(第2回 不定期エアガン批評)

ピーナッツ工房
真鍮製1/3ミニチュアガバメントキット
by 上村 純






ピーナッツ工房」とは?
 「ミニチュアガン」と言う分野は、なかなかそれだけで商売として成り立ちにくい職種なのだが、日本で唯一、この分野で製造販売を続けておられるのが、奈良県の「ピーナッツ工房」である。
 何故ミニチュアガンが商売として成り立ちにくいのかと言えば、それはまず、必ずしもガンマニア=ミニチュアガンマニアでは無いと言う事が理由に挙げられる。もちろん基本的にガンマニアならミニチュアガンにも興味を持つだろうが、一般のガンマニアは1/1サイズを好み、ミニチュアの場合にも出来るだけ大きいサイズを好む傾向が強い。
 この点ミニチュアガンに興味を持つのは、ガンマニアよりむしろミニチュアマニアや精密機械マニアの方であろう。
 そもそもミニチュアガンは実物通りのメカをどこまで小さく作れるかに意義があり、小さくなればなる程、高度な技術と手間と時間がかかるモノなのだ。
 例えば1/1サイズと1/3サイズを比べた場合、精密さを必要とする1/3の方がずっと手間がかかるのである。モノの値段とは、大きさよりもどれだけの手間がかかっているかで決まる物だから、普通外国のミニチュアガンを見ても1/1よりミニチュアの方が高価だ。
 ところが消費者は、いちいち手間だの労力だの考えず、大きさだけでモノの値段を考えてしまうから「こんなに小さいのに、どうしてそんなに高いの?」と思ってしまいがちなのである。
 日本にも過去、ミニチュアガン(おもちゃ的な大量生産品を除く)を作ったメーカーはあったが、手作りの少量生産品と言う事もあり、これを専門に行うメーカーとして「ピーナッツ工房」は、現在日本で唯一のメーカーと言える。

 では何故「ピーナッツ工房」が、この難しいジャンルで成功しているのかと言うと、まずその値段の安さが挙げられる。
 キットを例に取ると一番安い1/4ベレッタM1934が\10000、一番高い1/3銀製ガバキットでも¥35000である。(真鍮製は¥30000) 中でもお勧めなのが1/3SAA半完成キットで(\25000)難しいメカ部分が調整済みの上、組みあがった状態で届けられる為、表面仕上げとグリップの製作、そして作動の最終調整をするだけで良いのである。ビギナーにはお勧めのキットだ。
 ただ完成品となるとさすがに値が張るが、それでも完全手作りと言う手間暇を考えれば安いと言うべきだろう。
 正直、初めて「ピーナッツ工房」のキットを手にした時は、どうしてこんな値段で商売が出来るのか不思議に思ったものだ。
 主宰の中園氏は、モデルガン感覚で気軽に買える値段と言う事で、ミニチュアガンの価格設定をされたそうだが、その商品一つ一つにかけられている情熱と労力、時間を考えれば、殆どボランティア活動みたいなネダンと言っても過言では無いだろう。
 職人の作った物を見れば、自然とその職人の仕事に対する態度や姿勢が見えてくるものだが、ピーナッツ工房の作品を見れば、中園氏の真摯な人柄や仕事に対する厳しい姿勢が伝わって来るのである。

 前置きが長くなってしまったが、そろそろ1/3真鍮ガバキットのレポートに入ろう。




1/3 真鍮製コルトガバメントM1911A1 キット
 ピーナッツ工房のHPのカタログによると、このキットは超高難度のヘビーユーザー向けとなっており、1/3SAA半完成キットとは違って、こちらは本当にバラバラの状態から自分で組み立てなければならない。キットだからと言って、部品を組み立てるだけと思ったら大間違いである。箱を開けたとたんに途方に暮れ、そのまましまいこんでしまう人もいる事だろう。
 モデルガンのカスタムをしようとして,加工の途中で面倒くさくなって止めてしまうような人には絶対ムリである。 ただし、加工技術に自信が無くても、本当に作りたいと言う思いと根気のある人なら、一度はチャレンジしてみて欲しいキットだ。


