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娘たち

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娘たち
《リー・ファのサーガ》より(19p5)
草原の黒い鷹が東の国でヤーンの目なる星を見た。
星は鷹を招き、そして鷹は行ってしまった。もう帰らない。
草原に黒い鷹はもういないのだ、きょうも風のふく草原に。
リー・ファの歌(24p5)
私が先に死ねば、私は幽霊になって戻ってきて、太子さまをまもる。
太子さまが死ぬようなことがあれば私はすぐ、あとを追って刃に身を投げる。
もう、どんなさだめも私たちをひきはなしはしない。
リギア(25p5)
いつもあなたは一人で遠くを見ているので、私の想いは届きません。
私は待つことに慣れていますけれど、生まれてこのかたずっと待っているので、
もう何もわからなくなってしまいそうです。
あなたに地上の人は見えるのですか。
あなたは一人で空をかけて、いつか去ってしまうのですか。
アウラ(30p5)
行きなさい、そしておのれの運命を見出しなさい。
いつか人は誰もが
すべての人の思いにすぐる神の平安を見出すのだから。
リンダ(33p5)(38p5)(57p5)(72p5)(89p5)(99p5)(118p5)(126p5)
 風よ、お前は知っているの。
あの人はまだ私を覚えているかしら。
いまでは人の噂にしか、きかなくなったその名前を、そっと私にささやいておくれ。
風よ、お前は覚えている。
あの日の約束、草原で、二人きりで見た蜃気楼を。
風よ、お前だけが見た。
三年目の誓い、はかない夢を。
風よ、伝えておくれ。
風よ、運んでおくれ。
私の愛をあの人のところに。
まだ愛しているとささやいておくれ。
あの虹のふもとを捜し当てられたら、
そうしたら何もかもなくしたものがそこにあるのかもしれないわ。
あの虹を渡って空の向こう側にいけたら、
そうしたらずっと前に死んだなつかしい人たち皆に会えるのかもしれない。
虹の消える前に――虹の橋を渡れたら。
ヤーンってね、運命をつかさどる一つ目の老人の神様なのよ。
その尾のさきには運命をさししめす矢になっていて、
そしてその一つ目はこの世の運命のすべてを見通し、
そして足は山羊の足なので誰よりも早い。
私たちは誰ひとりとしてヤーンのおりなす運命のなかから逃れることはできないんだわ。
たとえどんなに素晴らしい天才でも、高貴な王族でも、
ヤーンから逃れることはできないのよ。
        ――リンダ 十歳の折、庭園で――
パロが苦しんでいるわ。
美しいパロの国、私のふるさとが身が灼かれ、心をえぐられて悲しんでいる。
あの声があなたにはきこえないのですか?
あの叫びはあなたにはとどこかないのですか?
私はパロの娘、そう、私のなかにはこの国の血が流れている。
この国が慟哭するとき、私もまた苦しむの。
この国が啾くとき、私も泣くの。
        ――リンダ 「パロの娘」の歌
あの星は消えてしまった。
夜になれば、やがて朝が来る、朝が来れば、日がのぼる。
そしてまた夜がくれば、また別の星がまたたきはじめる。
そのことはわかっているけれど、私にはもう、ただひとつ大切だったあの星だけは見えることはないの。
朝がきても、あなたはいない。
夜になっても、あの星は見えない。 私は何処へゆけばいいのだろう。
        ――リンダの嘆きの歌
 それにあのひとだって、三年たっても結局迎えにはきてくれなかった。
 それだけのことよ。過去のちょっとした想い出話……そんなの、どんな女性にだってある、昔の記念品みたいなものでしょう?
 あのときはなんて二人とも若かったのでしょう。そうして、もう二度とあのときは帰ってこない。
 そうよ、いとしいひと、いえ、あんなにもいとしかったひと――愛した時は終わり、わたしはひとの妻になった。そしてあなたも違う女性を妻と呼んだ。蜃気楼は消え、そしてもう二度とかえってこないのよ。まさに、ひとときだけの蜃気楼――だからこそ、あれはあまりにも美しいくせつないまぼろしだったんだわ
アリサ(69p5)
あのかたは修羅になってしまわれたのです。
誰もあのかたのまえにおもてをあげていることさえできませんでした。
そうやってあのかたはご自分の運命を選ばれました。
でももうそれは、はるか遠い昔、はるかなヴァラキアで、ひとりの酒場女が不実な男の子供をみごもったとき、あらかじめヤーンによってさだめられたものだったのかもしれません。
フロリー(105p5)
 私を見つめないで 忘れていた炎が小さな胸にともるから
 私にささやかないで 愛のことばも甘い歌ももう凍った心をとかさないから
ああ、でもこの湖水のほとりであなたの歌はなんと甘い風になって届くのかしら
あなたの巻き毛はなんと美しいのかしら
 

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