2008年12月伊丹市議会

日本共産党伊丹市会議員団

上原ひでき議員の一般質問(要旨)

発 言 骨 子

1、「子供の貧困」という視点から以下の点で当局見解を問う。

 貧困と格差を広げる現在の政治のもとで、国際的に見ても日本の子どもの貧困はきわだっている。このことを子どもの権利という観点から見れば、親の経済的状況しだいで子どもの選択が左右されるということであり、本来その家族を支える社会保障制度が充実されなければならないところを、逆にこれを市場にゆだねることによって貧困率を高めることになっている。子どもの貧困とは「単なる物質的略奪ではなく、人々の選択肢を広げ、可能性を完全に発揮できる人権その他の重要な要素、すなわち休息、余暇、暴力からの保護などの欠乏も含む」(「国連子ども総会」より)。

 以上の観点から次の点について伺う。

1)      児童虐待について

@   伊丹市における児童虐待と子供の貧困との関連をどのように分析されているのか。

A   児童虐待対応の中心的役割を果たすべき伊丹市における「児童虐待対応体制」は十分といえるのか。

B   兵庫県の児童相談所における「児童虐待対応体制」は、子供の命にかかわる伊丹市等自治体への後方支援体制として十分といえるのか。

2)国民健康保険における子どもの保険証交付について

 伊丹市の努力によって、12月1日現在で「無保険の子ども」をなくしたことには敬意を表する。全国的な「無保険の子ども」をつくることへの批判に中で、国会でも新たな動きが、いま一歩被保険者の立場での改善を求める。

@   市独自に子どものいる家庭に無条件で保健証を交付する。

A   他の資格証明発行の世帯においても様々な形で被保険者と対話し、保険証の取り上げは真に悪質滞納者のみに限る。そのための職員増員を図ること。

1、      公営住宅ストック計画について

@   将来的に公設の市営住宅をなくすことの問題点についての見解を伺う。

A   市営住宅の供給戸数は現状のままでいいのか。

 

発 言 要 旨

1.子どもの貧困に関する問題として

 貧困と格差を広げる政治のもとで、子どもの貧困も広がっています。日本における子どもの貧困の特徴あげるとすれば、まず第1に貧困率が高いということです。2000年の段階で日本は全世帯の15.3%、子どものある世帯の14.3%が貧困ライン以下の所得水準で生活をしていて、それは上昇傾向にあります。第2に、国際的に見て一人親世帯、とりわけ母子世帯の貧困率が高く、貧困ライン以下の世帯が57.9%、OECDの平均が21%ですから突出しています。さらに国際比較で就労率が高いにもかかわらず貧困率が高いのが特徴です。第3に、社会保障と税による再配分後に子どもの貧困率が増えるという特徴があります。これはOECD加盟諸国で日本だけです。

 これらのことは、子どもの権利という観点に立ったとき、親の経済的状況しだいで子供の選択が左右されるということであり、社会保障等その家族を支える仕組みが貧困なまま放置されていて、しかもその社会保障や教育が市場に任される度合いが高くなればなるほど家族が持つ経済的な資源の多寡で子どもの状態が大きく変わってしまうという状況となっています。

 子どもの貧困とは何を持って定義するのかは様々な議論がありますが、2002年5月の「国連子ども総会」で採択された「子どもにふさわしい世界」によりますと、子どもの貧困については、子供の視点から貧困を理解する、すなわち子供が貧困をどのように経験しているかを理解することが不可欠であるとしています。貧困は単なる物質的略奪ではない、基本的財、サービスの略奪であると同時に、人々の選択肢を広げ、可能性を完全に発揮できるようにしてくれる人権のその他の重要な要素、すなわち休息、余暇、暴力からの保護などの欠乏も含むと指摘しています。貧困は、教育、保健、遊びなど子どもの幅広い基本的権利の充足に影響を及ぼしているという意味になります。

 そこで今回は、子どもの貧困の広がりが子どもの生存、発達が脅かされているという観点から、次の二つの点で質問をします。

 1)児童虐待について

 厚生労働省によれば、児童相談所における児童虐待相談数は2007年が約4万620件で、前年比8.8%増、1990年の40倍となっています。貧困という観点からみれば、日本共産党の石井衆議院議員が国会質問したときのデータによりますと、2004年に兵庫県中央子ども家庭センター企画指導課の調査で、県内で発生した児童虐待のうち、約4割の家庭が生活保護を受けるなど経済的に困窮している家庭であったことから、虐待が起こるその背景には家庭の困難、育児不安があり、その困難をもたらしているのが生活苦、雇用不等の経済的問題があることを見なければなりません。

