年の長きを生きしという、《大導師》アグリッパ。 二に、ドールに魂を売り黒魔道の祖たりしという、《闇の司祭》グラチウス。 三に清浄にして枯淡なる《北の賢者》ロカンドラス。 その三人のいずれがまことの、地上最大の魔道師なりや、その真の力をはかりうるもの、なきがゆえに、この地上に知るものなし、と。 |
| 王立学問所のヤーンの書、「ヤーンについて」アルディウス著の冒頭より(80p5) |
| ヤーンの翼――日頃はヤーンは山羊の足、長いまがりくねった角をもち、長いあごひげをはやし、ひとつ目、長い杖をつく老人として知られている。だが、時いたるとき、ヤーンはその背にたたまれていた巨大な純白の翼をひろげ、そのとき世界じゅうはその翼の舌に包まれるという。かつてひとたびだけ、その翼がひらかれたとき、カナンの悲劇がおこった。そう伝えるサーガもある。 |
| ドール教団「暗黒祈祷書」より、「異次元をのぞく秘宝」(81p5) |
| イリスの真夜中、新月の刻に、誰にも見られぬ北向きの室に入り、五芒星を床に発光する塗料で描く。そののちにその真ん中に立ち、あらかじめ調合した没薬三種を五芒の先端にそれぞれ垂らし、星のあわせめに香をたて、火をつける。そののち、五芒星のまんなかに獣脂ではないろうそくを銀の燭台にたてたものをおき、そこにあらたな没薬をしたたらせ、そして決められたルーンの聖句をとなえ続ける。やがて、空間がゆれ、《扉》が開く。ただしそのときに五芒星の外に出たら、その者は永遠に失われ、《何処でもない空間》を生でもなく死でもなくさまよいつづけることになるだろう。 |
| 「暁と夜とのいさかいのサーガ」より(82p5) |
| そのとき暁があらわれた。 暁は紫の明け方の空の色した瞳と、明け渡る空の最初の光にも似た銀色のかがやきわたる髪をもつ女神として、勇者の前にあらわれたのであった。そして暁はいった。「勇者よ。もしもお前が私を選ぶのならば、私はお前にこの永遠の夜を逃れる方法を教えましょう」と。 |
| ミロクの聖なる本「創世記第3章」より(83p5) |
| 巨大なる嵐、いまだかつてなきほどに巨大なる神のあらしが訪れた。 大地は神嵐の前にひれふし、生きとし生ける者すべては運命そのものであるこの嵐のまえにおもてを伏せた。嵐はいつはてるともなく吹き荒れ、その勢いはしだいに激しくなりゆくのみであった。 そのとき、《彼》があらわれた。 |
| アレクサンドロスの極秘予言書「ドルイド暗黒書」より。(101p5) |
| かくて北の豹と南の鷹が相会う時、巨大なる《会》がおこるであろう。 かつてなき巨大なる《会》はひそやかにはじまり、だがそれによりて、この世はひそやかにあるまったく新しき段階にはいるであろう。 そして、まことの変化のきざしは、さらなる前知らせとともにあらわれる――それは、北の豹がこの世をし ※原書はこの先の頁は何者かにより破損され、先を読むことが出来なくなっている。 |
| 王立学問所発行「解説十二神」より(102p5) |
| 風をつかさどるダゴン三兄弟 ……長兄 ダゴン 雨を支配する 次兄 ライダゴン 雷を支配する 三男 エルダゴン 雪を支配する 炎をつかさどる火神三人の姉妹 ……長姉 レイラ 燃やし尽くす女神 次姉 フィステ あたため焼く女神 三女 ディーガ 光により明るくする女神 火神には火の妖精たちをつかさどる妖精フレイアが、ダゴン三兄弟には風の精エルフたちをつかさどる妖精エルフレンがそれぞれ右腕として付き従っている。 きわめて古い伝説では、ダゴンとレイラ、ライダゴンとフィステ、エルダゴンとディーガがそれぞれ婚姻関係にあるとされていた時代もあったという。 |
| ヤーン賛歌より 朝の章(103p5) |
| ヤーンの朝がかれらのまわりにあった。 それは小高い丘に風が吹き、そしてものみながしげりはじめ、いまいちど生き始める、そんな再生と清々しさの朝であった。 |
| とても古いとあるサーガより(108p5) |
| ――昔々、あるところに二人の吸血鬼が住んでいる、 古いお城がありました―― |
| タイスの編年記による(112p5) |
| かくて史上もっとも偉大なる闘王、タイスにあらわれたり。 かの男たれよりも強く、偉大にして、異形なりき。 その時より、タイスのすべての闘王の名誉はかの男の後ろに闘王なしとすら、タイスの民、口々に申しはやし了んぬ。 |
| 紅鶴城の伝説より(114p5) |
| そこには無数の悲しみの証拠がしみついている。 天井は、壁は夜な夜なあまたの苦しみと悲しみと、そして快楽のひそやかな泣き声を聞いた。床には罪なくして流されたあまたの血がしみこんでいる。そしてその床下には、葬られることもなく忘れられたままの死者たちの亡骸が、うらみをたたえたまま裁きのときを待っている。 それゆえに、これは悲しみの城なのだ。 |
| タイス図書館の記録室の記録より(116p5) |
| タイスの水神祭り闘技会の記録室には、数知れぬ闘王、大闘王の名前が記されている。 だが、そのなかでもっともはえある、そして永久に色あせることなきその名は、それは、二十年間不敗の歴史を誇ったおそるべき英雄の名であった。 伝説の人――その名をクムのガンダル、という。 |
| タイスの墓碑銘(117p5) |
| 闘神マヌよ、古今まれなる勇士の魂をいざ、 みもとにひきとらせたまえ。 史上最大なる戦士にして勇士、闘うことだけしか知らなかった男。 たぐいまれな勇者、その名を永遠にすべての人々の心に刻み、忘れることなく語りつぐべし。勇士、そは永遠の大闘士の謂なり。 |
| ヤヌス教聖典「真理の書」より(121p5) |
| すべてのものごとには光と影がある。 光のあるところに影が生じ、影なきところには光は存在出来ぬ。 なれば、事象が巨大であるほどに、光が大きいほどにその影はいっそう大きく、ひとが偉大であるほどに、その苦しみはいっそう増すものである。これは、ヤヌスがその双面により、告げられた光陰の真理である。 |
| 「アレクサンドロスの知恵の書」より(122p5) |
| どのような英雄豪傑も、どのような碩学もまぬかれぬもの、それは「人としての苦悩」である。妻と子と家族にまつわる煩悩こそは、古来すべての人間をとらえてきた、永遠の宿命であった。 だから、私は、一生家族を持たぬことに決めているのである。 |