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第1話 「そろそろ休憩するか」 僕は左手につけた時計を眺めた。ストップウォッチの針は、2時間の経過を示していた。オメガ・スピードマスター・オートマチック。二十歳の誕生日に父親に購入したもらったものだ。モデルチェンジ前の盤面デザインが気に入っている。本当は月まで行ったプロフェッショナル(手巻仕様)が欲しかったけど、資金の都合でオートマチック(自動巻仕様)になった。スピマスのオートは、手巻きも出来るので週末用の時計としてはベストだと思う。 僕のスピマスは純正の金属ベルトからウレタン製のベルトに交換を施している。金属ベルトは、どうも肌に合わないのだ。パッと見が安っぽく見えるので、デパートの時計売り場等で店員をからかうのが密かな楽しみだ。“付けてみますか?”なんて言ってくる店員にさりげなく時計を見せてやると、なんとも言えない顔つきをして引き下がる。嫌味だとは自分でも思うけどね。 取り留めなく広がった考えを目の前の風景に戻した。僕は休憩できそうな場所を見つけ、愛車のミニ(イギリス製のクラシック・ミニ)を乗り入れた。 僕は缶コーヒーを持って車外に下りた。箱買いしたのを何本も積んできているのだ。値段的に自販機で買う気にはなれない。缶コーヒーを飲みながらウロウロしていると、僕はうなじに違和感を感じた。 「嫌な感じだな」 僕の違和感の原因は、トイレで放尿していると目の前に答えが貼ってあった。自殺を思いとどまらせるような文面と電話番号。自殺の名所が近くにあるらしい。 と、言うことは…。僕は駐車場の周りを注視した。花壇のふちに座っている女の子がいた。間違いない。幽霊のヒトだ。僕に見えるぐらいだから、かなり強い力の持ち主だろう。手遅れになっていなければ、いいけど。 僕は女の子の隣に座った。遠慮なく観察させていただく。女の子は俯いていた。ショートカットの癖っ毛、勝気そうな瞳。どことなく、前田 愛を彷彿とさせる女の子だ。高校生ぐらいかな? “こんにちは” 僕は女の子に話しかけた。周囲に他の人がいるので、声に出さないように注意する。何度も話しかけていると、女の子の顔がゆっくりと僕のほうを向いた。遠くを見ていた瞳が、徐々にフォーカスを合わせ始めた。 “あたし?” “そう。貴女” 僕は微笑んでいた。女の子に意識があるだけでも、ラッキーだったから。 “迷惑、かな?” “ううん、平気” 僕は微笑みながら話しかけた。 “僕は、くらま。貴方は?” “あたしは…” 女の子の顔が歪んだ。そのまま、前を向いてしまった。 “言いたくない…” 俯き、小さな声で呟いた。 “そっか” 僕は小さく頷いた。僕も前を向いた。缶コーヒーをゆっくりと飲む。しばらくして…。 “ねぇ” “ん?” 女の子が再び僕の方を向いた。 “どうして、あたしに、話しかけたの?” “それはね” 女の子の方に身体ごと向いた。彼女の眼を覗き込みながら答える。 “貴女が、カワイイ女の子だからだよ” “なにそれ” 女の子はムッとしたようだ。 “バカじゃないの?” いい反応だ。感情が表れ始めた。 “僕も健康な青年男子だからね。相手がおばちゃんやオヤジだったら、あえて声なんか掛けないよ” “ばーか” 女の子は続けた。 “ナンパのつもり? 幽霊じゃなくて、生身の女の子に声かけてみろっ!” 僕は彼女の罵声を喜んで受けていた。 第2話 “よかった” 女の子が引いたのが分かった。 “あ、あによっ!” 強がっている。 “キミに感情が残ってて。そして、それを表せて” “なんなの?” 僕が説明しようとすると 「ちょっと、あんた」 いきなり声が掛けられた。僕が慌てて正面を向くと、おっちゃんが僕を見下ろしていた。しまった。