キットの概要
 殆どのパーツは真鍮製で、ロストワックス鋳造により作られている。一部の工程ではロウ付けが必要なので、ハンダごてか簡易ガスバーナーが必要だ。
 小物パーツはプラモデルのように枝状となっており、一つ一つ切り離して仕上げる。精密鋳造とはいえ、手作業による物なので製品の個体差はけっこうあるようだ。
 キットの組み立てについては、ピーナッツ工房のHPに詳しい解説が載っているので参考にすると良い。


キットの組み立て
@フレームとスライドのフィッティング
 まず全体のバリを取り、フレームを変形させないように注意しながらスライドとフレームのレールを擦り合わせる。この時削り過ぎてガタガタになると、後の作動に支障を来すので、なるべくガタが出ないように注意する事。

Aフレームとスライド側面の平面出し
 側面の平面部は普通、ガラス板の上に紙ヤスリを敷いて、その上でパーツを前後させて仕上げるというのがセオリーだが、今回のキットではその方法は使えない。
 何故なら、鋳造パーツには多少の歪みやヒケがあり、上記の方法で仕上げようとしてもヒケのある所はいつまで経っても削れてくれない上に、肉厚の薄い所がどんどん薄くなっていってしまうからだ。
 またスライドの場合、この方法ではセレーションのモールドまで削れてしまう。一度セレーションを削ってしまったら、手作業では元のように揃ったセレーションを削り出す事はまず不可能だ。
 HPの解説では、取り切れないヒケの部分は1cm角の砥石を使って仕上げると良いと書いてある。今回の作例では、砥石は使わず紙ヤスリの手仕上げで仕上げた。
完全な平面で無くても、削る(磨く)方向を一定にして丁寧に仕上げれば、けっこう綺麗に仕上がる。

Bブリーチの取り付け
 スライド内にセットするブリーチのパーツはロウ付けする事になっているが、バーナーワークはちょっと・・・・と言う人ならエポキシ系の接着剤で付けてしまっても大丈夫だろう。私の場合は分解出来る様にしたかったので、ロウ付けも接着もせずに、ただはめ込んであるだけだ。
 組み立ててしまえば外れる事も無いし、作動上特に支障は無い。ただしブリーチ下部はディスコネ作動との兼ね合いもあるので、なるべくフレームと隙間が出ないように調整して欲しい。

Cバレルの加工
 バレルの加工では、ロッキングラグがスライドにしっかり噛み合うように調整する必要がある。ここを手抜きすると組み立てた時、スライドが閉鎖位置まで前進できない。それに、このキットはちゃんとスライドとバレルがロックさせる事が出来るような作りになっているのだから、ここはしっかり作り込んでおきたい。
 その他、バレルブッシングはスライド内に溝を切ってはめ込むが、ここもガタが出ないようにきつめにしておく。プラグについては内径が少し狭く、リコイルSPがきちきちの状態なので、中を削ってSPがスムーズに入るようにする。

