シンフォニア文芸団メールマガジン・バックナンバー
臨時増刊号2:特別SS第2弾っ!
Thu, 1 Jan 2004 16:07:39

>文芸団管理人より

 どもです〜
 今日は何の日であるか、ご存知でしょうか?
 そう、今日はエイプリルフール……4月馬鹿な日であります。

「『はにはに』SSはしばらく休載をする」と公言していた僕ですが……今日
の出来事を見て即興でネタが出てきてしまいました。
 題しまして、「桜(はな)の命」です。

 そんな僕からの、ささやかなジョーク……かどうかはそちらの判断に任せる
として(笑)即興で書いてしまったSSをお楽しみ下さい。

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>春の特別SS「桜(はな)の命」

 故郷から帰ってきたちひろちゃんが渋垣家に住み込むようになってから、4
月のある日のこと……

「今日はこんな日だからさ、家族みんなで花見にでも行こうよ」

 そんな茉理の提案で俺、茉理、英理さん、源三さん……そしてちひろちゃん
が、近くの公園で花見をすることになった。

「う〜ん、いい天気。今日は晴れてよかったね、ちひろ」
「うん。……桜、きれいですね。久住先輩」
「ああ。毎年見てるけど、ほんとにきれいだ」

 公園では桜並木の桜が咲き乱れていて、次々と桜の花びらが舞っている。
 ……さて、何故ちひろちゃんが渋垣家に住み込むことになったのかは別の話
に譲ることにして、今ではちひろちゃんはすっかり渋垣家の一員になってい
る。
 ちひろちゃんの個人部屋がないという問題はあったが、茉理の所で相部屋で
ほとんど毎日茉理と一緒に部屋でだべっていたりして、楽しくやっているよう
だ。

「お〜い。茉理、直樹、ちひろちゃん。こっちだ」

 声を掛けられて俺達は振り向くと、先に場所を取っていた源三さんと英理さ
んが、桜の木の下に敷いていたビニールシートの上に乗って準備をしていた。

「……さて、お待ちかねのお弁当よ」

 俺達三人がビニールシートの上に乗ると、英理さんはバスケットから重箱を
取り出して蓋を開ける。
 中からはおにぎりを初めとして、から揚げ、煮物、サラダなどの料理がきれ
いに並べられていた。

「う〜ん、美味しそう。さっすがお母さん」

 英理さんの作ったお弁当を見て、嬉しそうに笑みを浮かべる茉理。

「うふふ、茉理だって料理は上手じゃない。この前保奈美ちゃんから上手だっ
て誉められたんでしょ?」

 そう。この前茉理は料理の師匠である保奈美から「教える事がなくなっちゃ
ったから」と、『免許皆伝』のお墨付きをもらっていたのだ。

「それでもお母さんにはかなわないよ〜保奈美さんに認められても、まだまだ
精進しなきゃ」
「まだ上を目指すつもりなのかよ、茉理……」
「くすくす……茉理だったら、将来立派なシェフになれるよ」

 ぎゅっと気合を入れるように手を握る茉理に俺は呆れ、ちひろちゃんは口に
手を当てて笑んでいる。

「おう、その時には茉理のレストランで食事だな」
「もう、お父さんったら。あたしなんて、まだまだだよ〜」

 今度は現像さんに言われて茉理は照れて手を振る。

「それより、桜がきれいですね……」
「そうだな。こういうときは、酒の一杯だな」

 ちひろちゃんのつぶやきに応じるように、源三さんが頷いて言う。

「はい、お父さん」

 ここで手際よく茉理が源三さんに杯を渡し、側にあった日本酒の一升瓶の栓
を開けた。

「おお、すまんな。茉理」
「お父さんは、いつも仕事で忙しかったみたいだから」

 源三さんが差し出した杯に、茉理が日本酒を注ぐ。

「茉理、私ももらえるかしら?」
「お母さんも?」
「何だか、私も飲みたい気分になってきちゃったから」
「うん、わかった……よいしょっと」

 茉理は頷いて、英理さんにも杯を渡して酒を注ぐ。

「…………寂しいですね」

 側ではちひろちゃんが、上に咲いている桜を見て、ちょっぴり寂しそうにつ
ぶやく。

「ちひろちゃん?」

 何だか影が射しているかのようなちひろちゃんの表情に、俺は心配げに尋ね
る。

「……あっすみません。この桜が全て散っていくと思うと、何だか寂しく思っ
てしまったんです」
「ああ、確かにな……」

 何で桜って奴は、散るんだろうな……
 確かに散っていく桜は美しくはあるんだけど、ちひろちゃんが言うように、
何だか寂しいと思う。

「それだったら、散らなきゃいいのにな……」

 茉理も同じことを思っていたようだ。
 源三さんと英理さんの酌を終えた茉理は、酒を下に置き、身体を後ろに傾け
ながらも両手を下のビニールシートに付け、寂しそうにつぶやく。