彼女との会話に夢中で、この人の接近に気づかなかった。 おっちゃんは中腰になって、僕の眼を覗き込んできた。煙草くさい息がかかった。 「なんです?」 「自殺…しにきたのか?」 おっちゃんの腕には黄色の腕章。NPO法人、なんちゃらっていう文字が見えた。自殺防止の声かけボランティアらしい。 「僕は、ただの観光客です」 「ただの観光客にしちゃ、ずいぶん長いこと座ってるじゃないか。様子もおかしいし」 僕は溜息を付いた。こういう手合いにお引取りを願うには、正直に話すしかない。 「亡くなった方と、話をしていました」 僕はおっちゃんの眼を睨みつけながら続けた。 「できれば、邪魔しないで頂きたい」 絵に描いたような慇懃無礼。おっちゃんも負けずに睨み返してきた。しばらく対峙は続いたが、おっちゃんがフッと力を抜いた。一歩下がる。 「死ぬ気は無さそうだ」 「ありません」 僕も力を抜いた。おっちゃんが優しい口調でこう言った。 「風邪引かないうちに、帰ったほうがいいぞ」 「ご心配、どうも」 僕は小さく微笑みを浮かべた。冷笑には見えなかったハズだ。おっちゃんはくるっと踵を返した。立ち去ろうとしたおっちゃんが立ち止まった。次の言葉を言うかどうか迷っているらしい。おっちゃんが振り返った。 「亡くなった方と、話しをするのは、いい。だけどな」 沈黙。おっちゃんの口が再び動き出す。 「ついていったり、つれていかれたり、しないでくれよ」 僕は大きく頷いた。おっちゃんは軽く笑うと、今度こそ立ち去った。 僕は大きく息を吐き出した。そんな僕に、横から声が掛けられた。 “あのおじさんの言うとおりだよ” “なにが?” 女の子が身体ごと僕の方を向いていた。僕の腕をつかみ、自分の方に向けさせる。 “あたしは違うけど、他のヒトは、貴方を連れて行きたいかもしれない。だから、早く帰って” 僕は女の子に微笑みかけた。 “心配、ありがと” “お願い、帰って” 僕は女の子の眼を見た。澄んでいる。僕の決心が固まった。 “この地域にはキミしか見えないから、僕が連れて行かれる心配は無いと思うよ” 僕の言葉に彼女は首をかしげた。 “どういうこと?” “僕のチカラは、かなり限定的なんだ。相手がかなりの力を持っていないと、見れないから” “あたし、そんなに力が強いの?” 僕は頷いた。 “そうなのかぁ…” 僕は本題を切り出すことにした。 “あのさ” “うん?” “僕と一緒に行かない? 旅の道連れが欲しくなってた所なんだ” 女の子の眼が大きく開かれた。 第3話 “誘ってくれるのは、嬉しい。けど…” “けど?” 小さな溜息。 “ここにずーっと座ったままなんだ、あたし。ちゃんと、立てるかな?” “座り続けたのは、貴女の意思でしょ? だったら、立つのも一緒じゃないかな” 僕は意図的に軽い口調で答えた。 “さ、立って” 立ち上がり、手を差し伸べた。彼女は僕の手を握り、立ち上がった。あっけないほど、簡単に。 “立てた” “簡単だったでしょ” 僕はうなじの違和感が大きくなってきているのを感じていた。女の子と手をつなぎ、ミニに戻る。彼女を助手席に乗せ、走り出す。離れるにしたがって、うなじの違和感は消えていった。 「振り切ったかな」 “なんのハナシ?” そろそろ話してもいいだろう。僕は運転しながら話し始めた。 「力の強い幽霊のヒトにはね、本人が知らないうちに“悪しきモノ”が取り付いていることがあるんだ」 “そうなの?!” 「ああ」 僕は続けた。 「そして“悪しきモノ”に徐々に染められていく」 ごきゅ。となりで女の子が唾を飲み込んだ。 “そのままだと?” 「悪霊と化す」 僕は残酷だと思ったけど、さらに続けた。 「キミみたいに力の強いヒトの場合は、悪神かな」 “悪神? あたしが?” 「あのままだったらね」 僕は安心していた。リヤシートからペットボトルを取り出し、蓋を開けようとした。 “やってあげる” 女の子が蓋を開け、僕に渡してくれた。僕は中身を喉に流し込むと、ボトルを隣に渡した。 “くらま” 「ん?」 “ありがと” 万感の思い。僕は黙ってそれを受け入れた。 “あれ?” 女の子の声が小さくなった。僕は慌ててミニを止めた。 「僕に取り付いて! 早く!!」 女の子が僕に取り付いた。体力が一気に減っていく…。 「間に合ったね」 “こんなことしたら、貴方が…” 「簡単にはくたばらない。本当は前のままで連れて行きたかったけどね」 幽霊のヒトがこの世に存在し続けるためには、拠り代が必要なのだ。地縛霊だった彼女が存在し続けるには、僕の身体が必要だ。 “あ、これがあった” 女の子が僕の身体から左手の時計に移った。僕の身体の負担がすうーっと軽くなった。 「スピマスかぁ。窮屈でしょ」 “快適よ” 女の子が笑った。僕は思わず、抱きしめていた。 “ちょっ…” 彼女はフリーズしていた。僕はとめどなく、涙を流していた。 「良かった」 “何に対する、言葉なの?” 「キミが笑えて。本当に良かった」 “あたし、アイ” 「僕は、くらま。改めて、よろしく」 “こちらこそ” 第4話 「ここでいいかな?」 駅前のビジネスホテル。駐車場もありそうだ。 「部屋があるか、聞いてくる」 “まって” 女の子…アイちゃんが僕を止めた。 “他の人がいる所では、あたしに話しかけたりしないで。手も繋がなくていいし、ドアも開けてくれなくていいから” 「でも」 アイちゃんは小さく微笑むと、僕に抱きついてきた。 “貴方の気持ちは嬉しい。あたしの存在を認めてくれているのが分かるから。でも、他の人にはあたしは見えないでしょ? 怪しい言動は謹んでね。あなたが疑われるのは、辛いから” 「分かった。シングルでも、いい?」 “あたしのベッドは、貴方の左手にあるから” 僕は頷くと、部屋を取った。一番安いシングルルームだ。 部屋に入り、荷物を置いた。靴を脱ぎ、スリッパに履き替える。ベッドに座って一息入れた。次の瞬間、僕の記憶は途切れていた。そのまま倒れこみ、泥のように眠ってしまったらしい。 「あ…れ?」 目覚めると僕はアイちゃんに見下ろされていた。 「寝てた?」 “うん” ニッコリと微笑むアイちゃん。そのまま僕の胸に甘えてきた。僕は軽く抱き寄せながら、スピマスを見た。2時間ぐらい眠っていたらしい。 僕は食事を済ませ、部屋に戻った。椅子に座ると、アイちゃんが膝の上に乗ってきた。そのまま僕に抱きつき、キスしてくる。最初は唇を合わせるだけのキスだったが、すぐに舌が差し入れられてくる。僕は口を開き、アイちゃんの舌を招きいれた。絡み合い、吸い尽くす。情熱的なキスは長く続いた。僕のチンチンはGパンの中で勃起していた。引っかかって痛いので、位置を直す。アイちゃんの手がGパンの上から触れてきた。 “すごく硬くなってる” 「うん」 アイちゃんの背中からオシリを撫で回す。脇腹の辺りに指を這わすと、アイちゃんの身体が仰け反った。 “こっちも…” アイちゃんに導かれ、オッパイを愛撫する。僕たちはお互いに求め合っていた。 ベッドに移動しようとした僕は、一瞬、悲しそうな顔をしていたらしい。アイちゃんが心配そうに覗き込んだ。 “どうしたの? あたしとするの、嫌?” 「違うんだ」 僕は慌てて答えた。 「むしろ、願っても無いぐらい。ただ…」 “ただ?” 僕の脳裏に裕子さんのイメージが浮かんだ。アイちゃんにはこのイメージが見えているらしい。 “綺麗なヒトね。水野 裕子に似てる” 「あ、見えてる? ハナシが速いや。裕子さんって言う幽霊のヒト。このヒトに気に入られてさ。一夜を共にしたことがあるんだ」 “へー” 僕の脳裏には、裕子さんとのHシーンが浮かんでいた。アイちゃんは真っ赤になりながら見続けていた。 