Dフレーム内パーツの加工と取り付け
 フレームのシアー、ハンマー、サムセフティー等の軸穴は、フレーム左側の穴のモールドから右面まで、垂直に一気に開けてしまった方が良い。フレームには左右とも軸穴のモールドがあるが、それぞれ左右から開けると軸が斜めになってしまう傾向があるからだ。
 フレーム内パーツの取り付けでは、まずフレーム内のバリを取り、幅が狭いようなら削り広げる。それでまず、トリガーを組み込むが、この時トリガーバーの外側のフレーム内と擦れる面は削ってはならない。トリガーの動きが渋い時は面倒でもフレーム側を削る事。トリガーバーの内側は、後でマガジンが通れるように削り広げなければならない為、先に外側を削ると後で内側を削り広げる時、肉厚が薄くなってしまうからだ。
 マガジンキャッチは、キャッチロックとSPの入る穴が気泡で埋まってしまっている事があるので、ドリルで開け直す。キャッチロックは、キット付属の旋削パーツのコマのような形をしたパーツから削り出す。フレーム左側の穴を削り過ぎると、キャッチが穴から抜け出てしまうので注意する。
 その他、ディスコネ、シアー等のパーツは、動きを良く理解した上、モデルガンを参考にして完全に作動するように調整する。作例では、シアーの穴のモールドに正確に穴を開けたら、ディスコネとシアーの接点がギリギリの状態で、トリガーを引くとディスコネからシアーがはずれて(空振りして)ハンマーが落ちないという症状があった。今回はそれぞれのパーツを少しづつ調整する事で上手くディスコネが効く様にする事が出来たが、シアーに穴を開ける時は、モールドよりほんの少し上(0.5mm位)に穴を開けた方が良いかもしれない。
 グリップセフティーについては、トリガーバーとの接点に注意しながら取り付ける事。サムセフティーは、フレーム内のシアーをロックする為の突起が寸足らずで、全然効いていなかった為、突起にロウを盛り上げてセフティーが効くように調整した。気にならなければ、別にそのままでもかまわないが・・・。
 ハンマーのコッキングノッチは、調子を見ながら少しずつ調整する事。あまり深くシアーが噛むように削り過ぎるとディスコネ作動にまで影響を及ぼすので注意しなければならない。ディスコネの頭は長めにしておいて作動の最終調整時に長さを決めるようにする。

E マガジンの製作
 マガジンは背面の合わせ目でロウ付けしなければならない。ハンダ付けでも良いとの事だが、強度的にはやはり銀ロウ付けの方が良いだろう。フレーム内に装着してみて、引っかかりがあるようならフレーム内を削る。トリガーバーの内側と擦っているようならトリガーバーを削る。マガジンの背中とディスコネが擦っている場合もあるので、この辺もチェックする事。


送弾&エジェクトの調整
 さて、一通り組み立てが済んだら、次にカートの送弾とエジェクト調整に入る。この辺の調整の仕方はモデルガンと同じなので、フィーディングランプを磨いたりマガジンリップを調整しながらスムーズに作動するようにして欲しい。
 ここのポイントとしては、エキストラクターのツメを、しっかりカートを支えられるような形にする事である。ブリーチフェイスとエキストのツメの溝がツライチになっていないと、快調な作動が得られないので、ここがずれている場合はツメにロウを盛って整形するなどの加工が必要となる。


作動のチェックポイント
ここでは作動についてのチェックポイントを書いておくので、全てクリアー出来るよう努力されたい。

@ ディスコネクターは効いているか?
A スライドとバレルはロックしているか?
B グリップセフティーは効いているか?
C サムセフティーは効いているか?
D マガジン内の残弾が無くなった時、スライドストップがかかるか?
E カートの送弾とエジェクトはスムーズか?

以上、全てクリアー出来たら合格である。


後記
 今回キットを組んでみた感想だが、とにかくそのリアルなパーツ構成に驚かされた。1/3と言うサイズでありながら、1/1のモデルガンと全く変わらない部品構成で、おまけにショートリコイルメカやディスコネクターメカニズムまで完璧に再現されているのである。
 漠然と1/3サイズと聞くと、けっこう大きいのでは?と思ってしまう人が多いようだが、実物のGMの全長が217mmとすると、1/3で約72.3mm。大体、大人の人差し指位の長さしか無いのである。もっと具体的に大きさをイメージしたければ、GUN誌などで全長73mm位のGMの写真を探してみると良い。意外なほど小さいのに驚く事だろう。 しかもピーナッツ工房の製品には安全対策の為、改造防止のインサートまで埋め込まれているのだから、中園氏がいかに気を使い、手間をかけて作られているか解るだろう。

 その昔、「長興」と言うメーカーが、1/3サイズの鉄製ミニチュアガンを作った事があった。今から18年位前のことである。発売されたのはGMとSAA。値段はこの当時15〜18万円なり。SAAは部品の省略も無くリアルな出来だったが、GMはディスコネメカや、プランジャー等が省略されていて、スタイルもあまり良い出来ではなかった。勿論、鉄製と言う材質上の魅力はあったが・・・・・。

 当時欲しくても買えなかった人、ピーナッツ工房のキットにチャレンジしてみてはどうだろうか?


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