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シンプル空間の小さな幸せ

現在の消費社会では、企業はデザインで商品を差別化して消費者にアピールしようとします。デザイン性を感じる商品は、第一印象は良いのですが、新しいデザインがでるとすぐに古臭く感じるように仕組まれています。自動車のモデルチェンジなどはその典型例です。

色々なデザイン情報に振り回されていたら次第に自分の生活空間に統一感がなくなります。落ち着かないインテリアは雑多なデザインが混在していることが一因なのです。デザイン過多の現代社会だからこそ、消費者は基準となる一貫したスタイルが求められます。そのひとつがシンプルです。

最近のマーケティングは非常に巧妙に理論武装されています。シンプル自体もデザインのコンセプトとして取り込まれ、モダン、ナチュラル、アジアン調などと同じように扱われることもあります。しかし、シンプルを売りにする商品を単に買い揃えるだけでは味気ない生活空間に陥ります。

日本家屋の茶室はシンプルの理想とされています。最小限の家具が設えられているだけではなく、季節感が取り入れられた掛け軸が飾られ、一輪ざしに活けられた花などが置かれて重要なアクセントとなっています。生活する人の洗練されたセンスが伴ってこそシンプルな空間が生きてくるのです。

意識的にシンプルを謳う商品を揃えたり、ものを少なくすることはできても、空間を見立てるセンスは簡単には身につけられません。感覚のことを言葉で表現するのは非常に難しいのですが、ポイントは何気なさを意識的に演出する心がけではないかと思います。

デザインはデザイナーの存在を意識させないものがよいのです。日本民藝館の館長で工業デザイナーの柳宗理氏は職人などが製作した機能を重視した無名性デザインが最も美しい、ということをどこかで発言されていました。

写真家のエドワード・スタイケン氏は最高のスナップショットは撮影者の存在を見る側に感じさせないものだと発言しています。何気ない写真が一番難しいとプロカメラマンに聞いたことがあります。これらはまさに同じ意味です。
考え抜かれて、計算され尽くされた結果の何気なく見えるシンプルが洗練につながるのです。

シンプルは生き方や精神の基本です。生活空間までを意識的にシンプルにすることは生きていく上で意味のないことなのかもしれません。しかし、自分の持つ世界を住空間までに拡張することで自分らしい空間に身を置くことができます。お金では買えないそんな小さな幸せが人生をがんばる力を与えてくれるのです。


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