「で、次の日の朝、裕子さんはいなくなってた」 “これは…” アイちゃんが少し考えた。 “成仏したのね” 「そう。僕を連れて行くのを止めて、成仏していった」 僕はベッドに寝転がり、天井を眺めた。上からアイちゃんが見下ろしてきた。 「アイちゃんは、いなくなったりしないよね?」 小さく頷くアイちゃん。僕はアイちゃんを抱きしめた。 “でも、裕子さんは…” 5話 「黙って居なくなられるのは、悲しいモノです」 アイちゃんはしばらく無言だった。 “あたしは、貴方に取り付いているのよ。簡単に諦めると思ってるの?” 軽い口調だったが、アイちゃんは真剣だった。僕も真剣に答える。 「思ってないよ」 再び、キス。僕は目の前の女の子の言葉を信じた。再び、お互いを求め合う気持ちが高まってくる。僕たちはキスをしながら服を脱がせあった。 「見せて」 目の前に横たわるのは、まだ未成熟の肢体。恥ずかしそうに横たわる姿が劣情を誘う。僕はむしゃぶりついて行った。 抱き合い、キス。舌を絡め、より強く一体になろうとした。 “く、くらまぁ” 「アイ!」 お互いの名前を呼びながら、両手で全身を撫で回す。 「痛かったり、イヤだったら言ってね」 “うん” 僕はアイちゃんの頬にキスをした。そのまま舌を出し、舐め始める。アイちゃんの両手は僕の背中を撫でている。僕の両手も同様だ。僕の舌は頬から耳に到達した。外側を舐め、内部に侵入する。 “ああっ。ぞくぞくするっ!” 好ましい反応。反対側の頬から耳まで嘗め回し、内部に舌を差し入れた。くちゅくちゅと舐めてあげると、アイちゃんの身体が仰け反った。 僕は首筋を舐め下がり始めた。時折、強く吸う。 “痛いよぉ” 「ごめん」 僕は目の前の成果に酔っていたが、小さな抗議の声に我に返った。キスマークを舐める。 “怒ってないから” アイちゃんの両手が僕の頭を抱きかかえ、軽くポンポンと叩かれた。僕は安心し、そのままゆっくりと舐め下がる。オッパイに到達した。乳房から舐め始め、乳首に到達した。ぺろっと舐め、口に含む。舌先で転がす。 “ああっ” 反対側の手でオッパイを揉む。アイちゃんは気持ち良さそうだ。両方のオッパイに満遍なく挨拶し、僕は更に舐め下がった。オヘソに舌を這わせ、アイちゃんのふとももの間に身体を入れた。ふくらはぎからふとももにかけて舐めあがる。 “くすぐったい…” アイちゃんのふとももが僕の頭を挟み込んだ。僕は両手でそれを開き、侵攻を続けた。目の前に絶景が広がった。うっすらと毛の生えた神秘的な割れ目。恥ずかしげに開き、甘い蜜で潤っている。僕はじっくりと観察することにした。 “ああん。そんなに見ないでよぉ” アイちゃんが身体を揺らした。僕の脳髄を芳香が刺激する。僕はたまらず、舌を這わせていた。外側から内側へ。アイちゃんの蜜は、誰よりも甘かった。蜜を舐め取りながらクリトリスへ。舌先を蠢かせる。指先も投入。徐々に内部に侵攻していく。 “はぁー” 気持ちよさげな声。僕の頭に添えられた両手。僕は幸せだった。痛くしないように注意しつつ、アイちゃんから快感を引き出していく。 “あっ、来るっ!” アイちゃんの身体がピーンと仰け反った。絶頂に達したらしい。僕は跳ね除けられなかったのでゆっくりと愛撫を続けた。アイちゃんの身体は断続的に跳ね上がっていた。内部に入れたままの指が快感を与え続けている。 “もう、だめぇー” 僕は跳ね除けられてしまった。背中をすうーっと撫でてあげると、アイちゃんは力なく喘いだ。 “さわらないでぇ…” もうすこし悶える姿を見たかったが、かわいそうになったので止めた。僕はアイちゃんの頭をゆっくりと撫で続けた。 “はぁー” アイちゃんの眼に光が戻り始めた。僕の視線と絡み合い、はにかむ。 “こんなに気持ちよかったのは…初めてかも” 「良かった」 第6話へ |