 いずれにしましても、子どもの生命を守るのは、家庭とともに政治と社会が責任を持つべきことです。貧困が子どもの命、発達を脅かしている現実を直視して、これらを社会の問題、政治の課題として最優先に取り組むことが急がれています。

 一方、「児童虐待の防止等に関する法律」が2000年5月に成立し、2004年に続き、2007年に児童福祉法の改正とともに2度目の改正がなされました。これらの改正によって、児童虐待を「人権の著しい侵害」と明記し、「虐待」の定義が広げられてDVも加えられるとともに、虐待している親への指導だけではなく「支援」をきちんと位置づけ、国や地方公共団体が行う必要な体制の整備も「努めらければならない」とされ、市町村が児童福祉に関する相談に応じ、必要な調査および指導等の児童虐待対応を行うことが義務付けられました。また、虐待を受けている恐れがある子どもの安全確認、身柄確保のために、裁判所の許可状を得て児童相談所が強制的に立ち入ることができることになり、市町村窓口と児童相談所の連携の仕組みも強化されることになったことが特徴です。

 伊丹市においては、2000年12月に「伊丹市児童虐待防止市民ネットワーク」を設置され、様々な取り組みをされています。今後伊丹市が児童相談所との連携を強め、虐待で苦しむ子どもをどう救い出し、虐待した親をどう支援していくのか、そのために何が必要なのかに関して以下お伺いをします。

@ 先ほど子どもの貧困との関係について兵庫県中央子どもセンターの調査結果について言及しましたが、伊丹市におけるその実態についてはどのような認識をされているのでしょうか。

A 伊丹市における児童虐待に関する支援体制についてです。伊丹市においても児童虐待相談・通告児童数は昨年度180人件と5年前と比べて76%も増加しています。市町村は、法第8条によって、児童虐待に関する関係機関からの連絡による児童の安全確認を行い、保護が必要な児童を児童相談所に送致するとともに、出頭の求めや立ち入りおよび調査、一時保護が必要なケースについては県知事または児童相談所長に通知することとなっています。すなわち、一時保護などが必要な困難ケースの場合の措置権限は児童相談所が責任を負うが、在宅支援ケースについては児童相談所の後方支援の下に伊丹市が第一義的に責任を負うことになっています。しかし児童相談所が通知を受けた児童のうち、実際に施設入所等の措置が取られるのは全国的に10%以下であり、その大部分は在宅支援ケースということになり、したがって児童虐待対応の中心的役割は市町村が担っているということになります。

  伊丹市においては、子ども部子育て支援課において児童家庭相談室が直接その役割を担っています。その中における児童虐待対応体制は、正職3名と5人の嘱託職員です。専門性を生かし懸命に努力されていますが、虐待を受けるすべての子供を救い出し、虐待する親への支援を行うのにこの体制で本当に十分といえるのかどうか、見解を伺います。

B 伊丹市が児童虐待対応の中心的役割を果たす上で、より専門性を発揮する児童相談所との連携は重要です。伊丹市の場合、直接的には西宮子ども家庭センターの分室に位置づけられている川西子ども家庭センターがかかわっています。しかし伊丹市・川西市・宝塚市・三田市・猪名川町を所管するこの分室の家庭支援課にはわずか7人の職員しか配置されていません。子どもの命にかかわる後方支援的役割がこれで十分果たせるのかどうか、その連携のあり方に関しても見解を伺います。

2)国民健康保険における子どもの保険証交付について

 9月議会で、国民健康保険証の交付に関して、子どものいる世帯からの保険証取り上げをやめるよう求めました。その後の当局からの報告によりますと、12月1日現在で中学生以下の子どものいる世帯へはすべて保険証を交付したとの報告がありました。この間の電話や訪問等による粘り強い働きかけがなされましたが、短期間にしかも少ない職員の中でこのような努力がなされたことに敬意を表しますとともに、問題としていた全家庭への保険証交付に対して評価をするものです。

 いわゆる「子どもの無保険」が全国的に問題となり、初めて全国の実態調査もおこなわれ、不十分ながらも厚生労働省からの通達が出され、一定の改善がなされた自治体が増えています。多くの自治体が、伊丹市のように、厚生労働省の通知を受けて一定の事情を把握した上で短期保険証を交付していることです。しかし一方、札幌市のように「世帯主の納付状況と子どもが等しく必要な医療を受けることは別の問題であると判断して18歳未満の子どもに資格証明書とは別に1年間の保険証を交付した自治体や、交野市は「子どもに責任はない。特別事情との判断で処理した」として中学生以下の子ども本人に通常の保険証を交付、奈良市が中学生以下を一律無条件で給付停止の除外対象とするなどの自治体も出ています。

