歩絵夢

POEM 11







アネモネ


それは遥か遠い日のこと
君は売れないヌードモデルだったね
僕は学生で絵ばかりを描いていたね

君は スタジオから帰って来た
「初めてもらったよ」って
薄い封筒の中を僕に見せ はしゃいでた
わずかばかりの お札をヒラヒラさせて

君は「ふたりで飲もう」と言って
安物の 白ワインを買って来た
ワイングラスが無いから
仕方なくコップで乾杯したね
あの時の涙の味は忘れないよ
窓辺には アネモネが咲いていた

部屋のキャンバスで いつも君のヌードを描いていた
そして疲れたら ふたりして熱いコーヒーを飲んで
その後は いつもお決まりのように抱合っていたね
そうさ あの寒い日も同じように・・・
窓辺には アネモネが咲いていた

あれほど熱く燃えた ふたりの暮らしも
色褪せた置き時計のように止まり
振り向きもしないで ドアから出て行く君の後姿
痩せた肩がやけに悲しかった・・・
窓辺には アネモネが咲いていた

アネモネの花言葉は 「はかない恋」
まるで僕たちの未来を 予言するかのように

それは遥か遠い日のこと
売れないヌードモデルと絵描きの卵
誰が見たって 幸せになれるはずの無いふたりだった

今でもあのアパートの前を通るたびに思い出すのさ
あの時の笑顔
あの時のキャンバス
そしてアネモネの花・・・













あさがお


朝に咲き 気づけばもう
夕暮れには落ちている
この花びらはかなしくて清廉だ
まるであなたに似て
地上に相応しくないほどに

おそらく『時』の化身
気づくものだけが気づき
愛でるものだけが愛でる
それでいいのだ
美しいものは 美しいのだから

花言葉が『愛着』ということを
きっとあなたは知らない











欲望


欲望がきりきり舞いしている
いっそ墜落すればいい
落ちるところまで
落ちて行けばいい

でも君の頭は 思考が先走る
だから結論が出ない
飛び込む勇気が無いから
時間がかかる

思考よりも行動
それが必要なことは判ってはいても
なぜか躊躇いがある

天使と堕天使が頭の中で戦っている
君は今 混沌としている




























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