「花には、命があるからなのよ」

 杯の酒を飲みながら、英理さんが言った。

「ああ、花って奴は散るからこそ美しいものだってな。散らない桜なんて、味
気ないぞ」

 同じく、杯の酒をあけた源三さんが言う。
 そういえば、誰かの古人がそんなことを詠っていたような気がしたな。
 確か世阿弥、だったような気がしたが……まあいい、後で調べておこう。

「……分かる、気がします……どうぞ」

 今度はちひろちゃんが茉理の側に置いてあった一升瓶を持って、源三さんに
酌をする。

「ああ、すまないなちひろちゃん。こうして娘二人にお酌してもらえるなん
て、俺は幸せものだな」
「いえ……」

 源三さんに言われて、酌をしたちひろちゃんは顔を真っ赤に染めてうつむい
た。

「私も……学園の温室で、いくつものお花を見てきました。どんなに一生懸命
育てても、いつかは枯れてしまいますから」

 うつむいて、どもりながらも答えるちひろちゃん。

「英理さんが言うように、お花にも命があります。私達よりも少ない……限り
がある命だからこそ、一生懸命綺麗な花を咲かせるんです」

 俺も学園でちひろちゃんの手伝いで園芸部の活動をやっていたから、何とな
くちひろちゃんの話は理解できる。
 どんな花でも、ドライフラワーなどの特別な処置を施さなければ、いつかは
枯れてしまう。
 けど……処置を施したその花は、美しいといえるだろうか、と言われれ
ば……俺は即座に首を横に振るだろう。
 そんな花は、生気がない造花となにひとつ変わらないから。

「そっか。だから花って綺麗なんだね」
「うん。……だからなのかな、私がお花が好きになったのは」

 感心する茉理に、再び上の桜に向いて遠い目をするちひろちゃん。
 ちひろちゃんが園芸部に入ったのはある目的の為だったけど、それ以外でも
温室で花をいじっているちひろちゃんの姿を思い浮かんだ。
 今の桜を眺めているちひろちゃんの姿と重ね合わせると、本当に花が好きな
んだなと思う。

「……ちひろちゃん、俺にも」

 ここで俺も酒を飲みたくなって、杯をちひろちゃんに差し出す。

「はい、久住先輩」

 頷いて、ちひろちゃんは丁寧に一升瓶を持って俺の杯に日本酒が注がれる。

「おっ直樹もか」
「今日は飲みたい気分ですからね……」

 源三さんから言われて、俺は杯を口に持って行こうとした時だった。

「…………!」

 ここで俺の杯に、一枚の桜の花びらが静かに舞い降りる。

(花見酒、か……)

 花は、散るからこそ美しい……
 そんな言葉が心に残り、俺は桜の花びらが入った酒を一気に飲み干した……

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>あとがき

 う〜む……
 まさか、今日の出来事でネタが出てきてしまうとは思いませんでした(汗)
 さて今回のネタですが、仕事場からの朝の帰り道にてのこと……国道を車で
走らせていた僕は、ひとつの光景を目の当たりにします。

 桜が、咲いている……!?

 ……満開でした。
 そこから、この桜の花が散れば、さぞかし綺麗だろうなと考えておりまし
た。
 そういえば去年、オーガストおしゃべり掲示板でひとつの題名を出しまし
た。

「命は散るからこそ儚く、最高に美しきものなり」

 これ、オーガスト系以外でのSSから出したものの引用ですが、ある方から
のレスで「『風姿花伝(世阿弥・著)』の引用でしょう」と帰ってきて、なる
ほどなと思いました。

 あと、今回の設定ですが……
 OHPネタバレBBSで出していた最終SS『自鳴琴(オルゴール)』の後
の話ですね。まさかあの後の話ができてしまうとは思わなかった……(汗)
 さすがに「ネタバレでは出さない」と公言してしまった以上、文芸団で出そ
うかなとも考えましたが……
 今日はエイプリルフールである、と考えては、「しばらく書かない」と言っ
ていた僕なりのジョークとして出させていただきました(笑)。
 配信者全員に回るこのメルマガでは、さすがにネタバレ設定を出すわけには
いかないので、その辺特に気をつけて書きましたね、はい(汗)

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>最後に

 正月のSSから4ヶ月ですか……時間が経つのは早いものです。
 今回2度目となるメルマガSSですが、ちょっと長いかな〜と思いました。

 さて、今後しばらくは文芸団と本家を中心に活動しようと思ってます。
『はにはに』SSは今度こそお休みですね……早く本家の方を納得行く所まで
更新させなきゃいけませんね(特にオリジナル小説とか、リレーSSと
か……)。

 このパターンだと、夏に増刊号……と考えるかもしれませんが、その辺は未
定……ということで。出せたら出そうかな〜(爆)

 そういうわけで、これからもシンフォニア文芸団をよろしくお願いいたしま
す。
 しんりゅでした。

 以上、管理人のしんりゅでした。

 シンフォニア文芸団は、オーガスト作品が好きな方全員が団員です。

・4月の誕生日
■現在該当キャラはいません(汗)

 本家オーガストHP
 http://august-soft.com/




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