 一方、国会では野党からの法改正の提案もおこなわれる動きもでてきているところです。日本共産党は、本来社会保障制度である国民健康保険においては保険証の取り上げという制裁措置には反対であり、国保法の改正を言うなら、保険者にこのことを義務付けた項目を削除することを求めるべきと考えます。

 これまで指摘しているとおり、生活保護基準以下の所得階層が7割近く加入する国民健康保険にあって、負担能力を超えた高い保険税を課税しているのが実態です。それが払えないからといって制裁措置として保険証を取り上げることは、憲法25条の生存権の保障や国保法第1条の国民健保の向上に資するとしたその目的からも違反し、「国民皆保険」の原則を崩すものです。このことから9月議会でも紹介した広島市のように自治体の裁量で保険証の取り上げはなくすことができます。

 この間の担当課の職員の努力に対して敬意を表しながらも、いま一歩被保険者の立場に立ち、伊丹市独自に子どものいる家庭を「特別事情」に加えること等によって、せめて子どものいる家庭には無条件で保険証を交付するようにするべきではないでしょうか。さらに他の資格証発行世帯においても、今回子どものいる世帯を訪問、もしくは電話によって対話を行ったような実態把握を行い、保険証取り上げは悪質滞納者に限ることも可能です。そのための職員増員も必要かと思いますが、見解を伺います。

 2.公営住宅ストック計画について

 伊丹市は、現在作成中の「伊丹市住生活基本計画」の中で、公設の市営住宅を将来的に全廃し、すべての公営住宅を民間からの借り上げ住宅にするとの案をまとめられました。

 しかしそもそも公営住宅は、公営住宅法第一条 で「この法律は、国及び地方公共団体が協力して、健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする」とされており、住宅を整備するのは国と地方公共団体の責務です。

ところが政府は、この法律に反して、これまで公営住宅建設財源は、建設費の2分の1を国庫負担金で賄われてきたのを、地方交付金で建設する仕組みにしたことで、財政的に厳しい自治体では公営住宅を建設しにくい状態に追い込まれていました。さらに一昨年の「住生活基本法」で、その目的を「国民経済の健全な発展に寄与する」とし、住宅建設を「民間任せ」にする路線を拡大しました。小泉内閣以来の構造改革推進の中で、住宅を「民間任せ」にしたことで耐震偽装事件が大きな問題となりましたが、伊丹市の「公営住宅ストック計画」は基本的にこの構造改革の流れに沿ったものといえます。

一方、全国的に自然災害やホームレスの増加をはじめ、住まいに対する国民の不安と不満は深刻です。伊丹市においても公営住宅では、高齢者世帯が多くを占め、コミュニティも大きな困難を抱えています。それでも安い家賃を求めて入居者募集は増え、数十倍の応募倍率も珍しいことではありません。新規建設をほとんどやってこなかったことから、住居に困っている人も入居できないのが現実です。

こういう中での公営住宅政策のあり方として、「住まいは人権」という立場、すなわち住まいは生活の基本であり、憲法25条が保障する生存権の土台であるという立場で、生存権を保障する義務のある国及び地方公共団体が責任を持って公営住宅を建設・供給することです。

以上のことを踏まえて、伊丹市の「公営住宅ストック計画」の問題点について伺います。

 第1に、将来的に公設の市営住宅をなくす問題です。建設を「民間任せ」にするということは、民間住宅の供給がその時々の経済・社会情勢によって規定されることから、市営住宅の供給が真に国民の生存権の保障という観点からの要請ではなくなるということです。このことは国民の生存権の保障も「民間任せ」にしてしまうことになります。見解を伺います。

 第2に、市営住宅の供給戸数は現状のままでいいのかという問題です。今後高齢化が急速に進みますが、今のままの政治の下では、現役世代が年金受給者になるころはますます年金が減少し、低所得高齢者の急増で住宅困窮者も増大することになります。しかも現在若者の半分が非正規雇用ですが、このまま推移すると、無年金者が増え、この世代が高齢者を支えることもできず、自らも年金さえ受給できない世代も増大します。ここでも住宅困窮者は増大します。いまの貧困と格差が広がるものとでは、むしろ市営住宅の供給戸数は増やさなければならないのではないかと思いますが、見解を伺います。